俺もクズだが悪いのはお前らだ!

レオナール D

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第4章 砂漠陰謀編

31.疲れなき部隊

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「ハアッ・・・ハアッ・・・ハアッ・・・ハアッ」

 砦を囲んでいる『恐怖の軍勢』を釣り上げては倒し、釣り上げては倒し、その作業を四回も繰り返すと、さすがに背後に率いている冒険者達には疲労の色が目立ってきていた。

 俺達は全員、騎馬に乗ることなく走って敵と戦っていた。
    スフィンクス家が有している馬は住民の避難のために駆り出されているし、そもそも冒険者のほとんどは馬に乗って戦うことなどできないからだ。
 軽めの装備にしているとはいえ、敵と戦闘しながら数キロの距離を走り続けている冒険者達の動きは明らかに緩慢になってきている。

「ぐ、軍曹・・・! そろそろ限界です・・・もう走れません・・・」

「そうか、そろそろ補充が必要だな・・・っていうか、なんなんだその『軍曹』ってやつ」

「ハア、ハアッ、軍曹は軍曹です・・・それ以上でも、それ以下でもありません」

 冒険者の一人が荒い息をつきながら断言した。俺は首を傾げながら、冒険者達に『補充』をさせるために速度を緩めた。

「体力を回復するぞ。【豪腕英傑】!」

 俺は腕に嵌めた魔具を発動させる。銀色の光が俺を包み込んだ。
 銀の光を纏った状態で冒険者一人一人の身体に触れていき、彼らに力を流し込んでいく。

「ほいっ、元気でろー」

「おおっ! 力が湧き出てくるぞ!」

「まだまだ走れるぞ!」

【豪腕英傑】の力によって冒険者達の体力が回復した。それだけではなく、『恐怖の軍勢』との戦いによって負っていた傷までふさがっていく。
 一度は疲労による消耗から勢いを失った冒険者達は再び攻勢を取り戻し、死者の軍勢へと立ち向かっていく。
 不死の力を持つ腕輪を回復アイテムとして使用する。これはここ数日の検証によって生み出した新しい戦い方である。
 以前、馬に腕輪の力を流し込んで延々と走り続けたことがあったように、この魔具の力は自分以外の他人にも作用させることができる。
    その応用で率いている部隊全体に力を分け与えることができるのではないかと考えていたのだが、残念ながら触れていない相手にまで力を与えることはできなかった。
 しかし、一時的にでも力を流し込むことで体力や傷を癒すことは可能なようで、【霊薬魔具ポーション】の代わりにすることができた。

「疲労することもなく傷を負うこともない・・・とまではいかないかもしれないが、いつまでも戦い続けることができるのはこっちも同じだ。地獄の底まで付き合ってやるぜ」

「さすがに俺達はそこまでは付き合いきれないんですけど・・・」

 困ったような顔をする冒険者に苦笑しつつ、俺は再び部隊に反転を命じる。

「もう一度だ! 砦に向かって突撃!」

「おおっ!」

 俺達は再び砦を囲む死者の軍勢に向かって行き、彼らの一部を釣り上げようとする。

 しかし、そこで砦に変化が起こった。

「突撃いいいいいいいいッ!!」

「おおっ!?」

 突如として砦の城門が開かれ、スフィンクス家の兵士が飛び出してきた。
 砦から討って出てきた兵士達の士気は籠城の後とは思えないほど高く、臆することなく自分達の数倍の敵へと立ち向かっていく。
 その先頭に立っているのは褐色肌の壮年の男。バロン・スフィンクスとどことなく似た顔立ちで、手には曲刀が握られている。

「おいおい、病人だって聞いてたのに思いのほか元気じゃないか。西の辺境伯殿は」

 スフィンクス家の兵士達の先頭に立って剣を振っているのは、まぎれもなく西方辺境において最も権力を持っている人物。バロンとナームの父親であるベルト・スフィンクスその人であった。
 ベルトは兵士達の先頭に立って曲刀を振るい、次々と死者を斬り裂いていく。

「ええと、軍曹。どうしやしょうか」

 背後の冒険者が首を傾げて聞いてくる。俺は牙を剥いて笑いながら答える。

「決まっている。このまま砦の奴らに合わせて挟撃するぞ!」

 ベルトが率いる砦の兵士達へと『恐怖の軍勢』が群がっていく。俺はその背後へと部隊を進めて死者の軍勢の後方を突いた。

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