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148.その頃、幼馴染
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時間はわずかにさかのぼる。
大陸南部にある国、ファーブニル王国。
ウータと四人の幼馴染を召喚したその国では、人間と魔族による熾烈な戦いが巻き起こっていた。
「オオオオオオオオオオオオオッ!」
白い鎧を着た少年……南雲竜哉が剣を振り、目の前にいる敵を斬りつけた。
鋭く重い一撃。命中すれば間違いなく両断されるであろう攻撃だったが……敵は凄まじい速度でそれを回避する。
「クッ……速い! 剣も魔法も全然当たらない……!」
「オホホホホッ! 異世界の勇者というのも大したことはありませんわね。ノロマ過ぎてアクビが出ますわあ!」
小馬鹿にした様子で笑ったのは、空を飛んでいる人型の魔物。人間とよく似たフォルムをしているものの、全身が羽毛に覆われており、両手には翼、両脚は鉤爪。目は真っ赤で、牙の生えた口は耳元まで裂けている。
この世界において、ハーピーと呼ばれている怪物だった。
周囲には同じような魔物がたくさんいて、ファーブニル王国の兵士と激しい戦いを繰り広げている。
その日、魔族がファーブニル王国に襲撃してきた。
それは数百匹のハーピー。国境の砦を飛び越えて、直接王都に攻撃を仕掛けてきた。
異世界から召喚された勇者である竜哉らはファーブニル王国の人々を守るため、前線に出て戦っている最中である。
「これが魔族か……やっぱり、強い!」
竜哉が悔しそうに奥歯を噛む。
魔族というのは人間と同等以上の知恵と言語能力を得ている魔物の総称。目の前の敵はハーピーの魔族であった。
人は知恵を用いて獣に打ち勝ってきたが、獣が知恵を持つと想像以上に強くなる。
ハーピーの速度と小賢しさに翻弄されて、竜哉は苦戦を強いられていた。
「そろそろ、殺して差し上げようかしら? 大人しくしているのなら、痛みがないように一瞬で首を落として差し上げますわよ?」
「調子に乗るなよ……俺がこの程度で終わるかよ!」
竜哉が強く剣を握り締めた。
すると……剣が黄金色に輝きだして、大きな十字架のような形状になる。
「『竜気』発動……ゴールドクロス!」
「な、何ですのお、その力は……凄まじい魔力。いえ、これは魔力なのですかあ!?」
「さあな、教えてやる義理はない!」
それは竜哉の切り札だった。
魔力を強く、濃く練り上げて生み出した『竜気』を剣に宿らせることで、一撃必殺の威力を生み出した奥義である。
「この技を喰らって生きていた敵はいない……お前はここで確実に倒す!」
「なるほど……確かに厄介そうな攻撃ですねえ。だけど、当てることができますかあ?」
ハーピーの魔族が警戒したように中空を飛びながら、挑発するように口端を吊り上げる。
「それだけのプレッシャー……ただの攻撃ではないはずですわ。魔力の消費だって並ではないはず。何度も撃つことはできないのでしょお?」
「…………」
「つまり、一撃か二撃か避けることができたらそれで終わり。貴方は力尽きて、私の勝ちですわあ」
「……ペラペラとよくしゃべるな。耳障りな金切り声で鳴きやがって」
悪態をつく竜哉であったが、ハーピーの魔族が言っていることは正鵠を射ている。
『竜気』は非常に大きな魔力を消費する。『勇者』のジョブを得ている竜哉は人よりも魔力量が多いものの、それでも長く『竜気』を発動し続けることは不可能だった。
「だったら……次の一撃で終わらせれば良いだけだ!」
「アハアッ! 当たると良いですねー。さっきから、ちーっとも命中してませんけどねー?」
ハーピーの魔族が嘲笑う。
他のハーピーよりもずっと速度の速い彼女に、果たして一撃必殺の攻撃を当てられるだろうか?
「大丈夫だ……俺は一人じゃないからな」
「はあ?」
「注意を惹きつけておけば良かったんだよ。俺に気を取られたのがお前の敗因だ!」
「ボルカノン!」
すると、戦場に火柱が上がった。
地面から噴き出した極太の炎がハーピーの魔族を包み込み、その身体を焼く。
「ギャアアアアアアアアアアアアアアッ!?」
「竜哉君、ちょっと先走りしすぎじゃない? 追いつけなくて焦ったわよー」
現れたのは金髪ショートカットの美少女……竜哉の幼馴染の一人である東山美湖だった。
美湖は『賢者』のジョブに就いており、強力な攻撃魔法の使い手である。
「こ、このこのこのこのっ! よくも私の肌を焼いてくれましたわね!?」
火柱の中からハーピーの魔族が飛び出してくる。
全身が焼かれた彼女であったが、まだ生きていた。
「あの魔法を喰らって無事とか、笑えないわね……嫌になるわ」
「この……殺す殺す殺すっ! 絶対に殺すわあ!」
「殺すのは俺だ。もう遅い」
「ッ……!」
竜哉が黄金色に輝く剣で斬りつける。
ハーピーの魔族が真っ二つに両断され、地面に墜落する。
「俺達の勝ちだ……魔族!」
「う……あ……」
「ボルカノン!」
両断されて墜落し、それでもまだ生きていたハーピーの魔族であったが、美湖が再び炎を放って今度こそ焼き尽くした。
リーダーである魔族がやられたことにより、他のハーピーも総崩れとなる。
大多数が兵士達に討ち取られて、残りは離散して逃げていったのであった。
大陸南部にある国、ファーブニル王国。
ウータと四人の幼馴染を召喚したその国では、人間と魔族による熾烈な戦いが巻き起こっていた。
「オオオオオオオオオオオオオッ!」
白い鎧を着た少年……南雲竜哉が剣を振り、目の前にいる敵を斬りつけた。
鋭く重い一撃。命中すれば間違いなく両断されるであろう攻撃だったが……敵は凄まじい速度でそれを回避する。
「クッ……速い! 剣も魔法も全然当たらない……!」
「オホホホホッ! 異世界の勇者というのも大したことはありませんわね。ノロマ過ぎてアクビが出ますわあ!」
小馬鹿にした様子で笑ったのは、空を飛んでいる人型の魔物。人間とよく似たフォルムをしているものの、全身が羽毛に覆われており、両手には翼、両脚は鉤爪。目は真っ赤で、牙の生えた口は耳元まで裂けている。
この世界において、ハーピーと呼ばれている怪物だった。
周囲には同じような魔物がたくさんいて、ファーブニル王国の兵士と激しい戦いを繰り広げている。
その日、魔族がファーブニル王国に襲撃してきた。
それは数百匹のハーピー。国境の砦を飛び越えて、直接王都に攻撃を仕掛けてきた。
異世界から召喚された勇者である竜哉らはファーブニル王国の人々を守るため、前線に出て戦っている最中である。
「これが魔族か……やっぱり、強い!」
竜哉が悔しそうに奥歯を噛む。
魔族というのは人間と同等以上の知恵と言語能力を得ている魔物の総称。目の前の敵はハーピーの魔族であった。
人は知恵を用いて獣に打ち勝ってきたが、獣が知恵を持つと想像以上に強くなる。
ハーピーの速度と小賢しさに翻弄されて、竜哉は苦戦を強いられていた。
「そろそろ、殺して差し上げようかしら? 大人しくしているのなら、痛みがないように一瞬で首を落として差し上げますわよ?」
「調子に乗るなよ……俺がこの程度で終わるかよ!」
竜哉が強く剣を握り締めた。
すると……剣が黄金色に輝きだして、大きな十字架のような形状になる。
「『竜気』発動……ゴールドクロス!」
「な、何ですのお、その力は……凄まじい魔力。いえ、これは魔力なのですかあ!?」
「さあな、教えてやる義理はない!」
それは竜哉の切り札だった。
魔力を強く、濃く練り上げて生み出した『竜気』を剣に宿らせることで、一撃必殺の威力を生み出した奥義である。
「この技を喰らって生きていた敵はいない……お前はここで確実に倒す!」
「なるほど……確かに厄介そうな攻撃ですねえ。だけど、当てることができますかあ?」
ハーピーの魔族が警戒したように中空を飛びながら、挑発するように口端を吊り上げる。
「それだけのプレッシャー……ただの攻撃ではないはずですわ。魔力の消費だって並ではないはず。何度も撃つことはできないのでしょお?」
「…………」
「つまり、一撃か二撃か避けることができたらそれで終わり。貴方は力尽きて、私の勝ちですわあ」
「……ペラペラとよくしゃべるな。耳障りな金切り声で鳴きやがって」
悪態をつく竜哉であったが、ハーピーの魔族が言っていることは正鵠を射ている。
『竜気』は非常に大きな魔力を消費する。『勇者』のジョブを得ている竜哉は人よりも魔力量が多いものの、それでも長く『竜気』を発動し続けることは不可能だった。
「だったら……次の一撃で終わらせれば良いだけだ!」
「アハアッ! 当たると良いですねー。さっきから、ちーっとも命中してませんけどねー?」
ハーピーの魔族が嘲笑う。
他のハーピーよりもずっと速度の速い彼女に、果たして一撃必殺の攻撃を当てられるだろうか?
「大丈夫だ……俺は一人じゃないからな」
「はあ?」
「注意を惹きつけておけば良かったんだよ。俺に気を取られたのがお前の敗因だ!」
「ボルカノン!」
すると、戦場に火柱が上がった。
地面から噴き出した極太の炎がハーピーの魔族を包み込み、その身体を焼く。
「ギャアアアアアアアアアアアアアアッ!?」
「竜哉君、ちょっと先走りしすぎじゃない? 追いつけなくて焦ったわよー」
現れたのは金髪ショートカットの美少女……竜哉の幼馴染の一人である東山美湖だった。
美湖は『賢者』のジョブに就いており、強力な攻撃魔法の使い手である。
「こ、このこのこのこのっ! よくも私の肌を焼いてくれましたわね!?」
火柱の中からハーピーの魔族が飛び出してくる。
全身が焼かれた彼女であったが、まだ生きていた。
「あの魔法を喰らって無事とか、笑えないわね……嫌になるわ」
「この……殺す殺す殺すっ! 絶対に殺すわあ!」
「殺すのは俺だ。もう遅い」
「ッ……!」
竜哉が黄金色に輝く剣で斬りつける。
ハーピーの魔族が真っ二つに両断され、地面に墜落する。
「俺達の勝ちだ……魔族!」
「う……あ……」
「ボルカノン!」
両断されて墜落し、それでもまだ生きていたハーピーの魔族であったが、美湖が再び炎を放って今度こそ焼き尽くした。
リーダーである魔族がやられたことにより、他のハーピーも総崩れとなる。
大多数が兵士達に討ち取られて、残りは離散して逃げていったのであった。
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