146 / 317
第3章 南海冒険編
45.抗議と言い訳、そして情事
しおりを挟む
深夜の密会を終えて、俺は港に停泊している船まで戻ってきた。
寝室として使っている船長室に入ると、ベッドの上にサクヤとスーの姿があった。
二人はなぜか一糸まとわぬ全裸の状態で、ぐったりと横たわるスーの身体をまたぐようにしてサクヤが仁王立ちしていた。
「今日は勝ちました。テクニックの勝利です」
「・・・そうか、よかったな」
どうやらサクヤは先日のリベンジを果たしたらしい。無表情な顔にはどこか誇らしげな色が浮かんでいる。
自分のいない間にこの二人が何をしていたのか非常に気になるところであるが、俺は考えを纏めるために椅子に腰かけた。
「どうでしたか、この国の宰相とやらのお話は?」
「どうって・・・そうだな・・・」
俺は屋敷でラウロスから受けた依頼についてサクヤに説明した。
話を聞いているうちに、サクヤの目元が見る見る険しくなっていく。
「・・・まさか、そのお話を受けたのですか?」
「んー・・・どうだったかなあ。よく覚えてないんだが」
「・・・受けたんですね。またお戯れを」
サクヤが眉尻をへにゃりと下げて、ふう、とため息をついた。
「この国を救ったところでディンギル様に得があるとは思えません。すぐに船を出すべきです」
サクヤは従順なメイドにしては珍しく、強い口調で主張してきた。
椅子に座った俺へと、裸のまま詰め寄ってくる。
「そもそも、私達がこの国に来たのはスーを送り届けるためでしょう? その約束を果たした以上、長居は無用です。無意味な危険を冒すべきではないでしょうに」
「だよな・・・正論、ありがとうよ」
サクヤが口にした事はまごうことなく正論である。
遠からずマクスウェル家に戻る俺達にとって、この国の国民がどんな目に遭おうと関係のない話である。
対岸の火事に首を突っ込んで火傷をするなど、辺境伯家の後継ぎという責任ある立場の人間がするべきことではなかった。
俺は間近にあるサクヤの顔から目を背けて、船室の天井に吊るされたランプへと目を向けた。
ゆらゆらと揺れる小さな炎を見つつ、サクヤを納得させられる言い訳を探す。
「・・・別にボランティアってわけじゃないぞ? 報酬はきちんと貰えるからな」
「一度は滅んだ国から貰える物などたかが知れています。ディンギル様の命に並ぶ物などありません!」
きっぱりと言い切り、サクヤは俺の顔をつかんで引き寄せて強引に目を合わせる。
「まさかとは思いますが、スーのためではないでしょうね?」
「うっ・・・」
「それとも、磔にされた修道女のためですか? マクスウェルの麒麟児が情に流されたわけではないでしょう?」
「違う、違うからな!?」
浮気をとがめるような口調にたじろぎながら、俺はサクヤの両手を振り払った。
この国で生まれ育ったスーに、信仰に身をささげたまま死んでいった修道女達に、思うところが全くないかと聞かれればそれは嘘になる。
しかし、別にそれだけが理由ではない。
「キャプテン・ドレーク・・・俺はどうもあの男が気になるんだよ」
「獅子王船団の提督、この国の統治を任されている男ですね」
「ああ」
サクヤの言葉に俺は頷いた。
暗殺のターゲットでもあるドレークという男のことを聞いてからというもの、俺の背中にチリチリと焦げつくような感覚があった。
焦燥か、それとも苛立ちか。あったこともないはずの男のことが頭について仕方がない。
「運命・・・と呼ぶのは気持ちが悪いな。これはたぶん、因縁ってやつだ。倶に天を戴くことができない宿敵と巡り合ったような奇妙な縁を感じるんだよ」
「縁・・・ですか?」
「賭けてもいい。ここでこの国を出ていったとしても、俺はいつか必ず、キャプテン・ドレークという男と巡り合って戦うことになるだろう。野郎と赤い糸で結ばれてるなんて鬱陶しくて仕方がない。早めに断ち切っておくに限る」
「・・・そこまでおっしゃるのであれば、是非もありませんね」
サクヤは深々と息をついて、背後に回って俺の胸元へと手を回してきた。耳元へと唇を寄せて、チロリと舌を出しながら囁いてくる。
「ディンギル様が覚悟を決めているのであれば、地獄の底までお供いたします。私の終生の主にして、魂の夫。愛しいお方のわがままですから」
「面倒をかけるな・・・いまさらだけど」
俺は首を巡らして振り返り、サクヤの唇に自分の唇を重ねる。
最初は触れ合うだけの軽いキス。徐々に舌を絡め、お互いの唾液を交換するような濃厚な接吻へと変わっていく。
「はうっ・・・すごいです。ご主人様もサクヤさんもあんなに舌をペロペロさせて・・・」
いつの間に意識を取り戻したのか、スーが布団を頭までかぶって俺達のことを見つめていた。
日焼けした肌をさらに真っ赤にして、両の眼を充血するほど見開いている。
俺はサクヤの唇を開放して、牙を剥くようにして笑った。
「暗殺の決行は明日の夜だ。景気づけに今夜は楽しむとしようか」
「んっ・・・!」
「ひゃっ! ご主人様!?」
俺はサクヤの身体を抱きかかえて、スーの隣へ放り投げる。
そして、ベッドに並んだ二人の美少女へと服をはだけて覆いかぶさった。
寝室として使っている船長室に入ると、ベッドの上にサクヤとスーの姿があった。
二人はなぜか一糸まとわぬ全裸の状態で、ぐったりと横たわるスーの身体をまたぐようにしてサクヤが仁王立ちしていた。
「今日は勝ちました。テクニックの勝利です」
「・・・そうか、よかったな」
どうやらサクヤは先日のリベンジを果たしたらしい。無表情な顔にはどこか誇らしげな色が浮かんでいる。
自分のいない間にこの二人が何をしていたのか非常に気になるところであるが、俺は考えを纏めるために椅子に腰かけた。
「どうでしたか、この国の宰相とやらのお話は?」
「どうって・・・そうだな・・・」
俺は屋敷でラウロスから受けた依頼についてサクヤに説明した。
話を聞いているうちに、サクヤの目元が見る見る険しくなっていく。
「・・・まさか、そのお話を受けたのですか?」
「んー・・・どうだったかなあ。よく覚えてないんだが」
「・・・受けたんですね。またお戯れを」
サクヤが眉尻をへにゃりと下げて、ふう、とため息をついた。
「この国を救ったところでディンギル様に得があるとは思えません。すぐに船を出すべきです」
サクヤは従順なメイドにしては珍しく、強い口調で主張してきた。
椅子に座った俺へと、裸のまま詰め寄ってくる。
「そもそも、私達がこの国に来たのはスーを送り届けるためでしょう? その約束を果たした以上、長居は無用です。無意味な危険を冒すべきではないでしょうに」
「だよな・・・正論、ありがとうよ」
サクヤが口にした事はまごうことなく正論である。
遠からずマクスウェル家に戻る俺達にとって、この国の国民がどんな目に遭おうと関係のない話である。
対岸の火事に首を突っ込んで火傷をするなど、辺境伯家の後継ぎという責任ある立場の人間がするべきことではなかった。
俺は間近にあるサクヤの顔から目を背けて、船室の天井に吊るされたランプへと目を向けた。
ゆらゆらと揺れる小さな炎を見つつ、サクヤを納得させられる言い訳を探す。
「・・・別にボランティアってわけじゃないぞ? 報酬はきちんと貰えるからな」
「一度は滅んだ国から貰える物などたかが知れています。ディンギル様の命に並ぶ物などありません!」
きっぱりと言い切り、サクヤは俺の顔をつかんで引き寄せて強引に目を合わせる。
「まさかとは思いますが、スーのためではないでしょうね?」
「うっ・・・」
「それとも、磔にされた修道女のためですか? マクスウェルの麒麟児が情に流されたわけではないでしょう?」
「違う、違うからな!?」
浮気をとがめるような口調にたじろぎながら、俺はサクヤの両手を振り払った。
この国で生まれ育ったスーに、信仰に身をささげたまま死んでいった修道女達に、思うところが全くないかと聞かれればそれは嘘になる。
しかし、別にそれだけが理由ではない。
「キャプテン・ドレーク・・・俺はどうもあの男が気になるんだよ」
「獅子王船団の提督、この国の統治を任されている男ですね」
「ああ」
サクヤの言葉に俺は頷いた。
暗殺のターゲットでもあるドレークという男のことを聞いてからというもの、俺の背中にチリチリと焦げつくような感覚があった。
焦燥か、それとも苛立ちか。あったこともないはずの男のことが頭について仕方がない。
「運命・・・と呼ぶのは気持ちが悪いな。これはたぶん、因縁ってやつだ。倶に天を戴くことができない宿敵と巡り合ったような奇妙な縁を感じるんだよ」
「縁・・・ですか?」
「賭けてもいい。ここでこの国を出ていったとしても、俺はいつか必ず、キャプテン・ドレークという男と巡り合って戦うことになるだろう。野郎と赤い糸で結ばれてるなんて鬱陶しくて仕方がない。早めに断ち切っておくに限る」
「・・・そこまでおっしゃるのであれば、是非もありませんね」
サクヤは深々と息をついて、背後に回って俺の胸元へと手を回してきた。耳元へと唇を寄せて、チロリと舌を出しながら囁いてくる。
「ディンギル様が覚悟を決めているのであれば、地獄の底までお供いたします。私の終生の主にして、魂の夫。愛しいお方のわがままですから」
「面倒をかけるな・・・いまさらだけど」
俺は首を巡らして振り返り、サクヤの唇に自分の唇を重ねる。
最初は触れ合うだけの軽いキス。徐々に舌を絡め、お互いの唾液を交換するような濃厚な接吻へと変わっていく。
「はうっ・・・すごいです。ご主人様もサクヤさんもあんなに舌をペロペロさせて・・・」
いつの間に意識を取り戻したのか、スーが布団を頭までかぶって俺達のことを見つめていた。
日焼けした肌をさらに真っ赤にして、両の眼を充血するほど見開いている。
俺はサクヤの唇を開放して、牙を剥くようにして笑った。
「暗殺の決行は明日の夜だ。景気づけに今夜は楽しむとしようか」
「んっ・・・!」
「ひゃっ! ご主人様!?」
俺はサクヤの身体を抱きかかえて、スーの隣へ放り投げる。
そして、ベッドに並んだ二人の美少女へと服をはだけて覆いかぶさった。
0
お気に入りに追加
6,111
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜
水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。
その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。
危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。
彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。
初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。
そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。
警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。
これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。
間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ
ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。
間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。
多分不具合だとおもう。
召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。
そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます
◇
四巻が販売されました!
今日から四巻の範囲がレンタルとなります
書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます
追加場面もあります
よろしくお願いします!
一応191話で終わりとなります
最後まで見ていただきありがとうございました
コミカライズもスタートしています
毎月最初の金曜日に更新です
お楽しみください!
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

チートな嫁たちに囲まれて異世界で暮らしています
もぶぞう
ファンタジー
森でナギサを拾ってくれたのはダークエルフの女性だった。
使命が有る訳でも無い男が強い嫁を増やしながら異世界で暮らす話です(予定)。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。