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第3話 夢じゃない。おっぱいの感触が刻みこまれている!
しおりを挟む「さて……ミス・アールヴェントが召喚魔法に成功したところで、改めて解説をしましょうか」
錯乱していた琥珀(ペンギン)が落ち着いたタイミングを見計らって、現地人らしき眼鏡の女性が黒板の前に立つ。
「先ほども説明したように、人間にはそれぞれ得意とする魔法が存在している。地水火風を操ることができる原子魔法。光と癒しを操る神聖魔法。闇と幻、状態異常を操る闇魔法。そして、ミス・アールヴェントに実演してもらった召喚魔法だ」
メガネの女性がスラスラと黒板に文字を書きながら解説する。
(学校の授業みたいだな……)
琥珀はヘリヤの膝の上で女性の解説を聞いている。
こうしているうちにもヘリヤ両手が頭や背中、お腹を撫でてきて、モフモフしてきて落ち着かない気分だが。
(多分、クラスメイトは魔法を教わっているんだな。この女性は召喚先の世界の魔法使いで、指導役といったところか? 使命を果たすために必要な力と知識を身に付けるため、こうやってレクチャーを受けているんだな)
琥珀が日本で読んだライトノベルの知識から、今の状況をそんなふうに推察した。
「かわいい……」
「キュ……」
せっかく考えをまとめているというのに、背中からギューッとヘリヤが抱き着いてきた。
小柄な体格のわりに大きな胸が押しつけられて、考えを乱されてしまう。
そうやって心をかき乱されているうちにも、メガネの指導役の授業は続いていく。
「魔力を持った人間には必ず、いずれかの魔法に対して適性があるはずだ。ミス・アールヴェントはたまたま召喚魔法に適性があったようだが、他の皆も自分に合った魔法を修得していってもらいたい」
「レオーネ先生―、質問いいですかー?」
クラスメイトの一人が挙手をする。
坊主頭の少年。名前は藤本という男で、琥珀に対するイジメに参加はしていなかったが、止めもしていなかった傍観勢のクラスメイトだ。
「ヘリヤさんは召喚魔法に適性があるって話ですけど、出てきたのはペンギンですよね? メチャメチャ弱そうなんですけど、それで戦えるんですかー?」
「キュッ……」
(何だと、この野郎。嘴で目を突いてやろうか?)
藤本の言葉にはイラッとしたが、弱そうに見えるのは事実である。
「召喚された生き物が最初は弱いのは当然だ。彼らはこれから成長して強くなるのだから」
メガネの女性教師が藤本の問いに答える。
「召喚獣というのはこの世界とは別次元の異界からやってくる存在なのだが、召喚者の願いを叶えることによって成長することができる。ミス・アールヴェントがこれから先もその名もなき召喚獣を呼び出していけば、いずれは大きく逞しく育つことだろう」
「アンバー」
唐突にヘリヤが口を開く。
琥珀のことをギュウッと抱擁しながら。
「名前、ある。アンバー」
「そうか、アンバーと名付けたのか。その子はこれから、貴女と一緒に成長していくことだろう。頑張りなさい」
「ja」
ヘリヤが母国語で「YES」と返事をして、いっそう強く琥珀のことを抱きしめた。
たわわに実った果実が琥珀の背中に押しつけられて、頭が沸騰してしまいそうである。
「キュ……」
しかし、唐突に琥珀の身体が光りはじめる。
おっぱいと太腿の心地良い感触が消えていき、代わりにこの世界に召喚されたときのような細胞が置き換わる違和感に襲われた。
「キュウッ!」
「アンバー……!」
(これはもしかして……)
ヘリヤが慌てた様子で琥珀のことを呼ばう。
緑の瞳を大きく見開いて、光に包まれた琥珀の姿に焦りを見せる。
「大丈夫だ、落ち着きなさい。ミス・アールヴェント」
困惑しているヘリヤに女教師に声をかける。
「どうやら、召喚していられる時間が終わったようだ。彼は元の世界に帰るだけ。またすぐに会えるし、君の魔力が高くなれば召喚していられる時間も長くなるから、心配はいらないよ」
その言葉を最後に、琥珀の視界がブラックアウトする。
目の前が真っ暗になって声が遠のいていき、再び意識が闇の中へと飲み込まれる。
〇 〇 〇
「ハッ!」
気がつくと、琥珀は自室のベッドの上で眠っていた。
見慣れた天井。間違いなく日本にある自分の部屋だ。
卓上時計を確認すると一時間ほど経過している。どうやら、いつの間にか眠ってしまったようである。
「ゆ、夢か……?」
身体を起こし、つぶやいてみる琥珀であったが……確信があった。
先ほどの出来事は夢幻などではない。自分は間違いなく異世界に召喚されていたのだと。
夢というのはあくまでも記憶の追体験であり、実際に経験したことのない感覚を夢に見ることはないという。
(だけど……僕の身体には焼き付いている。生々しく、しっかりと……!)
琥珀は自分の身体に刻み込まれた感覚……ヘリヤのおっぱいの柔らかな感触に、自分が異世界に召喚されていたことを確信するのであった。
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