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110.土の神殿に行くよ
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ドワーフの国ミスリルバレーにやってきて二度目の夜が明けた。
温泉でダンジョンでの汚れを落とし、昨晩と同じようにウータとステラは同じベッドで寄り添って眠った。
「さあ、朝だよ。今日はどうしようか?」
運ばれてきた朝食のトーストを齧りながら、ウータが訊ねる。
昨日は屋台を回り、路上パフォーマンスを楽しみ、ダンジョンを探索した。
今日はどこに行こうかと首を傾げた。
「そうですね……神殿に行ってみるのはどうでしょうか?」
ステラが少しだけ考えて、そんなことを提案した。
「女神アースのことを調べなくてはいけませんし、行ってみて損はないと思いますよ? 運が良ければ……女神に会うことができるかもしれません」
ウータは女神アースと会うために武術大会に出場する予定なのだが、神殿で会うことができたのならその必要もなくなる。
「もちろん、そんなに簡単に女神に会うことはできないと思いますけど……」
ともあれ、情報収集は大事である。
思い立ったが吉日。ウータとステラはさっそく神殿に向かうことにした。
街に出ると、昨日よりも人が増えている。
さらに……殺伐とした空気も増しており、あちこちから争いの音が鳴り響いてきた。
「何だか、騒がしいね。温泉地なんだからもっとゆったりすればいいのに」
「闘技大会の予選でしょうね……期日が近づいてきたので、より戦いが苛烈になっているのではないでしょうか?」
本戦が始まる期日までの一定人数を倒さなくてはいけない。
そのため、焦っている参加者が積極的に戦っているのだろう。
「僕達には関係ないよね。さっさと行こっか」
「はい、行きましょう」
すでにウータは本戦出場の資格を得ている。
問題は……本選に出るためのミスリル装備を持っていないことだが、それは適当に調達すれば良いと考えていた。
二人は人並みを掻き分けて進んでいき、町の中心にある神殿へと到着した。
その神殿は大理石で作られていたが、あちこちに宝石が飾られていてゴージャスな光を放っている。
ある意味では神秘的であるのだろうが……どこか落ち着かない場所だった。
「ここが土の女神の神殿だね」
「やっぱり、神官の人達はドワーフばかりですね」
ドワーフの国だから当然であるが、神殿にはドワーフの神官が大勢いた。
ウータ達が神殿の中に入ろうとすると……入口に立っていた神官が声をかけてくる。
「観光客か? ここに入りたいのなら、宝石を奉納してもらうよ」
「宝石?」
「ああ、それが通行税なんだ。持ってないのかい?」
「ああ、ウータさん。昨日のダンジョンで拾った物がありますよ」
ステラが宝石を取り出した。
ミスリルを採取した際に入手したものである。
「ああ、それで良いよ。それじゃあもらうよ」
神官が宝石を受け取って、神殿の壁に押しつける。
すると……壁の中に宝石が吸い込まれていった。
「へ……それってどうなっているのかな?」
「さあ? 知らないけど?」
「知らないって……」
「ここは土の女神であらせられるアース様の神殿だ。そういうこともある」
そういうこともあるらしい。
理屈はわからないが、そういうものとして受け取るしかないようだった。
「まあ、何でも良いか。そんなことよりも……入って良いんだよね?」
「ああ、どうぞ」
「ちなみに……女神様には会えたりするのかな? 食べ……じゃなくて、お話したいことがあるんだけど?」
「おいおい……アース様は人前には姿を現さないよ。拝謁を願うのであれば、闘技大会で優勝でもしてみるんだな」
やはり、それしかないようである。
ウータは残念そうに肩を落としつつ、後ろにいるステラを振り返る。
「別にいっか……それじゃあ、ステラ。入るよー」
「はい、入りましょうか」
ウータがステラを伴って、神殿の中に入っていった。
やはり神殿の中は宝石でいっぱい。
四方八方からキラキラとした光が浴びせられる。
「……何だか、見られているみたいですね」
まるで大量の目に見つめられているような感覚になり、ステラがブルリと身体を震わせた。
「そう? 別に気にならないけど?」
一方のウータは不思議そうな顔をしており、気にした様子もなく神殿の廊下を歩いていくのであった。
温泉でダンジョンでの汚れを落とし、昨晩と同じようにウータとステラは同じベッドで寄り添って眠った。
「さあ、朝だよ。今日はどうしようか?」
運ばれてきた朝食のトーストを齧りながら、ウータが訊ねる。
昨日は屋台を回り、路上パフォーマンスを楽しみ、ダンジョンを探索した。
今日はどこに行こうかと首を傾げた。
「そうですね……神殿に行ってみるのはどうでしょうか?」
ステラが少しだけ考えて、そんなことを提案した。
「女神アースのことを調べなくてはいけませんし、行ってみて損はないと思いますよ? 運が良ければ……女神に会うことができるかもしれません」
ウータは女神アースと会うために武術大会に出場する予定なのだが、神殿で会うことができたのならその必要もなくなる。
「もちろん、そんなに簡単に女神に会うことはできないと思いますけど……」
ともあれ、情報収集は大事である。
思い立ったが吉日。ウータとステラはさっそく神殿に向かうことにした。
街に出ると、昨日よりも人が増えている。
さらに……殺伐とした空気も増しており、あちこちから争いの音が鳴り響いてきた。
「何だか、騒がしいね。温泉地なんだからもっとゆったりすればいいのに」
「闘技大会の予選でしょうね……期日が近づいてきたので、より戦いが苛烈になっているのではないでしょうか?」
本戦が始まる期日までの一定人数を倒さなくてはいけない。
そのため、焦っている参加者が積極的に戦っているのだろう。
「僕達には関係ないよね。さっさと行こっか」
「はい、行きましょう」
すでにウータは本戦出場の資格を得ている。
問題は……本選に出るためのミスリル装備を持っていないことだが、それは適当に調達すれば良いと考えていた。
二人は人並みを掻き分けて進んでいき、町の中心にある神殿へと到着した。
その神殿は大理石で作られていたが、あちこちに宝石が飾られていてゴージャスな光を放っている。
ある意味では神秘的であるのだろうが……どこか落ち着かない場所だった。
「ここが土の女神の神殿だね」
「やっぱり、神官の人達はドワーフばかりですね」
ドワーフの国だから当然であるが、神殿にはドワーフの神官が大勢いた。
ウータ達が神殿の中に入ろうとすると……入口に立っていた神官が声をかけてくる。
「観光客か? ここに入りたいのなら、宝石を奉納してもらうよ」
「宝石?」
「ああ、それが通行税なんだ。持ってないのかい?」
「ああ、ウータさん。昨日のダンジョンで拾った物がありますよ」
ステラが宝石を取り出した。
ミスリルを採取した際に入手したものである。
「ああ、それで良いよ。それじゃあもらうよ」
神官が宝石を受け取って、神殿の壁に押しつける。
すると……壁の中に宝石が吸い込まれていった。
「へ……それってどうなっているのかな?」
「さあ? 知らないけど?」
「知らないって……」
「ここは土の女神であらせられるアース様の神殿だ。そういうこともある」
そういうこともあるらしい。
理屈はわからないが、そういうものとして受け取るしかないようだった。
「まあ、何でも良いか。そんなことよりも……入って良いんだよね?」
「ああ、どうぞ」
「ちなみに……女神様には会えたりするのかな? 食べ……じゃなくて、お話したいことがあるんだけど?」
「おいおい……アース様は人前には姿を現さないよ。拝謁を願うのであれば、闘技大会で優勝でもしてみるんだな」
やはり、それしかないようである。
ウータは残念そうに肩を落としつつ、後ろにいるステラを振り返る。
「別にいっか……それじゃあ、ステラ。入るよー」
「はい、入りましょうか」
ウータがステラを伴って、神殿の中に入っていった。
やはり神殿の中は宝石でいっぱい。
四方八方からキラキラとした光が浴びせられる。
「……何だか、見られているみたいですね」
まるで大量の目に見つめられているような感覚になり、ステラがブルリと身体を震わせた。
「そう? 別に気にならないけど?」
一方のウータは不思議そうな顔をしており、気にした様子もなく神殿の廊下を歩いていくのであった。
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