11 / 103
第一章 日下部さん家の四姉妹
10.三女は可愛いサイキッカー②
しおりを挟む
「なんかさー、今日は月白さん、ずっとお前のこと見てなかったか?」
放課後の教室。クラスでも仲が良かった男子の1人にそんなことを言われてしまった。
「そんなことあるわけないだろ!? 僕達は今日が初対面だぞ! 昨晩、会ったりしてないぞ!」
「初対面なのか!? 同じクラスになって1ヵ月以上も経ってるぞ!? っていうか、昨晩ってなんだ!?」
思わず声を荒げてしまった僕に、友人──伊達という名字の男子が目を丸くして驚いている。
しまった。
どうやら見当違いの反論をしてしまったようである。
僕はコホンと咳払いをして、改めて伊達に向き直った。
「そりゃあ、アレだよ。隣の席なんだから視線が合うのは不自然じゃないだろ? うん、隣の席なんだからな」
「いや、そりゃあわかるけどさ……月白さんって、一緒のクラスになってから男子とはほとんど話したりしてねーじゃん? 視線も合わせないようにしているから、男が苦手なんだろうなーって思ってたんだけど……今日はやたらとお前の方を見てる気がするんだよなー」
「そ、そうなの……?」
記憶を思い返してみるが……やはり月白さんと話したりした記憶はない。
僕の記憶力が悪かったわけではなく、本当に関わりが薄かったから覚えていなかったのだろう。
すでに時間が放課後になっているため、教室の中にいる生徒の数も疎らになっていた。帰宅したのか、それとも部活や委員会活動にでも行ったのか。月白さんもまた、すでに教室から出て行っている。
「……僕ももう帰るよ。腹減ったから」
「あ、おい!」
「また明日なー」
これ以上、会話をしていたらボロが出てしまうかもしれない。
僕は友人との会話を途中で切り上げて、カバンを掴んでそそくさと教室から出て行った。
学校の敷地から出て家路につく。
スマホを見ると華音姉さんからMINEのメッセージが届いていた。
『今日の夕飯はごちそうを作りますから早く帰ってきてね(はあと)』
「……まるで新妻からのメールだな」
華音姉さんが僕のことを溺愛しているのはわかっているが……こんな思わせぶりなメッセージをもらうと、まるで恋愛感情を向けられているのではないかと勘違いしてしまいそうである。
「あんな可愛い奥さんがいたら、きっと残業もせずに真っすぐ家に帰るんだろうな。兄貴だってそうだったし」
兄の玲一はごく普通のサラリーマンだったが、残業や休日出勤もほとんどすることなく、定時に家に帰ってきていた。
華音姉さんのようなおっぱいの大きい美人さんが家で待っているのだから、気持ちはとても理解できる。
弟としてはそんな夫婦のいちゃつきぶりは目に毒というか、若干鬱陶しくあったのだが……いなくなったらなったで寂しいものである。
兄が死んでからもう1年になる。
華音姉さんにも随分と明るさが戻ってきているし、兄の死を乗り越えつつあるということだろう。
「お? アレってもしかして、風夏か?」
考え事をしながら通学路を歩いていると、前方に見慣れた少女の背中を見かけた。
中学の制服を着た女子生徒……その姿を間違えるわけもない、日下部家の三女である風夏である。
かつて僕も通っていた中学に通っている風夏が道路の片隅を歩いていた。
どうやら、風夏も学校の帰り道のようである。
どうせ向かって行く方向は同じなのだ。一緒に帰るべく風夏に声をかけようと右手を上げるが……そこで予想外の事態が生じた。
歩いていた風夏の隣に車が停まった。黒色のセダンである。助手席の窓から見慣れない男性が顔を出して風夏に話しかける。
「~~~~~~~~~~」
「~~~~~~~~~~」
風夏と男が2、3会話を交わしたかと思うと、何故か風夏が車の後部座席に乗り込んだのである。
「ちょ……え、ええっ!?」
驚く僕の視線の先で、風夏を乗せたセダンが走り去ってしまう。
僕は呆然とどこかに走っていく車を見送っていたが……やがて慌てて車を追いかけた。
「いやいやいやいやっ!? 誰だ、アイツ! 風夏を何処に連れていくつもりだ!?」
風夏は自分の意思で車に乗っていた。
無理やりに車に連れ込まれたというわけではないが……それでも、妙に嫌な予感がする。
助手席に乗っていた中年男性に見覚えはない。多分ではあるが、日下部家の関係者ではないと思う。
考えられる可能性としては、友人の父親とかで「家まで送ってあげる」とか言われたのかもしれないが。
「いや……違うな。向かった方向が家の方向じゃない……!」
黒のセダン車が曲がっていったのは日下部家とはまるで別の方角だった。
家に帰宅しようとしているわけではなく、どこか全然別の場所に行こうとしているのだ。
「誘拐とか事件性があると決まったわけではないけど……放っておくわけにはいかないだろ!」
杞憂であったならそれでいい。心配しすぎ、過保護なだけだったというのならば、それでもいい。
だが……万が一にでも風夏に、妹のように可愛がっている少女に危険がおよぶ可能性があるのなら、放置することなどできるわけがない。
兄貴として、風夏を守るために全力を尽くさなくてはいけない!
曲がり角を消えていった車を追いかけると、すでに大通りに出てしまったらしくスピードを上げて離れていく。
「……血のつながらない兄を舐めるなよ。お兄ちゃんパワーを見せてやる!」
僕は強く地面を蹴り、猛スピードで風夏を乗せた車を追いかけるのだった。
放課後の教室。クラスでも仲が良かった男子の1人にそんなことを言われてしまった。
「そんなことあるわけないだろ!? 僕達は今日が初対面だぞ! 昨晩、会ったりしてないぞ!」
「初対面なのか!? 同じクラスになって1ヵ月以上も経ってるぞ!? っていうか、昨晩ってなんだ!?」
思わず声を荒げてしまった僕に、友人──伊達という名字の男子が目を丸くして驚いている。
しまった。
どうやら見当違いの反論をしてしまったようである。
僕はコホンと咳払いをして、改めて伊達に向き直った。
「そりゃあ、アレだよ。隣の席なんだから視線が合うのは不自然じゃないだろ? うん、隣の席なんだからな」
「いや、そりゃあわかるけどさ……月白さんって、一緒のクラスになってから男子とはほとんど話したりしてねーじゃん? 視線も合わせないようにしているから、男が苦手なんだろうなーって思ってたんだけど……今日はやたらとお前の方を見てる気がするんだよなー」
「そ、そうなの……?」
記憶を思い返してみるが……やはり月白さんと話したりした記憶はない。
僕の記憶力が悪かったわけではなく、本当に関わりが薄かったから覚えていなかったのだろう。
すでに時間が放課後になっているため、教室の中にいる生徒の数も疎らになっていた。帰宅したのか、それとも部活や委員会活動にでも行ったのか。月白さんもまた、すでに教室から出て行っている。
「……僕ももう帰るよ。腹減ったから」
「あ、おい!」
「また明日なー」
これ以上、会話をしていたらボロが出てしまうかもしれない。
僕は友人との会話を途中で切り上げて、カバンを掴んでそそくさと教室から出て行った。
学校の敷地から出て家路につく。
スマホを見ると華音姉さんからMINEのメッセージが届いていた。
『今日の夕飯はごちそうを作りますから早く帰ってきてね(はあと)』
「……まるで新妻からのメールだな」
華音姉さんが僕のことを溺愛しているのはわかっているが……こんな思わせぶりなメッセージをもらうと、まるで恋愛感情を向けられているのではないかと勘違いしてしまいそうである。
「あんな可愛い奥さんがいたら、きっと残業もせずに真っすぐ家に帰るんだろうな。兄貴だってそうだったし」
兄の玲一はごく普通のサラリーマンだったが、残業や休日出勤もほとんどすることなく、定時に家に帰ってきていた。
華音姉さんのようなおっぱいの大きい美人さんが家で待っているのだから、気持ちはとても理解できる。
弟としてはそんな夫婦のいちゃつきぶりは目に毒というか、若干鬱陶しくあったのだが……いなくなったらなったで寂しいものである。
兄が死んでからもう1年になる。
華音姉さんにも随分と明るさが戻ってきているし、兄の死を乗り越えつつあるということだろう。
「お? アレってもしかして、風夏か?」
考え事をしながら通学路を歩いていると、前方に見慣れた少女の背中を見かけた。
中学の制服を着た女子生徒……その姿を間違えるわけもない、日下部家の三女である風夏である。
かつて僕も通っていた中学に通っている風夏が道路の片隅を歩いていた。
どうやら、風夏も学校の帰り道のようである。
どうせ向かって行く方向は同じなのだ。一緒に帰るべく風夏に声をかけようと右手を上げるが……そこで予想外の事態が生じた。
歩いていた風夏の隣に車が停まった。黒色のセダンである。助手席の窓から見慣れない男性が顔を出して風夏に話しかける。
「~~~~~~~~~~」
「~~~~~~~~~~」
風夏と男が2、3会話を交わしたかと思うと、何故か風夏が車の後部座席に乗り込んだのである。
「ちょ……え、ええっ!?」
驚く僕の視線の先で、風夏を乗せたセダンが走り去ってしまう。
僕は呆然とどこかに走っていく車を見送っていたが……やがて慌てて車を追いかけた。
「いやいやいやいやっ!? 誰だ、アイツ! 風夏を何処に連れていくつもりだ!?」
風夏は自分の意思で車に乗っていた。
無理やりに車に連れ込まれたというわけではないが……それでも、妙に嫌な予感がする。
助手席に乗っていた中年男性に見覚えはない。多分ではあるが、日下部家の関係者ではないと思う。
考えられる可能性としては、友人の父親とかで「家まで送ってあげる」とか言われたのかもしれないが。
「いや……違うな。向かった方向が家の方向じゃない……!」
黒のセダン車が曲がっていったのは日下部家とはまるで別の方角だった。
家に帰宅しようとしているわけではなく、どこか全然別の場所に行こうとしているのだ。
「誘拐とか事件性があると決まったわけではないけど……放っておくわけにはいかないだろ!」
杞憂であったならそれでいい。心配しすぎ、過保護なだけだったというのならば、それでもいい。
だが……万が一にでも風夏に、妹のように可愛がっている少女に危険がおよぶ可能性があるのなら、放置することなどできるわけがない。
兄貴として、風夏を守るために全力を尽くさなくてはいけない!
曲がり角を消えていった車を追いかけると、すでに大通りに出てしまったらしくスピードを上げて離れていく。
「……血のつながらない兄を舐めるなよ。お兄ちゃんパワーを見せてやる!」
僕は強く地面を蹴り、猛スピードで風夏を乗せた車を追いかけるのだった。
258
お気に入りに追加
762
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
異世界召喚されたら無能と言われ追い出されました。~この世界は俺にとってイージーモードでした~
WING/空埼 裕@書籍発売中
ファンタジー
1~8巻好評発売中です!
※2022年7月12日に本編は完結しました。
◇ ◇ ◇
ある日突然、クラスまるごと異世界に勇者召喚された高校生、結城晴人。
ステータスを確認したところ、勇者に与えられる特典のギフトどころか、勇者の称号すらも無いことが判明する。
晴人たちを召喚した王女は「無能がいては足手纏いになる」と、彼のことを追い出してしまった。
しかも街を出て早々、王女が差し向けた騎士によって、晴人は殺されかける。
胸を刺され意識を失った彼は、気がつくと神様の前にいた。
そしてギフトを与え忘れたお詫びとして、望むスキルを作れるスキルをはじめとしたチート能力を手に入れるのであった──
ハードモードな異世界生活も、やりすぎなくらいスキルを作って一発逆転イージーモード!?
前代未聞の難易度激甘ファンタジー、開幕!
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
髪を切った俺が『読者モデル』の表紙を飾った結果がコチラです。
昼寝部
キャラ文芸
天才子役として活躍した俺、夏目凛は、母親の死によって芸能界を引退した。
その数年後。俺は『読者モデル』の代役をお願いされ、妹のために今回だけ引き受けることにした。
すると発売された『読者モデル』の表紙が俺の写真だった。
「………え?なんで俺が『読モ』の表紙を飾ってんだ?」
これは、色々あって芸能界に復帰することになった俺が、世の女性たちを虜にする物語。
※『小説家になろう』にてリメイク版を投稿しております。そちらも読んでいただけると嬉しいです。

~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる
僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。
スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。
だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。
それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。
色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。
しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。
ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。
一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。
土曜日以外は毎日投稿してます。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する
カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、
23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。
急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。
完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。
そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。
最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。
すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。
どうやら本当にレベルアップしている模様。
「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」
最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。
他サイトにも掲載しています。

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす
黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。
4年前に書いたものをリライトして載せてみます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる