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第26話 カチカチにしてやるぜ!
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「さあ、次はスイーツを食べに行きましょう!」
甘井が両手に買い物袋を提げて宣言する。
二時間以上も時間をかけて服を購入して、女子四人はホクホク顔になっていた。
よほどショッピングが楽しかったのだろう。ずっと待たされていた琥珀はややグッタリとしていたが。
(本当に……本当に、女子は服を選ぶのが好きだよね……)
おそらく、ショッピングを楽しむ女子の気持ちは男子である自分には永遠に理解できないのだろうと、琥珀は思った。
「この先に美味しいスイーツ店があるのよ。城のメイドさんに話を聞いたんだけど、こっちも日本人の意見が入っているらしいわ」
「さっきの店長さんみたいに、日本から召喚された人が経営しているのか?」
「直接は違うけど、日本人が『向こうの世界にはこういうお菓子がある』って意見を出して、それを元にしたお店らしいわ」
揚羽の質問に答えて、甘井がズンズンと道を進んでいく。
洋服屋の店主もそうだったが、この国には随分と日本人の息がかかっているようだ。
今回の召喚を含めて、最低でも二回。ひょっとすると、もっとたくさん異世界召喚が行われているのかもしれない。
(それだけ、ダンジョンの探索が国家的に重要な事業なんだろうな……他に特産物がないとか言ってたし)
幸いなのは、この世界に召喚された日本人の待遇がそれほど悪くないということ。
洋服屋の店主も幸せそうに暮らしていたし、一部のハード系ライトノベルのように召喚された日本人が奴隷として無理やり戦わされるということはないようだ。
(こうやって街並みを見るかぎり、王都で暮らしている人達の生活も悪くはなさそうだ。会ったことはないけど、この国の王族は良い人なんだろうね)
などと街並みを眺めながら、四人の女子の後ろをペタペタと歩いている。
先ほどまではヘリヤと手をつないでいたが、今は彼女の両手が購入した服で埋まっているので仕方がない。
「キュ?」
街並みを眺めながら通りを歩いていくと……ふと『気配察知』のスキルに反応があった。
四人と一匹の後ろ……数メートルの距離を置いて、三人組の男達がついてきている。
「…………?」
さりげなく振り返ると、ややガラの悪そうな男達が一定の距離をとってついてきていた。
男達の瞳には獲物を見定めるような怪しい色が浮かんでいる。
もしかして……もしかしなくても、ヘリヤ達に良からぬ欲望を抱いているのだろうか?
(……平和な国でもこういう奴らはいるってことね)
ヘリヤを筆頭として、前を歩く四人の女子はいずれもハイレベルな美少女である。
おまけに彼女達は両手に買い物袋を持っており、羽振りが良いことも明白だ。
男達にしてみれば格好の獲物に見えることだろう。
(ダンジョンの中では殺されても甦ることができる。裏を返せば、外の世界の方が危険ってことになるよね)
『気配察知』で敵意を感じ取れる以上、少なくとも味方ではあるまい。
「こっちよ。この先をいくと近道になるそうよ」
甘井が他の三人を案内して、やや人気のない小道に入っていってしまう。
彼女達を狙う男達にしてみれば、チャンス到来というところだろう。
「キュイ……」
(仕方がないな……)
小道に入って少し歩いてから、琥珀は後ろを振り返って大きく息を吐きつけた。
(フロストバースト!)
琥珀が強化されたスキルを発動させるのと、男達が小走りで角を曲がってきたのは同時だった。
「ふぎっ……」
氷の吐息を浴びて、男達の身体が凍りつく。
全身を白い霜に覆われてその場に停止して、もはや身動きすらしない。
「キュウ」
(安心しろ。死にはしない……たぶん)
時間が経てば氷が解けて、動けるようになるはずだ。
もしもこのまま命を落としてしまったとしても、若い婦女子に狼藉を働こうとしたのだから自業自得だろう。
「あ、見えてきたわ。あの店よ」
スイーツのことでで頭をいっぱいにした女子は背後にたたずむ氷像に気づく様子もなく、スタスタと進んでいく。
「キュ」
琥珀は満足そうに鳴いて、彼女達の背中を追いかけるのであった。
甘井が両手に買い物袋を提げて宣言する。
二時間以上も時間をかけて服を購入して、女子四人はホクホク顔になっていた。
よほどショッピングが楽しかったのだろう。ずっと待たされていた琥珀はややグッタリとしていたが。
(本当に……本当に、女子は服を選ぶのが好きだよね……)
おそらく、ショッピングを楽しむ女子の気持ちは男子である自分には永遠に理解できないのだろうと、琥珀は思った。
「この先に美味しいスイーツ店があるのよ。城のメイドさんに話を聞いたんだけど、こっちも日本人の意見が入っているらしいわ」
「さっきの店長さんみたいに、日本から召喚された人が経営しているのか?」
「直接は違うけど、日本人が『向こうの世界にはこういうお菓子がある』って意見を出して、それを元にしたお店らしいわ」
揚羽の質問に答えて、甘井がズンズンと道を進んでいく。
洋服屋の店主もそうだったが、この国には随分と日本人の息がかかっているようだ。
今回の召喚を含めて、最低でも二回。ひょっとすると、もっとたくさん異世界召喚が行われているのかもしれない。
(それだけ、ダンジョンの探索が国家的に重要な事業なんだろうな……他に特産物がないとか言ってたし)
幸いなのは、この世界に召喚された日本人の待遇がそれほど悪くないということ。
洋服屋の店主も幸せそうに暮らしていたし、一部のハード系ライトノベルのように召喚された日本人が奴隷として無理やり戦わされるということはないようだ。
(こうやって街並みを見るかぎり、王都で暮らしている人達の生活も悪くはなさそうだ。会ったことはないけど、この国の王族は良い人なんだろうね)
などと街並みを眺めながら、四人の女子の後ろをペタペタと歩いている。
先ほどまではヘリヤと手をつないでいたが、今は彼女の両手が購入した服で埋まっているので仕方がない。
「キュ?」
街並みを眺めながら通りを歩いていくと……ふと『気配察知』のスキルに反応があった。
四人と一匹の後ろ……数メートルの距離を置いて、三人組の男達がついてきている。
「…………?」
さりげなく振り返ると、ややガラの悪そうな男達が一定の距離をとってついてきていた。
男達の瞳には獲物を見定めるような怪しい色が浮かんでいる。
もしかして……もしかしなくても、ヘリヤ達に良からぬ欲望を抱いているのだろうか?
(……平和な国でもこういう奴らはいるってことね)
ヘリヤを筆頭として、前を歩く四人の女子はいずれもハイレベルな美少女である。
おまけに彼女達は両手に買い物袋を持っており、羽振りが良いことも明白だ。
男達にしてみれば格好の獲物に見えることだろう。
(ダンジョンの中では殺されても甦ることができる。裏を返せば、外の世界の方が危険ってことになるよね)
『気配察知』で敵意を感じ取れる以上、少なくとも味方ではあるまい。
「こっちよ。この先をいくと近道になるそうよ」
甘井が他の三人を案内して、やや人気のない小道に入っていってしまう。
彼女達を狙う男達にしてみれば、チャンス到来というところだろう。
「キュイ……」
(仕方がないな……)
小道に入って少し歩いてから、琥珀は後ろを振り返って大きく息を吐きつけた。
(フロストバースト!)
琥珀が強化されたスキルを発動させるのと、男達が小走りで角を曲がってきたのは同時だった。
「ふぎっ……」
氷の吐息を浴びて、男達の身体が凍りつく。
全身を白い霜に覆われてその場に停止して、もはや身動きすらしない。
「キュウ」
(安心しろ。死にはしない……たぶん)
時間が経てば氷が解けて、動けるようになるはずだ。
もしもこのまま命を落としてしまったとしても、若い婦女子に狼藉を働こうとしたのだから自業自得だろう。
「あ、見えてきたわ。あの店よ」
スイーツのことでで頭をいっぱいにした女子は背後にたたずむ氷像に気づく様子もなく、スタスタと進んでいく。
「キュ」
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