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118.一回戦だよ
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武闘大会、一回戦第三試合。
コロシアムの東側から現れたのはニワトリのトサカのような頭をしたドワーフ。背中に身の丈以上の大剣を背負っている。
「よっしゃあ! やったるぜえ!」
そして……西側から現れたのはミスリルのナイフを手にしたウータだった。
「さあ、頑張ろうかなー」
広いコロシアムの中央には審判役のドワーフがいて、周りを観客が囲んでいた。
軽く周囲を見回して……ステラの姿を見つけたので手を振っておく。
「一回戦第三試合。東側は『嵐切』のデューラ様、西側は人間族のウータ様です!」
「さっきはよくも虚仮にしてくれたなあ! 人間族の小僧が、降参しても許さねえぞお!」
「またコケとか言ってるよ。やっぱりニワトリさんなんだね」
大剣を引き抜いたトサカドワーフを前にして、ウータが落ち着き払った表情で言う。
先程、控室でもめた二人であったが……ウータはどうして相手が怒っているのかをわかっていない。
控室にいた時と同じように、無意識に相手を煽る。
「このっ……!」
再び激高しそうになるトサカドワーフであったが……怒りを抑えて、ニヤリと笑った。
「ハッ! 言ってやがれよ……すぐに真っ二つに切り裂いてやるからなあ!」
「おいおい……『嵐切』の対戦相手、人間族の子供じゃねーか」
「あーあ、見る意味ねえ試合だな。デュークに人間が勝てるわけねえじゃん」
吠えるトサカドワーフに、観客席からも溜息がこぼれている。
ウータはもちろん知らなかったが……どうやら、このトサカドワーフはそれなりに有名人のようだった。
観客席で戦いを見守っている人々の大部分が、ウータの敗北を確信しているようである。
「それでは……試合開始!」
「オリャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」
審判が試合開始を宣言するや、トサカドワーフが地面を蹴って飛び出した。
身の丈以上の武器を手にしているとは思えないスピードで走っていき、そのまま大剣を振り下ろす。
その時、誰もがウータが真っ二つに両断されるところをイメージしただろう。
実際、彼らの視線の先でウータが切り裂かれる。
「な……!」
しかし、両断されたはずのウータの姿が掻き消える。
まるで、蜃気楼でも斬ったかのように。
「あの野郎、どこへ……!」
「後ろだよ」
「なあっ!」
背後から聞こえた声に、トサカドワーフが咄嗟に大剣を横薙ぎにさせる。
いつの間にか回り込んでいたウータの身体が上下に斬られるが……再び、その身体が消えた。
「ば、馬鹿な……!」
「残像だよ」
少し離れた場所にウータが現れる。
その身体には傷一つなく、もちろん身体を真っ二つになどされていない。
「ま、まさか……目にも留まらねえスピードで動き、残像を生み出したってのか!」
トサカドワーフが愕然とした様子で叫んだ。
動きが少しも見えなかった。いったい、どれほどの速度で動いたというのだろう。
「フッフッフ。そんな遅い剣じゃあ、僕は斬れないぞ!」
得意げに言い放つウータであったが……彼は試合が始まってから、一歩も動いていない。
ウータはただ転移しただけである。とんでもない速度で動いて残像を作るなんて、そんなことできるわけがなかった。
(まあ、やろうと思えばできるかもしれないけど……面倒臭いよね。マラソン大会とか嫌いだし)
転移ができるのにわざと走るのか意味がわからない。
飛べるんだから、飛べばいい。
一気に転移するのではなく、コマ送りのように転移することでそれっぽく見せることも可能なのだ。
「クッ……チクショウガアアアアアアアアアアアアアアッ!」
トサカドワーフが大声で叫びながら、連続攻撃が叩き込む。
速度で劣っているのならば、手数で補えばよいとばかりに右に左、上下に大剣を滅茶苦茶に振り回した。
その戦いぶりはまさしく『嵐切』の名にふさわしいものだったが……ウータは転移を繰り返して全てを回避する。
「残像だよ」
ちなみに……このセリフは言ってみたかっただけである。
「当たれ、当たれ、当たれええええええええええええええええっ!」
「もういいかな? 倒すよ」
「グフッ……」
ウータがトサカドワーフの背後に転移して、背中にミスリルナイフを突き刺した。
「馬鹿、な……」
倒れるトサカドワーフ。
そこまで深く刺してもいないので、命は助かるだろう。
死んでしまっても別に困りはしないので、ウータは軽くそんなふうに考えた。
「しょ、勝者……人間族のウータ選手!」
「そんな……『嵐切』が負けたぞ!」
「優勝候補がいきなりやられちまったぞ、何者だ!?」
「大損じゃねえか、チクショウめ!」
観客席から動揺と失意の叫びが上がった。
予想外の展開に誰もが混乱している様子である。
「あ、勝ったよー」
そんな観客達を気にした様子もなく、ウータは応援席のステラに向かって手を振ったのである。
コロシアムの東側から現れたのはニワトリのトサカのような頭をしたドワーフ。背中に身の丈以上の大剣を背負っている。
「よっしゃあ! やったるぜえ!」
そして……西側から現れたのはミスリルのナイフを手にしたウータだった。
「さあ、頑張ろうかなー」
広いコロシアムの中央には審判役のドワーフがいて、周りを観客が囲んでいた。
軽く周囲を見回して……ステラの姿を見つけたので手を振っておく。
「一回戦第三試合。東側は『嵐切』のデューラ様、西側は人間族のウータ様です!」
「さっきはよくも虚仮にしてくれたなあ! 人間族の小僧が、降参しても許さねえぞお!」
「またコケとか言ってるよ。やっぱりニワトリさんなんだね」
大剣を引き抜いたトサカドワーフを前にして、ウータが落ち着き払った表情で言う。
先程、控室でもめた二人であったが……ウータはどうして相手が怒っているのかをわかっていない。
控室にいた時と同じように、無意識に相手を煽る。
「このっ……!」
再び激高しそうになるトサカドワーフであったが……怒りを抑えて、ニヤリと笑った。
「ハッ! 言ってやがれよ……すぐに真っ二つに切り裂いてやるからなあ!」
「おいおい……『嵐切』の対戦相手、人間族の子供じゃねーか」
「あーあ、見る意味ねえ試合だな。デュークに人間が勝てるわけねえじゃん」
吠えるトサカドワーフに、観客席からも溜息がこぼれている。
ウータはもちろん知らなかったが……どうやら、このトサカドワーフはそれなりに有名人のようだった。
観客席で戦いを見守っている人々の大部分が、ウータの敗北を確信しているようである。
「それでは……試合開始!」
「オリャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」
審判が試合開始を宣言するや、トサカドワーフが地面を蹴って飛び出した。
身の丈以上の武器を手にしているとは思えないスピードで走っていき、そのまま大剣を振り下ろす。
その時、誰もがウータが真っ二つに両断されるところをイメージしただろう。
実際、彼らの視線の先でウータが切り裂かれる。
「な……!」
しかし、両断されたはずのウータの姿が掻き消える。
まるで、蜃気楼でも斬ったかのように。
「あの野郎、どこへ……!」
「後ろだよ」
「なあっ!」
背後から聞こえた声に、トサカドワーフが咄嗟に大剣を横薙ぎにさせる。
いつの間にか回り込んでいたウータの身体が上下に斬られるが……再び、その身体が消えた。
「ば、馬鹿な……!」
「残像だよ」
少し離れた場所にウータが現れる。
その身体には傷一つなく、もちろん身体を真っ二つになどされていない。
「ま、まさか……目にも留まらねえスピードで動き、残像を生み出したってのか!」
トサカドワーフが愕然とした様子で叫んだ。
動きが少しも見えなかった。いったい、どれほどの速度で動いたというのだろう。
「フッフッフ。そんな遅い剣じゃあ、僕は斬れないぞ!」
得意げに言い放つウータであったが……彼は試合が始まってから、一歩も動いていない。
ウータはただ転移しただけである。とんでもない速度で動いて残像を作るなんて、そんなことできるわけがなかった。
(まあ、やろうと思えばできるかもしれないけど……面倒臭いよね。マラソン大会とか嫌いだし)
転移ができるのにわざと走るのか意味がわからない。
飛べるんだから、飛べばいい。
一気に転移するのではなく、コマ送りのように転移することでそれっぽく見せることも可能なのだ。
「クッ……チクショウガアアアアアアアアアアアアアアッ!」
トサカドワーフが大声で叫びながら、連続攻撃が叩き込む。
速度で劣っているのならば、手数で補えばよいとばかりに右に左、上下に大剣を滅茶苦茶に振り回した。
その戦いぶりはまさしく『嵐切』の名にふさわしいものだったが……ウータは転移を繰り返して全てを回避する。
「残像だよ」
ちなみに……このセリフは言ってみたかっただけである。
「当たれ、当たれ、当たれええええええええええええええええっ!」
「もういいかな? 倒すよ」
「グフッ……」
ウータがトサカドワーフの背後に転移して、背中にミスリルナイフを突き刺した。
「馬鹿、な……」
倒れるトサカドワーフ。
そこまで深く刺してもいないので、命は助かるだろう。
死んでしまっても別に困りはしないので、ウータは軽くそんなふうに考えた。
「しょ、勝者……人間族のウータ選手!」
「そんな……『嵐切』が負けたぞ!」
「優勝候補がいきなりやられちまったぞ、何者だ!?」
「大損じゃねえか、チクショウめ!」
観客席から動揺と失意の叫びが上がった。
予想外の展開に誰もが混乱している様子である。
「あ、勝ったよー」
そんな観客達を気にした様子もなく、ウータは応援席のステラに向かって手を振ったのである。
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