異世界召喚されて捨てられた僕が邪神であることを誰も知らない……たぶん。

レオナール D

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106.ドワーフのお姉さんと一緒だよ

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 エンジェと合流したウータとステラはダンジョンの奥に向かっていった。
 当初の目的は物見遊山。たんに観光のつもりで訪れただけだったが、現在はエンジェの目的であるミスリル鉱石の採取が加わっている。

「ミスリルが欲しいって話だけどさ。だったら、その辺を掘ったら出てくるんじゃない?」

 ダンジョンの通路を進みながら、ウータがふと訊ねる。
 ここは坑道なのだ。周囲の壁を掘れば、鉱石が出てくるのではないか。

「無理よ。ダンジョンの壁や床は破壊できないから」

 エンジェが首を振って答えた。
 神の力によって作り出されたダンジョンは人間の力では破壊できないらしく、壁の中でキラキラと光っている石もただの飾り。取り外して持って帰ることはできないのだ。

「へえ、そうなんだ…………あ」

 ウータが試しに壁に触れて、塵化を発動させると……壁の一部が粉々になって塵になる。
 塵にした部分は黒く何もない虚空が生じており、壁の向こうには何も無かった。

「どうかしたの?」

「あ、ううん。何でもないよー」

 ウータがさっと壊した壁を背中に隠す。
 よくわからないが、壁を壊してしまったことは秘密にすることにした。
 もしかしたら、怒られてしまうかもしれないと思ったのだ。

「ウータさん……」

 ステラにはバッチリと見られていたが……もちろん、彼女がばらすようなことはなかった。

「ダンジョンの奥に行くと、鉱石を採掘できるポイントがあるのよ。そのポイントにツルハシを振り下ろすと鉱石が出てくるわ。ミスリルが出るかどうかは運次第になるけれど……ポイントは一つではないから。いくつか当たれば、必要分は手に入れることができるはずよ」

 エンジェはウータが壊した壁には気がつくことなく、ダンジョンを先に先に歩いていく。
 ウータは「セーフ」とつぶやいてから、その後ろを追いかける。

「ダンジョンは奥に行けば行くほど、強い魔物が出てくるわ。くれぐれも気をつけて頂戴」

「うん、わかったよ……えいっ」

「ギイッ!」

 石の隙間から大きな百足が飛び出てきたが、ウータが射出した水のレーザーによって撃ち抜かれる。
 頭部を破壊された大百足が倒れて、ドロップアイテムを残して消滅する。

「すごいわね……貴方は凄腕の魔法使いなのね」

「たぶん、そうかな? 凄腕かどうかは知らないけどね」

「ウータさんはすごい人ですよ。ウータさんに比べると、私なんてまだまだです……」

 言いながら、さらに現れた大百足に向かってステラが白い炎を放った。
 魔法を無効化させる炎はダンジョンの魔物に対しては特攻。一撃で跡形もなく消し去る。

「……貴女も十分にすごいわよ。それにしても、ここで貴方達に会えたのは本当に幸運だったわ」

「ギャンッ!」

 エンジェが溜息交じりに剣を振る。
 岩の隙間に突き刺して……そこにいた魔物を串刺しにした。

「私は剣術にはそれなりに自信があるのだけど、魔法は不得意なのよ。ダンジョンはパーティーで潜り、お互いの弱点を補い合うのが基本なのだけど……それができる仲間もいなくってね。本当に助かるわ」

「喜んでもらえたのなら良かったよー」

「何か御礼を差し上げたいのだけど……何かあるかしら?」

「御礼? 別にいらないけど、強いて言うのなら……」

 何だろうか。
 ウータは考え込みながらエンジェの身体をじっと見て……。

「それじゃあ、おっぱ……」

「今度、町の案内をしてくれたら良いですよ!」

 ウータが何かを言いかけるが、ステラがそれに声を被せる。

「私達、闘技大会が終わるまではこの町に滞在するんです! 町の歴史や伝承、女神アースのことを学べるような場所があれば、是非とも紹介してください!」

「それくらいで良いのなら……わかったわ」

 エンジェが頷いた。
 新しく現れた魔物を剣で一閃して、少女の外見には似合わない落ち着いた笑みを浮かべる。

「この町は私の生まれ故郷だから、案内だったらいくらでもできるわ。知る人ぞ知る隠しスポットを教えてあげるから、期待していて頂戴」

「それは良かったです……ねえ、ウータさん?」

「うん、良かったねー」

 笑顔で訊ねるステラに、ウータもよくわからないままに笑顔を返しておくのであった。
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