上 下
6 / 31

第六話

しおりを挟む
 そして、ミネルヴァの話しの続きを聞いた。
 女神曰く、今自分達が居る世界は異世界で『イリニゲザフォス』と言うらしい。
 この世界には四つの大陸があるそうで、俺達が居るのはその四つある大陸の一つで『カタメカ大陸』にある一つの国だそうだ。
 大陸の形で言うと、太腿まである人の足を逆さにした形になっているそうだ。
 俺は最初、元の世界にあるイタリアを逆さにした形なのかと思ったが、良く聞いてみると、アメリカ大陸と南アメリカ大陸をくっつけたような形だと分かった。

 だとしたら、それなりに大きな国があるのだと思っていると、この『カタメカ大陸』には幾つかの国はあるが、大国と言われる国が二つあるそうだ。
 一つは俺達が居るアテネ神権国。略して『神国』と言うそうだ。
 もう一つはテバスパ=イルタ二重王国と言い、略して『二重王国』と言うそうだ。
 この二国は直接領土は接していなかったのだが、ある時、二国の間にあるコレタ王国とデロス王国という小国同士が戦争となった。
 その争っている小国同士の国力は同じの為か、両国は互いに領土が近い国に援軍を求めた。
 結果、その小国同士の戦争が何時の間にか『神国』と『二重王国』の戦争となった。
 その余波で二つの小さい国は併合という名の国家としての終わりを迎えた。
 そして、停戦休戦を何度も挟みつつ、両大国の戦争は続いていた。

 ある日、休戦中の『二重王国』が休戦を破り宣戦布告をしてきた。
 その布告を聞いたミネルヴァは直ぐに軍備を整えようとした所で、隣の大陸にある魔族国家の『スラヴ帝国』通称『帝国』が突如侵攻してきた。
 領海権で揉める事はあったが、それなりに友好的に接して来た国が侵攻してきたの理由は『二重王国』と同盟を結んだからだ。
 二面作戦を取る事となった『神国』は『二重王国』の侵攻は防いだが、『帝国』の侵略を防ぐ事は出来なかった。
 領土の一部を征服された事で『帝国』は『神国』への橋頭保を確保された。
 領土の奪還に兵を送りたくても『二重王国』が侵攻してくる可能性があった。
 
 ミネルヴァは『神国』内の上層部と話し合った結果、戦力増強の為に俺達を呼んだそうだ。
 異世界人はこちらの世界に来る際、この世界の人間よりも高い身体能力と天職が与えられると資料に書かれていたので、ミネルヴァは呼ぶ事としたそうだ。
 話はそれで終わりだが、聞き終わって思ったのは、これって拉致だよなと思った。
 でも、こいつらからしたらそういう考えはないんだろうな。
 必要だから呼んだ。ただ、それだけなのだろう。
 話を聞いたクラスメート達の殆どの奴らは今にも爆発しそうな位に怒っていた。
 一部の奴らは「俺にチートがっ」とか「異世界転生? いや、この場合は転移か?」とか「やったぜ。俺もノベルみたいな主人公になれるんだっ」とか言って喜んでいた。

 馬鹿か。こいつら。
 俺達はその能力で人殺しをさせられるんだぞ。しかも、強制的に。
 怒っている奴らは俺と同じ気持ちだから怒っているのだろう。
「そんな事できるかっ」
 案の定、築山が噛みついた。
「人殺しに参加させるつもりだろうが、こっちはそんな命令に従うつもりは無いっ」
「しかし、このままでは都にまで敵は攻め込んできます。どうか、お願いできないでしょうか?」
 ミネルヴァが懇願するが、築山は聞く耳を持たなかった。
「そっちが勝手に召喚しただけだろうが。兎も角、僕は戦争に参加しないぞっ」
 築山がそう言うと「俺も」「わたしも」と何人かのクラスメート達が追従する様に戦争に不参加を決めた。

「でもよ。俺達はこの世界じゃあ、強いんだろう。だったら、そうそう死ぬ事は無いだろうぜ」
 其処に鬼島が口を挟んだ。
 話を聞いて、自分にも強い力が宿っていると分かり、その力を試したいと言う顔をしていた。
「鬼島、お前っ」
「別にお前は参加しなくてもいいだろう。ショタコン」
「おまえっ」
 築山は自分の名前が、そう言われる事があるので嫌っていた。
 それを言われると、普段は冷静の築山も冷静でいられなくなる。

「止めなさい。二人共」
 霧島先生が二人を仲裁して大人しくさせた。
 そして、ミネルヴァを見た。
「女神様。わたし達は戦った事が無い者達ばかりです。幾ら高い能力を持っていても、とても」
 霧島先生はそう言って戦争の惨禍を拒否しようとした。
「そうですか。残念です。協力してくれれば、貴方達を元の世界に戻れる手段が見つかるかもしれないと言うのに」
 ミネルヴァは残念そうに首を振りながら呟いた。
「何ですって?」
「実は『二重王国』には貴方達を帰還せる程の魔力を持っている魔石があると噂はあるのです」
「その魔石があれば、わたし達は元の世界に帰れると?」
「ああ、飽くまでもその魔石があればですがね」
 ミネルヴァがそう言うと、霧島先生は考えただした。
「・・・・・・もし、その魔石があれば、わたし達を元の世界に帰る事が出来るのですか?」
「ええ、そうですね」
 ミネルヴァの答えを聞いて霧島先生は悩みだした。
 戦争に参加すべきか否かを。
「まぁ、少し時間を上げますので、今日の所は皆さんの天職を知って置いて下さい」
 ミネルヴァにそう言われたが、俺達はどうやって、その天職とやらを調べるのか分からなかった。
「『ステータス』」と唱えれば、自分の能力がどれくらいか分かりますよ」
 ミネルヴァがそう教えてくれた事で、俺達は言われた通りに『ステータス』と唱えた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断

Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。 23歳の公爵家当主ジークヴァルト。 年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。 ただの女友達だと彼は言う。 だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。 彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。 また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。 エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。 覆す事は出来ない。 溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。 そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。 二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。 これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。 エルネスティーネは限界だった。 一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。 初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。 だから愛する男の前で死を選ぶ。 永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。 矛盾した想いを抱え彼女は今――――。 長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。 センシティブな所へ触れるかもしれません。 これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

妹に出ていけと言われたので守護霊を全員引き連れて出ていきます

兎屋亀吉
恋愛
ヨナーク伯爵家の令嬢アリシアは幼い頃に顔に大怪我を負ってから、霊を視認し使役する能力を身に着けていた。顔の傷によって政略結婚の駒としては使えなくなってしまったアリシアは当然のように冷遇されたが、アリシアを守る守護霊の力によって生活はどんどん豊かになっていった。しかしそんなある日、アリシアの父アビゲイルが亡くなる。次に伯爵家当主となったのはアリシアの妹ミーシャのところに婿入りしていたケインという男。ミーシャとケインはアリシアのことを邪魔に思っており、アリシアは着の身着のままの状態で伯爵家から放り出されてしまう。そこからヨナーク伯爵家の没落が始まった。

あなたを、守りたかった

かぜかおる
ファンタジー
アンジェリカは公爵家の娘、隣国の第二王子ローランドと結婚して、この国の王妃になる予定である。 今、公爵家では結婚直前の披露パーティーが行われていた。 しかし、婚約者のローランドが迎えにこない! ひとまずパーティー会場に一人で向かうもののそこにいたのは・・・ スカッとザマァではない 4話目の最後らへんで微グロ注意。

冷宮の人形姫

りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。 幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。 ※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。 ※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので) そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。

【R18】スライムにマッサージされて絶頂しまくる女の話

白木 白亜
ファンタジー
突如として異世界転移した日本の大学生、タツシ。 世界にとって致命的な抜け穴を見つけ、召喚士としてあっけなく魔王を倒してしまう。 その後、一緒に旅をしたスライムと共に、マッサージ店を開くことにした。卑猥な目的で。 裏があるとも知れず、王都一番の人気になるマッサージ店「スライム・リフレ」。スライムを巧みに操って体のツボを押し、角質を取り、リフレッシュもできる。 だがそこは三度の飯よりも少女が絶頂している瞬間を見るのが大好きなタツシが経営する店。 そんな店では、膣に媚薬100%の粘液を注入され、美少女たちが「気持ちよくなって」いる!!! 感想大歓迎です! ※1グロは一切ありません。登場人物が圧倒的な不幸になることも(たぶん)ありません。今日も王都は平和です。異種姦というよりは、スライムは主人公の補助ツールとして扱われます。そっち方面を期待していた方はすみません。

処理中です...