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第4章 砂漠陰謀編
22.長旅のご褒美
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複雑に入り組んだ石の町を進んでいき、坂道を登って行くとひときわ大きな建物にたどり着いた。
俺は門扉の前に所在なさげに立っている若い兵士に近づいて話しかける。
「よお、ちょっといいかい」
「ん、誰だ、お前は。ここは辺境伯様のお屋敷だ。無暗に近寄るな」
「すまんが、その辺境伯様に会わせてもらいたいんだが」
「はあ? ご当主様は留守だが、アンタはいったい・・・」
若い兵士が怪訝そうに眉をひそめて睨んでくる。腰の剣を抜いていないため敵だとは思われていないようだが、明らかに不審者を見る目であった。
俺は懐に手を入れて、鞘に納められた短剣を取り出した。刃物を取り出したことで兵士の手が剣の柄に伸びかけるが、抜き放たれるよりも先に短剣を兵士に差し出した。
短剣の柄にはマクスウェル家のエンブレムが刻まれている。貴族の紋章を目にして、兵士が驚きに目を見開いた。
「身分証だ。確認してくれ」
「この文様は・・・アンタ、いや、貴方はもしかして・・・」
兵士は差し出されたエンブレムを見て口調を改め、「ちょっと待っていていただきたい」と言い残して屋敷の門扉へと駆けていく。
「当主殿は留守か・・・さて、どうしたもんかな」
兵士の背中を見送り、俺は腕を組んでくの壁に背中を預けた。ぼんやりと空を見上げながら兵士が戻ってくるのを待つ。
流れる雲を見送りながら待っていると、屋敷の扉が勢いよく開け放たれた。
「ディンギルさま!」
「んっ?」
聞き覚えのある声にちらりと視線を横に流すと、屋敷の入り口に息を切らせて立っている少女の姿があった。
褐色の肌に金色の髪。俺の記憶にあるよりも少しだけ伸びた背丈。わずかに丸みを帯びて女性らしさを増してきた体つき。
俺の文通相手の少女、ナーム・スフィンクスであった。
「おお、ナームちゃんじゃないかって、はああっ!?」
成長したナームの姿に親戚気分でしみじみと感じ入ったのはわずかな間。すぐにナームの格好を見て泡を食った声を上げる。
「おいおい、その格好はいくら何でも不味いだろ・・・」
俺の視線の先、ナームはほとんど下着同然の肌着しか着ていなかったのだ。
白地の下着のおかげで、膨らみかけの胸や、ちゃんと食事をとっているのか不安になる細い下腹部は辛うじて隠すことができている。
しかし、細く伸びるしなやかな脚や、可愛らしいヘソは完全に露出しており、健康的な褐色の肌が存分に日の下にさらされていた。
(なんだこの感情は・・・女の肌を見て罪の意識を感じるのは初めてだ!)
チクチクと心臓に針が刺されるような感触に、俺は思わず胸を押さえた。
普段であればじっくりと目に焼き付けて鑑賞するところなのだが、不思議なほどに欲望が湧いてこない。それどころか、他に人目がないかと心配になってきた。
それは果たして、相手が食指の動かない子供だからか、それとも妹のように思っている少女が相手だからか。
「ディンギルさま! どうしてここに! いついらしたんですか!?」
ナームが靴も履かずにこちらに向かって駆けてきた。
ナームが足を動かすたび、金色の髪から水滴がポタポタと落ちていく。フロ上がりなのか髪は濡れ、肌もしっとりと湿っていた。
12歳の少女が半裸姿で走ってくる謎の光景にたじろいでしまい、俺は一歩、二歩と後ろに下がる。
「ちょ、ナーム! そんな恰好で表に出たらダメっ!」
屋敷の入り口から慌てた声が響き、新たな登場人物が姿を現した。
ナームと同色の肌と髪をもつ妙齢の美女である。その正体は、先日サンダーバード家で顔を合わせたミスト・カイロであった。
カイロ嬢は白いシーツを持ってナームの後ろを追いかけてきて、肌着姿の少女に頭からシーツを被せる。
「わわっ! ね、義姉さん!?」
「殿方の前ではしたないでしょう! ああ、もう! 嫁入り前の女の子なのに!」
「あうっ・・・ディンギルさま・・・!」
シーツに包まれたナームがずるずると引きずられていく。白いシーツの下で両脚をバタつかせ、こちらに向けて必死に手を伸ばしてくる。
ちなみに、ナームを連行するカイロ嬢の姿もまたナームと似たり寄ったりの肌着姿であった。
前に会ったときは身体の凹凸がわかりにくい喪服姿だったのでわからなかったが、こうして下着姿になると出るべきところはきっちりと出ている煽情的なボディである。
下着姿の二人が扉の向こうに消えていく。俺はその光景を最後まで見届けて、誰にともなくつぶやいた。
「いきなり、すごい歓迎だったな・・・来てよかったんだか悪かったんだか」
俺は顔をひきつらせて天を仰いだ。
西方で起こっている闘争も騒動も露知らず、抜けるような大空はびっくりするほど青々と澄みきっているのだった。
俺は門扉の前に所在なさげに立っている若い兵士に近づいて話しかける。
「よお、ちょっといいかい」
「ん、誰だ、お前は。ここは辺境伯様のお屋敷だ。無暗に近寄るな」
「すまんが、その辺境伯様に会わせてもらいたいんだが」
「はあ? ご当主様は留守だが、アンタはいったい・・・」
若い兵士が怪訝そうに眉をひそめて睨んでくる。腰の剣を抜いていないため敵だとは思われていないようだが、明らかに不審者を見る目であった。
俺は懐に手を入れて、鞘に納められた短剣を取り出した。刃物を取り出したことで兵士の手が剣の柄に伸びかけるが、抜き放たれるよりも先に短剣を兵士に差し出した。
短剣の柄にはマクスウェル家のエンブレムが刻まれている。貴族の紋章を目にして、兵士が驚きに目を見開いた。
「身分証だ。確認してくれ」
「この文様は・・・アンタ、いや、貴方はもしかして・・・」
兵士は差し出されたエンブレムを見て口調を改め、「ちょっと待っていていただきたい」と言い残して屋敷の門扉へと駆けていく。
「当主殿は留守か・・・さて、どうしたもんかな」
兵士の背中を見送り、俺は腕を組んでくの壁に背中を預けた。ぼんやりと空を見上げながら兵士が戻ってくるのを待つ。
流れる雲を見送りながら待っていると、屋敷の扉が勢いよく開け放たれた。
「ディンギルさま!」
「んっ?」
聞き覚えのある声にちらりと視線を横に流すと、屋敷の入り口に息を切らせて立っている少女の姿があった。
褐色の肌に金色の髪。俺の記憶にあるよりも少しだけ伸びた背丈。わずかに丸みを帯びて女性らしさを増してきた体つき。
俺の文通相手の少女、ナーム・スフィンクスであった。
「おお、ナームちゃんじゃないかって、はああっ!?」
成長したナームの姿に親戚気分でしみじみと感じ入ったのはわずかな間。すぐにナームの格好を見て泡を食った声を上げる。
「おいおい、その格好はいくら何でも不味いだろ・・・」
俺の視線の先、ナームはほとんど下着同然の肌着しか着ていなかったのだ。
白地の下着のおかげで、膨らみかけの胸や、ちゃんと食事をとっているのか不安になる細い下腹部は辛うじて隠すことができている。
しかし、細く伸びるしなやかな脚や、可愛らしいヘソは完全に露出しており、健康的な褐色の肌が存分に日の下にさらされていた。
(なんだこの感情は・・・女の肌を見て罪の意識を感じるのは初めてだ!)
チクチクと心臓に針が刺されるような感触に、俺は思わず胸を押さえた。
普段であればじっくりと目に焼き付けて鑑賞するところなのだが、不思議なほどに欲望が湧いてこない。それどころか、他に人目がないかと心配になってきた。
それは果たして、相手が食指の動かない子供だからか、それとも妹のように思っている少女が相手だからか。
「ディンギルさま! どうしてここに! いついらしたんですか!?」
ナームが靴も履かずにこちらに向かって駆けてきた。
ナームが足を動かすたび、金色の髪から水滴がポタポタと落ちていく。フロ上がりなのか髪は濡れ、肌もしっとりと湿っていた。
12歳の少女が半裸姿で走ってくる謎の光景にたじろいでしまい、俺は一歩、二歩と後ろに下がる。
「ちょ、ナーム! そんな恰好で表に出たらダメっ!」
屋敷の入り口から慌てた声が響き、新たな登場人物が姿を現した。
ナームと同色の肌と髪をもつ妙齢の美女である。その正体は、先日サンダーバード家で顔を合わせたミスト・カイロであった。
カイロ嬢は白いシーツを持ってナームの後ろを追いかけてきて、肌着姿の少女に頭からシーツを被せる。
「わわっ! ね、義姉さん!?」
「殿方の前ではしたないでしょう! ああ、もう! 嫁入り前の女の子なのに!」
「あうっ・・・ディンギルさま・・・!」
シーツに包まれたナームがずるずると引きずられていく。白いシーツの下で両脚をバタつかせ、こちらに向けて必死に手を伸ばしてくる。
ちなみに、ナームを連行するカイロ嬢の姿もまたナームと似たり寄ったりの肌着姿であった。
前に会ったときは身体の凹凸がわかりにくい喪服姿だったのでわからなかったが、こうして下着姿になると出るべきところはきっちりと出ている煽情的なボディである。
下着姿の二人が扉の向こうに消えていく。俺はその光景を最後まで見届けて、誰にともなくつぶやいた。
「いきなり、すごい歓迎だったな・・・来てよかったんだか悪かったんだか」
俺は顔をひきつらせて天を仰いだ。
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