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第4章 砂漠陰謀編
40.汚泥とミイラ
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「うぐおっ・・・!」
光とともに激しい臭気が襲いかかってきた。俺は鼻をつまんで臭いを必死に堪えて、ジャールに問い詰める。
「なんだこれは・・・! 死臭? ちがう、この臭いは・・・!」
「も、申し訳ありません。隠し通路の出口を教えていませんでしたね」
ジャールも鼻をつまみながら俺の問いに答える。
「出口はトイレになっています。少しだけ臭いますが堪えてください!」
洞窟の先はまさかの便所だった。
俺は鼻をつまみながら激しい臭気をかき分けて穴から這い上がっていく。這い上がった出口は木で作られた便座になっており、汚物を捨てる穴が隠し通路になっていたのだ。
「恨むぞ、スフィンクスのジジイめ・・・! こうなることを知って、俺に指揮をとらせやがったな・・・!」
「本当に申し訳なく思っております・・・ご当主様も悪気はなかったと思うのですが・・・」
「悪気がなけりゃ何してもいいわけじゃねえだろ・・・絶対、なにか恨みがあるに違いない」
いったいどんな恨みがあれば、わざわざ東の果てから援軍に来た人間を便所に放り込むというのだ。
ずっと大切に磨き続けてきた宝石を奪い取られたとか、そんな動機がなければ納得ができない。
申し訳なさそうに頭を下げるジャールを押しのけてトイレから出た俺は、身に着けていた上着を投げ捨てた。
「・・・ああ、ちくしょう! まだ臭いが残っていやがる!」
「戻ったらすぐに湯を用意いたしますので・・・マクスウェル殿!」
「ん?」
『ガアアアアアアッ!』
ジャールが泡を食った叫びを上げた。同時に、俺の背後から大口を開けたミイラが噛みついてきた。
俺は背後を振り返ることなく首に喰いつこうとするアゴをつかみ、そのまま首をひねり上げる。ゴキリと鈍い音が鳴り、ミイラが砂になって俺の身体に降りかかる。
「ふん、糞尿よりはいくらかマシか。さんざん嗅ぎ慣れた臭いだしな」
ミイラの残骸を浴びたおかげで、便所の匂いがいくらか紛らわされた。もっとも、便臭から死臭に変わっただけなのだが。
「・・・さすがですね。マクスウェルの麒麟児の名は飾りではないということですか」
「褒めるのはロード級とやらを討ち取った後にしてもらおうか。さっさと要塞を案内してくれよ」
「承知いたしました・・・」
ジャールが頷き、俺達を先導して要塞の廊下を進んでいく。
要塞の外からは戦いの喧騒がここまで響いてきた。おそらく陽動の本隊が攻撃を始めたのだろう。おかげで、ほとんど死者と遭遇することなく要塞内部を進むことができた。
俺は先頭を進むジャールに声をかける。
「ロード級はどこにいるんだ? 外にいる可能性もあると思うが」
「そうですね・・・とりあえずは要塞内部を調べて、それから外壁を探してみましょう。まずは司令室に向かってみようと思うのですが・・・」
そこまで言ったところで、廊下の曲がり角から死者の群れが現れた。俺達の気配を察して戻ってきたのか、次々と死者の数が増えていく。
「チッ・・・! まだこんなにいやがったのか!」
「ひょっとしたら、ロード級が護衛として配置していたのかもしれません! やはりこの先に・・・」
「後ろからも敵が来ました!」
「ああっ!?」
後に続いていた兵士の声に振り替えると、俺達が進んできた道からも死者の群れが迫って来ていた。
前門の死者。後門も死者。完全な挟み撃ちであった。
「このまま進んでください! ここは俺達が引き受けます!」
冒険者部隊とスフィンクス家の兵士達が背後の敵に剣を向ける。
「それしかないな・・・! 任せたぞ!」
「前方の敵を突破して司令室まで一気に駆け抜けます! ついてきてください!」
ジャールが前方から迫る死者を剣で切り飛ばす。バロン先輩の副官をしていただけあって、その剣筋はなかなかに鋭い。
「ついてこい・・・? はっ、お前のほうこそ遅れるなよ!」
俺は裂帛の勢いで叫び、【無敵鉄鋼】を鞘から抜き放つ。
ミイラを数体、一振りで薙ぎ払って砂に還し、ジャールの背中を追い抜いて一気に廊下を駆け抜けた。
光とともに激しい臭気が襲いかかってきた。俺は鼻をつまんで臭いを必死に堪えて、ジャールに問い詰める。
「なんだこれは・・・! 死臭? ちがう、この臭いは・・・!」
「も、申し訳ありません。隠し通路の出口を教えていませんでしたね」
ジャールも鼻をつまみながら俺の問いに答える。
「出口はトイレになっています。少しだけ臭いますが堪えてください!」
洞窟の先はまさかの便所だった。
俺は鼻をつまみながら激しい臭気をかき分けて穴から這い上がっていく。這い上がった出口は木で作られた便座になっており、汚物を捨てる穴が隠し通路になっていたのだ。
「恨むぞ、スフィンクスのジジイめ・・・! こうなることを知って、俺に指揮をとらせやがったな・・・!」
「本当に申し訳なく思っております・・・ご当主様も悪気はなかったと思うのですが・・・」
「悪気がなけりゃ何してもいいわけじゃねえだろ・・・絶対、なにか恨みがあるに違いない」
いったいどんな恨みがあれば、わざわざ東の果てから援軍に来た人間を便所に放り込むというのだ。
ずっと大切に磨き続けてきた宝石を奪い取られたとか、そんな動機がなければ納得ができない。
申し訳なさそうに頭を下げるジャールを押しのけてトイレから出た俺は、身に着けていた上着を投げ捨てた。
「・・・ああ、ちくしょう! まだ臭いが残っていやがる!」
「戻ったらすぐに湯を用意いたしますので・・・マクスウェル殿!」
「ん?」
『ガアアアアアアッ!』
ジャールが泡を食った叫びを上げた。同時に、俺の背後から大口を開けたミイラが噛みついてきた。
俺は背後を振り返ることなく首に喰いつこうとするアゴをつかみ、そのまま首をひねり上げる。ゴキリと鈍い音が鳴り、ミイラが砂になって俺の身体に降りかかる。
「ふん、糞尿よりはいくらかマシか。さんざん嗅ぎ慣れた臭いだしな」
ミイラの残骸を浴びたおかげで、便所の匂いがいくらか紛らわされた。もっとも、便臭から死臭に変わっただけなのだが。
「・・・さすがですね。マクスウェルの麒麟児の名は飾りではないということですか」
「褒めるのはロード級とやらを討ち取った後にしてもらおうか。さっさと要塞を案内してくれよ」
「承知いたしました・・・」
ジャールが頷き、俺達を先導して要塞の廊下を進んでいく。
要塞の外からは戦いの喧騒がここまで響いてきた。おそらく陽動の本隊が攻撃を始めたのだろう。おかげで、ほとんど死者と遭遇することなく要塞内部を進むことができた。
俺は先頭を進むジャールに声をかける。
「ロード級はどこにいるんだ? 外にいる可能性もあると思うが」
「そうですね・・・とりあえずは要塞内部を調べて、それから外壁を探してみましょう。まずは司令室に向かってみようと思うのですが・・・」
そこまで言ったところで、廊下の曲がり角から死者の群れが現れた。俺達の気配を察して戻ってきたのか、次々と死者の数が増えていく。
「チッ・・・! まだこんなにいやがったのか!」
「ひょっとしたら、ロード級が護衛として配置していたのかもしれません! やはりこの先に・・・」
「後ろからも敵が来ました!」
「ああっ!?」
後に続いていた兵士の声に振り替えると、俺達が進んできた道からも死者の群れが迫って来ていた。
前門の死者。後門も死者。完全な挟み撃ちであった。
「このまま進んでください! ここは俺達が引き受けます!」
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「それしかないな・・・! 任せたぞ!」
「前方の敵を突破して司令室まで一気に駆け抜けます! ついてきてください!」
ジャールが前方から迫る死者を剣で切り飛ばす。バロン先輩の副官をしていただけあって、その剣筋はなかなかに鋭い。
「ついてこい・・・? はっ、お前のほうこそ遅れるなよ!」
俺は裂帛の勢いで叫び、【無敵鉄鋼】を鞘から抜き放つ。
ミイラを数体、一振りで薙ぎ払って砂に還し、ジャールの背中を追い抜いて一気に廊下を駆け抜けた。
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