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第二章 クラスメイトは吸血鬼

31.そんな僕の修行回②

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 重い瞼を開くと、目の前に知らない天井があった。
 背後には布団の感触。修行の合間の仮眠のために持ち込んだものである。

「う……僕はいったい……?」

「ああ、お兄様! 目を覚ましたのですね!?」

「あれ……美月ちゃん? どうして僕は眠っていたんだ……?」

「修行中に倒れてしまったんです! ああ、目を覚ましてよかった……!」

「……そっか、倒れたんだな。修行している最中に」

 どうやら、いつの間にか気を失っていたらしい。
 僕は身体を起こして、自分が置かれた状況を確認する。
 曖昧な記憶を探っていって……ムチを捌く修行の最中に倒れてしまったのだと思い出した。
 この空間の内部では怪我は即座に回復するのだが、精神的な摩耗までなくなるわけではない。
 岩を砕く威力のあるムチを素手で対処するという荒業を実行しているうちに、心が削れて倒れてしまったのだ。

「美月ちゃん、僕はどれくらい眠っていたのかな?」

「ほんの三時間ほどですわ。お兄様、どうかしっかり休んでください。お兄様が倒れて、私は肝を冷やしました」

「そうはいかないさ。ここにいられるのはほんの一月だ。強くなるにはとても足りない」

 時間の流れが異なる亜空間を生み出すマジックアイテムであったが、これを使用することができるのは星が太陽を一周するうちに1度だけ。
 つまり、年に1回しか使用することができないのである。

「一ヵ月なんてあっという間さ。いつまでも休んでなんていられないよ。つき合わせちゃった美月ちゃんには申し訳ないけどね」

「お兄様……良いのです、私のことは。私はお兄様のためになら何だっていたしますわ」

「うん、ありがとう……ところで、修行を再開させる前に確認しておきたいことがあるんだけど良いかな?」

「はい、何なりと聞いてくださいませ」

 美月ちゃんが頷いた。
 僕は「それじゃあ……」と咳払いをして、ずっと気になっていたことを口にする。

「どうして僕は裸なのかな? そして、どうして裸の美月ちゃんと同衾しているのかな?」

 そう……気絶して休んでいたはずの僕は何故か全裸で布団に入っていた。
 おまけに隣には同じく全裸の美月ちゃんが横になっており、ふくよかすぎるおっぱいをこれでもかと押しつけてきている。
 現実逃避していて理解するのに時間がかかったが……うん、これはいわゆる事後というやつではないのだろうか?

「お兄様、ご安心ください」

 美月ちゃんがほっこりと包み込むような笑顔で口を開く。

「ちゃんと避妊はしています。間違いなんてございませんわ」

「アウトオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!」

 終わった。人生終了だ。
 小学生女子とお布団インしてしまった。もう社会的に終わったようなものだ。

 いや、あきらめるのは早いのか?
 今の美月ちゃんはどう見ても小学生には見えないし、そもそも実年齢は万を超えている悪魔だし。
 でも器になっているのは小学生の美月ちゃんの肉体で、だけど悪魔の力で成長しているからやっぱりロリじゃなくて……。

「……自首しよう。110番だ」

 僕はホロホロと涙をこぼしながら、合掌をするように両手を合わせた。

「華音姉さん……飛鳥姉……風夏……先立つ不孝を許してくれ……。僕はブタ箱で残りの人生を過ごすことにする……」

「お兄様、冗談ですわ。本気にしないでくださいな」

「え? 冗談なの?」

 僕がわりと本気で絶望しているのを見て、美月ちゃんが悪戯っぽく笑った。

「いくら私が悪魔であったとしても、お兄様との初体験を寝ているうちに済ませるなんてことはいたしませんわ。場所とシチュエーションをしっかりと整えて、お姉さま方も交えて万全の態勢で挑みますもの」

「そ、そうか? そうだよね、やっぱり」

 僕はホッと胸を撫で下ろす。
 あまり安堵してはいけないような内容だった気もするが……それでも、過ちを犯していないのであれば何よりである。

「ちゃんと手で処理しましたもの。もちろん、搾ったもの・・・・・は残さずいただきましたわ。お兄様のものを無駄になんてできませんもの」

「…………」

 僕は目を回して倒れて、そのまましっかりと二度寝したのであった。
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