133 / 317
第3章 南海冒険編
32.戦いの終わり
しおりを挟む
ドオオオオオオオオオオン!
「なんて、恐ろしい」
爆炎を上げて沈んでいく海賊船を見ながら、サクヤが顔を青ざめさせた。
俺とサクヤは、乗組員を皆殺しにした船から、周囲の海賊船を眺めている。
大小200隻はあった海賊船も、すでに半数近くが海の藻屑に代わっていた。
また一つ、目の前で大型船が火を上げて横倒しになり、近くの小型船を巻き込んで海の底へと消えていく。
「まさか、あの奴隷の女がこれほどのことをしでかすとは・・・危険ですね」
「そう言ってやるなよ。ああ見えて、脱ぐと良い身体をしてるんだぜ?」
「・・・そんなことは聞いていません。あの能力を暗殺や諜報に使われたら、対処の使用がありません」
サクヤが不満そうにこちらを睨んでいってくる。
暗殺、諜報を生業とする『鋼牙』もタカやフクロウを使役することはあるが、せいぜい伝書鳩のように手紙を運ばせるくらいのものである。
あれほど見事に海鳥を操ることができる者などいなかった。
「そうだな・・・鳥を使っての偵察。ネズミや猫を家に侵入させて毒を仕込む。やり方次第ではいくらでも悪用ができる能力だ」
「本当に敵でなくてよかったですね・・・よければ、あの娘を『鋼牙』に預けてみてはどうでしょう? きっと、有能な暗殺者になりますよ」
サクヤの言葉に俺はしばらく考えて、やがて首を横に振った。
「それも悪くはないが・・・残念ながら、彼女が俺の奴隷になっているのはガーネット王国につくまでの期間限定だ。守れる約束は守らないとな」
「そんな約束はどうとでもなるでしょう? いつものように、夜の手練手管で虜にしてしまえば良いでしょうに」
「そうだなあ・・・」
揶揄するように言ってくるサクヤに苦笑を返して、俺は海鳥が舞う空を見上げた。
あの能力は放置するにはあまりにも危険で、ついでにあの美貌は手放すにはあまりにも勿体ない。
ずっと手元に置いておきたいのは山々だ。
「それができればいいけど・・・こっちも命がけになるだろうな」
「は? 不感症なのですか?」
俺の言葉にサクヤは失礼な発言をしながら首を傾げた。
会ったばかりのサクヤは知らないだろうが、夜のスーは昼間以上の怪物級である。
手籠めにするどころか、精魂吸い尽くされてこっちがミイラになってしまうかもしれない。
「じきにお前もわかるさ。世の中は広い。俺達が知らない力を持った化け物がいるってな」
「よくわかりませんが・・・まあ、今はいいです。それで、この後はどうするおつもりで?」
炎と煙から逃れることができた海賊が敗走を始めている。
辛くも海に逃げてきた上陸部隊を拾い上げて、港から撤退していく。
遅れて港に到着した海賊が海の向こうに遠ざかっていく味方の船を目にして、怨嗟の声を上げて膝をついている
そんな海賊も追撃してきた傭兵に追い詰められて、武器を捨てて降伏する。
「もう戦いは終わりだ。これ以上、戦う必要はないな」
「追撃はよろしいのですか?」
「海の向こうにどうやって追いかけるんだよ。こっちは奪った海賊船が一隻。沖で戦ったら勝ち目はないだろう」
「承知いたしました。それでは、お茶の用意でもしましょうか」
サクヤがどこから取り出したのか、メイド服に着替えて瓶からカップにお茶を注ぐ。
「少し冷めていますが、お許しを」
「ああ」
俺は短く返事をして、血まみれの死体が転がる船の上でお茶を入れるメイドの背中を観察した。
手際よくお茶の用意をするサクヤの髪は潜入のために短く切られていて、いつもは見えない首元もはっきりと見えている。
「なるほどな・・・ショートカットも悪くないじゃないか」
白いうなじをじっくりと鑑賞しながら、俺は口元に笑みを浮かべた。
「なんて、恐ろしい」
爆炎を上げて沈んでいく海賊船を見ながら、サクヤが顔を青ざめさせた。
俺とサクヤは、乗組員を皆殺しにした船から、周囲の海賊船を眺めている。
大小200隻はあった海賊船も、すでに半数近くが海の藻屑に代わっていた。
また一つ、目の前で大型船が火を上げて横倒しになり、近くの小型船を巻き込んで海の底へと消えていく。
「まさか、あの奴隷の女がこれほどのことをしでかすとは・・・危険ですね」
「そう言ってやるなよ。ああ見えて、脱ぐと良い身体をしてるんだぜ?」
「・・・そんなことは聞いていません。あの能力を暗殺や諜報に使われたら、対処の使用がありません」
サクヤが不満そうにこちらを睨んでいってくる。
暗殺、諜報を生業とする『鋼牙』もタカやフクロウを使役することはあるが、せいぜい伝書鳩のように手紙を運ばせるくらいのものである。
あれほど見事に海鳥を操ることができる者などいなかった。
「そうだな・・・鳥を使っての偵察。ネズミや猫を家に侵入させて毒を仕込む。やり方次第ではいくらでも悪用ができる能力だ」
「本当に敵でなくてよかったですね・・・よければ、あの娘を『鋼牙』に預けてみてはどうでしょう? きっと、有能な暗殺者になりますよ」
サクヤの言葉に俺はしばらく考えて、やがて首を横に振った。
「それも悪くはないが・・・残念ながら、彼女が俺の奴隷になっているのはガーネット王国につくまでの期間限定だ。守れる約束は守らないとな」
「そんな約束はどうとでもなるでしょう? いつものように、夜の手練手管で虜にしてしまえば良いでしょうに」
「そうだなあ・・・」
揶揄するように言ってくるサクヤに苦笑を返して、俺は海鳥が舞う空を見上げた。
あの能力は放置するにはあまりにも危険で、ついでにあの美貌は手放すにはあまりにも勿体ない。
ずっと手元に置いておきたいのは山々だ。
「それができればいいけど・・・こっちも命がけになるだろうな」
「は? 不感症なのですか?」
俺の言葉にサクヤは失礼な発言をしながら首を傾げた。
会ったばかりのサクヤは知らないだろうが、夜のスーは昼間以上の怪物級である。
手籠めにするどころか、精魂吸い尽くされてこっちがミイラになってしまうかもしれない。
「じきにお前もわかるさ。世の中は広い。俺達が知らない力を持った化け物がいるってな」
「よくわかりませんが・・・まあ、今はいいです。それで、この後はどうするおつもりで?」
炎と煙から逃れることができた海賊が敗走を始めている。
辛くも海に逃げてきた上陸部隊を拾い上げて、港から撤退していく。
遅れて港に到着した海賊が海の向こうに遠ざかっていく味方の船を目にして、怨嗟の声を上げて膝をついている
そんな海賊も追撃してきた傭兵に追い詰められて、武器を捨てて降伏する。
「もう戦いは終わりだ。これ以上、戦う必要はないな」
「追撃はよろしいのですか?」
「海の向こうにどうやって追いかけるんだよ。こっちは奪った海賊船が一隻。沖で戦ったら勝ち目はないだろう」
「承知いたしました。それでは、お茶の用意でもしましょうか」
サクヤがどこから取り出したのか、メイド服に着替えて瓶からカップにお茶を注ぐ。
「少し冷めていますが、お許しを」
「ああ」
俺は短く返事をして、血まみれの死体が転がる船の上でお茶を入れるメイドの背中を観察した。
手際よくお茶の用意をするサクヤの髪は潜入のために短く切られていて、いつもは見えない首元もはっきりと見えている。
「なるほどな・・・ショートカットも悪くないじゃないか」
白いうなじをじっくりと鑑賞しながら、俺は口元に笑みを浮かべた。
7
お気に入りに追加
6,111
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜
水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。
その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。
危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。
彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。
初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。
そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。
警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。
これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。
間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ
ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。
間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。
多分不具合だとおもう。
召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。
そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます
◇
四巻が販売されました!
今日から四巻の範囲がレンタルとなります
書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます
追加場面もあります
よろしくお願いします!
一応191話で終わりとなります
最後まで見ていただきありがとうございました
コミカライズもスタートしています
毎月最初の金曜日に更新です
お楽しみください!
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

チートな嫁たちに囲まれて異世界で暮らしています
もぶぞう
ファンタジー
森でナギサを拾ってくれたのはダークエルフの女性だった。
使命が有る訳でも無い男が強い嫁を増やしながら異世界で暮らす話です(予定)。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。