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第4章 砂漠陰謀編
65.剣聖と毒の剣
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「そうです、僕が黒幕でした。驚いてもらえましたか?」
「驚いたね。ああ、実に驚いた。驚きすぎて、殺しちまいたい気分だ」
「さすがにそれは困りますので、抵抗させていただきますよ。ディンギルさん」
朗らかな笑みで言いながら、ベナミスはこちらの向けて右手をかざした。すると、マッサーブの背中に突き立った剣が独りでに動き出してその手に収まる。
全体があらわになった剣はぼんやりと紫色のモヤが纏わりついていて、タダの剣でないことは明白だった。
「その剣、なにかの魔具か?」
「ええ、その通りです。僕のコレクションの一つで【流延毒蛇】といいます。能力は・・・御覧の通り」
ベナミスが剣先を下に向けて軽く振ると、地面に生えていた草が紫のモヤを浴びて瞬く間に枯れ果てた。
「斬ったものを毒で汚染する力があります。これで斬られたものはまず助からない・・・そう考えていただいても構いませんよ」
俺は舌打ちを一つかまして、倒れているマッサーブへと視線を向ける。
「あ・・・ぎい・・・ひぐっ・・・ひぎああああああ」
マッサーブは辛うじて息があるようだったが、その身体は小刻みに痙攣しており、肌は青紫色に染まっている。
「い、やだ・・・しにたく・・・・・・があっ・・・」
やがて、マッサーブの身体がひときわ大きく跳ねて、それきり動かなくなってしまった。もはや証言台に立たせることは不可能である。
「はっ、殺すなら俺の手で殺したかったんだけどな・・・代わりに、お前を切り刻ませてくれるのかよ?」
「うーん・・・それは困りますねえ? できることなら、僕はディンギルさんと戦いたくはないんですけど」
剣を引き抜いた俺に対して、ベナミスは逆に【流延毒蛇】を鞘に納める。
まるで敵意がないことをアピールするように、両手を広げて友好的な笑みを浮かべた。
「僕は・・・僕達はこれで西方辺境から手を引かせてもらいます。ついでに、一連の戦争で弱体化したスフィンクス家に対しても余計な干渉をしないと誓わせてもらいますよ。ですから、ここで手打ちにしませんか?」
「・・・これだけの事をしでかしておいて、いまさらイモを引くってのは都合がよくないか? 何人が死んだと思っていやがる」
「言うほど死んではいないでしょう? 多くても一万はいっていないはずですよ」
ベナミスが困ったように首を傾げた。
「僕達の計画では、西方辺境は壊滅してその二十倍は死者が出るはずだったんですけど・・・ディンギルさんが介入してきたせいで、大幅に予定が狂ってしまいました。むしろ謝罪していただきたいのはこちらなんですけどね?」
ベナミスの顔に冗談を言っているような雰囲気はない。一万の死者が軽微なものであると、本気で言っているようである。
俺は目を険しくして、虫も殺さぬ顔をした目の前の男をいっそう強く睨みつけた。
「そうか。俺もそれなりの修羅場はくぐっているから、これだけの規模の戦いでそれっぽっちしか死人が出てないってのか奇跡的だと思うぜ・・・・・・それはともかくとして、とりあえず死んどけよ!」
「くっ・・・!?」
俺は目の前の男の脳天めがけて剣を振り下ろした。ベナミスは鞘に入ったままの剣を掲げて受け止める。
「交渉、決裂ですかあ? 残念だなあ」
「一万の人間が死んだのは百歩譲って構わないとして・・・俺の可愛い文通相手を泣かせたのは許せねえよ!」
そのまま力任せに剣を振り切ると、ベナミスは巧みにその一撃を受け流して後方へと飛ぶ。
その軽やかな動きはなかなかに目を見張るものがあり、一応は剣聖の後継者であることをうかがわせるものだった。
「だけど・・・遅えよ!」
「うわあっ!?」
俺は一足飛びで再びその間合いへと踏み込んだ。ベナミスの顔が驚愕に染まる。
ベナミス・セイバールーンという男は確かに剣士として一流である。それを否定するつもりはない。
しかし・・・しょせんは一流止まり。
俺の親父やキャプテン・ドレーク、バロン先輩といった超一流の剣士には遠く及ばない程度の実力だった。
(このまま斬る!)
俺は必殺の意志をもって、若き剣聖へと斬撃を叩きつけた。
「驚いたね。ああ、実に驚いた。驚きすぎて、殺しちまいたい気分だ」
「さすがにそれは困りますので、抵抗させていただきますよ。ディンギルさん」
朗らかな笑みで言いながら、ベナミスはこちらの向けて右手をかざした。すると、マッサーブの背中に突き立った剣が独りでに動き出してその手に収まる。
全体があらわになった剣はぼんやりと紫色のモヤが纏わりついていて、タダの剣でないことは明白だった。
「その剣、なにかの魔具か?」
「ええ、その通りです。僕のコレクションの一つで【流延毒蛇】といいます。能力は・・・御覧の通り」
ベナミスが剣先を下に向けて軽く振ると、地面に生えていた草が紫のモヤを浴びて瞬く間に枯れ果てた。
「斬ったものを毒で汚染する力があります。これで斬られたものはまず助からない・・・そう考えていただいても構いませんよ」
俺は舌打ちを一つかまして、倒れているマッサーブへと視線を向ける。
「あ・・・ぎい・・・ひぐっ・・・ひぎああああああ」
マッサーブは辛うじて息があるようだったが、その身体は小刻みに痙攣しており、肌は青紫色に染まっている。
「い、やだ・・・しにたく・・・・・・があっ・・・」
やがて、マッサーブの身体がひときわ大きく跳ねて、それきり動かなくなってしまった。もはや証言台に立たせることは不可能である。
「はっ、殺すなら俺の手で殺したかったんだけどな・・・代わりに、お前を切り刻ませてくれるのかよ?」
「うーん・・・それは困りますねえ? できることなら、僕はディンギルさんと戦いたくはないんですけど」
剣を引き抜いた俺に対して、ベナミスは逆に【流延毒蛇】を鞘に納める。
まるで敵意がないことをアピールするように、両手を広げて友好的な笑みを浮かべた。
「僕は・・・僕達はこれで西方辺境から手を引かせてもらいます。ついでに、一連の戦争で弱体化したスフィンクス家に対しても余計な干渉をしないと誓わせてもらいますよ。ですから、ここで手打ちにしませんか?」
「・・・これだけの事をしでかしておいて、いまさらイモを引くってのは都合がよくないか? 何人が死んだと思っていやがる」
「言うほど死んではいないでしょう? 多くても一万はいっていないはずですよ」
ベナミスが困ったように首を傾げた。
「僕達の計画では、西方辺境は壊滅してその二十倍は死者が出るはずだったんですけど・・・ディンギルさんが介入してきたせいで、大幅に予定が狂ってしまいました。むしろ謝罪していただきたいのはこちらなんですけどね?」
ベナミスの顔に冗談を言っているような雰囲気はない。一万の死者が軽微なものであると、本気で言っているようである。
俺は目を険しくして、虫も殺さぬ顔をした目の前の男をいっそう強く睨みつけた。
「そうか。俺もそれなりの修羅場はくぐっているから、これだけの規模の戦いでそれっぽっちしか死人が出てないってのか奇跡的だと思うぜ・・・・・・それはともかくとして、とりあえず死んどけよ!」
「くっ・・・!?」
俺は目の前の男の脳天めがけて剣を振り下ろした。ベナミスは鞘に入ったままの剣を掲げて受け止める。
「交渉、決裂ですかあ? 残念だなあ」
「一万の人間が死んだのは百歩譲って構わないとして・・・俺の可愛い文通相手を泣かせたのは許せねえよ!」
そのまま力任せに剣を振り切ると、ベナミスは巧みにその一撃を受け流して後方へと飛ぶ。
その軽やかな動きはなかなかに目を見張るものがあり、一応は剣聖の後継者であることをうかがわせるものだった。
「だけど・・・遅えよ!」
「うわあっ!?」
俺は一足飛びで再びその間合いへと踏み込んだ。ベナミスの顔が驚愕に染まる。
ベナミス・セイバールーンという男は確かに剣士として一流である。それを否定するつもりはない。
しかし・・・しょせんは一流止まり。
俺の親父やキャプテン・ドレーク、バロン先輩といった超一流の剣士には遠く及ばない程度の実力だった。
(このまま斬る!)
俺は必殺の意志をもって、若き剣聖へと斬撃を叩きつけた。
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