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第一章 日下部さん家の四姉妹
49.日下部さん家の四姉妹⑥
しおりを挟む「みんな、集まれ! 女神の加護――『節制の巨鎧』!」
悪魔王が『創造』の超能力を使って生み出した刃をぶつけてくる。
雨のように降りそそいでくる無数の斬撃を防ぐため、僕は女神の加護を発動させた。
現れたのは漆黒の全身鎧。西洋甲冑のようなそれが瞬く間にバラバラに分解して数十個の部品となり、僕達の周囲をグルグルと旋回する。
『ムウッ!?』
黒く高速回転する鎧の部品がバリアーとなり、襲いかかる刃を防御する。
絶対防御。ありとあらゆる攻撃を完全に防ぐことができるのが『節制の巨鎧』の能力だった。
「とはいえ……能力の発動中は動くことができず、中から外にも攻撃はできない。おまけに護るべき誰かが傍にいなければ発動すらできない。使い勝手が悪くて、あんまり役に立つ能力じゃないんだけどね」
どうして、女神の加護はこんなものばかりなのだろう。
能力を底上げするために制約を設けていることは女神から聞いているが……もっと汎用性の高い力はなかったのだろうか?
『生意気なことを……どうやら、『破壊』の異能者もやって来たようだな! 器は貴様に執着していたようだが、我にとっては無用の存在よ! すぐにでも始末してやるから覚悟しておくがいい!』
「何よ、あのでっかいお化けは。化け物に知り合いはいないんだけど?」
悪魔王に話しかけられ、風夏が怪訝そうに眉根を寄せた。
どうやら、風夏はアレが自分の宿敵であった男の成れの果てであるとは気づいていないらしい。あえて説明する必要もなかったが。
「華音姉さん、飛鳥姉、風夏、美月ちゃん……みんな、僕の話を聞いて欲しい」
僕が4人の名前を順番に読むと、姉妹がそろって僕を見る。
彼女達の顔には様々な表情が浮かんでいた。怒り、苛立ち、疑問、戸惑い、恐怖……そして、愛情と信頼。
こんな状況であっても、4人が僕のことを家族として受け入れ、信じてくれていることが表情だけで伝わってくる。
だから……僕もそれに応えるべきだ。
家族を守るために全身全霊を尽くさなくてはならない。
「みんな、色々と訊きたいことはあると思う。わからないことはあると思う。だけど……今は全部を説明している時間はない。だから、僕が伝えたいことは2つだけ」
スウッと息を吸って、4人に向かってお願いする。
「僕を信じて欲しい。そして、力を貸してくれ!」
「もちろんですよー」
「オッケー、わかった」
「フンッ……しょうがないわね」
「お兄様がお望みとあらば」
僕のお願いにノータイムで了承が返ってきた。
訳のわからない状況だというのに、何の説明もなしに自分のことを信じてくれる。
涙が出そうになるほどの嬉しさを堪えて……僕は異形の姿となった悪魔王を見上げた。
金色の獅子は怒りの形相でこちらを見下ろしており、頭上に開いた穴からはなおも悪魔の軍勢を吐き出し続けている。まるで、この世の終わりのような光景。黙示録のような状況だった。
この状況を確実に打開できる能力――『信仰の刑台』は風夏に破壊されている。時間が経てば自動修復されるだろうが、今は使うことができないだろう。
「だけど……今は家族がいる。皆がいてくれれば、こんな絶望的な状況だって乗り越えられる!」
僕は新たな女神の加護を発動させた。
頭上に天使の輪のような円環が出現して、虹色の光を明滅させる。
「女神の加護――『智慧の王冠』!」
『信仰の刑台』とは違う理由で使うあまり使ってこなかった加護を発動させると……日下部家の四姉妹との間に家族の絆とは異なる形で『リンク』のようなものが形成された。
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