異世界召喚されて捨てられた僕が邪神であることを誰も知らない……たぶん。

レオナール D

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111.神殿には秘密がありそうだよ

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『土』の女神であるアースを祀っている神殿は大理石で造られており、その壁や柱、床、天井に至るまで色とりどりの宝石が埋め込まれている。
 特殊な魔法がかけられているのだろうか……外からの光を反射しているわけでもないのに、宝石はキラキラと輝いていた。
 四方八方から七色の光に囲まれている状況はまるで万華鏡の内側にいるようで、何とも落ち着かない気持ちにさせられる。

「……女神アースは宝石がお好きなのでしょうか?」

「そうじゃない? 成金趣味って奴なのかな?」

 ステラの言葉にウータがのんびりとした口調で答える。
 周囲にはドワーフの神官や兵士が何人も歩いていたが、彼らは一様に宝石で服や身体を飾っていた。
 どうやら、高い地位にいる人間ほど大粒の宝石を大量に身に着けているようである。

「ドワーフって外見は子供にしか見えないからさ。何というか……食玩とかの玩具のアクセサリーを着けているように見えるよ」

「『しょくがん』というのが何のことかは知りませんが……ドワーフの人達は小柄ですよね。年配の人はヒゲですぐにわかりますけど」

 ウータとステラが声を潜めてそんな話をしつつ、神殿の中を歩いていく。
 ステラは遠慮気味に、ウータは無遠慮に周りを見回しながら、神殿の廊下を進んでいった。
 一通り回ってみてわかったことだが……神殿は上から地下に向かって続いているらしい。
 一般的な信者、観光者などが入ることができるのは地上の階層のみ。
 地下には神殿の関係者しか入ることができないようだ。

「うーん、下には行けないみたいだね。上の方を見ても何もなかったよ?」

「兵士さんがいて、下への階段は通れないみたいですね……どうしましょうか?」

 地下に進もうとして門前払いを受けて、ウータとステラは困り果てる。
 一般人が立ち入ることができる区画には、当たり障りのない聖堂などしかなかった。
 貴重な情報は得られず、もちろん、女神アースの姿も見られない。

「下に行ったら女神がいるのかな? 転移してみよっか?」

「……ウータさんがそうしたいのなら、止めはしませんけど」

「うんうん、じゃあ。レッツゴー」

 ウータがステラの手を掴んで、転移を発動させる。
 地下に開けている空間めがけて移動した。

「わっ」

「ここは……ダンジョンですか?」

 転移した先は暗い洞窟のようだった。周りには誰もいない。
 そこにも壁や床に大量の宝石が埋め込まれており、光り輝く石が光源となっている。
 その光景は昨日に入ったダンジョンに酷似していた。

「ダンジョンもこの神殿も、どちらも女神アースが作った物です。だから、似ていても別に不自然はありませんけど……」

「そこに誰かいるのか?」

「!」

 暗闇の向こうから誰かの声がした。
 カツカツと足音も聞こえて来て、洞窟の壁に反響する。

「ステラ」

 ウータがステラの手を掴んで転移。適当な物影へと移動した。

「気のせいか。誰かいると思ったんだけどな」

 奥の曲がり角から現れたのはドワーフの神官である。
 男性の神官は身体のあちこちに、大粒の宝石が付いたアクセサリーを身に着けていた。

「おい、どうかしたのか?」

「いや……すまない。何でもない」

 奥から別の神官が出てくるが、一人目の神官が首を振った。

「遊んでないでさっさと行くぞ。さっさと奉納しにいかないと、俺達の方が石にされちまう」

「ああ……わかっている。ダエッチがやらかして石刑になったばかりだからな」

「……仕方がないさ。アース様のお気に入りの宝玉を落として、傷つけちまったんだからな。アイツが代わりに石にされたって文句は言えない」

「そうだな……さっさと行こう」

 ドワーフがそんな会話をしつつ、どこかに歩いて行ってしまった。

「フウン? 何だか、変な話をしていたね」

「石になるとか話していましたけど……何のことでしょう?」

 ウータとステラが物陰から顔を出す。
 神官達の会話は確信めいているようで、何の関係もない話題にも聞こえる。
 ともあれ……彼らが進んでいった方向に何かがあるのかもしれない。

「ちょっと、追いかけてみよっか」

「はい。行ってみま……キャッ!」

「ステラ?」

 神官を追いかけようとする二人であったが、唐突にステラが転んでしまった。
 ウータが少しだけ慌ててステラに駆け寄る。

「大丈夫かな? 痛くない?」

「は、はい。痛いところは…………え?」

「アレ?」

 すぐに立ち上がろうとするステラであったが……彼女は立てなかった。
 ウータも異変に気がついて、目を丸くする。

「あ、足が……」

「……石になっているね」

 そう……足が石になっていた。
 ステラの両足首から下が、キラキラと輝くダイヤモンドのような宝石に変貌していたのである。
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