異世界召喚されて捨てられた僕が邪神であることを誰も知らない……たぶん。

レオナール D

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151.マジおこプンプン丸だよ

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『……と、そういうわけで私達はエルフの国であるエルフガルドに連れていかれてしまったんです』

「フーン……なるほどねえ……」

「そんなことが……まさか、女神エアがウータさんの大切な人を人質に……」

 時間は現在に戻り、ウータとステラ。
 二人は突如として現れた、幽霊のような西宮和葉から事情を聞いていた。

「それにしても……和葉さんでしたよね。貴女はどうしてそんな姿に?」

『私は『聖女』ですから。精神を飛ばして神と交信することができるんです』

 ステラの問いに、和葉が答える。
 一矢纏わぬ裸の和葉であったが、細い身体は半分ほど透けている。

「神って……」

『私にとっての神はウータさんです。貴女ももうご存じなんですよね、ウータさんがただの人間でないということは』

「…………」

 反対に聞き返されて、ステラが沈黙する。
 和葉の指摘は正解だ。ステラはウータが人ならざる超常の存在であることをすでに理解していた。
 すでに三人の女神を殺して捕食しているのだから、普通でないとわからないわけがなかった。

『ただ……ここにいるのはあくまでも私の精神だけ。生霊のようなものです。身体は女神エアに捕まっており、エルフガルドの中央にある『大樹の城』という場所に幽閉されています』

「つまり、そこに行ってエアって女神をぶっ殺せばいいんだよね。うん、楽勝じゃん」

 ウータが笑顔で言う。
 ニコニコと、それはもうニコニコと。
 緊張感のない笑顔は状況を把握していないようにも見えるのだが、よくよく見れば目が笑っていない。
 据わった目、黒い瞳は暗く淀んだ曇天の夜空のようであり、見つめているだけで背筋に虫が這うような悪寒が走った。

「ウ、ウータさん……?」

 怒っている。
 ウータが怒っている。
 ステラが見たことがないくらい、激しく怒り狂っていた。

「それじゃ、さっそく行こうか。和葉、案内してくれるよね?」

『はい、もちろんです。助けを求めているのは私達の方ですから』

「うん、それじゃあ行こっか。すぐに行こう。今すぐに行こう。言ってぶっ殺だよね。うんうん」

「ウータさん!? 落ち着いてください、一回冷静になってくださいっ!」

 明らかに正気を失いつつあるウータの肩をステラが揺さぶった。

「相手は人質を取って、十分に警戒して待ち構えているはずです! こっちも冷静に対処しないと……!」

「あー、うん、そうだね。一回頭を冷やさないとね」

「そうですよ……」

「それじゃあ……切り替えということで」

「へ……?」

 ウータが自分の頭部に手をかざす。
 次の瞬間、ウータの頭が塵となって吹き飛んだ。

「ええっ!?」

『ウータさん!』

 ステラと和葉がそろって悲鳴を上げた。
 頭が消えて首なし死体となったウータであったが、次の瞬間には映像を逆再生したように元通りになった。

「うん、冷静になった。もう心配いらないよー」

「し、心配しかないです……」

『突拍子もない行動をとるのはいつも通りですけどね……』

 ステラと和葉が顔を見合わせ、溜息を吐いている。
 初対面だというのに、ウータに振り回されている被害者という点では同じである。

「まあ、そこもウータさんの良いところですよね」

『はい、私も魅力だと思っていますよ』

 ついでに、ウータのことを愛しているという点でも同じだった。

「和葉さん、皆さんが捕まっている場所はどのようなところなのでしょう?」

『『大樹の城』という名前の通り、巨大な樹木の中にある城です。木の内側がくり抜かれて人間……いえ、エルフが大勢生活しています』

 和葉がステラの問いに答える。

『私達が閉じ込められているのは頂上に近いところにある牢獄です。エルフの兵隊さんとかもいるみたいですけど、みんな、エアの手下のようですね。私達の味方になってくれる人はいないみたいです』

「まあ、そうでしょうね……エルフはエアによって生み出された存在ですから」

『エアは色々と準備をしているみたいです……無策で突入すれば、ウータさんでも危ないかもしれません』

「うーん、そうだとしても行かないって選択肢はないよね。みんなが心配だし、行かなくちゃ」

『ウータさん……ありがとうございます。やはり、貴方を信じて良かったです』

 和葉が感極まったような表情になる。

『位置はこちらで誘導しますので、ウータさんは転移を使ってください』

「うん、わかった。ステラもそれで良いよね?」

「ウータさんが良いのなら、私には文句など初めからありません……行きましょうか」

「うんうん、それじゃあ……転移!」

 ウータがステラと和葉に触れて、転移を発動させた。
 街道から三人の姿が消えてなくなった。
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