異世界召喚されて捨てられた僕が邪神であることを誰も知らない……たぶん。

レオナール D

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113.宿屋で過ごすよ

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 宿屋に戻ったウータとステラ。
 ステラの足がダイヤモンドになってしまい、一時はどうなることかと思ったが……石化の現象は神殿から出るとすぐに止まった。
 夜にはステラの足はすっかり元通りになっており、自分で歩くことができるようになっていた。

「うんうん、元通りになって良かったねー」

「はい、一時はどうなることかと思いました……」

 ステラは回復した足を撫でながら、安堵の溜息を吐いた。
 最悪の場合、あのまま全身がダイヤモンドになってしまう可能性もあった。
 そうならずに済んで、心から安心している。

「うんうん、ステラの足は綺麗だもんね。ちゃんと治って良かったよー」

「そ、そうですか……はい、私も良かったです」

 何気なく放たれた言葉に、ステラが頬を赤くする。
 ウータはその気もないのにそういうセリフを吐くので、一緒にいるステラとしては戸惑うばかりだった。

「あ、ご飯食べるかな?」

「はい、いただきます……それで、ウータさん。これからのことですけど……」

「うん? 何かあったかな?」

「神殿の地下のことです。侵入者対策で呪いがかけられているのですから、きっとあの場所には何かありますよ」

「うんうん、そうかもしれないね……だけど、まあ。やっぱりすぐに調べなくてもいいか」

 ウータが軽食のパンをパクパクと食べながら、どうでも良さそうに言う。

「どうせ闘技大会に出たら、女神と会えるんだよね。だったら……わざわざ調べなくてもいいよ。面倒くさくなってきちゃった」

「気まぐれですね……ウータさんがそれで良いなら、構いませんけど」

 そんな話をしていると、部屋の扉がノックされた。

「ん? 誰かな?」

 ウータが扉を開けると、そこにはエンジェが立っていた。

「今晩は」

「ああ、こんばんは。何か用事かな?」

「ええ、昨日の宝石を換金してきたから。貴方達の取り分を持ってきたのよ」

 エンジェがジャラジャラと金貨の入った袋を手渡してきた。

「ありがとー。今、ご飯食べてたんだけど一緒にどうかな?」

「あら、構わないの?」

「別に良いよ。ねえ、ステラ」

「はい、もちろんです。どうぞ入ってください」

「それじゃあ、お邪魔するわね」

 エンジェが部屋に入ってきて、テーブルについた。
 ウータは受け取った金貨をベッドの上に放り投げる。

「はい、どうぞ召し上がれ。辛くて美味しいよ?」

 ウータが食事の中から、特に辛い物をエンジェに勧めた。
 宿屋に食事を注文する際、辛い物を抜いてくれと注文したはずなのだが……食事の中には、しっかりと辛口の料理が含まれていた。
 エンジェに辛い料理を食べさせようとするウータに、ステラがあきれた様子で溜息を吐いた。

「ウータさん、まさかそのために食事に誘ったんですか……」

「ほらほら、辛いよ。美味しいよ」

 ウータは辛い食べ物が苦手である。
 日本にいた頃も、カレーは甘口だった。

「あら、ありがとう……何よ、コレ。ぜんぜん辛くないわよ?」

 しかし、エンジェはパクパクと辛口の料理を食べて、不満を口に出している。

「やけに薄味ね。これじゃあ、お酒のアテにならないわ」

 エンジェは懐から金属製のスキットルを取り出して、中の液体をグイッと飲む。
 強いアルコールの匂いがウータ達の鼻をくすぐる。どうやら、スキットルの中身は酒のようだ。それも、かなり強い。

「エンジェのお姉さんはお酒が強いんだね。それに辛い物も食べられるんだ」

「これくらい、ドワーフだったら普通よ」

「そうなんだ」

 ドワーフは酒に強いイメージがあるが、辛い物も好きであるらしい。

「辛っ!」

 ウータがステラが辛くないと言った料理を一口食べて、すぐにグラスの水を飲み干した。

「人間は辛い物が苦手なのね……まあ、良いけれど」

「そういえば……エンジェさん。今日、土の女神の神殿に行ったんですけど……」

 ステラが口を開く。
 どうやら、ドワーフであるエンジェから情報収集をしようとしているらしい。

「あの神殿……やたらと宝石が多かったですよね。何か理由でもあるんですか?」

「…………」

 ステラが訊ねると、エンジェがあからさまに表情を硬くさせた。
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