104 / 122
連載
137.決勝戦だよ
しおりを挟む
控え室を出たウータが試合会場にいくと、そこにはすでに決勝戦の対戦相手であるエンジェが待ち構えていた。
「来たのね」
「来たよ」
「そう……残念だわ」
エンジェが持っているのはミスリル製の大剣である。
以前持っていた武器とは違う物だ。小柄なドワーフである彼女の身長よりも大きい。
「何というか……そういうでっかい武器を持っている女子ってちょっとロマンだよね。マンガとかでよく出てくるやつだね」
「何を言っているのかわからないわよ。ドワーフは女でも力持ちだから、これくらはい別に当然じゃない」
「ああ、そうなんだね。だったら問題ないね」
ウータが肩をすくめた。
外見と腕力が釣り合っていないくらい、魔法が存在する世界では何も不自然はない。
「それじゃあ、始めようか」
「いえ……審判がまだ来ていないわよ。試合が始められないわ」
試合会場にいるのはウータとエンジェのみ。審判役がまだ来ていなかった。
「あー……うん、ソウダネー」
「どうして、片言なの?」
「いやいやいや、知らないけどね?」
審判役のドワーフであれば、ウータの控え室で塵の山になっている。ここに来られるわけがなかった。
いくらウータでも、それを口に出すことはしない。
理由はわからないが怒られそうな気がしたからである。
「えー、お集まりの皆さん。すぐに審判が参りますのでもう少々お待ちください」
いつまでも始まらない試合に会場がざわつきだす。
運営側からアナウンスが入り、騒いでいる観客を落ち着かせる。
何人かの運営スタッフが審判役のドワーフを探しに行くが……もちろん、みつかるわけがない。
しばらくすると、別のドワーフが審判役として現れた。
「お待たせいたしました。私が代わりに審判を務めさせていただきます」
新たにやってきたのは女性のドワーフだった。
前の審判役のように高圧的な部分はなく、むしろ穏やかな口ぶりである。
「『土』の女神アースに誓って、公平な審判を行わせていただきます。それでは、お二人とも下がってください」
「…………」
「…………」
新しい審判の指示を受けて、ウータとステラが三メートルほどの距離を取って向かい合う。
ウータはいつも通りののんびりとした歩き方で、エンジェはどことなく足取りが重くて緊張したような歩き方で。
「改めて、確認です。本試合はミスリルの武器を使用した武術戦となります。魔法の使用は構いませんが補助的なものに限ります。純粋な魔法攻撃では有効打として認められない場合がありますのでそのつもりで」
わざわざ確認をしてくるあたり、やはり前の審判役よりも対応が丁寧である。
何となくではあるが……ウータはこれまでのように一方的に忖度をされない気がした。
(あの審判が特別酷かったのかな? まあ、死んだ人のことはどうでも良いけどね)
「それでは……決勝戦、試合開始!」
そして……試合開始が宣言された。
最初に動いたのはエンジェである。地面を蹴って、巨大な剣を振りかぶって斬りかかってくる。
その速度は機敏そのもの。身の丈以上の大剣を持っているとは思えないほどのスピードである。
「ヤアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」
「…………」
ウータはどこか必死な形相で大剣を振り下ろしてくるエンジェに目を細めて、無言で後方に跳んだのであった。
「来たのね」
「来たよ」
「そう……残念だわ」
エンジェが持っているのはミスリル製の大剣である。
以前持っていた武器とは違う物だ。小柄なドワーフである彼女の身長よりも大きい。
「何というか……そういうでっかい武器を持っている女子ってちょっとロマンだよね。マンガとかでよく出てくるやつだね」
「何を言っているのかわからないわよ。ドワーフは女でも力持ちだから、これくらはい別に当然じゃない」
「ああ、そうなんだね。だったら問題ないね」
ウータが肩をすくめた。
外見と腕力が釣り合っていないくらい、魔法が存在する世界では何も不自然はない。
「それじゃあ、始めようか」
「いえ……審判がまだ来ていないわよ。試合が始められないわ」
試合会場にいるのはウータとエンジェのみ。審判役がまだ来ていなかった。
「あー……うん、ソウダネー」
「どうして、片言なの?」
「いやいやいや、知らないけどね?」
審判役のドワーフであれば、ウータの控え室で塵の山になっている。ここに来られるわけがなかった。
いくらウータでも、それを口に出すことはしない。
理由はわからないが怒られそうな気がしたからである。
「えー、お集まりの皆さん。すぐに審判が参りますのでもう少々お待ちください」
いつまでも始まらない試合に会場がざわつきだす。
運営側からアナウンスが入り、騒いでいる観客を落ち着かせる。
何人かの運営スタッフが審判役のドワーフを探しに行くが……もちろん、みつかるわけがない。
しばらくすると、別のドワーフが審判役として現れた。
「お待たせいたしました。私が代わりに審判を務めさせていただきます」
新たにやってきたのは女性のドワーフだった。
前の審判役のように高圧的な部分はなく、むしろ穏やかな口ぶりである。
「『土』の女神アースに誓って、公平な審判を行わせていただきます。それでは、お二人とも下がってください」
「…………」
「…………」
新しい審判の指示を受けて、ウータとステラが三メートルほどの距離を取って向かい合う。
ウータはいつも通りののんびりとした歩き方で、エンジェはどことなく足取りが重くて緊張したような歩き方で。
「改めて、確認です。本試合はミスリルの武器を使用した武術戦となります。魔法の使用は構いませんが補助的なものに限ります。純粋な魔法攻撃では有効打として認められない場合がありますのでそのつもりで」
わざわざ確認をしてくるあたり、やはり前の審判役よりも対応が丁寧である。
何となくではあるが……ウータはこれまでのように一方的に忖度をされない気がした。
(あの審判が特別酷かったのかな? まあ、死んだ人のことはどうでも良いけどね)
「それでは……決勝戦、試合開始!」
そして……試合開始が宣言された。
最初に動いたのはエンジェである。地面を蹴って、巨大な剣を振りかぶって斬りかかってくる。
その速度は機敏そのもの。身の丈以上の大剣を持っているとは思えないほどのスピードである。
「ヤアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」
「…………」
ウータはどこか必死な形相で大剣を振り下ろしてくるエンジェに目を細めて、無言で後方に跳んだのであった。
29
お気に入りに追加
1,485
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

調子に乗りすぎて処刑されてしまった悪役貴族のやり直し自制生活 〜ただし自制できるとは言っていない〜
EAT
ファンタジー
「どうしてこうなった?」
優れた血統、高貴な家柄、天賦の才能────生まれときから勝ち組の人生により調子に乗りまくっていた侯爵家嫡男クレイム・ブラッドレイは殺された。
傍から見ればそれは当然の報いであり、殺されて当然な悪逆非道の限りを彼は尽くしてきた。しかし、彼はなぜ自分が殺されなければならないのか理解できなかった。そして、死ぬ間際にてその答えにたどり着く。簡単な話だ………信頼し、友と思っていた人間に騙されていたのである。
そうして誰もにも助けてもらえずに彼は一生を終えた。意識が薄れゆく最中でクレイムは思う。「願うことならば今度の人生は平穏に過ごしたい」と「決して調子に乗らず、謙虚に慎ましく穏やかな自制生活を送ろう」と。
次に目が覚めればまた新しい人生が始まると思っていたクレイムであったが、目覚めてみればそれは10年前の少年時代であった。
最初はどういうことか理解が追いつかなかったが、また同じ未来を繰り返すのかと絶望さえしたが、同時にそれはクレイムにとって悪い話ではなかった。「同じ轍は踏まない。今度は全てを投げ出して平穏なスローライフを送るんだ!」と目標を定め、もう一度人生をやり直すことを決意する。
しかし、運命がそれを許さない。
一度目の人生では考えられないほどの苦難と試練が真人間へと更生したクレイムに次々と降りかかる。果たしてクレイムは本当にのんびり平穏なスローライフを遅れるのだろうか?
※他サイトにも掲載中
俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜
早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。
食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した!
しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……?
「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」
そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。
無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

Hしてレベルアップ ~可愛い女の子とHして強くなれるなんて、この世は最高じゃないか~
トモ治太郎
ファンタジー
孤児院で育った少年ユキャール、この孤児院では15歳になると1人立ちしなければいけない。
旅立ちの朝に初めて夢精したユキャール。それが原因なのか『異性性交』と言うスキルを得る。『相手に精子を与えることでより多くの経験値を得る。』女性経験のないユキャールはまだこのスキルのすごさを知らなかった。
この日の為に準備してきたユキャール。しかし旅立つ直前、一緒に育った少女スピカが一緒にいくと言い出す。本来ならおいしい場面だが、スピカは何も準備していないので俺の負担は最初から2倍増だ。
こんな感じで2人で旅立ち、共に戦い、時にはHして強くなっていくお話しです。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

転生受験生の教科書チート生活 ~その知識、学校で習いましたよ?~
hisa
ファンタジー
受験生の少年が、大学受験前にいきなり異世界に転生してしまった。
自称天使に与えられたチートは、社会に出たら役に立たないことで定評のある、学校の教科書。
戦争で下級貴族に成り上がった脳筋親父の英才教育をくぐり抜けて、少年は知識チートで生きていけるのか?
教科書の力で、目指せ異世界成り上がり!!
※なろうとカクヨムにそれぞれ別のスピンオフがあるのでそちらもよろしく!
※第5章に突入しました。
※小説家になろう96万PV突破!
※カクヨム68万PV突破!
※令和4年10月2日タイトルを『転生した受験生の異世界成り上がり 〜生まれは脳筋な下級貴族家ですが、教科書の知識だけで成り上がってやります〜』から変更しました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。