俺もクズだが悪いのはお前らだ!

レオナール D

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第3章 南海冒険編

45.抗議と言い訳、そして情事

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 深夜の密会を終えて、俺は港に停泊している船まで戻ってきた。
 寝室として使っている船長室に入ると、ベッドの上にサクヤとスーの姿があった。
 二人はなぜか一糸まとわぬ全裸の状態で、ぐったりと横たわるスーの身体をまたぐようにしてサクヤが仁王立ちしていた。

「今日は勝ちました。テクニックの勝利です」

「・・・そうか、よかったな」

 どうやらサクヤは先日のリベンジを果たしたらしい。無表情な顔にはどこか誇らしげな色が浮かんでいる。
 自分のいない間にこの二人が何をしていたのか非常に気になるところであるが、俺は考えをまとめるために椅子に腰かけた。

「どうでしたか、この国の宰相とやらのお話は?」

「どうって・・・そうだな・・・」

 俺は屋敷でラウロスから受けた依頼についてサクヤに説明した。
 話を聞いているうちに、サクヤの目元が見る見る険しくなっていく。

「・・・まさか、そのお話を受けたのですか?」

「んー・・・どうだったかなあ。よく覚えてないんだが」

「・・・受けたんですね。またお戯れを」

 サクヤが眉尻をへにゃりと下げて、ふう、とため息をついた。

「この国を救ったところでディンギル様に得があるとは思えません。すぐに船を出すべきです」

 サクヤは従順なメイドにしては珍しく、強い口調で主張してきた。
 椅子に座った俺へと、裸のまま詰め寄ってくる。

「そもそも、私達がこの国に来たのはスーを送り届けるためでしょう? その約束を果たした以上、長居は無用です。無意味な危険を冒すべきではないでしょうに」

「だよな・・・正論、ありがとうよ」

 サクヤが口にした事はまごうことなく正論である。
 遠からずマクスウェル家に戻る俺達にとって、この国の国民がどんな目に遭おうと関係のない話である。
 対岸の火事に首を突っ込んで火傷をするなど、辺境伯家の後継ぎという責任ある立場の人間がするべきことではなかった。

 俺は間近にあるサクヤの顔から目を背けて、船室の天井に吊るされたランプへと目を向けた。
 ゆらゆらと揺れる小さな炎を見つつ、サクヤを納得させられる言い訳を探す。

「・・・別にボランティアってわけじゃないぞ? 報酬はきちんと貰えるからな」

「一度は滅んだ国から貰える物などたかが知れています。ディンギル様の命に並ぶ物などありません!」

 きっぱりと言い切り、サクヤは俺の顔をつかんで引き寄せて強引に目を合わせる。

「まさかとは思いますが、スーのためではないでしょうね?」

「うっ・・・」

「それとも、磔にされた修道女のためですか? マクスウェルの麒麟児が情に流されたわけではないでしょう?」

「違う、違うからな!?」

 浮気をとがめるような口調にたじろぎながら、俺はサクヤの両手を振り払った。
 この国で生まれ育ったスーに、信仰に身をささげたまま死んでいった修道女達に、思うところが全くないかと聞かれればそれは嘘になる。
 しかし、別にそれだけが理由ではない。

「キャプテン・ドレーク・・・俺はどうもあの男が気になるんだよ」

「獅子王船団の提督、この国の統治を任されている男ですね」

「ああ」

 サクヤの言葉に俺は頷いた。
 暗殺のターゲットでもあるドレークという男のことを聞いてからというもの、俺の背中にチリチリと焦げつくような感覚があった。
 焦燥か、それとも苛立ちか。あったこともないはずの男のことが頭について仕方がない。

「運命・・・と呼ぶのは気持ちが悪いな。これはたぶん、因縁ってやつだ。ともに天をいただくことができない宿敵と巡り合ったような奇妙な縁を感じるんだよ」

「縁・・・ですか?」

「賭けてもいい。ここでこの国を出ていったとしても、俺はいつか必ず、キャプテン・ドレークという男と巡り合って戦うことになるだろう。野郎と赤い糸で結ばれてるなんて鬱陶しくて仕方がない。早めに断ち切っておくに限る」

「・・・そこまでおっしゃるのであれば、是非もありませんね」

 サクヤは深々と息をついて、背後に回って俺の胸元へと手を回してきた。耳元へと唇を寄せて、チロリと舌を出しながら囁いてくる。

「ディンギル様が覚悟を決めているのであれば、地獄の底までお供いたします。私の終生の主にして、魂の夫。愛しいお方のわがままですから」

「面倒をかけるな・・・いまさらだけど」

 俺は首を巡らして振り返り、サクヤの唇に自分の唇を重ねる。
 最初は触れ合うだけの軽いキス。徐々に舌を絡め、お互いの唾液を交換するような濃厚な接吻へと変わっていく。

「はうっ・・・すごいです。ご主人様もサクヤさんもあんなに舌をペロペロさせて・・・」

 いつの間に意識を取り戻したのか、スーが布団を頭までかぶって俺達のことを見つめていた。
    日焼けした肌をさらに真っ赤にして、両の眼を充血するほど見開いている。

 俺はサクヤの唇を開放して、牙を剥くようにして笑った。

「暗殺の決行は明日の夜だ。景気づけに今夜は楽しむとしようか」

「んっ・・・!」

「ひゃっ! ご主人様!?」

 俺はサクヤの身体を抱きかかえて、スーの隣へ放り投げる。
 そして、ベッドに並んだ二人の美少女へと服をはだけて覆いかぶさった。
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