94 / 123
連載
127.モジャッターパオード再びだよ
しおりを挟む
ウータは無事に三回戦を突破した。
審判と揉めたりしているので、厳密には無事かどうかは知らないが……順調に進んでいた。
「そういえば……僕って、どうして武闘大会に出場しているんだっけ?」
大きな問題があるとすれば……試合時間のための拘束時間が長すぎて、ウータが自分の目的を見失いかけていることである。
「いや……『土』の女神アースに会うためですよ。どうして、忘れているんですか?」
隣に並んだステラが呆れた様子でツッコんだ。
二人はミスリルバレーの大通りを歩いている。試合が終わったので、帰る前に屋台で食事でもと思って物色しているところだ。
「武闘大会に優勝することができれば、女神アースと謁見することができるんです。そのために、ウータさんは出場したんですよ?」
「ああ。そうだった、そうだった。すっかり忘れていたよ」
「しっかりしてくださいよ……本来の目的を忘れてどうするんですか……」
「うんうん、気をつけるよ。えっと……今が三回戦だから、ちょうど折り返しだよね。あと三人倒せば女神様に会えるね」
「はい、そのはずです……ただ、正直、風当たりは強いですよね。やっぱり、ドワーフ族の人達を応援している人の方が多いみたいです」
ウータが溜息をついて、どこか不快そうに眉尻を下げた。
「地元だから仕方がないとは思うんですけど……ドワーフ族の選手に対して、人間族の選手は判定が厳しいみたいです。ウータさんだけじゃなくて、他の出場選手もそうみたいですよ?」
「ああ、やっぱりそうなんだ。審判の人が意地悪だから、そうなのかと思ってたんだよね」
武闘大会の出場選手の大部分はドワーフだが、少ないながら人間など他の種族も出場している。
ドワーフ以外の選手は明らかに判定が厳しくなっており、ルールに縛られて敗北してしまう選手も多いそうだ。
「勝ち残っている選手は八人ですけど、人間の選手はウータさんともう一人だけですよ。次の対戦相手が人間みたいです」
「ああ、そうなんだ。それは楽しみだね……ところで、ご飯は何を食べようか?」
ウータがお腹を撫でながら、大通りを見回した。
大勢の人が行きかっている通りには多くの露店や屋台が並んでおり、店員が客引きをしていた。
どこからか、香ばしく食欲を誘う匂いも漂ってくる。ウータのお腹が「グーッ」と空腹を訴えてくる。
「そうですね。どこかに入りましょうか」
「あそこで良いんじゃない。美味しそうな匂いがしてくるよ」
ウータが屋台の一つを指差した。
屋台で肉が焼かれており、実に美味そうな匂いがしている。道に置かれたテーブルにはちょうど空席もあった。
「すみませーん。くださーい」
「はいよ。ウチにはモジャッターパオードしかないけど良いかい?」
「良いよね、ステラ」
「…………はい」
ステラが短い沈黙の後で、苦々しく了承した。
モジャッターパオード。
鳥でも魚でも野菜でもない食べ物で、モジャッターパオードはモジャッターパオード以外の何物でもない。それ以上でもなければ、それ以下でもない。要するに、得体の知れない食べ物である。
すでにウータもステラもモジャッターパオードの正体が生物ではなく、ダンジョンに生息している鉱物の魔物であることがわかっていた。正体がわかっているからこそ、食べづらいという考えもあるのだが。
「じゃあ、そっちの席で待っていてくれ。すぐに料理を持っていくよ」
「うん。僕の分は辛さ控えめでよろしくー」
ドワーフの店員が愛想よく言った。
金を支払ってしばらく待っていると、さらに乗せられたスパイシーなステーキ……っぽい料理が運ばれてきた。
ステーキの横には付け合わせにの野菜も盛られており、インドやパキスタンなど、アジア圏の屋台料理のようである。
「うーん、美味しい……辛いっ!」
「スパイシーですけど、美味しいですよ」
二人はピリ辛の味付けに汗を搔きながら、出された料理を完食したのであった。
審判と揉めたりしているので、厳密には無事かどうかは知らないが……順調に進んでいた。
「そういえば……僕って、どうして武闘大会に出場しているんだっけ?」
大きな問題があるとすれば……試合時間のための拘束時間が長すぎて、ウータが自分の目的を見失いかけていることである。
「いや……『土』の女神アースに会うためですよ。どうして、忘れているんですか?」
隣に並んだステラが呆れた様子でツッコんだ。
二人はミスリルバレーの大通りを歩いている。試合が終わったので、帰る前に屋台で食事でもと思って物色しているところだ。
「武闘大会に優勝することができれば、女神アースと謁見することができるんです。そのために、ウータさんは出場したんですよ?」
「ああ。そうだった、そうだった。すっかり忘れていたよ」
「しっかりしてくださいよ……本来の目的を忘れてどうするんですか……」
「うんうん、気をつけるよ。えっと……今が三回戦だから、ちょうど折り返しだよね。あと三人倒せば女神様に会えるね」
「はい、そのはずです……ただ、正直、風当たりは強いですよね。やっぱり、ドワーフ族の人達を応援している人の方が多いみたいです」
ウータが溜息をついて、どこか不快そうに眉尻を下げた。
「地元だから仕方がないとは思うんですけど……ドワーフ族の選手に対して、人間族の選手は判定が厳しいみたいです。ウータさんだけじゃなくて、他の出場選手もそうみたいですよ?」
「ああ、やっぱりそうなんだ。審判の人が意地悪だから、そうなのかと思ってたんだよね」
武闘大会の出場選手の大部分はドワーフだが、少ないながら人間など他の種族も出場している。
ドワーフ以外の選手は明らかに判定が厳しくなっており、ルールに縛られて敗北してしまう選手も多いそうだ。
「勝ち残っている選手は八人ですけど、人間の選手はウータさんともう一人だけですよ。次の対戦相手が人間みたいです」
「ああ、そうなんだ。それは楽しみだね……ところで、ご飯は何を食べようか?」
ウータがお腹を撫でながら、大通りを見回した。
大勢の人が行きかっている通りには多くの露店や屋台が並んでおり、店員が客引きをしていた。
どこからか、香ばしく食欲を誘う匂いも漂ってくる。ウータのお腹が「グーッ」と空腹を訴えてくる。
「そうですね。どこかに入りましょうか」
「あそこで良いんじゃない。美味しそうな匂いがしてくるよ」
ウータが屋台の一つを指差した。
屋台で肉が焼かれており、実に美味そうな匂いがしている。道に置かれたテーブルにはちょうど空席もあった。
「すみませーん。くださーい」
「はいよ。ウチにはモジャッターパオードしかないけど良いかい?」
「良いよね、ステラ」
「…………はい」
ステラが短い沈黙の後で、苦々しく了承した。
モジャッターパオード。
鳥でも魚でも野菜でもない食べ物で、モジャッターパオードはモジャッターパオード以外の何物でもない。それ以上でもなければ、それ以下でもない。要するに、得体の知れない食べ物である。
すでにウータもステラもモジャッターパオードの正体が生物ではなく、ダンジョンに生息している鉱物の魔物であることがわかっていた。正体がわかっているからこそ、食べづらいという考えもあるのだが。
「じゃあ、そっちの席で待っていてくれ。すぐに料理を持っていくよ」
「うん。僕の分は辛さ控えめでよろしくー」
ドワーフの店員が愛想よく言った。
金を支払ってしばらく待っていると、さらに乗せられたスパイシーなステーキ……っぽい料理が運ばれてきた。
ステーキの横には付け合わせにの野菜も盛られており、インドやパキスタンなど、アジア圏の屋台料理のようである。
「うーん、美味しい……辛いっ!」
「スパイシーですけど、美味しいですよ」
二人はピリ辛の味付けに汗を搔きながら、出された料理を完食したのであった。
46
お気に入りに追加
1,484
あなたにおすすめの小説

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。
重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。
あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。
よくある聖女追放ものです。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

豊穣の巫女から追放されたただの村娘。しかし彼女の正体が予想外のものだったため、村は彼女が知らないうちに崩壊する。
下菊みこと
ファンタジー
豊穣の巫女に追い出された少女のお話。
豊穣の巫女に追い出された村娘、アンナ。彼女は村人達の善意で生かされていた孤児だったため、むしろお礼を言って笑顔で村を離れた。その感謝は本物だった。なにも持たない彼女は、果たしてどこに向かうのか…。
小説家になろう様でも投稿しています。

無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

自分が作ったSSSランクパーティから追放されたおっさんは、自分の幸せを求めて彷徨い歩く。〜十数年酷使した体は最強になっていたようです〜
ねっとり
ファンタジー
世界一強いと言われているSSSランクの冒険者パーティ。
その一員であるケイド。
スーパーサブとしてずっと同行していたが、パーティメンバーからはただのパシリとして使われていた。
戦闘は役立たず。荷物持ちにしかならないお荷物だと。
それでも彼はこのパーティでやって来ていた。
彼がスカウトしたメンバーと一緒に冒険をしたかったからだ。
ある日仲間のミスをケイドのせいにされ、そのままパーティを追い出される。
途方にくれ、なんの目的も持たずにふらふらする日々。
だが、彼自身が気付いていない能力があった。
ずっと荷物持ちやパシリをして来たケイドは、筋力も敏捷も凄まじく成長していた。
その事実をとあるきっかけで知り、喜んだ。
自分は戦闘もできる。
もう荷物持ちだけではないのだと。
見捨てられたパーティがどうなろうと知ったこっちゃない。
むしろもう自分を卑下する必要もない。
我慢しなくていいのだ。
ケイドは自分の幸せを探すために旅へと出る。
※小説家になろう様でも連載中

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。