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第34話 潰れろ潰れろ潰れろ
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「ウワアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」
変わり果てた仲間の姿を見て、残っていたギャングが絶叫した。
まるでその悲鳴に答えるかのように、ドサドサと連続して重い音が響く。
音の主はかつてギャングであった男達の残骸。
全身が捻じれてグニャグニャになった大量の死体である。いずれも首の骨が折れて死んでいた。
「ば、馬鹿な!」
「嘘だろ……コイツらに何があったんだよ!」
「どうやったらこんな死に方を……逃げろ! 逃げるぞ!」
さすがに、この状況でまだウィルフレッドの暗殺を実行しようとする者達はいなかった。
ギャング達は散り散りになって、その場から逃げようとする。
「ハア……ハア……チクショウ……いったい、何が……!」
別々の方向に逃げていくギャング。
その一人が路地裏に陰に身を隠れて、息を潜める。
走ったせいで荒くなってしまった呼吸を整えながら、自分が置かれている状況を考える。
(俺達は誰に……いや、何に襲われているんだ? 人が消えたり、身体が捻じれて出てきたり……どう考えても、人間業じゃねえだろ……!)
もしも相手が王宮の兵士や騎士であったのなら……あるいは、魔法使いであったのなら、理解できなくはなかった。
だが……こんなことができる人間は知らない。
荒事に慣れて、それなりに戦闘の経験のあるギャング達でさえ、仲間達がどんなふうに殺されたのか皆目見当もつかなかった。
(まるで……そう、見えない怪物に連れ去られたかのような……)
次の瞬間、背後でドサリと音が鳴った。
「ヒッ……!」
慌てて振り返ると、路地裏の奥に何かが転がっている。
暗くて見えづらいが……すぐにわかった。
それは死体だった。首が捻じれて顔が背中側を向いてしまっている。
自分とは別方向に逃げたはずの仲間の末路に、男がその場に尻もちをついた。
「う……嘘だろ……こんなの、悪夢だ……!」
「悪夢……言い得て妙な表現ですね」
「ヒエッ!?」
男が飛び跳ねる。
再び、背後を見ると……手を伸ばせば届くほどの距離に黒い僧服の男性が立っている。
藍色の髪をした男性。服装は神官のそれであったが、身にまとっている雰囲気はとてつもなく邪悪。
まるで人ではない何かが人間の形をとっているようだった。
「それにしても……この世界の人間は本当に呪術について無抵抗なのですね。王宮にはそれなりに呪いが蔓延っていたようですが……こんなに簡単に狩れるとは」
「な、何を言ってるんだ……テメエ、まさかお前が仲間をこんなふうに……!」
「さてさて、どうでしょうか?」
僧服の男性が愉快そうに笑って、肩を上下させる。
「厳密にいえば私ではありませんが……まあ、肯定と答えておきましょうか」
僧服の男性が嘲笑う。
そして……ツイッと男の背後を指差した。
「ほら……貴方の仲間を殺した者だったら、背後にいますよ?」
「なあっ……!?」
振り返ろうとして……気がついた。
首が回らない。動かない。
首だけではなく、全身が締め付けられるようだ。
「たす、け……やめ……」
「無理ですねえ。貴方は我が女王を怒らせた」
「じょ、おう……」
「ええ、偉大なる『呪いの女王』の逆鱗に触れてしまったのです」
僧服の男性が愉快そうに肩を揺らす。
男の身体が何かに絞めつけられて、バキボキと骨が砕ける音が鳴る。
「あ……」
男のうっ血した眼球に最後に映し出されたのは……黒い蛇だった。
どうして気がつかなかったのだろう……巨大な大蛇が足元から首まで巻き付いており、ネズミを潰すようにして絞めていたのだ。
「ヒャヒャッ」
全身の骨が砕けて絶命したギャングが倒れる。
無惨に成り果てた死体を見下ろして、僧服の男が愉しそうに笑った。
黒い僧服に身を包んだ男……その男の首から上もまた、蛇のようにツルリとした顔になっていたのである。
変わり果てた仲間の姿を見て、残っていたギャングが絶叫した。
まるでその悲鳴に答えるかのように、ドサドサと連続して重い音が響く。
音の主はかつてギャングであった男達の残骸。
全身が捻じれてグニャグニャになった大量の死体である。いずれも首の骨が折れて死んでいた。
「ば、馬鹿な!」
「嘘だろ……コイツらに何があったんだよ!」
「どうやったらこんな死に方を……逃げろ! 逃げるぞ!」
さすがに、この状況でまだウィルフレッドの暗殺を実行しようとする者達はいなかった。
ギャング達は散り散りになって、その場から逃げようとする。
「ハア……ハア……チクショウ……いったい、何が……!」
別々の方向に逃げていくギャング。
その一人が路地裏に陰に身を隠れて、息を潜める。
走ったせいで荒くなってしまった呼吸を整えながら、自分が置かれている状況を考える。
(俺達は誰に……いや、何に襲われているんだ? 人が消えたり、身体が捻じれて出てきたり……どう考えても、人間業じゃねえだろ……!)
もしも相手が王宮の兵士や騎士であったのなら……あるいは、魔法使いであったのなら、理解できなくはなかった。
だが……こんなことができる人間は知らない。
荒事に慣れて、それなりに戦闘の経験のあるギャング達でさえ、仲間達がどんなふうに殺されたのか皆目見当もつかなかった。
(まるで……そう、見えない怪物に連れ去られたかのような……)
次の瞬間、背後でドサリと音が鳴った。
「ヒッ……!」
慌てて振り返ると、路地裏の奥に何かが転がっている。
暗くて見えづらいが……すぐにわかった。
それは死体だった。首が捻じれて顔が背中側を向いてしまっている。
自分とは別方向に逃げたはずの仲間の末路に、男がその場に尻もちをついた。
「う……嘘だろ……こんなの、悪夢だ……!」
「悪夢……言い得て妙な表現ですね」
「ヒエッ!?」
男が飛び跳ねる。
再び、背後を見ると……手を伸ばせば届くほどの距離に黒い僧服の男性が立っている。
藍色の髪をした男性。服装は神官のそれであったが、身にまとっている雰囲気はとてつもなく邪悪。
まるで人ではない何かが人間の形をとっているようだった。
「それにしても……この世界の人間は本当に呪術について無抵抗なのですね。王宮にはそれなりに呪いが蔓延っていたようですが……こんなに簡単に狩れるとは」
「な、何を言ってるんだ……テメエ、まさかお前が仲間をこんなふうに……!」
「さてさて、どうでしょうか?」
僧服の男性が愉快そうに笑って、肩を上下させる。
「厳密にいえば私ではありませんが……まあ、肯定と答えておきましょうか」
僧服の男性が嘲笑う。
そして……ツイッと男の背後を指差した。
「ほら……貴方の仲間を殺した者だったら、背後にいますよ?」
「なあっ……!?」
振り返ろうとして……気がついた。
首が回らない。動かない。
首だけではなく、全身が締め付けられるようだ。
「たす、け……やめ……」
「無理ですねえ。貴方は我が女王を怒らせた」
「じょ、おう……」
「ええ、偉大なる『呪いの女王』の逆鱗に触れてしまったのです」
僧服の男性が愉快そうに肩を揺らす。
男の身体が何かに絞めつけられて、バキボキと骨が砕ける音が鳴る。
「あ……」
男のうっ血した眼球に最後に映し出されたのは……黒い蛇だった。
どうして気がつかなかったのだろう……巨大な大蛇が足元から首まで巻き付いており、ネズミを潰すようにして絞めていたのだ。
「ヒャヒャッ」
全身の骨が砕けて絶命したギャングが倒れる。
無惨に成り果てた死体を見下ろして、僧服の男が愉しそうに笑った。
黒い僧服に身を包んだ男……その男の首から上もまた、蛇のようにツルリとした顔になっていたのである。
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