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第4章 砂漠陰謀編
51.ピラミッドの女王
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死者の都には多くのミイラが闊歩していたが、どうやらロード級と呼ばれる強力な者はいなかったようである。俺は数が多いだけの烏合の敵を次々と斬り伏せて、三角の建物へと突入した。
いざとなったら再度【豪腕英傑】を使うつもりだったが、その必要すらもなかった。
「さて・・・うまい具合に入り込むことができたな。問題はどこに女王がいるかだが・・・」
『オオオオオオオオオオ!』
「・・・道案内とはありがたくって涙が出るぜ」
俺が建物に突入した途端に奥から次々とミイラが現れた。
このまま死者どもが涌いてくる方向を目指していけば、いずれは女王の下へとたどり着くことができるだろう。
「最大の問題が解決したな。居場所さえわかればこんな連中・・・!」
剣を振るい、襲いかかってくるミイラを両断する。石で囲まれた通路を残骸の砂で汚しながら奥へ奥へと進んで行く。
休むことなく死者を切り伏せていき、二百体ほど砂に還したところで広間のような部屋に出た。
「これはこれは・・・大したお宝だ」
大広間は金銀財宝で満たされていた。
壁には黄金でできた彫像が並べられている。獅子や鷹の頭を持つ獣面人身の像の目には輝く宝石が埋め込まれており、赤や青に輝くそれだけでも金貨数百枚の値がつくに違いない。
下を見れば金貨が床一面に敷き詰められている。足の踏み場もなく山を作る金貨には見たこともない文字が刻まれている。
そして――部屋の最奥。
黄金に輝き、夜空の星々のように宝石がちりばめられた玉座に座る女性の姿があった。
「・・・お前がミイラを生み出している女王か。ようやく会えたぜ」
「・・・・・・」
そこに座っていたのは褐色肌の女性。外見の年齢は十代後半ほど。
死者の親玉というくらいだからどれほど悍ましい姿をしているかと思えば、ミイラでもなんでもない。鼻筋がすらりと通った美貌の女性であった。
肌の色はナームやミストと同色だが、肩に届く長さの髪の色はカラスの羽のように黒い。道ですれ違えば間違いなく声をかけていたと断言できる程度には、魅力を感じさせる女性である。
「これだけの美人だと、わざわざ会いに来た甲斐があった・・・とか言いたいところだけど、正直困るぜ。いい女は斬りづらいじゃねえか」
「・・・・・・」
俺は剣先を女性へと向けた。しかし、剣を突きつけられてもなお玉座の女性には反応がない。
まっすぐに向けられた瞳は虚ろ。目線こそこちらに向けられているものの、本当に俺の姿を視認しているのかも怪しかった。
俺は目を細めて胡乱な瞳を見返し、あまりの無反応ぶりに顔をしかめた。
「さすがに何か言ってくれないと、斬るに斬れないんだが・・・っ!?」
俺は頭上にタダならぬ気配を感じて、咄嗟に横に飛んだ。先ほどまでいた空間に刃物が振り下ろされる。
「おっと! 新手か!」
『サワルナ! 彼女ニサワルナッ!』
どうやら天井に張りついていたらしい。頭上から降ってきたのは古めかしい鎧を身に着けた若い男性のミイラであった。
鎧姿の死者は乾いた両手に剣を握りしめていて、避けていなかったら頭蓋骨を上下に両断されていただろう。
「しゃべったってことはロード級か・・・だけど、バロン先輩の出来損ないほどじゃねえよな!」
「ガアアアアアッ! ティナ、ネフェルティナアアアアアアアアッ!」
即座に剣を振り抜き、ロード級ミイラを真一文字に両断する。
同じロード級でも強さには違いがあるらしく、その戦闘力はバロンと比べると虫けらといってもいいレベルだ。苦戦なんてするわけがない。
「ティナ・・・女の名前だよな? ひょっとして、そっちの女王様の名前か?」
『ガアアアッ・・・』
「・・・もう聞こえてないみたいだな。もう眠れ、お疲れさん」
ミイラの身体が崩れ落ちて砂となり、金銀の山へと降り注ぐ。
そして、邪魔者を片付けた俺は、今度こそ女王に刃を向けた。美女美少女を斬り捨てるのは心苦しい限りであるが、さすがにここで見逃すほどにお人好しではない。
美人だからという理由で見逃すには、あまりにも人が死に過ぎている。
「さて、遺言くらいは聞いてやりたいところだが・・・しゃべらないんじゃあ、しょうがない。せめてもの情けだ。苦しまないように一撃で送ってやるよ」
「・・・・・・」
「ん?」
女王の首に剣を振り下ろそうとして、俺はピタリの切っ先を止める。
切り落とそうとした女王の首には、黄金の首飾りがかかっている。その飾りの中央には赤い宝石が付けられており、まるで心臓が脈打つように明滅していたのだ。
「これはっ・・・!」
理由はわからない。しかし、なにかの危険が迫っていることを察して、俺は首飾りを剥ぎ取ろうとする。
しかし――それよりも一瞬早く、宝石からまばゆい赤い光がほとばしって俺を呑み込んだのだった。
いざとなったら再度【豪腕英傑】を使うつもりだったが、その必要すらもなかった。
「さて・・・うまい具合に入り込むことができたな。問題はどこに女王がいるかだが・・・」
『オオオオオオオオオオ!』
「・・・道案内とはありがたくって涙が出るぜ」
俺が建物に突入した途端に奥から次々とミイラが現れた。
このまま死者どもが涌いてくる方向を目指していけば、いずれは女王の下へとたどり着くことができるだろう。
「最大の問題が解決したな。居場所さえわかればこんな連中・・・!」
剣を振るい、襲いかかってくるミイラを両断する。石で囲まれた通路を残骸の砂で汚しながら奥へ奥へと進んで行く。
休むことなく死者を切り伏せていき、二百体ほど砂に還したところで広間のような部屋に出た。
「これはこれは・・・大したお宝だ」
大広間は金銀財宝で満たされていた。
壁には黄金でできた彫像が並べられている。獅子や鷹の頭を持つ獣面人身の像の目には輝く宝石が埋め込まれており、赤や青に輝くそれだけでも金貨数百枚の値がつくに違いない。
下を見れば金貨が床一面に敷き詰められている。足の踏み場もなく山を作る金貨には見たこともない文字が刻まれている。
そして――部屋の最奥。
黄金に輝き、夜空の星々のように宝石がちりばめられた玉座に座る女性の姿があった。
「・・・お前がミイラを生み出している女王か。ようやく会えたぜ」
「・・・・・・」
そこに座っていたのは褐色肌の女性。外見の年齢は十代後半ほど。
死者の親玉というくらいだからどれほど悍ましい姿をしているかと思えば、ミイラでもなんでもない。鼻筋がすらりと通った美貌の女性であった。
肌の色はナームやミストと同色だが、肩に届く長さの髪の色はカラスの羽のように黒い。道ですれ違えば間違いなく声をかけていたと断言できる程度には、魅力を感じさせる女性である。
「これだけの美人だと、わざわざ会いに来た甲斐があった・・・とか言いたいところだけど、正直困るぜ。いい女は斬りづらいじゃねえか」
「・・・・・・」
俺は剣先を女性へと向けた。しかし、剣を突きつけられてもなお玉座の女性には反応がない。
まっすぐに向けられた瞳は虚ろ。目線こそこちらに向けられているものの、本当に俺の姿を視認しているのかも怪しかった。
俺は目を細めて胡乱な瞳を見返し、あまりの無反応ぶりに顔をしかめた。
「さすがに何か言ってくれないと、斬るに斬れないんだが・・・っ!?」
俺は頭上にタダならぬ気配を感じて、咄嗟に横に飛んだ。先ほどまでいた空間に刃物が振り下ろされる。
「おっと! 新手か!」
『サワルナ! 彼女ニサワルナッ!』
どうやら天井に張りついていたらしい。頭上から降ってきたのは古めかしい鎧を身に着けた若い男性のミイラであった。
鎧姿の死者は乾いた両手に剣を握りしめていて、避けていなかったら頭蓋骨を上下に両断されていただろう。
「しゃべったってことはロード級か・・・だけど、バロン先輩の出来損ないほどじゃねえよな!」
「ガアアアアアッ! ティナ、ネフェルティナアアアアアアアアッ!」
即座に剣を振り抜き、ロード級ミイラを真一文字に両断する。
同じロード級でも強さには違いがあるらしく、その戦闘力はバロンと比べると虫けらといってもいいレベルだ。苦戦なんてするわけがない。
「ティナ・・・女の名前だよな? ひょっとして、そっちの女王様の名前か?」
『ガアアアッ・・・』
「・・・もう聞こえてないみたいだな。もう眠れ、お疲れさん」
ミイラの身体が崩れ落ちて砂となり、金銀の山へと降り注ぐ。
そして、邪魔者を片付けた俺は、今度こそ女王に刃を向けた。美女美少女を斬り捨てるのは心苦しい限りであるが、さすがにここで見逃すほどにお人好しではない。
美人だからという理由で見逃すには、あまりにも人が死に過ぎている。
「さて、遺言くらいは聞いてやりたいところだが・・・しゃべらないんじゃあ、しょうがない。せめてもの情けだ。苦しまないように一撃で送ってやるよ」
「・・・・・・」
「ん?」
女王の首に剣を振り下ろそうとして、俺はピタリの切っ先を止める。
切り落とそうとした女王の首には、黄金の首飾りがかかっている。その飾りの中央には赤い宝石が付けられており、まるで心臓が脈打つように明滅していたのだ。
「これはっ・・・!」
理由はわからない。しかし、なにかの危険が迫っていることを察して、俺は首飾りを剥ぎ取ろうとする。
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