異世界召喚されて捨てられた僕が邪神であることを誰も知らない……たぶん。

レオナール D

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109.ダンジョンから出てご飯だよ

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「わ、外が真っ暗だよ」

「随分と時間が経っていたんですね……気づきませんでした」

 ウータとステラ、エンジェの三人はダンジョンから出る。
 外に出ると、とうに日が落ちて真っ暗になっていた。

「遅くなっちゃったなあ。もしかして、宿屋の晩御飯を食べ損なっちゃったかな?」

「普通、ダンジョンの深部に入ったら泊まりよ……日付が変わる前に出てこられるなんて、滅多にないわよ」

 エンジェが懐中時計を取り出しながら、そんなことを言う。

「今から戻れば、夕食の提供時間ギリギリに戻れるわ。急いで帰ったらどうかしら?」

「そうするよ。エンジェのお姉さんはどうするのかな?」

「私は収穫物を換金してから帰るわ。そんなにお腹もすいていないから、屋台で適当に済ませるわよ」

「フウン、そうなんだ」

「貴方達への分け前は明日にでも渡すわ……私が持ち逃げするのが心配なら、ついてきても良いわよ?」

「別に良いや。任せるよー」

 ウータがヒラヒラと手を振った。
 エンジェのことを信頼しているというよりも、そこまで金に執着がないのだろう。
 もしも持ち逃げされたのであれば、転移で追いかけて塵にすれば良い……せいぜい、その程度にしか考えていないのである。

「それじゃあ、僕達は宿屋に帰るよ。またねー」

「今日はありがとうございました。おやすみなさい」

「ええ、さようなら」

 エンジェと別れて、ウータはステラの手を取った。
 宿屋で夕食を食べのがさないよう、速めに帰った方が良いだろう。
 転移を使って宿屋まで飛んだ。

「えいっ」

「ヒャアッ! なんだいっ!?」

 周囲の景色が変わって、宿屋のエントランスへ移動した。
 ちょうどそこにいた女将が驚きの声を上げて、尻もちをつく。

「きゅ、急に現れて……何なんだい、アンタ達は!」

「あ、ごめんごめん」

「すみません、女将さん……失礼いたしました」

 二人が慌てて謝罪する。
 幸い、女将は尻を軽く打っただけで怪我はないようだった。

「まったく……転移魔法を使うのなら、宿屋の外にしておくれ。ビックリするじゃないか」

「ごめんなさい。晩御飯に間に合わなくちゃと思って、つい……」

「ウチの食事をそこまで楽しみにしてくれたのは嬉しいけどね……限度があるだろう。まったく……」

 女将が呆れた様子で首を振った。

「それで……晩御飯は部屋に運ぶかい? 食堂で食べてくれた方が、こっちは片付けが楽で助かるんだけどね!」

「あー……食堂で良いかな?」

 昨日は部屋で摂ったが……驚かせてしまった罪悪感もあり、食堂で食べることにした。

「はいよ。それじゃあ、料理を用意するから適当なテーブルに座っておいておくれ」

「うん。辛いのは苦手だから、それ以外にしてね」

「はいはい、わかったよ」

 食堂には十ほどのテーブルがあったのだが、半分ほどが埋まっていた。
 ドワーフや人間がテーブルについて、料理や酒を楽しんでいる。
 ウータとステラは適当なテーブルに向かい合わせで座り、少しだけ待っていると料理が運ばれてきた。

「はいよ、お待たせ」

 女将がトレーから料理と飲み物をテーブルに移す。
 焦げ目の付いた大きめのパンと白いスープ、サラダである。

「辛い物が苦手だって聞いたから、ホワイトシチューだよ……本当はスパイスを入れた方が美味しいんだけどね」

「十分、美味しそうだよ。ありがとー」

「ありがとうございます、女将さん」

「はいはい、ごゆっくりねー」

 ウータとステラは運ばれてきた料理に舌鼓を打った。
 ホワイトシチューはスパイスを抜いてあるからか、一味足りないといったふうだったが……ウータはそれをご満悦の表情で口に運ぶ。

「このパン、美味しいですね。中に具が入ってますよ」

「うん、良いね。カレーパンみたいだ」

 パンの中には具材が詰め込まれており、カレーパンというよりもピロシキに近い料理のようだった。
 齧ると具材とスープが溢れ出してきて、口いっぱいに旨味が広がっていく。

「急いで帰ってきて良かったね。あと少しで食べ逃すところだったよ」

「はい。それにしても……ダンジョンは綺麗でしたね」

「うん、綺麗だったね。鍾乳洞みたいなんだけど宝石がキラキラしていて……まるで星空の中に飛び込んだみたいだったよ」

「ウータさんにしてはロマンチックな表現ですね……でも、その通りです」

 二人はダンジョンでの思い出話に花を咲かせながら、宿屋の夕食に舌鼓を打ったのであった。
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