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第一章 日下部さん家の四姉妹
41.四女はエッチな悪魔ちゃん⑤
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5限目の算数の授業が終わり、6限目の授業は理科である。
合間の休み時間に美月ちゃんがやってきてポコポコと胸を叩いてきて、またしてもクラスメイトの注目を集めてしまったが……ともあれ、6限目の授業は滞りなく行われた。
6限目でも美月ちゃんが積極的に挙手をしていたが、さすがに慣れたのか、先ほどほど驚かれることはない。無事に授業は終了して放課後を迎えることになった。
「さて……それじゃあ、僕達は帰ろうか?」
「ん……」
授業が終わり、ランドセルを背負った美月ちゃんが僕のところにやってくる。
美月ちゃんはいつも通りにぼんやりとした表情をしているが……瞳が何かを訴えるようにこちらを見つめていた。
「頑張ったね。偉いぞ」
僕はとりあえず、美月ちゃんの白い髪をポンポンと撫でてあげる。
「ん……うれしい!」
どうやら正解だったらしい。美月ちゃんは誇らしげに胸を張り、僕の腰のあたりに抱き着いてきた。
この後、PTAによる話し合いが行われる予定だ。
とはいえ、僕は高校生で保護者代理。話し合いには不参加である。それは華音姉さんも了解しており、事前に学校側にも伝えてあった。
「日下部さん、また来週ね」
「さよなら」
クラスの女子が手を振って挨拶をしてくる。美月ちゃんは小さく顎を引く。
「美月ちゃん、手を振ってあげたら?」
「ん……ばいばい」
僕が言うと、美月ちゃんが小さく手を振り返す。
「はうっ⁉」
挨拶を返された少女が胸を射抜かれたように身体をのけぞらせる。
その顔は真っ赤になっていて、まるで憧れていた男性アイドルに笑顔を向けられたようだった。
「か、可愛い……美月ちゃんが……」
「わ、私にも手を振って! ばいばい!」
「私も、私にもっ!」
「ばいばい」
「「「「「はあうううっ!!」」」」」
美月に手を振られた小学生女子らがそろって悶絶する。
いや、親御さんもいる前でどんなリアクションをするのだ、この子達は。
「まあ……気持ちはわかるんだけどね」
美月ちゃんは非常に表情が乏しい人形のような女の子だ。
しかし、その顔はとんでもなく整っており、一度見たら忘れられなくなってしまうような美幼女である。
おそらく、このクラスメイトの女の子らも美月に対して憧れや好意を抱いていたのだろう。感情表現の薄い美月ちゃんにどう付き合ってよいかわからず、戸惑っていたのかもしれない。
「……これがきっかけで仲良くなれるといいね。友達は何人いても困らないよ。美月ちゃん」
「ん、わかった」
コクリと頷き、美月ちゃんが同意を返してきた。
いつになく表現豊かになっているであろう美月の姿を見て、女子に続いて男子らまで身体を乗り出してくる。
「お、俺も俺も! 日下部、俺にも手を振ってくれ!」
「僕もっ! 日下部さん!」
「今度一緒に遊ぼうぜ! ウチに来てゲームやろう!」
「アッチには応える必要なし。さっさと帰るよ」
「「「「「ああっ!?」」」」」
馴れ馴れしく声をかけてくる男子らから隠すようにして、美月ちゃんを教室から連れ出した。
「美月ちゃん、男の子とはそんなに仲良くしなくていいからね? 嫌われない程度に付き合っておくといい。間違っても、家とかにはいかないように。お菓子やゲームで誘われても付いていっちゃだめだぞ?」
「わかった」
悪い虫がつかないようにしっかりと言い聞かせて、さっさと昇降口に向かって歩いていこうとする。
だが……そんな僕達に声をかけてくる人間がいた。男子生徒であったのならば無視してやるところだが、それは担任の女性教師だった。
「美月さんの保護者さん、ちょっとよろしいでしょうか?」
「ん……何ですか?」
「今日はわざわざ来ていただいてありがとうございます。高校の授業を休んで駆けつけてくれたそうですね?」
20代前半ほどの年齢の若い女性教師は親しげな表情でお礼を言ってきた。
「別に構いませんよ。家族として当然のことですから」
この女性教師も日下部家の家庭事情は知っているはず。僕が実の兄でないことも知っているだろうが、あえてそう言っておく。
女性教師もそれを否定することなく穏やかな表情で頷きを返してくる。
「今日はいつもよりも表情が豊かな美月さんが見れて、本当に良かったです。色々あって大変であるとは聞いていますが……あなたのような素敵なお兄さんが美月さんの傍にいてくれて、本当に良かったと思います」
「…………」
『色々』というのは両親の死のことを言っているのだろう。
ハイキング中の事故によって亡くなった両親。2人に抱きかかえられ、1人だけ生き残ってしまった美月ちゃん。この子が表情を失くしてしまった経緯について、この女性教師も知っているのだ。
「何かあったら、いつでも相談してください。学校に連絡していただいてもかまいませんし、個人的に電話をいただいてもかまいませんので」
「ありがとうございます……」
僕は女性教師が差し出してきた名刺を受け取った。
サラリーマンじゃなくても名刺って持ってるんだなあ……などと見当違いなことを考えつつ、制服のポケットに小さな紙を押し込んだ。
女性教師は軽く会釈をして、僕達の前から去っていった。
「……安心したのはこっちですよ」
どうやら、美月ちゃんの担任教師は善良で信頼できる人間のようだ。
僕は安堵の息をついて、美月ちゃんの手を握りしめた。
合間の休み時間に美月ちゃんがやってきてポコポコと胸を叩いてきて、またしてもクラスメイトの注目を集めてしまったが……ともあれ、6限目の授業は滞りなく行われた。
6限目でも美月ちゃんが積極的に挙手をしていたが、さすがに慣れたのか、先ほどほど驚かれることはない。無事に授業は終了して放課後を迎えることになった。
「さて……それじゃあ、僕達は帰ろうか?」
「ん……」
授業が終わり、ランドセルを背負った美月ちゃんが僕のところにやってくる。
美月ちゃんはいつも通りにぼんやりとした表情をしているが……瞳が何かを訴えるようにこちらを見つめていた。
「頑張ったね。偉いぞ」
僕はとりあえず、美月ちゃんの白い髪をポンポンと撫でてあげる。
「ん……うれしい!」
どうやら正解だったらしい。美月ちゃんは誇らしげに胸を張り、僕の腰のあたりに抱き着いてきた。
この後、PTAによる話し合いが行われる予定だ。
とはいえ、僕は高校生で保護者代理。話し合いには不参加である。それは華音姉さんも了解しており、事前に学校側にも伝えてあった。
「日下部さん、また来週ね」
「さよなら」
クラスの女子が手を振って挨拶をしてくる。美月ちゃんは小さく顎を引く。
「美月ちゃん、手を振ってあげたら?」
「ん……ばいばい」
僕が言うと、美月ちゃんが小さく手を振り返す。
「はうっ⁉」
挨拶を返された少女が胸を射抜かれたように身体をのけぞらせる。
その顔は真っ赤になっていて、まるで憧れていた男性アイドルに笑顔を向けられたようだった。
「か、可愛い……美月ちゃんが……」
「わ、私にも手を振って! ばいばい!」
「私も、私にもっ!」
「ばいばい」
「「「「「はあうううっ!!」」」」」
美月に手を振られた小学生女子らがそろって悶絶する。
いや、親御さんもいる前でどんなリアクションをするのだ、この子達は。
「まあ……気持ちはわかるんだけどね」
美月ちゃんは非常に表情が乏しい人形のような女の子だ。
しかし、その顔はとんでもなく整っており、一度見たら忘れられなくなってしまうような美幼女である。
おそらく、このクラスメイトの女の子らも美月に対して憧れや好意を抱いていたのだろう。感情表現の薄い美月ちゃんにどう付き合ってよいかわからず、戸惑っていたのかもしれない。
「……これがきっかけで仲良くなれるといいね。友達は何人いても困らないよ。美月ちゃん」
「ん、わかった」
コクリと頷き、美月ちゃんが同意を返してきた。
いつになく表現豊かになっているであろう美月の姿を見て、女子に続いて男子らまで身体を乗り出してくる。
「お、俺も俺も! 日下部、俺にも手を振ってくれ!」
「僕もっ! 日下部さん!」
「今度一緒に遊ぼうぜ! ウチに来てゲームやろう!」
「アッチには応える必要なし。さっさと帰るよ」
「「「「「ああっ!?」」」」」
馴れ馴れしく声をかけてくる男子らから隠すようにして、美月ちゃんを教室から連れ出した。
「美月ちゃん、男の子とはそんなに仲良くしなくていいからね? 嫌われない程度に付き合っておくといい。間違っても、家とかにはいかないように。お菓子やゲームで誘われても付いていっちゃだめだぞ?」
「わかった」
悪い虫がつかないようにしっかりと言い聞かせて、さっさと昇降口に向かって歩いていこうとする。
だが……そんな僕達に声をかけてくる人間がいた。男子生徒であったのならば無視してやるところだが、それは担任の女性教師だった。
「美月さんの保護者さん、ちょっとよろしいでしょうか?」
「ん……何ですか?」
「今日はわざわざ来ていただいてありがとうございます。高校の授業を休んで駆けつけてくれたそうですね?」
20代前半ほどの年齢の若い女性教師は親しげな表情でお礼を言ってきた。
「別に構いませんよ。家族として当然のことですから」
この女性教師も日下部家の家庭事情は知っているはず。僕が実の兄でないことも知っているだろうが、あえてそう言っておく。
女性教師もそれを否定することなく穏やかな表情で頷きを返してくる。
「今日はいつもよりも表情が豊かな美月さんが見れて、本当に良かったです。色々あって大変であるとは聞いていますが……あなたのような素敵なお兄さんが美月さんの傍にいてくれて、本当に良かったと思います」
「…………」
『色々』というのは両親の死のことを言っているのだろう。
ハイキング中の事故によって亡くなった両親。2人に抱きかかえられ、1人だけ生き残ってしまった美月ちゃん。この子が表情を失くしてしまった経緯について、この女性教師も知っているのだ。
「何かあったら、いつでも相談してください。学校に連絡していただいてもかまいませんし、個人的に電話をいただいてもかまいませんので」
「ありがとうございます……」
僕は女性教師が差し出してきた名刺を受け取った。
サラリーマンじゃなくても名刺って持ってるんだなあ……などと見当違いなことを考えつつ、制服のポケットに小さな紙を押し込んだ。
女性教師は軽く会釈をして、僕達の前から去っていった。
「……安心したのはこっちですよ」
どうやら、美月ちゃんの担任教師は善良で信頼できる人間のようだ。
僕は安堵の息をついて、美月ちゃんの手を握りしめた。
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