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第4章 砂漠陰謀編
45.最後の決闘
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「ぐうっ・・・!」
顔面への打撃にミイラの顔がへこむ。生身の人間であれば頭蓋骨陥没で死んでいたであろう攻撃であったが、バロンは一歩二歩と後退しただけだった。
「きさまっ・・・このおおおおオオオっ!」
バロンが左手で顔を押さえて曲刀を薙いだ。俺は軽く身体を反らしてその刃を躱して、皮肉気に舌を出した。
「はっ、なかなかの男前になったじゃないか。ブサイクな干物ヅラがちょっとはマシになったぜ!」
「この私をっ、生まれ変わった私を馬鹿にするなあああああっ!」
バロンが恐るべき速度で曲刀を振るってくる。俺もまた繰り返し斬撃を放つ。
ランプで照らされた薄闇の中、二本の刀剣がぶつかり合って激しい火花を散らせた。
「このオオオオオオッ! 死ねっ! 死んでしまえっ! 私の前から消えてなくなれええええエエエエエッ!!」
乾ききったミイラとなったバロンの顔は俺の打撃のせいで無残に陥没しており、憤怒に歪んで怪物の凶相と成り果てている。
もしも生前のバロンを知るナームやカイロ嬢が今のバロンの顔を目にしたのであれば、あまりの変化に卒倒してしまったかもしれない変貌である。
「やはり・・・お前はここで消えるべきだよ。バロン・スフィンクスの亡霊。俺の敬愛する先輩への侮辱の塊。この世にあってはならない存在悪め」
「ぬかせええええっ! 消えるのは貴様だああああああっ!」
バロンの剣撃が激しさを増す。
さらに速く、さらに重くなる攻撃を俺は剣で受け続け、そして反撃した。
「フッ!」
「ぐぎいいいっ!?」
絶え間なく振るわれる曲刀の間隙を縫うようにして、俺の刺突がバロンの左肩を捉えた。
乾いた身体からは血が流れることはなかったが、肩の筋肉が大きく抉られて砂となって崩れた。
「そんな馬鹿なっ・・・! なぜ私のスピードとパワーについてこれる!?」
「さあな、お前が弱くなったからじゃないか?」
「ふざけるなっ! そんなわけがあるかっ!」
バロンが俺の首を切り落とさんと真一文字に斬撃を見舞う。
俺は姿勢を落としてその一撃を躱して、低い姿勢から逆袈裟に斬り上げた。バロンの身体が斜めに裂かれ、傷口から砂が血のように噴き出した。
「ぐあああああっ!? そんな・・・こんなことはあり得ない! どうして私が押されているというのだっ!?」
バロンが目を血走らせて叫ぶ。
かつての武術大会では俺とバロンの実力はほぼ拮抗していた。にもかかわらず、死者の肉体を得てパワーアップした自分が一方的に斬られていることが信じられないのだろう。
俺はそんなバロンを憐れみすら込めた目で見やり、剣をクルリと翻した。
「バロン先輩、俺はアンタの剣が誰よりも苦手だった。質実剛健、巌のごとく固く堅実な守り。一瞬の油断を突くカウンター。まるでこちらの攻撃を予知しているかのように全ての技を防いでくるバロン・スフィンクスを鉄壁の防御は、まるで悪夢でも見ているようだったぜ・・・だけど、今のお前の剣は違うよな」
俺がバロン先輩の剣を苦手としていたのは、彼の剣の巧みな守りが苦手だったのだ。
しかし、今のバロンは死者となったことで得られた身体能力に溺れており、ひたすらパワーとスピードを駆使してゴリ押しのように攻めてきていた。
守りを捨てたバロンの剣は俺にとっては児戯のようにしか見えないものであり、捌くの容易である。
(たしかに重い。たしかに速い。だけど・・・ウチのオフクロの拳はもっと重い! キャプテン・ドレークの剣はもっと速い!)
グレイスやドレークだけではない。
俺の剣の師である親父だって今のバロンよりも遥かに鋭く剣を振るっていたし、帝国の猛将ベイオーク・ザガンの槍だって威力は負けていないだろう。
彼らとの出会いと戦いを経たうえで、今の俺の剣は完成した。
己の剣を見失ったバロン・スフィンクスの亡霊になど負けるわけがない。
「ただの力押しにやられるほど温い戦いはしてきてないんだよ。今のお前はせいぜい【豪腕英傑】を使ったサリヴァンと同レベルだよ」
「馬鹿な、馬鹿な、馬鹿な、馬鹿な馬鹿なばかなばかなばかなバカナバカナッ! 馬鹿なアアアアアアアアアアッ!!」
俺は斬撃を雨のように浴びせかけ、バロンの身体を斬り裂いていく。
当然ながらバロンも反撃をしてくるが、曲刀の刃は俺の身体を薄皮一枚断つことはなく、虚しく空を通り過ぎていった。
「ガアアアアアアアアアアアッ!!」
いよいよ追い詰められて、バロンの剣から精彩が消えた。子供が棒きれでチャンバラごっこをするような手つきで曲刀をぶん回し、腹の底から絶叫を上げる。
「バロン・スフィンクスとは何度も戦ったが・・・今回が一番つまらなかったぜ。もういい加減に眠れよ、お疲れさんっ!」
「アアアアアアアアアアアッ! 嘘だああああああアアアアアアアアアッ!!」
俺は絶望の咆哮を上げるバロンへと、鋼の刃を叩きつけた。
生者を超越しているはずのミイラの肉体が斜めに両断されて、茶褐色の砂となって爆散した。
顔面への打撃にミイラの顔がへこむ。生身の人間であれば頭蓋骨陥没で死んでいたであろう攻撃であったが、バロンは一歩二歩と後退しただけだった。
「きさまっ・・・このおおおおオオオっ!」
バロンが左手で顔を押さえて曲刀を薙いだ。俺は軽く身体を反らしてその刃を躱して、皮肉気に舌を出した。
「はっ、なかなかの男前になったじゃないか。ブサイクな干物ヅラがちょっとはマシになったぜ!」
「この私をっ、生まれ変わった私を馬鹿にするなあああああっ!」
バロンが恐るべき速度で曲刀を振るってくる。俺もまた繰り返し斬撃を放つ。
ランプで照らされた薄闇の中、二本の刀剣がぶつかり合って激しい火花を散らせた。
「このオオオオオオッ! 死ねっ! 死んでしまえっ! 私の前から消えてなくなれええええエエエエエッ!!」
乾ききったミイラとなったバロンの顔は俺の打撃のせいで無残に陥没しており、憤怒に歪んで怪物の凶相と成り果てている。
もしも生前のバロンを知るナームやカイロ嬢が今のバロンの顔を目にしたのであれば、あまりの変化に卒倒してしまったかもしれない変貌である。
「やはり・・・お前はここで消えるべきだよ。バロン・スフィンクスの亡霊。俺の敬愛する先輩への侮辱の塊。この世にあってはならない存在悪め」
「ぬかせええええっ! 消えるのは貴様だああああああっ!」
バロンの剣撃が激しさを増す。
さらに速く、さらに重くなる攻撃を俺は剣で受け続け、そして反撃した。
「フッ!」
「ぐぎいいいっ!?」
絶え間なく振るわれる曲刀の間隙を縫うようにして、俺の刺突がバロンの左肩を捉えた。
乾いた身体からは血が流れることはなかったが、肩の筋肉が大きく抉られて砂となって崩れた。
「そんな馬鹿なっ・・・! なぜ私のスピードとパワーについてこれる!?」
「さあな、お前が弱くなったからじゃないか?」
「ふざけるなっ! そんなわけがあるかっ!」
バロンが俺の首を切り落とさんと真一文字に斬撃を見舞う。
俺は姿勢を落としてその一撃を躱して、低い姿勢から逆袈裟に斬り上げた。バロンの身体が斜めに裂かれ、傷口から砂が血のように噴き出した。
「ぐあああああっ!? そんな・・・こんなことはあり得ない! どうして私が押されているというのだっ!?」
バロンが目を血走らせて叫ぶ。
かつての武術大会では俺とバロンの実力はほぼ拮抗していた。にもかかわらず、死者の肉体を得てパワーアップした自分が一方的に斬られていることが信じられないのだろう。
俺はそんなバロンを憐れみすら込めた目で見やり、剣をクルリと翻した。
「バロン先輩、俺はアンタの剣が誰よりも苦手だった。質実剛健、巌のごとく固く堅実な守り。一瞬の油断を突くカウンター。まるでこちらの攻撃を予知しているかのように全ての技を防いでくるバロン・スフィンクスを鉄壁の防御は、まるで悪夢でも見ているようだったぜ・・・だけど、今のお前の剣は違うよな」
俺がバロン先輩の剣を苦手としていたのは、彼の剣の巧みな守りが苦手だったのだ。
しかし、今のバロンは死者となったことで得られた身体能力に溺れており、ひたすらパワーとスピードを駆使してゴリ押しのように攻めてきていた。
守りを捨てたバロンの剣は俺にとっては児戯のようにしか見えないものであり、捌くの容易である。
(たしかに重い。たしかに速い。だけど・・・ウチのオフクロの拳はもっと重い! キャプテン・ドレークの剣はもっと速い!)
グレイスやドレークだけではない。
俺の剣の師である親父だって今のバロンよりも遥かに鋭く剣を振るっていたし、帝国の猛将ベイオーク・ザガンの槍だって威力は負けていないだろう。
彼らとの出会いと戦いを経たうえで、今の俺の剣は完成した。
己の剣を見失ったバロン・スフィンクスの亡霊になど負けるわけがない。
「ただの力押しにやられるほど温い戦いはしてきてないんだよ。今のお前はせいぜい【豪腕英傑】を使ったサリヴァンと同レベルだよ」
「馬鹿な、馬鹿な、馬鹿な、馬鹿な馬鹿なばかなばかなばかなバカナバカナッ! 馬鹿なアアアアアアアアアアッ!!」
俺は斬撃を雨のように浴びせかけ、バロンの身体を斬り裂いていく。
当然ながらバロンも反撃をしてくるが、曲刀の刃は俺の身体を薄皮一枚断つことはなく、虚しく空を通り過ぎていった。
「ガアアアアアアアアアアアッ!!」
いよいよ追い詰められて、バロンの剣から精彩が消えた。子供が棒きれでチャンバラごっこをするような手つきで曲刀をぶん回し、腹の底から絶叫を上げる。
「バロン・スフィンクスとは何度も戦ったが・・・今回が一番つまらなかったぜ。もういい加減に眠れよ、お疲れさんっ!」
「アアアアアアアアアアアッ! 嘘だああああああアアアアアアアアアッ!!」
俺は絶望の咆哮を上げるバロンへと、鋼の刃を叩きつけた。
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