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第3章 南海冒険編
17.海の女王・・・?
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お知らせ
本日の投稿分を誤って昨日投稿してしまったので、改めて投稿しなおしました。ご迷惑をおかけして申し訳ありません。
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一方、沖合いに陣取った獅子王船団の船では、鉄製の黒い大筒が港町ブルートスに向けられていた。
「撃てええええええええっ!」
指揮官の男が手をかざして指示を飛ばす。
大筒の先端から火が噴き出して、黒い鉄球が港町へと放たれる。
鉄球を飛ばすたびに煙が立ち込めて船を覆った。鬱陶しげに手を振って煙を払いながら、指揮官が部下へと声を張る。
「港の様子はどうだ! 船は出てきてねえな!?」
「へい! こちらに近づいてくる船はなし! 警備隊の連中も右往左往でさあ!」
「よーし。撃ちかた、止めー!」
指揮官の号令とともに海賊達が手を止める。
さんざん鉄球を撃ち込まれた港からは、反撃が返ってくる様子はない。
港は混乱に包まれており、集まっている警備隊も人々を避難させるのが精一杯のようである。
「南洋諸国最大の都市がこの有様、か。脆いもんだぜ」
「あらあ! 当然でしょおっ!」
指揮官の男がしみじみと口にすると、船室の奥から野太い声が返ってきた。
扉が開いて、薄闇の奥から筋骨隆々とした大男が姿を現わす。
「なんたってこの船には、獅子王国の新兵器『国滅ぼし』を積んでいるんだからねえ! 敗北なんてありえないわよお!」
「バ・・・バルトロさん」
「バルトロじゃないわあ! 私のことは『クリスティーナ』と呼ぶように言ったでしょお!?」
「あー・・・・・・すいやせん、クリスティーナ姐さん」
指揮官の男が複雑そうな顔で頭を下げる。
居並ぶ海賊達も一様に気味の悪いものを見たような表情をしている。
それもそうだろう。
船室から出てきた大男は顔と禿げた頭にべったりと白粉を塗りたくっており、唇には紅まで引いている。
口から発される言葉は女のような口調であり、露出した上半身はビキニのような黒い布で胸だけ隠している。
がっしりとした大殿筋に守られた尻をフリフリと振って歩いてくる姿には、もはや恐怖すら感じてしまう。
「それで・・・姐さん。予定通りに港への攻撃を終わりました。反撃はありません」
「いいわあ、計画通りね! 褒めてあげるわよお!」
「・・・・・・うぷっ」
両手を合わせてウィンクしてくる大男に、海賊の一人が吐き気を催したかのように口を手で覆う。
必死に吐き気を堪えているのは他の海賊達も一緒だったが、誰もこの男の気色悪さを指摘しない。
なぜなら、目の前のオカマこそがこの船のリーダー。
獅子王国の現・国王の息子であるバルトロ・ブラッドペインなのだから。
「それで、姐さん。敵は程良く弱っているようですが、このまま陸に攻め込みますか?」
「馬鹿ねえ、そんなことをする意味ないでしょお?」
顔をひきつらせながら進言する指揮官を、バルトロもといクリスティーナは呆れたように窘めた。
「私達の目的は『略奪』じゃなくて『制圧』よお。金品を奪って逃げるだけならまだしも、町を征服するのはこの人数じゃ無理でしょお」
「はあ? それじゃあ、何のために攻撃したんですか?」
「もちろん、相手に降伏させて自分から町を差し出させるためよお!」
クリスティーナがムキムキの胸を張って答えた。
今回、獅子王船団が港町ブルートスを攻撃したのは、この町を征服してサファイア王国侵略の足掛かりにするためである。
獅子王国で開発された新兵器『国滅ぼし』の力によって、ブルートスにいる警備隊や傭兵に「こんな相手には勝てない」と恐怖を刷り込むことに成功した。
よほどの馬鹿が司令官でない限り、すぐに降伏して町を明け渡すはずだ。
「降伏の使者を出しなさあい。明日の正午にまた来るってね」
「へい! 抵抗する場合はどうしますか?」
「もちろん、抵抗する気が失せるまで鉄の雨を降らせてあげるわあ! 私に逆らったらどうなるのか、調教して教え込んであげる!」
「うおえっ・・・」
「・・・・・・急に変な声出してどうかしたのかしら?」
「いえ! 何でもありません!」
指揮官はビシリと敬礼を決めて、部下に指示を出すためにその場を離れる。
クリスティーナは去っていった部下の背中を睨みつけていたが、すぐに気を取り直したかのようにフフンと笑う。
「見てなさいよ! サファイア王国を滅ぼしたら誰もが私のことを称賛するんだから! パパだって、兄さん達だって、私をいっぱい褒めてくれるわ! それに・・・」
クリスティーナはギリギリを奥歯を噛みしめて表情を歪める。
醜く歪められた顔を偶然、振り返って目撃した海賊が失神するが、それに気づくことなく独り言を続ける。
「グレイス・ドラコ・オマリ! 海の支配者を気取っていられるのは今のうちよ! すぐに誰がこの海で一番美しい女なのか、思い知らせてあげるんだから!」
クリスティーナは高々と天に拳を掲げて、濁りきった野太い声で叫んだ。
「私こそが海の女王よ! 誰もが私の美しさを称えて愛を語る、私だけの王国を創るんだからね!」
本日の投稿分を誤って昨日投稿してしまったので、改めて投稿しなおしました。ご迷惑をおかけして申し訳ありません。
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一方、沖合いに陣取った獅子王船団の船では、鉄製の黒い大筒が港町ブルートスに向けられていた。
「撃てええええええええっ!」
指揮官の男が手をかざして指示を飛ばす。
大筒の先端から火が噴き出して、黒い鉄球が港町へと放たれる。
鉄球を飛ばすたびに煙が立ち込めて船を覆った。鬱陶しげに手を振って煙を払いながら、指揮官が部下へと声を張る。
「港の様子はどうだ! 船は出てきてねえな!?」
「へい! こちらに近づいてくる船はなし! 警備隊の連中も右往左往でさあ!」
「よーし。撃ちかた、止めー!」
指揮官の号令とともに海賊達が手を止める。
さんざん鉄球を撃ち込まれた港からは、反撃が返ってくる様子はない。
港は混乱に包まれており、集まっている警備隊も人々を避難させるのが精一杯のようである。
「南洋諸国最大の都市がこの有様、か。脆いもんだぜ」
「あらあ! 当然でしょおっ!」
指揮官の男がしみじみと口にすると、船室の奥から野太い声が返ってきた。
扉が開いて、薄闇の奥から筋骨隆々とした大男が姿を現わす。
「なんたってこの船には、獅子王国の新兵器『国滅ぼし』を積んでいるんだからねえ! 敗北なんてありえないわよお!」
「バ・・・バルトロさん」
「バルトロじゃないわあ! 私のことは『クリスティーナ』と呼ぶように言ったでしょお!?」
「あー・・・・・・すいやせん、クリスティーナ姐さん」
指揮官の男が複雑そうな顔で頭を下げる。
居並ぶ海賊達も一様に気味の悪いものを見たような表情をしている。
それもそうだろう。
船室から出てきた大男は顔と禿げた頭にべったりと白粉を塗りたくっており、唇には紅まで引いている。
口から発される言葉は女のような口調であり、露出した上半身はビキニのような黒い布で胸だけ隠している。
がっしりとした大殿筋に守られた尻をフリフリと振って歩いてくる姿には、もはや恐怖すら感じてしまう。
「それで・・・姐さん。予定通りに港への攻撃を終わりました。反撃はありません」
「いいわあ、計画通りね! 褒めてあげるわよお!」
「・・・・・・うぷっ」
両手を合わせてウィンクしてくる大男に、海賊の一人が吐き気を催したかのように口を手で覆う。
必死に吐き気を堪えているのは他の海賊達も一緒だったが、誰もこの男の気色悪さを指摘しない。
なぜなら、目の前のオカマこそがこの船のリーダー。
獅子王国の現・国王の息子であるバルトロ・ブラッドペインなのだから。
「それで、姐さん。敵は程良く弱っているようですが、このまま陸に攻め込みますか?」
「馬鹿ねえ、そんなことをする意味ないでしょお?」
顔をひきつらせながら進言する指揮官を、バルトロもといクリスティーナは呆れたように窘めた。
「私達の目的は『略奪』じゃなくて『制圧』よお。金品を奪って逃げるだけならまだしも、町を征服するのはこの人数じゃ無理でしょお」
「はあ? それじゃあ、何のために攻撃したんですか?」
「もちろん、相手に降伏させて自分から町を差し出させるためよお!」
クリスティーナがムキムキの胸を張って答えた。
今回、獅子王船団が港町ブルートスを攻撃したのは、この町を征服してサファイア王国侵略の足掛かりにするためである。
獅子王国で開発された新兵器『国滅ぼし』の力によって、ブルートスにいる警備隊や傭兵に「こんな相手には勝てない」と恐怖を刷り込むことに成功した。
よほどの馬鹿が司令官でない限り、すぐに降伏して町を明け渡すはずだ。
「降伏の使者を出しなさあい。明日の正午にまた来るってね」
「へい! 抵抗する場合はどうしますか?」
「もちろん、抵抗する気が失せるまで鉄の雨を降らせてあげるわあ! 私に逆らったらどうなるのか、調教して教え込んであげる!」
「うおえっ・・・」
「・・・・・・急に変な声出してどうかしたのかしら?」
「いえ! 何でもありません!」
指揮官はビシリと敬礼を決めて、部下に指示を出すためにその場を離れる。
クリスティーナは去っていった部下の背中を睨みつけていたが、すぐに気を取り直したかのようにフフンと笑う。
「見てなさいよ! サファイア王国を滅ぼしたら誰もが私のことを称賛するんだから! パパだって、兄さん達だって、私をいっぱい褒めてくれるわ! それに・・・」
クリスティーナはギリギリを奥歯を噛みしめて表情を歪める。
醜く歪められた顔を偶然、振り返って目撃した海賊が失神するが、それに気づくことなく独り言を続ける。
「グレイス・ドラコ・オマリ! 海の支配者を気取っていられるのは今のうちよ! すぐに誰がこの海で一番美しい女なのか、思い知らせてあげるんだから!」
クリスティーナは高々と天に拳を掲げて、濁りきった野太い声で叫んだ。
「私こそが海の女王よ! 誰もが私の美しさを称えて愛を語る、私だけの王国を創るんだからね!」
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