異世界召喚されて捨てられた僕が邪神であることを誰も知らない……たぶん。

レオナール D

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137.決勝戦だよ

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 控え室を出たウータが試合会場にいくと、そこにはすでに決勝戦の対戦相手であるエンジェが待ち構えていた。

「来たのね」

「来たよ」

「そう……残念だわ」

 エンジェが持っているのはミスリル製の大剣である。
 以前持っていた武器とは違う物だ。小柄なドワーフである彼女の身長よりも大きい。

「何というか……そういうでっかい武器を持っている女子ってちょっとロマンだよね。マンガとかでよく出てくるやつだね」

「何を言っているのかわからないわよ。ドワーフは女でも力持ちだから、これくらはい別に当然じゃない」

「ああ、そうなんだね。だったら問題ないね」

 ウータが肩をすくめた。
 外見と腕力が釣り合っていないくらい、魔法が存在する世界では何も不自然はない。

「それじゃあ、始めようか」

「いえ……審判がまだ来ていないわよ。試合が始められないわ」

 試合会場にいるのはウータとエンジェのみ。審判役がまだ来ていなかった。

「あー……うん、ソウダネー」

「どうして、片言なの?」

「いやいやいや、知らないけどね?」

 審判役のドワーフであれば、ウータの控え室で塵の山になっている。ここに来られるわけがなかった。
 いくらウータでも、それを口に出すことはしない。
 理由はわからないが怒られそうな気がしたからである。

「えー、お集まりの皆さん。すぐに審判が参りますのでもう少々お待ちください」

 いつまでも始まらない試合に会場がざわつきだす。
 運営側からアナウンスが入り、騒いでいる観客を落ち着かせる。
 何人かの運営スタッフが審判役のドワーフを探しに行くが……もちろん、みつかるわけがない。
 しばらくすると、別のドワーフが審判役として現れた。

「お待たせいたしました。私が代わりに審判を務めさせていただきます」

 新たにやってきたのは女性のドワーフだった。
 前の審判役のように高圧的な部分はなく、むしろ穏やかな口ぶりである。

「『土』の女神アースに誓って、公平な審判を行わせていただきます。それでは、お二人とも下がってください」

「…………」

「…………」

 新しい審判の指示を受けて、ウータとステラが三メートルほどの距離を取って向かい合う。
 ウータはいつも通りののんびりとした歩き方で、エンジェはどことなく足取りが重くて緊張したような歩き方で。

「改めて、確認です。本試合はミスリルの武器を使用した武術戦となります。魔法の使用は構いませんが補助的なものに限ります。純粋な魔法攻撃では有効打として認められない場合がありますのでそのつもりで」

 わざわざ確認をしてくるあたり、やはり前の審判役よりも対応が丁寧である。
 何となくではあるが……ウータはこれまでのように一方的に忖度をされない気がした。

(あの審判が特別酷かったのかな? まあ、死んだ人のことはどうでも良いけどね)

「それでは……決勝戦、試合開始!」

 そして……試合開始が宣言された。
 最初に動いたのはエンジェである。地面を蹴って、巨大な剣を振りかぶって斬りかかってくる。
 その速度は機敏そのもの。身の丈以上の大剣を持っているとは思えないほどのスピードである。

「ヤアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」

「…………」

 ウータはどこか必死な形相で大剣を振り下ろしてくるエンジェに目を細めて、無言で後方に跳んだのであった。
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