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第3章 南海冒険編
61.海底都市の終わり
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ドレークを飲み込んだ黄金の斬撃は、聖堂の壁を大きく破壊して突き抜けていった。
聖堂の外は大蛇が這い進んで行ったかのように地面が大きくえぐられており、斬撃の直線上にあった建物はことごとく破壊されている。
「かっ・・・ハアッ・・・ハアッ・・・」
俺は荒い呼吸を繰り返しながら、地面に剣を突き立てて崩れ落ちそうになる身体を支えた。
激しい疲労で頭が白くなっていく。気絶しないで立っているのがやっとであった。
堅い城塞でさえ粉々にしてしまうであろう一撃は明らかに人の領分を超えており、戦場という概念すら崩壊してしまうような理不尽な攻撃であった。
「とはいえ・・・これは戦では使えそうにないな。こんな消耗しちまったら指揮がとれやしない・・・」
まさに、切り札の中の切り札。
ドレークが『天主帝釈』と呼んでいた技を、俺は禁じ手にすることに決めた。
「それよりも・・・」
「か・・・・・・は・・・・・・」
「・・・おいおい、これでも生きてるとか勘弁してくれよ?」
聖堂に空いた穴から外に出て、破壊の道筋をたどっていく。
数十メートルほど歩いたところに、真っ黒に焼け焦げた男が横たわっていた。
「・・・ああ、まったく。本当にどうやったらお前を殺せるんだよ。いい加減にお前の相手も飽きてきたぞ?」
倒れていた男は、やはりキャプテン・ドレークであった。
ドレークは下半身が消し飛んでおり、残った腰から上も炭のように真っ黒になっている。
黒く焦げた顔の口に当たる部分が微かに動き、かすれた声が漏れ出てきた。
「しんぱい・・・するな・・・不死の呪いは、すでに・・・けしとんでいる・・・・・・このまま、死ぬだろう・・・」
「・・・そうかよ、安心した」
言葉とは裏腹に、俺の胸の中には寂しさに似た感情がわき出てきた。
いよいよ別れの時が近づいてきてようやく気がついたのだが、俺はどうやらドレークという男との別れを惜しんでいるらしい。
「・・・ひとつ、おしえておく。ディンギル・・・マクスウェル・・・」
「なんだよ。死に損ない」
「その剣は、邪神をころすための剣だ・・・そのために存在する、魔具の力を打ち消すなど・・・タダのおまけだ・・・」
「・・・そうらしいな。それがどうした?」
俺の問いかけに、わずかにドレークが頷く。
「剣がお前を選んだのは・・・ひょっとしたら、ころすべき敵がのこっているから・・・かも、しれない・・・」
「・・・・・・」
「邪神が、人類の敵が・・・まだこの世に・・・残っているかもしれない・・・」
「ッ・・・!」
その言葉に、俺の表情が歪む。
ドレークの言葉には明確な根拠があるわけではないが、万一この世に人類に敵対する神が残っているとすれば、マクスウェル家にとっても脅威となるだろう。
「はっ・・・わたしにとっては、これで終わりだが・・・お前の戦いは、これから・・・なんだぜ?」
「そうか・・・」
俺は短く応えて、頷いた。
「邪神だろうが、どこぞの貴族や王族だろうが、俺の野望の前に立ちふさがる者は一人残らず叩き斬る。そんでもって、女はひん剥いて押し倒して抱きまくってやるよ。百年経とうが、千年経とうが、俺のやることに変わりはねえ」
「ははっ・・・強いなあ・・・さすがは、グレイスの・・・」
ドレークは瞳を閉じて、深く深く息を吐き出した。
「良き・・・死に場所だ・・・ようやく、お前たちのところへ・・・」
その言葉を最後に、ドレークの身体が白く染まっていく。
やがてそれは塩の固まりとなり音もなく崩れていく。そして、風もないのにサラサラとどこかに消えていった。
「・・・さらばだ、キャプテン・ドレーク。いや・・・伯父上」
俺は目を閉じて黙祷を捧げて、過去最強の敵であった男の冥福を祈った。
ドオオオオオオオオンッ!!
「あ・・・なんだあ!?」
「おおい、馬鹿息子おおおおおっ!」
「オフクロ!?」
遠くで母の声がする。
慌てて首を巡らせると、海底都市の天上へと延びた鎖にぶら下がるグレイスの姿があった。
「お前の攻撃のせいで、アトランティスを覆っている結界が壊れたぞお! 海水がなだれ込んでくるから、さっさと脱出するぞお!」
「はあっ!? ちょ、まちやがれ!!」
泡を食って叫ぶが、グレイスはぶんぶんと手を振って猿のような身軽さで鎖を上っていく。
「お前も早く来ないと死ぬぞお! 先に行って待ってるからなあ!」
「ま、待て待て待て! こっちは満身創痍で・・・!」
「ガハハハハハ! 可愛い子は谷に突き落とせだあ!」
「あ、こら! このクソババアアアアアアッ!!」
グレイスは笑いながら天上へと消えていった。
次の瞬間、ガラスが割れるように仮初めの空に亀裂が入り、瀑布のように海水が流れ込んできた。
「だあああああああああッ!?」
俺の身体は海水にもみくちゃにされて押し流され、海底都市の外へと放り出された。
聖堂の外は大蛇が這い進んで行ったかのように地面が大きくえぐられており、斬撃の直線上にあった建物はことごとく破壊されている。
「かっ・・・ハアッ・・・ハアッ・・・」
俺は荒い呼吸を繰り返しながら、地面に剣を突き立てて崩れ落ちそうになる身体を支えた。
激しい疲労で頭が白くなっていく。気絶しないで立っているのがやっとであった。
堅い城塞でさえ粉々にしてしまうであろう一撃は明らかに人の領分を超えており、戦場という概念すら崩壊してしまうような理不尽な攻撃であった。
「とはいえ・・・これは戦では使えそうにないな。こんな消耗しちまったら指揮がとれやしない・・・」
まさに、切り札の中の切り札。
ドレークが『天主帝釈』と呼んでいた技を、俺は禁じ手にすることに決めた。
「それよりも・・・」
「か・・・・・・は・・・・・・」
「・・・おいおい、これでも生きてるとか勘弁してくれよ?」
聖堂に空いた穴から外に出て、破壊の道筋をたどっていく。
数十メートルほど歩いたところに、真っ黒に焼け焦げた男が横たわっていた。
「・・・ああ、まったく。本当にどうやったらお前を殺せるんだよ。いい加減にお前の相手も飽きてきたぞ?」
倒れていた男は、やはりキャプテン・ドレークであった。
ドレークは下半身が消し飛んでおり、残った腰から上も炭のように真っ黒になっている。
黒く焦げた顔の口に当たる部分が微かに動き、かすれた声が漏れ出てきた。
「しんぱい・・・するな・・・不死の呪いは、すでに・・・けしとんでいる・・・・・・このまま、死ぬだろう・・・」
「・・・そうかよ、安心した」
言葉とは裏腹に、俺の胸の中には寂しさに似た感情がわき出てきた。
いよいよ別れの時が近づいてきてようやく気がついたのだが、俺はどうやらドレークという男との別れを惜しんでいるらしい。
「・・・ひとつ、おしえておく。ディンギル・・・マクスウェル・・・」
「なんだよ。死に損ない」
「その剣は、邪神をころすための剣だ・・・そのために存在する、魔具の力を打ち消すなど・・・タダのおまけだ・・・」
「・・・そうらしいな。それがどうした?」
俺の問いかけに、わずかにドレークが頷く。
「剣がお前を選んだのは・・・ひょっとしたら、ころすべき敵がのこっているから・・・かも、しれない・・・」
「・・・・・・」
「邪神が、人類の敵が・・・まだこの世に・・・残っているかもしれない・・・」
「ッ・・・!」
その言葉に、俺の表情が歪む。
ドレークの言葉には明確な根拠があるわけではないが、万一この世に人類に敵対する神が残っているとすれば、マクスウェル家にとっても脅威となるだろう。
「はっ・・・わたしにとっては、これで終わりだが・・・お前の戦いは、これから・・・なんだぜ?」
「そうか・・・」
俺は短く応えて、頷いた。
「邪神だろうが、どこぞの貴族や王族だろうが、俺の野望の前に立ちふさがる者は一人残らず叩き斬る。そんでもって、女はひん剥いて押し倒して抱きまくってやるよ。百年経とうが、千年経とうが、俺のやることに変わりはねえ」
「ははっ・・・強いなあ・・・さすがは、グレイスの・・・」
ドレークは瞳を閉じて、深く深く息を吐き出した。
「良き・・・死に場所だ・・・ようやく、お前たちのところへ・・・」
その言葉を最後に、ドレークの身体が白く染まっていく。
やがてそれは塩の固まりとなり音もなく崩れていく。そして、風もないのにサラサラとどこかに消えていった。
「・・・さらばだ、キャプテン・ドレーク。いや・・・伯父上」
俺は目を閉じて黙祷を捧げて、過去最強の敵であった男の冥福を祈った。
ドオオオオオオオオンッ!!
「あ・・・なんだあ!?」
「おおい、馬鹿息子おおおおおっ!」
「オフクロ!?」
遠くで母の声がする。
慌てて首を巡らせると、海底都市の天上へと延びた鎖にぶら下がるグレイスの姿があった。
「お前の攻撃のせいで、アトランティスを覆っている結界が壊れたぞお! 海水がなだれ込んでくるから、さっさと脱出するぞお!」
「はあっ!? ちょ、まちやがれ!!」
泡を食って叫ぶが、グレイスはぶんぶんと手を振って猿のような身軽さで鎖を上っていく。
「お前も早く来ないと死ぬぞお! 先に行って待ってるからなあ!」
「ま、待て待て待て! こっちは満身創痍で・・・!」
「ガハハハハハ! 可愛い子は谷に突き落とせだあ!」
「あ、こら! このクソババアアアアアアッ!!」
グレイスは笑いながら天上へと消えていった。
次の瞬間、ガラスが割れるように仮初めの空に亀裂が入り、瀑布のように海水が流れ込んできた。
「だあああああああああッ!?」
俺の身体は海水にもみくちゃにされて押し流され、海底都市の外へと放り出された。
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