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第2章 帝国騒乱 編
65.獣の一週間
しおりを挟む「ああ・・・ディンギル様。素敵です・・・」
皇帝の寝室にて、俺はルクセリアの身体を愛でていた。
ようやく抱くことができた彼女の身体は予想通り、とても素晴らしいものだった。
「もっと、もっとルクセリアのことを可愛がってくださいませ・・・ディンギル様」
「もちろんだ。お願いされたってやめてやらないぞ」
ルクセリアがとろけきった表情で俺に懇願してくる。普段は澄ました女神のごとき美貌が、今は発情しきったメスの顔をしている。
(なんというか・・・いいな、これ)
ルクセリアを抱いていると、良い女を抱いている男の喜びとは別に奇妙な感慨のような物が湧き上がってくる。
長年の宿敵であるバアル帝国。その最高権力者となった彼女が、現在進行形で俺の腕の中で鳴いている。
それは、まるで帝国そのものを手中に収めたかのような達成感だった。
「ん・・・もっと・・・もっとおっ・・・」
「おいおい、そんなにはりきったら明日の政務に支障が出るんじゃないか?」
おしとやかな仮面を投げ捨てて俺を求めてくるルクセリアに、俺は苦言を呈した。
「大丈夫、ですよ・・・少し無理をして1週間分の仕事は事前に終わらせてありますから。宮廷の周りは私の信頼するメイドと女性騎士で固めてありますし、七日間は私が部屋から出てこなかったとしても不審に思われることはありません」
「へえ、それはつまり、1週間ずっと俺と過ごすつもりだったってことか」
「・・・言わせないでくださいませ。次に会うことができるのはいつになるのかわかりません。ひょっとしたら、二度と会うことができないかも・・・。
どうかこの憐れな娘に、ディンギル様との思い出を刻んでくださいませ」
「情熱的だな。嫌いじゃあないけどな!」
「ああ・・・!」
彼女の望みをかなえてやる。
存分に、それはもう思う存分にルクセリアの身体を味わった。
翌日の昼。
途中で休憩をとっては身体を重ね、仮眠をとってはまだ身体を重ねる。そんな淫らな獣となった俺とルクセリアの元へと第三者が現れた。
「主殿、少しやりすぎではないか?」
「ディンギル様。ルクセリア様とばかりされるのは不公平かと」
現れたのはシャナとサクヤである。
シャナは呆れ返ったような表情をしており、対照的にサクヤは不満をありありと顔に浮かべている。
二人は水さしと軽食を持っている。どうやら食事を持ってきてくれたようだ。
「廊下まで声が響いていたぞ? 若いメイド達が恥ずかしそうに聞き耳を立てていた」
「うっ・・・は、恥ずかしいです・・・」
「行為自体を悪いとは思わないがね。まあ、もう少し声を抑えるべきだったな」
シャナの忠告に我に返ったルクセリアは、真っ赤になった顔をシーツで隠す。
俺はせっかく持ってきてくれたサンドイッチをかじりながら、サクヤへと言葉を向けた。
「食事を持ってきてくれたのは有り難いんだが・・・なんで脱いでるんだ?」
「せっかくですから、私も仲間に入れていただこうと思いまして。
私だってディンギル様とルクセリア様のために働いていたのですから、ご褒美が必要かと」
「んー、まあそうだな」
サクヤはこの1ヵ月間、宮廷に忍び込もうとする賊を討ち取ったり、ルクセリアの治世を邪魔しようとする有力者の弱みを探したり、八面六臂の大活躍だった。
その働きぶりはルクセリア政権の陰の立役者と呼べるほどのものである。当然、望む褒美は与えられるべきだ。
「ルクセリア様は政務続きで疲れているのだろう? 主殿の相手は私達でしておくから、少し休んでおくと良い」
「なんだ、シャナまで珍しく積極的じゃないか」
服を豪快に脱ぎ捨てながらベッドに入ってくる銀髪の美女。
あまり男女の好意に積極的ではない彼女がこんなふうにするなんて、めったにないことである。
「なに、私もそろそろ父に孫の顔を見せたくなったのさ。騎士団長として苦労をしているようだし、少しくらいはご褒美が必要だろう?」
「ご褒美どころか、卒倒してしまう気がするんだが・・・」
俺はサラザール騎士団長の顔を思い浮かべながら、苦笑いをする。
突然、祖父になってしまう憐れな武人に同情しながらも、提案自体は望むところなので当然受け入れる。
「それじゃあ、ありがたく頂戴するとしようか」
俺はルクセリアを休ませながら、今度は二人と身体を重ねた。
「あー、もう! 約束だから仕方ないからな!」
「貴方のことはどうでもよいですが、姫様のご負担を減らすためです。勘違いはしないでくださいませ」
三日目に突入した辺りで、新たな闖入者が現れた。ルクセリアの護衛騎士であるエスティアと、専属侍女のルーナである。
二人は顔にあからさまな不満を浮かべながらも、大胆な下着姿でベッドへと入ってくる。ルーナはセクシーな紫の下着。エスティアはスポーティなデザインの黄の下着だ。
「はあ? 何でお前らまで?」
二人に好かれるようなことはまったくした覚えがない。こんな風に迫られる覚えはないのだが。
「先ほども申し上げましたが、あくまでも姫様のためです。貴方のようなケダモノに姫様を任せていたらお体を害してしまいますので」
ルーナは、俺と裸のルクセリアを交互に見ながら、挑みかかるような口調で言う。
どうやら忠義の侍女である彼女は、主の身体を気遣って自分を差し出しているようだ。
「わ、私は別にいいのだが・・・ええと・・・」
堂々としたルーナとは対照的に、エスティアはもじもじと両足を擦りながら言葉を濁している。バベルの塔で獅子のごとく剣を振るっていた彼女からは考えられない姿である。
「ああ、エスティアのことは気にせず抱いてやってくれ」
「シャナ?」
「そういう約束なんだ。まあ、罰ゲームのようなものだ」
シャナの言葉に俺は唇を歪めた。
罰ゲーム扱いされるのとても不愉快であるが、ルーナもエスティアもタイプは違うが美人には違いない。
抱けというなら、喜んで抱かせてもらおうか。
「まあ、いいか。女に恥をかかせるわけにはいかない。二人ともまとめて可愛がってやろう」
「うう・・・何でこんなことに・・・」
「寝首を書かれないように注意してくださいませ。姫様を汚したドクソ野郎」
俺は不満げな二人の身体を抱き寄せた。合計6人の男女を乗せたベッドが激しくきしむ。
ルクセリアの休暇はまだ三日目。獣の一週間はまだ始まったばかりであった。
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