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119.試合後のリフレッシュだよ
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一回戦をあっさりと制したウータは会場から出て、ステラと合流した。
「あ、ステラ」
「ウータさん、お疲れさまでした」
「別に疲れてはいないかな? だけど、待合室には知っている人が誰もいなくて寂しかったよー」
本心である。
正直、対戦相手のトサカドワーフのことなどどうでも良い。
名前は最初から覚えていないし、明日には顔だって忘れていることだろう。
「それよりも……これから、どうしようか?」
「まだ日は高いですよね。また町を観光に行きましょうか?」
「良いね。ご飯も食べよっか」
ウータがのんびりと言って、ステラと並んで歩き出す。
どこに行こうかとぼんやりと考えるウータに、ステラが横から提案する。
「そういえば……会場で一緒に観戦していた人から聞いたんですけど、向こうに知る人ぞ知る足湯があるそうですよ?」
「足湯?」
「はい。一部の温泉ファンだけが知っている隠れ家的な場所みたいです。良ければ、行ってみませんか?」
「うーん……足湯かあ。どうしようかなあ」
ウータが考え込む。
正直なところ、足湯について魅力を興味を抱いたことはない。
(温泉はわかるよ。気持ち良くてスッキリするよね。だけど……足だけ浸かって、何か意味ってあるのかな?)
風呂に入りたいのなら、全身で浸かれば良い。
あえて足だけ入る意味がわからない……それがウータの考えである。
「まあ、いいや。行こっか」
とはいえ……ステラが行きたがっているのなら、別に構わない。
やったこともないことを批判するのが悪いことだということくらい、ウータだってわきまえているのだ。たぶん。
「それじゃあ、案内しますね。こっちです」
ステラに案内されて、ウータは町の中を歩いていく。
たどり着いたのは町の端にある小さな店である。そこまで繁盛している雰囲気はないが、落ち着いた店構えはどこか親しみがある。
「日本の古い温泉宿みたいな感じだね」
「ウータさんの故郷にもこういう場所があるんですか?」
「うん。まあ、雰囲気だけだけど」
ちょっとだけ、ウータはしんみりとした気持ちになってしまった。
軽いホームシックである。両親の顔を随分と見ていないし、味噌汁も飲んでいない。
「僕って、わりとネコマンマが好きなんだよね。幼馴染には下品な食べ方だって言われるけど、アレは美味しい。とろろ昆布とか入れるとすごく美味しい」
「はあ? そうなんですか?」
「ステラにもいつか食べさせてあげるね……それじゃ、入ろっか」
ウータとステラは二人で店に入った。
受付で会計を済ませて、そのまま奥に通される。
「あ、服は脱がなくて良いんだ」
「足湯ですからね。そのままでも良いみたいですよ?」
「ああ、そうなんだ。だから男女一緒なんだね」
通されたのは露天風呂。
床には長方形の台座があり、その奥には膝ほどの深さの窪みがあった。窪みは温泉で満たされており、白い湯気が昇っている。
「わっ……」
「綺麗ですね……」
湯が満たされた浴槽の向こう側には渓谷が広がっていた。
階段状に下っていくオレンジの谷は陽の光を反射しており、色とりどりの輝きを放っている。おそらく、そこに宝石の原石が埋まっているのだろう。
足湯に浸かっている人間はいない。隠れ家的な店だと聞いたが、ちょうど良く貸し切りになっていた。
「ウータさん、さっそく入りましょうか」
「うん、そうだね」
ステラがスカートをまくり、台座に座った。
ウータもズボンの裾を引っ張って、隣に腰掛ける。
「おお……」
「気持ち良いですね……」
ちょっと熱めの湯だが、足だけ浸かるのならちょうど良い。
足からゆっくりと全身に熱が巡っていき、予想外に心地好かった。
「これは……意外と悪くないかもしれないね」
ウータは足湯を侮っていた己を恥じた。
服を脱ぐわけではないので気軽に楽しむことができるし、逆上せる心配も少ない。
そして、目の前には宝石をちりばめた峡谷の景色。なかなかに悪くなかった。
「普通の温泉も好きだけど……それはそうとして、これも良いね」
「はい、気持ち良いです……」
隣のステラが頬を染めて溜息を吐く。
血行が良くなり、ほんのりと薔薇色に染まった肌が色っぽい。
ウータは強国の景色から目を逸らし、しばしステラの横顔に見惚れてしまった。
「どうかしましたか、ウータさん?」
「いや、別に。モチモチだなと思って」
「はい?」
「何でもないかな?」
ウータの謎の返答にステラが首を傾げる。
(どうしてかな、ちょっとドキドキするかも?)
そんなステラの反応に不思議と気恥ずかしい気持ちになり、ウータは再び景色に目を向けたのであった。
「あ、ステラ」
「ウータさん、お疲れさまでした」
「別に疲れてはいないかな? だけど、待合室には知っている人が誰もいなくて寂しかったよー」
本心である。
正直、対戦相手のトサカドワーフのことなどどうでも良い。
名前は最初から覚えていないし、明日には顔だって忘れていることだろう。
「それよりも……これから、どうしようか?」
「まだ日は高いですよね。また町を観光に行きましょうか?」
「良いね。ご飯も食べよっか」
ウータがのんびりと言って、ステラと並んで歩き出す。
どこに行こうかとぼんやりと考えるウータに、ステラが横から提案する。
「そういえば……会場で一緒に観戦していた人から聞いたんですけど、向こうに知る人ぞ知る足湯があるそうですよ?」
「足湯?」
「はい。一部の温泉ファンだけが知っている隠れ家的な場所みたいです。良ければ、行ってみませんか?」
「うーん……足湯かあ。どうしようかなあ」
ウータが考え込む。
正直なところ、足湯について魅力を興味を抱いたことはない。
(温泉はわかるよ。気持ち良くてスッキリするよね。だけど……足だけ浸かって、何か意味ってあるのかな?)
風呂に入りたいのなら、全身で浸かれば良い。
あえて足だけ入る意味がわからない……それがウータの考えである。
「まあ、いいや。行こっか」
とはいえ……ステラが行きたがっているのなら、別に構わない。
やったこともないことを批判するのが悪いことだということくらい、ウータだってわきまえているのだ。たぶん。
「それじゃあ、案内しますね。こっちです」
ステラに案内されて、ウータは町の中を歩いていく。
たどり着いたのは町の端にある小さな店である。そこまで繁盛している雰囲気はないが、落ち着いた店構えはどこか親しみがある。
「日本の古い温泉宿みたいな感じだね」
「ウータさんの故郷にもこういう場所があるんですか?」
「うん。まあ、雰囲気だけだけど」
ちょっとだけ、ウータはしんみりとした気持ちになってしまった。
軽いホームシックである。両親の顔を随分と見ていないし、味噌汁も飲んでいない。
「僕って、わりとネコマンマが好きなんだよね。幼馴染には下品な食べ方だって言われるけど、アレは美味しい。とろろ昆布とか入れるとすごく美味しい」
「はあ? そうなんですか?」
「ステラにもいつか食べさせてあげるね……それじゃ、入ろっか」
ウータとステラは二人で店に入った。
受付で会計を済ませて、そのまま奥に通される。
「あ、服は脱がなくて良いんだ」
「足湯ですからね。そのままでも良いみたいですよ?」
「ああ、そうなんだ。だから男女一緒なんだね」
通されたのは露天風呂。
床には長方形の台座があり、その奥には膝ほどの深さの窪みがあった。窪みは温泉で満たされており、白い湯気が昇っている。
「わっ……」
「綺麗ですね……」
湯が満たされた浴槽の向こう側には渓谷が広がっていた。
階段状に下っていくオレンジの谷は陽の光を反射しており、色とりどりの輝きを放っている。おそらく、そこに宝石の原石が埋まっているのだろう。
足湯に浸かっている人間はいない。隠れ家的な店だと聞いたが、ちょうど良く貸し切りになっていた。
「ウータさん、さっそく入りましょうか」
「うん、そうだね」
ステラがスカートをまくり、台座に座った。
ウータもズボンの裾を引っ張って、隣に腰掛ける。
「おお……」
「気持ち良いですね……」
ちょっと熱めの湯だが、足だけ浸かるのならちょうど良い。
足からゆっくりと全身に熱が巡っていき、予想外に心地好かった。
「これは……意外と悪くないかもしれないね」
ウータは足湯を侮っていた己を恥じた。
服を脱ぐわけではないので気軽に楽しむことができるし、逆上せる心配も少ない。
そして、目の前には宝石をちりばめた峡谷の景色。なかなかに悪くなかった。
「普通の温泉も好きだけど……それはそうとして、これも良いね」
「はい、気持ち良いです……」
隣のステラが頬を染めて溜息を吐く。
血行が良くなり、ほんのりと薔薇色に染まった肌が色っぽい。
ウータは強国の景色から目を逸らし、しばしステラの横顔に見惚れてしまった。
「どうかしましたか、ウータさん?」
「いや、別に。モチモチだなと思って」
「はい?」
「何でもないかな?」
ウータの謎の返答にステラが首を傾げる。
(どうしてかな、ちょっとドキドキするかも?)
そんなステラの反応に不思議と気恥ずかしい気持ちになり、ウータは再び景色に目を向けたのであった。
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