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第二章 クラスメイトは吸血鬼
6.僕が美少女と通学しているワケ①
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僕が通っている学園には『三大美女』と呼ばれる類まれなレベルの美少女が在籍している。
三大美女は3つの学年からそれぞれ選出されており、主に学園の裏サイトや有志による投票によって決められているらしい。
そして……僕の学年。つまりは2年生から選ばれたのが彼女――月白真雪である。
月白さんは黒髪ロング。いかにも清純そうな外見の美少女である。
胸元はやや小ぶりであるもののタイツに包まれた脚は長くて、スタイルは良い。
男性が苦手なのか、クラスの男子ともあまり会話をすることはなく、恋人など特別親しいと呼べる相手はいない。
そんな月白さんであったが……つい最近になって、とある事情から僕との交流が増えていた。
『交流』というと前向きな表現に聞こえるのだが……実際はそんなに良い関係ではない。
僕らの関係を端的に表すのであれば『護衛』と『お嬢様』。
月城さんはとある事情で狙われており、僕は彼女を守るために行動を共にしているのである。
◇ ◇ ◇
「ふんっ!」
「グワアッ!?」
僕が放ったパンチが敵の胴体に突き刺さる。
レバーを正確に射貫く打撃により、相手の巨体が地面に沈む。
僕が倒した敵は人間ではない。
人間の胴体とオオカミの頭部を持った怪物……いわゆる『狼男』と呼ばれるモンスターである。
僕の周囲には数体の狼男が転がっており、まさに戦闘を終えた直後だった。
僕がいるのは学校の通学路にある小さな空き地である。
1日の授業が終わり、帰宅する最中に襲撃を受けてしまった。
狼男の目的は僕ではない。少し離れた場所でこちらを見守っている少女――月白真雪が彼らに狙われているのだ。
「今日も襲撃があったみたいだね。ピー〇姫も真っ青のヒロインぷりじゃないか」
「はい……ご迷惑をお掛けしております、八雲君」
冗談めかした言葉に、月白さんが申し訳なさそうに顔を伏せる。
「責めるつもりで言ったわけじゃないよ。それにしても……敵も随分としつこいね。僕がボディーガードについてから、襲撃はもう3回目になるかな?」
「はい……」
月白さんがコクンと頷く。
整った顔立ちの月白さんであったが、襲撃直後ということもあって表情は硬いものである。
僕は少し前から月白さんの護衛についていた。
きっかけとなったのは裏世界からの悪魔軍襲撃直後のこと。
いつものように学校に通学していた僕は、偶然にも月白さんが襲われている現場に遭遇した。
もちろん、月白さんを助けに入って狼男をやっつけた僕であったが……これにより彼女が巻き込まれている事件について知ることとなったのである。
「本当に、こんなことに巻き込んでしまってごめんなさい……八雲君は無関係なのに、ただのクラスメイトというだけで守ってもらって……」
「気にしなくていいよ。僕が君を助けるのは君のためじゃない。僕の勝手な都合だからさ」
「都合といいますと……どうして私を守ってくれるんですか?」
「んー……どうしてだろうねえ」
僕はあいまいに笑って誤魔化した。
どうして月白さんを助けるのかと聞かれると……僕が彼女を守るのは、そういう自分が誇らしいから。
もっと言えば、お隣の四姉妹に胸を張れるような人間でいたいからである。
日下部さん家の四姉妹は僕のことを大切に思ってくれていた。
だから、僕は彼女達に想われる価値のある人間でありたいと日頃から願っているのだ。
ここで困っている月白さんを見捨てて、明日どんな顔で4人と顔を合わせればいいのだ。
これからも胸を張って彼女達と一緒にいたいから……それが月白さんを助ける理由だった。
「命を懸けるには十分な理由だよね。それにしても……」
僕は地面に倒れている狼男を見下ろした。
気を失っている狼男はご丁寧に黒いスーツを身に纏っており、映画撮影のメイクのようである。
もちろん、それが飾りでないことはわかっていた。
彼らの身体能力は人間を超えており、僕が元・勇者でなければ対処不可能だったに違いない。
「男は狼というけれど……リアルに変身しなくてもいいのにね。月白さんもこんな奴らに狙われるとか大変だよね」
「……仕方がありません。私はそういう生まれですから」
月白さんは唇を噛んで辛そうな表情になる。
美少女というのはどんな顔をしていても絵になるものだと感心しつつ、僕は倒れている狼男を爪先で小突く。
「生まれは選べないからしょうがないんじゃないか? それにしても……驚いたよ」
僕は狼男に向けていた顔を上げて、月白さんに向き直る。
両手を広げ、まるでタチの悪いジョークでもうそぶくように肩をすくめた。
「まさか月白さんが『吸血鬼』だなんて思わなかったよ。本当に対立しているんだね、吸血鬼と狼男って」
三大美女は3つの学年からそれぞれ選出されており、主に学園の裏サイトや有志による投票によって決められているらしい。
そして……僕の学年。つまりは2年生から選ばれたのが彼女――月白真雪である。
月白さんは黒髪ロング。いかにも清純そうな外見の美少女である。
胸元はやや小ぶりであるもののタイツに包まれた脚は長くて、スタイルは良い。
男性が苦手なのか、クラスの男子ともあまり会話をすることはなく、恋人など特別親しいと呼べる相手はいない。
そんな月白さんであったが……つい最近になって、とある事情から僕との交流が増えていた。
『交流』というと前向きな表現に聞こえるのだが……実際はそんなに良い関係ではない。
僕らの関係を端的に表すのであれば『護衛』と『お嬢様』。
月城さんはとある事情で狙われており、僕は彼女を守るために行動を共にしているのである。
◇ ◇ ◇
「ふんっ!」
「グワアッ!?」
僕が放ったパンチが敵の胴体に突き刺さる。
レバーを正確に射貫く打撃により、相手の巨体が地面に沈む。
僕が倒した敵は人間ではない。
人間の胴体とオオカミの頭部を持った怪物……いわゆる『狼男』と呼ばれるモンスターである。
僕の周囲には数体の狼男が転がっており、まさに戦闘を終えた直後だった。
僕がいるのは学校の通学路にある小さな空き地である。
1日の授業が終わり、帰宅する最中に襲撃を受けてしまった。
狼男の目的は僕ではない。少し離れた場所でこちらを見守っている少女――月白真雪が彼らに狙われているのだ。
「今日も襲撃があったみたいだね。ピー〇姫も真っ青のヒロインぷりじゃないか」
「はい……ご迷惑をお掛けしております、八雲君」
冗談めかした言葉に、月白さんが申し訳なさそうに顔を伏せる。
「責めるつもりで言ったわけじゃないよ。それにしても……敵も随分としつこいね。僕がボディーガードについてから、襲撃はもう3回目になるかな?」
「はい……」
月白さんがコクンと頷く。
整った顔立ちの月白さんであったが、襲撃直後ということもあって表情は硬いものである。
僕は少し前から月白さんの護衛についていた。
きっかけとなったのは裏世界からの悪魔軍襲撃直後のこと。
いつものように学校に通学していた僕は、偶然にも月白さんが襲われている現場に遭遇した。
もちろん、月白さんを助けに入って狼男をやっつけた僕であったが……これにより彼女が巻き込まれている事件について知ることとなったのである。
「本当に、こんなことに巻き込んでしまってごめんなさい……八雲君は無関係なのに、ただのクラスメイトというだけで守ってもらって……」
「気にしなくていいよ。僕が君を助けるのは君のためじゃない。僕の勝手な都合だからさ」
「都合といいますと……どうして私を守ってくれるんですか?」
「んー……どうしてだろうねえ」
僕はあいまいに笑って誤魔化した。
どうして月白さんを助けるのかと聞かれると……僕が彼女を守るのは、そういう自分が誇らしいから。
もっと言えば、お隣の四姉妹に胸を張れるような人間でいたいからである。
日下部さん家の四姉妹は僕のことを大切に思ってくれていた。
だから、僕は彼女達に想われる価値のある人間でありたいと日頃から願っているのだ。
ここで困っている月白さんを見捨てて、明日どんな顔で4人と顔を合わせればいいのだ。
これからも胸を張って彼女達と一緒にいたいから……それが月白さんを助ける理由だった。
「命を懸けるには十分な理由だよね。それにしても……」
僕は地面に倒れている狼男を見下ろした。
気を失っている狼男はご丁寧に黒いスーツを身に纏っており、映画撮影のメイクのようである。
もちろん、それが飾りでないことはわかっていた。
彼らの身体能力は人間を超えており、僕が元・勇者でなければ対処不可能だったに違いない。
「男は狼というけれど……リアルに変身しなくてもいいのにね。月白さんもこんな奴らに狙われるとか大変だよね」
「……仕方がありません。私はそういう生まれですから」
月白さんは唇を噛んで辛そうな表情になる。
美少女というのはどんな顔をしていても絵になるものだと感心しつつ、僕は倒れている狼男を爪先で小突く。
「生まれは選べないからしょうがないんじゃないか? それにしても……驚いたよ」
僕は狼男に向けていた顔を上げて、月白さんに向き直る。
両手を広げ、まるでタチの悪いジョークでもうそぶくように肩をすくめた。
「まさか月白さんが『吸血鬼』だなんて思わなかったよ。本当に対立しているんだね、吸血鬼と狼男って」
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