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1巻
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3 放蕩息子の暗躍
【side マクスウェル辺境伯】
「……ディンはまだ起きてこないのか」
「はあ……昨晩は随分とお楽しみのようでしたから」
マクスウェル家に仕えている家令の男が、困ったように答えた。
その答えを聞いて、私はこみ上げてきた頭痛を堪えるべく指先でこめかみを押さえる。
私の名前はディートリッヒ・マクスウェル。ランペルージ王国東端の国境を領地に預かる辺境伯である。
国境を領地に持つ貴族というのは、気苦労が多い。常に敵国の侵攻に備えなければならないし、他国から流れ来るならず者や、逆に国外へ逃亡しようとする犯罪者にも目を光らせる必要がある。
また、マクスウェル家は東方にいる貴族の盟主。貴族間のトラブルを仲裁したり、場合によっては地方貴族の利益のために王家や中央貴族と駆け引きしたりしなければならない。
しかし、現在の私が抱えている最大の悩みは、息子であるディンギル・マクスウェルの素行についてである。
「こっちに戻ってきてから毎日だな……二年も学院に通っていたのに、まるで女癖が直っていないではないか」
息子が王太子殿下とノムス男爵令嬢から婚約破棄を言い渡され、領地に戻ってきたのは一ヵ月前のことである。
さすがに落ち込んでいるだろうと思ったのも束の間。息子はその日の夜には以前から関係のあった侍女を部屋に連れ込み、それはもう筆舌に尽くしがたいような乱痴気騒ぎを始めたのであった。
「はあ、なんと言いますか……申し訳ありません、うちの娘が」
家令の男がそう言い、頭を下げた。
「いや、お前が悪いわけではないが……ううむ、こっちこそ、すまん」
「いえ……」
私の謝罪に、家令はなんとも言えない表情をする。
息子には愛人が複数いるようだが、その筆頭格ともいうべき女性は目の前にいる家令の娘、エリザだ。
手塩にかけて育てた一人娘が主人の息子と寝ているというのは、果たして父親としてどんな気持ちなのだろうか。さすがに恐ろしいので聞いたことはない。
「ディンギル坊ちゃまは、なんと言いますか、英雄気質ですからな。一人の女で満足できる器ではないのでしょう」
「英雄、色を好む、か……そう言えば聞こえはいいが……」
「……親としては気苦労が絶えませんか」
「うむ……あれで無能であれば、喜んで除籍できるのだがな」
私は眉間に皺を寄せ、大きく溜息をついた。
息子――ディンギルは放蕩者である。しかし、無能かと訊かれれば、首を横に振るしかない。
ディンギルは幼い頃から優秀だった。政治や経済、軍事に関する覚えはよかったし、武術にいたっては指南役から百年に一人の才の持ち主とまで評された。
家臣からの人望も厚く、麾下の貴族の子供達からはよき兄貴分として慕われていた。
五年前――十三歳のとき、隣国との小競り合いで初陣を果たした際も、少数の手勢を率いて敵部隊に奇襲を仕掛け、大将首をあげるというとんでもないことをやってのけた。
天才、鬼才、麒麟児、そして、英雄――そんな言葉は息子のためにあると、親の欲目を抜きにしても思ってしまう。
そんな優秀極まる息子が唯一馬鹿になってしまうのは、女性関係である。
ディンギルは十三歳のときに家令の娘エリザと情を通じて女を知り、以来、そればかりを追いかけるようになってしまった。
今ではエリザをはじめとする、屋敷で働いている若い侍女のほとんどにディンギルの手がついている始末。侍女に身の回りの世話をされる身としては、気まずいことこの上ない。
本当は叱ってやりたいところなのだが、たちの悪いことに、ディンギルは女に使う金を全て自分で工面していた。
小遣いとして与えた金を元手に事業を興して他の貴族家との間で商売を始め、五年経った今ではマクスウェル家の外交収入を二倍近くまで高めてみせた。
(確実に結果を出すのだからなおさらたちが悪い……これでは怒るに怒れんではないか)
「女狂いさえ直れば、いつでも、安心して当主の椅子を譲れるのだがな……」
「ディンギル様は優秀でございますから。そういえば、学院で知り合ったご友人とも新しく取引を始めたそうですよ?」
「……そうか、遊んでいたように見えて、学院で人脈作りはしていたのか。一応、貴族としての役割は理解していたのだな」
「ええ。ただ、週に一度は色街に顔を出していたそうですから、遊んでいたのも間違いありませんが」
「…………」
はあ、と何度目になるかわからない溜息をつき、私は机に突っ伏した。
息子が馬鹿だと無論苦労するし、優秀すぎてもまた別の意味で苦労する。優秀かつ馬鹿であるならば言うまでもない。
「まあ、それはいい。百歩譲って……千歩譲って、いいとしておこう……それで、話は変わるが、あれからノムスの娘はどうなった?」
現実逃避も兼ねて、私は話題を切り替えた。
マクスウェル家の寄子であるノムス男爵、その娘であるセレナは、息子の婚約者であった。
セレナのほうから婚約破棄を言い渡したと聞いたときには、とうとう息子の女癖の悪さがばれたのかと冷や汗をかいたものだが……まさか向こうが不貞を働いており、しかもその相手が王太子だったと、誰が予想できようか。
大人しそうに見えて王太子をたらし込んでいたとは、あの娘への評価を見直さなければなるまい。
「ノムス男爵様も処遇を決めかねているようです。なにせ、公衆の面前で王太子殿下……いえ、元・王太子殿下との婚約を発表したのですから」
「ふむ……関係がどこまで深いのかはわからぬが、ヘタをすれば王家の血を引く子を孕んでいる可能性もあるな」
「そうなれば……政争の元ですな」
あの婚約破棄騒動により、王太子であるサリヴァンは廃嫡されることになった。
もともとサリヴァンは長子だが母親の身分は高くなく、ロサイス公爵家の後ろ盾がなければ次期国王になれるような立場ではない。そのロサイス家を侮辱する真似をすれば、こういった処分が下されるのは当然である。
いわんや、セレナの運命など風前の灯火だろう。王家に叛意を持つ者に利用されるか、そうなる前に始末されるか、明るい未来があるとは思えなかった。
「せめて内々で行われたことならば、揉み消すこともできたのだが。公衆の面前で婚約破棄などというデリケートな話題を出してくるとは、そこまで愚かな男とは思わなかった」
「王太子とはいえ、しょせんは男ですからな。女が絡めば馬鹿にもなりましょう。どこかの誰かと一緒ですよ」
「……嫌味か?」
「まさか」
しばし家令と無言で目を合わせたあと、私はゆっくりと首を縦に振った。
「……まあ、そうだな。私も男爵も国王陛下も、子供の育て方を間違えたらしい。幸い、うちのは馬鹿は馬鹿でも分別をわきまえた馬鹿だ。そこだけは助かったと思わねばなるまい」
「さようでございますね……ふう」
「はあ……」
家令と二人で愚痴を言い合っていると、ガチャリと執務室の扉が開いた。辺境伯の執務室をノックもせずに開ける人物など、この屋敷には一人しかいない。
「よお、親父。おはようさん。ちょっと話があるんだけどいいよな?」
「…………」
「…………」
案の定、女狂いの馬鹿息子である。
私と家令は顔を見合わせ、ほぼ同時に苦々しい表情を浮かべた。
「なんだよ、二人して。俺の悪口でも言ってたか?」
「……悪口を言われる心当たりがあるのか?」
「ないな。俺はいつだって清廉潔白だからな」
「そうは言いますが、お身体は随分と汚れているようでございますね? 昨夜はお楽しみだったみたいで何よりです」
「嫌味を言うなよ。湯浴みぐらいはしているさ」
そろそろ黙れ、馬鹿息子。家令が殺人的な目で睨んでるぞ。いっそのこと刺されてしまえ。
思わずそんなことを考えてしまったが、とりあえず用件を聞くことにした。
「それで、なんの用だ? まさか私の仕事を手伝いに来たわけではあるまい?」
「仕事? 西部地域の灌漑だったらもう業者を手配しといたぜ? ゼス村に出没した盗賊の件には討伐隊を出しておいたし、東の砦への視察だったら明日の朝に出る予定だから心配いらない。ああ、シルフィス子爵領で暴れ回っている馬賊の件は、俺に考えがあるから任せてくれ。近日中に処理しとく」
「…………お前はとんだ馬鹿息子だよ」
本当に、無能ではないからたちが悪い。息子の優秀さに悩まされるのは、私くらいのものだろう。
「……まあいい。それじゃあ、本当に何をしに来た?」
「ちょいと親父にお願いがあってね。ほい」
「む?」
息子が一通の書簡を手渡してきた。
封はしていないので中身を取り出して目を通すと、奇妙な内容が書かれている。
「これは……」
「そいつを親父の名前で送っといてくれ。国王陛下にな」
「お前、何を考えている?」
息子の顔を見ると、いたずらっ子のような笑みを浮かべている。初陣で敵将の首をぶら下げてきたときと同じ顔である。
こいつがこんな顔をするときはろくなことが起きないと、この十八年間で嫌というほど学習した。
「元・王太子様にも、元・婚約者殿にも、少し痛い目を見てもらいたくてね。なーに、ちょっとした嫌がらせさ」
「むう……」
「俺が帰ってきたとき、好きにしろって言ったのは親父だぜ? 言われた通りに好きにするさ」
私は再度、手紙に視線を落とし、再び襲ってきた頭痛のために頭を抱えた。
〇 〇 〇
サリヴァン王太子が廃嫡され、一連の婚約破棄騒動が収束してから数日後。
ランペルージ王家に、マクスウェル辺境伯家から一通の手紙が届いた。
その手紙には、短い文章でこう書かれていた。
『サリヴァン殿下の、ノムス男爵家への婿入りを心から祝福する』
4 嫌がらせの祝福
【side ロサイス公爵】
(マクスウェルの子倅め、また面倒事を……)
ランペルージ王国王都、その王城にある国王の執務室にて。
私、ロサイス公爵家当主、バルト・ロサイスは、マクスウェル家から届けられた書状に目を通して、思わず心の中でそうつぶやいた。
『サリヴァン殿下の、ノムス男爵家への婿入りを心から祝福する』
祝福――といっているが、実際のところ、これは脅迫の言葉である。
この短い文章の陰に潜む強烈な悪意は、宰相である自分が感心するほどに悪辣だった。
今からおよそ一ヵ月前、愛娘のマリアンヌ・ロサイスは、王太子であるサリヴァンから婚約破棄を言い渡された。理由は他に好きな女ができたからという、なんとも子供じみたものである。
そして、この手紙の送り主であるディンギル・マクスウェルこそが、サリヴァンの浮気相手、セレナ・ノムスの婚約者。
今回の婚約破棄の全ての責任は、サリヴァンにあった。
サリヴァンはひたすら真実の愛がどうとか、マリアンヌがいかに自分の婚約者として不適格かをみっともなく言い連ねていたらしい。
しかし、そもそも婚約者がいる身でありながら、他の女に手を出した奴が一番悪いに決まっている。ましてや、サリヴァンが手を出した娘にも別の婚約者がいたのだ。
いかにあの間抜けな王太子が自分勝手な言い訳を重ねようが、臣下の婚約者を王家の力で寝取った最低男という評判は覆らない。
「の、のう、宰相。これは……どうにかならぬのか?」
憐れになるほど弱気な声を上げたのは、執務室の主――国の最高権力者である国王陛下だった。
王という地位に似つかわしくないほど気弱な老人には二人の王子がいるが、特に長男のサリヴァンのことを溺愛していた。今もサリヴァンの未来を案じてすがるような目で私を見つめてくる。
この国の国王であるザルーシャ・ランペルージは、一国の王としてはあまりにも平凡な男だった。
武王を名乗れるほどの勇敢さはなく、賢王を名乗れるほどの知恵もない。唯一の取り柄といえるのは、この王が自分の凡庸さを理解していることだろう。
政治においても軍事においても決して我を通さず、周囲の意見をきちんと聞くことができる器量だけは持っている。
(まあ、優柔不断で一人で決断できないだけ、とも言えるのだがな)
心中で辛口の評価を下しつつ、私は王の質問に答える。
「どうにもなりませんな。今回の被害者であるマクスウェルが『ノムス男爵家への婿入りを心から祝福する』と要求しているのです。こうなってしまったら、サリヴァン殿下にはノムス家に婿入りしてもらわねばなりますまい」
胸中はどうあれ、表向きには被害者側が譲っているというのに、それを無下にできるわけがない。
「し、しかし、それでは……」
おどおどと縮こまる国王。
サリヴァンがノムス男爵家に婿入りする――これがどれだけ恐ろしい罰であるか、さすがにこの平凡な王も気づいているようだ。
男爵家は、貴族といっても限りなく平民に近い家柄である。領地も村を一つか二つ持っているくらいで、税収などあってないようなものだ。
当然、彼らの生活は裕福なものではない。生まれてからずっと王族として不自由のない暮らしをしてきたサリヴァンが、そこに婿入りして耐えられるとはとても思えなかった。
ましてやノムスはマクスウェルの寄子にあたる家であり、借金までしているのだ。マクスウェルからの命令には、ほぼ逆らえない立場である。紛争の際は最前線に送られることだってあるだろう。
婚約者を寝取ったことで恨みを買った相手の下につき、生涯をかけていびられ続けなければならない。これほど恐ろしい罰が果たしてあるだろうか。
国王がまだ何か言いたそうだったので「どうぞ」と先を促すと、ぼそぼそと話しだす。
「う、うむ……わかっておる。マクスウェルの言い分はわかっておるのだ……しかし、これはいくらなんでもあんまりではないか。王家の人間が男爵家に婿入りするなど、これほどの屈辱はあるまい。サリヴァンはすでに廃嫡という罰を受けている……それなのに、どうしてあの子がこんな目に遭わねばならないのだ?」
「……罰が不十分、ということかと。少なくとも、マクスウェルはそう思っているようですな」
(無論、我がロサイス家としても同意見だがな)
マクスウェル家に送った謝罪の手紙では、サリヴァンに厳罰を与えると伝えていた。しかし、この気弱で優しい国王は、実のところ、息子を厳しく罰するつもりなどなかった。
サリヴァンは今回の騒動により臣籍に下げられていたが、しかし、それが厳しい罰かといえば、必ずしもそうではない。
サリヴァンは跡継ぎがいない侯爵家に養子入りして、不自由のない暮らしを送る未来が用意されていたのだから。
(見抜いていたのだろうな。この甘い王が息子に重い処分を下すことはないと……ふん、面倒ではあるが、ロサイスとしても望むところだ)
同じく被害者である我がロサイス家もまた、今回の甘すぎる処罰に納得してはいなかった。
我々が不満を持ちながらもこの決着を受け入れたのは、中央貴族筆頭として王都の混乱を最小限にしたかったからだ。
可愛い娘の顔に泥を塗られた……父親としての個人的な意見を言わせてもらえば、あの無能な元・王太子を八つ裂きにしても足りないほどである。
「だ、だが……そうだ、宰相、お前がマクスウェルに頭を下げてくれれば……」
すると、国王がそんなことを言いだした。
「私が……サリヴァンのために、ですか?」
「うむ、王である余が臣下に頭を下げるわけにはいかぬが、宰相であるお主、なら、ば……」
全身全霊の殺意を込めて睨みつけると、王の言葉が尻すぼみに途切れる。
「もう一度、お聞きしましょう。私が、娘を裏切った男のために、誇りを捨てて頭を下げろと?」
「うぐ……」
そこまで言うと、ようやく王は自分の失言に気づいたらしい。
(この親にして、あの息子ありか……)
私は内心で溜息をついた。
王は、普段はここまで馬鹿な発言をすることはない。しかし、この男もまたサリヴァンと同じく情で物事を考える人間であるらしい。
(息子を守りたいというのならば、ロサイスやマクスウェルの反発を承知で庇ってやればいいものを。そんなに我らが怖いのか。まあ、これぐらい臆病なほうがこの国の王としては合っているのだが。有能すぎる王は四方四家に疎まれるからな)
ランペルージ王国では、東西南北の国境を守護する四つの辺境伯家が強い力を持っている。それが通称、四方四家。
この国における王の資質とは、いかに四つの辺境伯家の不興を買わずに国を治められるかに懸かっていると言ってもよい。
目の前にいる気弱な国王は、一国の代表としてはあまりに頼りない。
しかしそれゆえに、四方四家からは自分達の既得権益を脅かすことのない、軽い神輿とみなされていた。
(有能な王で長く在位できたものはいないからな……サリヴァンも不幸な事故に遭わなかっただけマシだろう)
四方四家に逆らってはならない。
彼らの力を削ごうとして闇に葬られた王など、いくらでもいるのだから。
5 馬鹿の相手は苦労する
【side ロサイス公爵】
王宮の奥にある一室。王族のプライベートルームにて。
「ふざけるな! 私が、王太子である私が男爵家に婿入りだと!? そんなバカな話があるか!!」
「…………」
私の目の前で馬鹿が怒鳴り散らしている。
馬鹿の名前は言うまでもなく、この国の元・王太子であるサリヴァン・ランペルージである。
「残念ながら、これは国王陛下が決められたことでございます。謹んで了承していただきたい」
私は慎重に言葉を選びながら言った。ただでさえ一連の騒ぎの事後処理で疲れているというのに、これ以上、馬鹿の戯言に付き合わされるのはうんざりだった。
(まったく、なんで私がこのようなことを……)
内心でそう毒づく。
本来、サリヴァンに勅書を渡し、処分を告げるのは国王が行うべき政務である。それをなぜか宰相である自分が代行させられていた。
言うまでもなく、息子を溺愛している国王がサリヴァンに直接処分を言い渡すことを嫌がり、面倒事を私に押しつけたからである。
(王としての責任も、親としての責任も果たせないとは)
自分はこの一ヵ月で、どれだけ王族に失望すればいいのだろうか。
野心家ではないが、この現状には謀反という言葉が頭によぎってしまう。
「これは何かの間違いだ! 父上に確認する!」
サリヴァンが国王の勅書を乱暴に丸めて、床に叩きつけた。
「…………」
思わず顔が引き攣ってしまった。
勅書には国王の署名だけでなく、『ランペルージ王国』そのものの印である国璽も入っている。その勅書をこんな風に乱雑に扱うなど、反逆行為と受け取られてもおかしくない蛮行である。
仮にこの男がいまだに王太子であったとしても、この振る舞いが公になれば処刑台行きは免れないだろう。
(いっそのこと、これを理由に処刑してしまおうか……いや、そんなことでもしたら王が心労で死ぬか)
あくまで冷静に、私は変えようのない事実を告げる。
「残念ながらこれは決定事項です。もう一度確認していただけますかな? ちゃんと国璽も押してあるでしょう?」
「う……」
さすがに自分がした事の重大さに気がついたのか、サリヴァンは気まずそうに足元に転がる勅書を拾った。上質な羊皮紙を広げ直し、くっきりとついた皺を伸ばして書面を確認する。
【side マクスウェル辺境伯】
「……ディンはまだ起きてこないのか」
「はあ……昨晩は随分とお楽しみのようでしたから」
マクスウェル家に仕えている家令の男が、困ったように答えた。
その答えを聞いて、私はこみ上げてきた頭痛を堪えるべく指先でこめかみを押さえる。
私の名前はディートリッヒ・マクスウェル。ランペルージ王国東端の国境を領地に預かる辺境伯である。
国境を領地に持つ貴族というのは、気苦労が多い。常に敵国の侵攻に備えなければならないし、他国から流れ来るならず者や、逆に国外へ逃亡しようとする犯罪者にも目を光らせる必要がある。
また、マクスウェル家は東方にいる貴族の盟主。貴族間のトラブルを仲裁したり、場合によっては地方貴族の利益のために王家や中央貴族と駆け引きしたりしなければならない。
しかし、現在の私が抱えている最大の悩みは、息子であるディンギル・マクスウェルの素行についてである。
「こっちに戻ってきてから毎日だな……二年も学院に通っていたのに、まるで女癖が直っていないではないか」
息子が王太子殿下とノムス男爵令嬢から婚約破棄を言い渡され、領地に戻ってきたのは一ヵ月前のことである。
さすがに落ち込んでいるだろうと思ったのも束の間。息子はその日の夜には以前から関係のあった侍女を部屋に連れ込み、それはもう筆舌に尽くしがたいような乱痴気騒ぎを始めたのであった。
「はあ、なんと言いますか……申し訳ありません、うちの娘が」
家令の男がそう言い、頭を下げた。
「いや、お前が悪いわけではないが……ううむ、こっちこそ、すまん」
「いえ……」
私の謝罪に、家令はなんとも言えない表情をする。
息子には愛人が複数いるようだが、その筆頭格ともいうべき女性は目の前にいる家令の娘、エリザだ。
手塩にかけて育てた一人娘が主人の息子と寝ているというのは、果たして父親としてどんな気持ちなのだろうか。さすがに恐ろしいので聞いたことはない。
「ディンギル坊ちゃまは、なんと言いますか、英雄気質ですからな。一人の女で満足できる器ではないのでしょう」
「英雄、色を好む、か……そう言えば聞こえはいいが……」
「……親としては気苦労が絶えませんか」
「うむ……あれで無能であれば、喜んで除籍できるのだがな」
私は眉間に皺を寄せ、大きく溜息をついた。
息子――ディンギルは放蕩者である。しかし、無能かと訊かれれば、首を横に振るしかない。
ディンギルは幼い頃から優秀だった。政治や経済、軍事に関する覚えはよかったし、武術にいたっては指南役から百年に一人の才の持ち主とまで評された。
家臣からの人望も厚く、麾下の貴族の子供達からはよき兄貴分として慕われていた。
五年前――十三歳のとき、隣国との小競り合いで初陣を果たした際も、少数の手勢を率いて敵部隊に奇襲を仕掛け、大将首をあげるというとんでもないことをやってのけた。
天才、鬼才、麒麟児、そして、英雄――そんな言葉は息子のためにあると、親の欲目を抜きにしても思ってしまう。
そんな優秀極まる息子が唯一馬鹿になってしまうのは、女性関係である。
ディンギルは十三歳のときに家令の娘エリザと情を通じて女を知り、以来、そればかりを追いかけるようになってしまった。
今ではエリザをはじめとする、屋敷で働いている若い侍女のほとんどにディンギルの手がついている始末。侍女に身の回りの世話をされる身としては、気まずいことこの上ない。
本当は叱ってやりたいところなのだが、たちの悪いことに、ディンギルは女に使う金を全て自分で工面していた。
小遣いとして与えた金を元手に事業を興して他の貴族家との間で商売を始め、五年経った今ではマクスウェル家の外交収入を二倍近くまで高めてみせた。
(確実に結果を出すのだからなおさらたちが悪い……これでは怒るに怒れんではないか)
「女狂いさえ直れば、いつでも、安心して当主の椅子を譲れるのだがな……」
「ディンギル様は優秀でございますから。そういえば、学院で知り合ったご友人とも新しく取引を始めたそうですよ?」
「……そうか、遊んでいたように見えて、学院で人脈作りはしていたのか。一応、貴族としての役割は理解していたのだな」
「ええ。ただ、週に一度は色街に顔を出していたそうですから、遊んでいたのも間違いありませんが」
「…………」
はあ、と何度目になるかわからない溜息をつき、私は机に突っ伏した。
息子が馬鹿だと無論苦労するし、優秀すぎてもまた別の意味で苦労する。優秀かつ馬鹿であるならば言うまでもない。
「まあ、それはいい。百歩譲って……千歩譲って、いいとしておこう……それで、話は変わるが、あれからノムスの娘はどうなった?」
現実逃避も兼ねて、私は話題を切り替えた。
マクスウェル家の寄子であるノムス男爵、その娘であるセレナは、息子の婚約者であった。
セレナのほうから婚約破棄を言い渡したと聞いたときには、とうとう息子の女癖の悪さがばれたのかと冷や汗をかいたものだが……まさか向こうが不貞を働いており、しかもその相手が王太子だったと、誰が予想できようか。
大人しそうに見えて王太子をたらし込んでいたとは、あの娘への評価を見直さなければなるまい。
「ノムス男爵様も処遇を決めかねているようです。なにせ、公衆の面前で王太子殿下……いえ、元・王太子殿下との婚約を発表したのですから」
「ふむ……関係がどこまで深いのかはわからぬが、ヘタをすれば王家の血を引く子を孕んでいる可能性もあるな」
「そうなれば……政争の元ですな」
あの婚約破棄騒動により、王太子であるサリヴァンは廃嫡されることになった。
もともとサリヴァンは長子だが母親の身分は高くなく、ロサイス公爵家の後ろ盾がなければ次期国王になれるような立場ではない。そのロサイス家を侮辱する真似をすれば、こういった処分が下されるのは当然である。
いわんや、セレナの運命など風前の灯火だろう。王家に叛意を持つ者に利用されるか、そうなる前に始末されるか、明るい未来があるとは思えなかった。
「せめて内々で行われたことならば、揉み消すこともできたのだが。公衆の面前で婚約破棄などというデリケートな話題を出してくるとは、そこまで愚かな男とは思わなかった」
「王太子とはいえ、しょせんは男ですからな。女が絡めば馬鹿にもなりましょう。どこかの誰かと一緒ですよ」
「……嫌味か?」
「まさか」
しばし家令と無言で目を合わせたあと、私はゆっくりと首を縦に振った。
「……まあ、そうだな。私も男爵も国王陛下も、子供の育て方を間違えたらしい。幸い、うちのは馬鹿は馬鹿でも分別をわきまえた馬鹿だ。そこだけは助かったと思わねばなるまい」
「さようでございますね……ふう」
「はあ……」
家令と二人で愚痴を言い合っていると、ガチャリと執務室の扉が開いた。辺境伯の執務室をノックもせずに開ける人物など、この屋敷には一人しかいない。
「よお、親父。おはようさん。ちょっと話があるんだけどいいよな?」
「…………」
「…………」
案の定、女狂いの馬鹿息子である。
私と家令は顔を見合わせ、ほぼ同時に苦々しい表情を浮かべた。
「なんだよ、二人して。俺の悪口でも言ってたか?」
「……悪口を言われる心当たりがあるのか?」
「ないな。俺はいつだって清廉潔白だからな」
「そうは言いますが、お身体は随分と汚れているようでございますね? 昨夜はお楽しみだったみたいで何よりです」
「嫌味を言うなよ。湯浴みぐらいはしているさ」
そろそろ黙れ、馬鹿息子。家令が殺人的な目で睨んでるぞ。いっそのこと刺されてしまえ。
思わずそんなことを考えてしまったが、とりあえず用件を聞くことにした。
「それで、なんの用だ? まさか私の仕事を手伝いに来たわけではあるまい?」
「仕事? 西部地域の灌漑だったらもう業者を手配しといたぜ? ゼス村に出没した盗賊の件には討伐隊を出しておいたし、東の砦への視察だったら明日の朝に出る予定だから心配いらない。ああ、シルフィス子爵領で暴れ回っている馬賊の件は、俺に考えがあるから任せてくれ。近日中に処理しとく」
「…………お前はとんだ馬鹿息子だよ」
本当に、無能ではないからたちが悪い。息子の優秀さに悩まされるのは、私くらいのものだろう。
「……まあいい。それじゃあ、本当に何をしに来た?」
「ちょいと親父にお願いがあってね。ほい」
「む?」
息子が一通の書簡を手渡してきた。
封はしていないので中身を取り出して目を通すと、奇妙な内容が書かれている。
「これは……」
「そいつを親父の名前で送っといてくれ。国王陛下にな」
「お前、何を考えている?」
息子の顔を見ると、いたずらっ子のような笑みを浮かべている。初陣で敵将の首をぶら下げてきたときと同じ顔である。
こいつがこんな顔をするときはろくなことが起きないと、この十八年間で嫌というほど学習した。
「元・王太子様にも、元・婚約者殿にも、少し痛い目を見てもらいたくてね。なーに、ちょっとした嫌がらせさ」
「むう……」
「俺が帰ってきたとき、好きにしろって言ったのは親父だぜ? 言われた通りに好きにするさ」
私は再度、手紙に視線を落とし、再び襲ってきた頭痛のために頭を抱えた。
〇 〇 〇
サリヴァン王太子が廃嫡され、一連の婚約破棄騒動が収束してから数日後。
ランペルージ王家に、マクスウェル辺境伯家から一通の手紙が届いた。
その手紙には、短い文章でこう書かれていた。
『サリヴァン殿下の、ノムス男爵家への婿入りを心から祝福する』
4 嫌がらせの祝福
【side ロサイス公爵】
(マクスウェルの子倅め、また面倒事を……)
ランペルージ王国王都、その王城にある国王の執務室にて。
私、ロサイス公爵家当主、バルト・ロサイスは、マクスウェル家から届けられた書状に目を通して、思わず心の中でそうつぶやいた。
『サリヴァン殿下の、ノムス男爵家への婿入りを心から祝福する』
祝福――といっているが、実際のところ、これは脅迫の言葉である。
この短い文章の陰に潜む強烈な悪意は、宰相である自分が感心するほどに悪辣だった。
今からおよそ一ヵ月前、愛娘のマリアンヌ・ロサイスは、王太子であるサリヴァンから婚約破棄を言い渡された。理由は他に好きな女ができたからという、なんとも子供じみたものである。
そして、この手紙の送り主であるディンギル・マクスウェルこそが、サリヴァンの浮気相手、セレナ・ノムスの婚約者。
今回の婚約破棄の全ての責任は、サリヴァンにあった。
サリヴァンはひたすら真実の愛がどうとか、マリアンヌがいかに自分の婚約者として不適格かをみっともなく言い連ねていたらしい。
しかし、そもそも婚約者がいる身でありながら、他の女に手を出した奴が一番悪いに決まっている。ましてや、サリヴァンが手を出した娘にも別の婚約者がいたのだ。
いかにあの間抜けな王太子が自分勝手な言い訳を重ねようが、臣下の婚約者を王家の力で寝取った最低男という評判は覆らない。
「の、のう、宰相。これは……どうにかならぬのか?」
憐れになるほど弱気な声を上げたのは、執務室の主――国の最高権力者である国王陛下だった。
王という地位に似つかわしくないほど気弱な老人には二人の王子がいるが、特に長男のサリヴァンのことを溺愛していた。今もサリヴァンの未来を案じてすがるような目で私を見つめてくる。
この国の国王であるザルーシャ・ランペルージは、一国の王としてはあまりにも平凡な男だった。
武王を名乗れるほどの勇敢さはなく、賢王を名乗れるほどの知恵もない。唯一の取り柄といえるのは、この王が自分の凡庸さを理解していることだろう。
政治においても軍事においても決して我を通さず、周囲の意見をきちんと聞くことができる器量だけは持っている。
(まあ、優柔不断で一人で決断できないだけ、とも言えるのだがな)
心中で辛口の評価を下しつつ、私は王の質問に答える。
「どうにもなりませんな。今回の被害者であるマクスウェルが『ノムス男爵家への婿入りを心から祝福する』と要求しているのです。こうなってしまったら、サリヴァン殿下にはノムス家に婿入りしてもらわねばなりますまい」
胸中はどうあれ、表向きには被害者側が譲っているというのに、それを無下にできるわけがない。
「し、しかし、それでは……」
おどおどと縮こまる国王。
サリヴァンがノムス男爵家に婿入りする――これがどれだけ恐ろしい罰であるか、さすがにこの平凡な王も気づいているようだ。
男爵家は、貴族といっても限りなく平民に近い家柄である。領地も村を一つか二つ持っているくらいで、税収などあってないようなものだ。
当然、彼らの生活は裕福なものではない。生まれてからずっと王族として不自由のない暮らしをしてきたサリヴァンが、そこに婿入りして耐えられるとはとても思えなかった。
ましてやノムスはマクスウェルの寄子にあたる家であり、借金までしているのだ。マクスウェルからの命令には、ほぼ逆らえない立場である。紛争の際は最前線に送られることだってあるだろう。
婚約者を寝取ったことで恨みを買った相手の下につき、生涯をかけていびられ続けなければならない。これほど恐ろしい罰が果たしてあるだろうか。
国王がまだ何か言いたそうだったので「どうぞ」と先を促すと、ぼそぼそと話しだす。
「う、うむ……わかっておる。マクスウェルの言い分はわかっておるのだ……しかし、これはいくらなんでもあんまりではないか。王家の人間が男爵家に婿入りするなど、これほどの屈辱はあるまい。サリヴァンはすでに廃嫡という罰を受けている……それなのに、どうしてあの子がこんな目に遭わねばならないのだ?」
「……罰が不十分、ということかと。少なくとも、マクスウェルはそう思っているようですな」
(無論、我がロサイス家としても同意見だがな)
マクスウェル家に送った謝罪の手紙では、サリヴァンに厳罰を与えると伝えていた。しかし、この気弱で優しい国王は、実のところ、息子を厳しく罰するつもりなどなかった。
サリヴァンは今回の騒動により臣籍に下げられていたが、しかし、それが厳しい罰かといえば、必ずしもそうではない。
サリヴァンは跡継ぎがいない侯爵家に養子入りして、不自由のない暮らしを送る未来が用意されていたのだから。
(見抜いていたのだろうな。この甘い王が息子に重い処分を下すことはないと……ふん、面倒ではあるが、ロサイスとしても望むところだ)
同じく被害者である我がロサイス家もまた、今回の甘すぎる処罰に納得してはいなかった。
我々が不満を持ちながらもこの決着を受け入れたのは、中央貴族筆頭として王都の混乱を最小限にしたかったからだ。
可愛い娘の顔に泥を塗られた……父親としての個人的な意見を言わせてもらえば、あの無能な元・王太子を八つ裂きにしても足りないほどである。
「だ、だが……そうだ、宰相、お前がマクスウェルに頭を下げてくれれば……」
すると、国王がそんなことを言いだした。
「私が……サリヴァンのために、ですか?」
「うむ、王である余が臣下に頭を下げるわけにはいかぬが、宰相であるお主、なら、ば……」
全身全霊の殺意を込めて睨みつけると、王の言葉が尻すぼみに途切れる。
「もう一度、お聞きしましょう。私が、娘を裏切った男のために、誇りを捨てて頭を下げろと?」
「うぐ……」
そこまで言うと、ようやく王は自分の失言に気づいたらしい。
(この親にして、あの息子ありか……)
私は内心で溜息をついた。
王は、普段はここまで馬鹿な発言をすることはない。しかし、この男もまたサリヴァンと同じく情で物事を考える人間であるらしい。
(息子を守りたいというのならば、ロサイスやマクスウェルの反発を承知で庇ってやればいいものを。そんなに我らが怖いのか。まあ、これぐらい臆病なほうがこの国の王としては合っているのだが。有能すぎる王は四方四家に疎まれるからな)
ランペルージ王国では、東西南北の国境を守護する四つの辺境伯家が強い力を持っている。それが通称、四方四家。
この国における王の資質とは、いかに四つの辺境伯家の不興を買わずに国を治められるかに懸かっていると言ってもよい。
目の前にいる気弱な国王は、一国の代表としてはあまりに頼りない。
しかしそれゆえに、四方四家からは自分達の既得権益を脅かすことのない、軽い神輿とみなされていた。
(有能な王で長く在位できたものはいないからな……サリヴァンも不幸な事故に遭わなかっただけマシだろう)
四方四家に逆らってはならない。
彼らの力を削ごうとして闇に葬られた王など、いくらでもいるのだから。
5 馬鹿の相手は苦労する
【side ロサイス公爵】
王宮の奥にある一室。王族のプライベートルームにて。
「ふざけるな! 私が、王太子である私が男爵家に婿入りだと!? そんなバカな話があるか!!」
「…………」
私の目の前で馬鹿が怒鳴り散らしている。
馬鹿の名前は言うまでもなく、この国の元・王太子であるサリヴァン・ランペルージである。
「残念ながら、これは国王陛下が決められたことでございます。謹んで了承していただきたい」
私は慎重に言葉を選びながら言った。ただでさえ一連の騒ぎの事後処理で疲れているというのに、これ以上、馬鹿の戯言に付き合わされるのはうんざりだった。
(まったく、なんで私がこのようなことを……)
内心でそう毒づく。
本来、サリヴァンに勅書を渡し、処分を告げるのは国王が行うべき政務である。それをなぜか宰相である自分が代行させられていた。
言うまでもなく、息子を溺愛している国王がサリヴァンに直接処分を言い渡すことを嫌がり、面倒事を私に押しつけたからである。
(王としての責任も、親としての責任も果たせないとは)
自分はこの一ヵ月で、どれだけ王族に失望すればいいのだろうか。
野心家ではないが、この現状には謀反という言葉が頭によぎってしまう。
「これは何かの間違いだ! 父上に確認する!」
サリヴァンが国王の勅書を乱暴に丸めて、床に叩きつけた。
「…………」
思わず顔が引き攣ってしまった。
勅書には国王の署名だけでなく、『ランペルージ王国』そのものの印である国璽も入っている。その勅書をこんな風に乱雑に扱うなど、反逆行為と受け取られてもおかしくない蛮行である。
仮にこの男がいまだに王太子であったとしても、この振る舞いが公になれば処刑台行きは免れないだろう。
(いっそのこと、これを理由に処刑してしまおうか……いや、そんなことでもしたら王が心労で死ぬか)
あくまで冷静に、私は変えようのない事実を告げる。
「残念ながらこれは決定事項です。もう一度確認していただけますかな? ちゃんと国璽も押してあるでしょう?」
「う……」
さすがに自分がした事の重大さに気がついたのか、サリヴァンは気まずそうに足元に転がる勅書を拾った。上質な羊皮紙を広げ直し、くっきりとついた皺を伸ばして書面を確認する。
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