私の夢の中で

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第一章 白夢

1.見知らぬ部屋

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「----あなたはどんな夢をみますか?」




目を覚ますと見知らぬ部屋に座っていた。

窓も扉もない、一面が白い部屋だ。

目が覚める直前、誰かの声がした気もするが、思い出せない。

ふと周りを見渡すと他にも同じように座っている人がいる。

20代から70代くらいの男女4人だ。

皆ここがどこで、なぜ自分がここにいるのかわからない様子でお互いを見ている。

しばらく観察していると、5人を囲んだ中央の床の上に丸いスピーカーが置かれていた。

あれはなんだろうと思っていると、スピーカーからこんな声が聞こえてきた。

「皆様、本日はこの場にお集まりいただきありがとうございます。」

男とも女ともとれない声の"それ"はそう挨拶をして続けた。

「突然ですが、皆様はどんな夢をみますか?」

この質問に、5人とも困惑した。

何処だかわからない空間で、見知らぬ男女と一つのスピーカー。

どうして自分がここにいるのか、どうやって連れてこられたのか記憶にない。

「...どなたも話されないようなので、私の方から指名させていただきますね。皆様、ご自分の手の甲に書かれている数字をご覧ください。」

自分の手の甲をみると、5と書かれていた。

他の人にも同じように、1から4の数字がそれぞれ書かれている。

「そうですね...それでは、まずは3番の方からお願いします。あなたはどんな夢をみますか?」

3番と指名された人は30代くらいの男で、眼鏡をしてやつれた顔をしていた。

「まずここはどこなんだ!どうして俺たちはここにいる!」

今まで状況が分からず戸惑っていた人たちもざわつき始めた。

「...申し遅れました。ここは、皆様のためにご用意した空間です。皆様にはこれから自身の夢についてお話いただきます。5人全員話し終えたら、自由になれますよ。」

と言うことは、5人全員が話し終えたらここから出られるということか。

「さぁ、3番の方、お話を始めてください。」

その男は不服そうな顔で大きくため息をついた。

「夢っつったって色々あるじゃねぇか。何を話せって言うんだ。」

「ここでは、眠りについた後あなたがみる夢について教えてください。どんな夢でも結構です。」

すると男は先ほどまでの態度から、何かに怯えるような表情をみせた。

「...先ほども申し上げましたが、5人全員が話し終わるまで自由になる術はありません。」

"それ"の目的が何で、どうしてここにいるのかはわからない。ただ、5人全員が話し終えればいいだけの話だ。

男は観念したように、ポツリ、ポツリと話し始めた。
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