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幕間 王都武術大会
12.トゲのある花のごとく
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side ナーム・スフィンクス
路地裏へ入り込んだ私に、背後からつけてきていた二人組の男達が一気に駆け寄ってきた。
「へへ、ちょっと待ちな」
男達は慣れた仕草で私の前後に回り込み、背後の壁へと追い詰めるように距離を縮めてきた。
「あら? 私に何か御用かしら」
私は手の平をあごの下へと添えて、首を傾げて尋ねる。
薄々、用件はわかっているのだが、冤罪を避けるために一応確認をしておく。
「わかってるんだろ、こんな路地裏に入り込んで。俺達を誘っているんだろ?」
「ちょっと遊んで行けよ。俺達、仕事の後で懐はあったかいんだ」
ニヤニヤと、見るからに下品な顔つきで男達が顔を近づけてくる。
男達の顔を赤くしていて、口からは酒の匂いがプンプンと臭ってきている。昼間から酒を飲んでいるようだ。
「ごめんなさいねえ、私、こう見えても身持ちは固いのよ。遊ぶのなら、他をあたってちょうだい?」
さりげなく鼻と口を隠して口臭を防ぎつつ、私はそっけなく男達を袖にする。
断られた男達は酒とは別の意味で、さらに顔を赤くさせた。
「ああっ!? こんな所まで誘い込んでおいて、そりゃねえだろうが!」
「こんなエロい恰好しやがって! 男を誘ってんだろ!? この淫売が!」
「・・・有罪」
私はクスリと笑い、男達への断罪を決めた。
長い脚をすばやく蹴り上げて、目の前の男の股間を蹴り上げる。
「はぎょっ!?」
勢いよく足を振り上げられて、男の足が地面から浮き上がる。
奇妙な悲鳴を上げて地面に倒れて、下腹部を押さえて転げまわる。
「あら、ごめんなさい。足が滑ってしまったわ」
「て、テメエ、何をしやが・・・!」
「今度は手が滑ったわ」
「ぎゃぷっ!」
私は右手を後方へと引いて、後ろの男のみぞおちに肘を突き入れる。
そのままクルリと身体を回転させて、振り返りざまに裏拳をアゴに叩きこんだ。
「げばらっ!?」
「あらあら、何度もごめんなさいね? 今日の私は手癖が悪くて行けないわ」
「ぐ、が・・・この・・・」
「手癖だけじゃなくて足癖も悪くなっちゃうわ。こんなふうにね?」
「ぐはっ・・・!」
トドメとばかりに、倒れた男の背中に踵落としを食らわせた。
二人の男が地面に沈み、そのうち一人は男性として再起不能になってしまった。
「王都の殿方はだらしないのね? 西の男のほうがタフでいいわね」
私はだらしなくも倒れた男達を陶然とした目で見下ろして、踵を鳴らして路地裏から立ち去ろうとした。
しかし、そんな私の前に新たな登場人物が現れた。
「ありゃりゃ、どうやら余計なお世話だったみたいだな」
それは若い男性だった。おそらく年齢は兄と同じくらいだろう。
私は瞳を細めて、男の頭からつま先までをゆっくりと観察する。
(強いわね・・・とても油断できるような相手じゃないわ)
誘拐事件に遭って以来、私は武術をたしなんでおり、父からはスジが良いと褒められている。暴漢くらいは撃退できるし、相手が弱いか強いか判断できる程度の腕前は持っていた。
そんな私の目から見て、目の前の男はかなりの腕前の持ち主だ。まさかとは思うが、兄に匹敵する実力の持ち主かもしれない。
私は民族衣装に包まれた脚をさりげなく前後に開き、いつでも相手の懐に飛び込めるように構えた。
「・・・こちらの方たちのお仲間かしら? ごめんなさいね、あなたのお友達はみなさん、眠ってしまったみたいよ?」
「いや、俺とこいつらは別に・・・」
「フッ!」
私は一足飛びで間合いを詰めて、男の首に抜き手を繰り出した。
「うおっ!? 急に何しやがる!?」
「速いわね・・・! こいつらとは一味違うってわけね!」
男はするりと首を横にずらして不意討ちの突きを避けた。男の動きは澄んだ流水のように淀みがなく、洗練されている。私は油断なく構えた。
「おいおい、ちょっと待てよ。俺は君のことを・・・」
「問答無用! 沈みなさい!」
今の攻防で相手との実力差を明確に理解できた。相手は自分よりも格上の相手だ。体勢を整える隙を与えてしまえば、敗北するのはこちらのほうだろう。
私はさらなる追撃をするべく、地面を蹴って宙へと舞った。
路地裏へ入り込んだ私に、背後からつけてきていた二人組の男達が一気に駆け寄ってきた。
「へへ、ちょっと待ちな」
男達は慣れた仕草で私の前後に回り込み、背後の壁へと追い詰めるように距離を縮めてきた。
「あら? 私に何か御用かしら」
私は手の平をあごの下へと添えて、首を傾げて尋ねる。
薄々、用件はわかっているのだが、冤罪を避けるために一応確認をしておく。
「わかってるんだろ、こんな路地裏に入り込んで。俺達を誘っているんだろ?」
「ちょっと遊んで行けよ。俺達、仕事の後で懐はあったかいんだ」
ニヤニヤと、見るからに下品な顔つきで男達が顔を近づけてくる。
男達の顔を赤くしていて、口からは酒の匂いがプンプンと臭ってきている。昼間から酒を飲んでいるようだ。
「ごめんなさいねえ、私、こう見えても身持ちは固いのよ。遊ぶのなら、他をあたってちょうだい?」
さりげなく鼻と口を隠して口臭を防ぎつつ、私はそっけなく男達を袖にする。
断られた男達は酒とは別の意味で、さらに顔を赤くさせた。
「ああっ!? こんな所まで誘い込んでおいて、そりゃねえだろうが!」
「こんなエロい恰好しやがって! 男を誘ってんだろ!? この淫売が!」
「・・・有罪」
私はクスリと笑い、男達への断罪を決めた。
長い脚をすばやく蹴り上げて、目の前の男の股間を蹴り上げる。
「はぎょっ!?」
勢いよく足を振り上げられて、男の足が地面から浮き上がる。
奇妙な悲鳴を上げて地面に倒れて、下腹部を押さえて転げまわる。
「あら、ごめんなさい。足が滑ってしまったわ」
「て、テメエ、何をしやが・・・!」
「今度は手が滑ったわ」
「ぎゃぷっ!」
私は右手を後方へと引いて、後ろの男のみぞおちに肘を突き入れる。
そのままクルリと身体を回転させて、振り返りざまに裏拳をアゴに叩きこんだ。
「げばらっ!?」
「あらあら、何度もごめんなさいね? 今日の私は手癖が悪くて行けないわ」
「ぐ、が・・・この・・・」
「手癖だけじゃなくて足癖も悪くなっちゃうわ。こんなふうにね?」
「ぐはっ・・・!」
トドメとばかりに、倒れた男の背中に踵落としを食らわせた。
二人の男が地面に沈み、そのうち一人は男性として再起不能になってしまった。
「王都の殿方はだらしないのね? 西の男のほうがタフでいいわね」
私はだらしなくも倒れた男達を陶然とした目で見下ろして、踵を鳴らして路地裏から立ち去ろうとした。
しかし、そんな私の前に新たな登場人物が現れた。
「ありゃりゃ、どうやら余計なお世話だったみたいだな」
それは若い男性だった。おそらく年齢は兄と同じくらいだろう。
私は瞳を細めて、男の頭からつま先までをゆっくりと観察する。
(強いわね・・・とても油断できるような相手じゃないわ)
誘拐事件に遭って以来、私は武術をたしなんでおり、父からはスジが良いと褒められている。暴漢くらいは撃退できるし、相手が弱いか強いか判断できる程度の腕前は持っていた。
そんな私の目から見て、目の前の男はかなりの腕前の持ち主だ。まさかとは思うが、兄に匹敵する実力の持ち主かもしれない。
私は民族衣装に包まれた脚をさりげなく前後に開き、いつでも相手の懐に飛び込めるように構えた。
「・・・こちらの方たちのお仲間かしら? ごめんなさいね、あなたのお友達はみなさん、眠ってしまったみたいよ?」
「いや、俺とこいつらは別に・・・」
「フッ!」
私は一足飛びで間合いを詰めて、男の首に抜き手を繰り出した。
「うおっ!? 急に何しやがる!?」
「速いわね・・・! こいつらとは一味違うってわけね!」
男はするりと首を横にずらして不意討ちの突きを避けた。男の動きは澄んだ流水のように淀みがなく、洗練されている。私は油断なく構えた。
「おいおい、ちょっと待てよ。俺は君のことを・・・」
「問答無用! 沈みなさい!」
今の攻防で相手との実力差を明確に理解できた。相手は自分よりも格上の相手だ。体勢を整える隙を与えてしまえば、敗北するのはこちらのほうだろう。
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