異世界召喚されて捨てられた僕が邪神であることを誰も知らない……たぶん。

レオナール D

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136.審判役の末路だよ

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 そして……決勝戦当日がやってきた。
 ウータは時間通りに会場にたどり着き、ステラと別れて裏口から控室に入ろうとした。

「あれ?」

 だが……裏口の前に複数の男達がいた。
 いずれもドワーフばかり。髭面でわかりにくいが、彼らが昨日絡んできた者達であるとわかった。
 ドワーフの男達はキョロキョロと挙動不審にしながら、裏口の扉をガッチリと固めて人が入れないようにしている。

「もしかして……僕を待っているのかな?」

 もしかしなくても、そうなに決まっていた。
 推察するに……ウータが控え室入りしようとやってきたところで、昨日のように妨害するつもりなのだろう。

「ステラの話だと……彼らを排除してしまっても、お巡りさんに捕まっちゃうんだよね」

 軽く周りを確認してみると、物陰に憲兵が隠れているのが見えた。
 ウータを会場に入れないようにして失格させる。もしもウータが男達を力ずくでどうにかしようとしたら憲兵が逮捕する。
 どちらにしてもウータは決勝戦に参加することはできない。不戦敗である。
 よほど彼らはウータのことを試合に参加させたくないのだろう。

「まあ、転移すれば良いだけなんだけどね」

 ウータが控え室に向かって転移した。
 まるで段差を飛び越えるような気軽さで、ヒョイッと昨日と同じ控え室に瞬間移動して……。

「来たぞ、殺れ!」

「え……?」

 次の瞬間、ブシュリブシュリと身体に何本もの槍が突き刺さった。
 見れば、控え室には数人のドワーフが待ち構えていて、ウータに槍を繰り出している。

「これは……」

「まったく……大人しく逃げ帰っていればこんなことにはならなかったものを」

 串刺しになっているウータに向けて、嘲笑を浮かべて語りかける者がいた。
 それはさんざん忖度してきた審判である。
 ドワーフの審判はニヤニヤと不快な笑みを浮かべながら、ウータに向けて言葉を投げかける。

「この武闘大会はドワーフのためのもの。人間やエルフなどの他種族の参加も認めてはいるが……それはドワーフの踏み台となり、ドワーフこそが最強であると示すためのものでしかない。本来であれば、一回戦や二回戦で敗北するべきだったのだ。栄えある決勝戦に出場するなど言語道断。とても認められない」

「それを決めるのは、貴方じゃないと思うけどね……」

 串刺しにされながら、ウータが言う。
 審判は血まみれになっているウータをせせら笑う。

「貴様が転移魔法の使い手であることはこれまでの試合からわかっていた。だからこそ、入口を固めていれば中に転移してくるだろうと思っていたぞ。まんまと嵌ってくれて助かったぞ」

「ウッ……」

 ドワーフ達が槍を捻って傷口を抉る。
 ボタリボタリと大量の血液が流れ出て、床に赤い水溜まりを作った。

「貴様はここに来なかった。決勝戦の対戦相手に臆して逃げ出したのだ。観客にはそう発表するとしよう」

「…………」

「さあ、身の程知らずの人間よ! その愚かしさに見合う末路に沈んで死ぬが……」

「あ、試合の時間だね。そろそろ会場に行った方がいいかな?」

「あ……ハアッ!?」

 ウータが身体に槍が刺さったまま動いた。
 さらに槍を根元まで刺して敵に近づいて、ドワーフ達の身体に触れる。ドワーフは塵となって消滅した。

「これも邪魔だね、抜くよ」

 槍を転移させて身体から抜いた。
 まるで映像を逆回しにしているかのように傷が修復していく。血も無くなった。

「試合が始まるまでまだ時間があったからねー。色々と準備をしてくれていたみたいだし、時間が来るまでは付き合ってあげようと思ったんだ」

 殺そうと思えば、いつだって殺すことができた。
 ウータが彼らの企てに付き合ってあげたのはただの時間潰し。遊びである。

「きさっ……」

「それじゃ、さようなら」

 審判役のドワーフが何かを叫ぼうとするが、ウータは興味が無いので聞かなかった。
 さっさと片付けて、塵の山ができた控え室を出ていったのである。
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