73 / 122
連載
106.ドワーフのお姉さんと一緒だよ
しおりを挟む
エンジェと合流したウータとステラはダンジョンの奥に向かっていった。
当初の目的は物見遊山。たんに観光のつもりで訪れただけだったが、現在はエンジェの目的であるミスリル鉱石の採取が加わっている。
「ミスリルが欲しいって話だけどさ。だったら、その辺を掘ったら出てくるんじゃない?」
ダンジョンの通路を進みながら、ウータがふと訊ねる。
ここは坑道なのだ。周囲の壁を掘れば、鉱石が出てくるのではないか。
「無理よ。ダンジョンの壁や床は破壊できないから」
エンジェが首を振って答えた。
神の力によって作り出されたダンジョンは人間の力では破壊できないらしく、壁の中でキラキラと光っている石もただの飾り。取り外して持って帰ることはできないのだ。
「へえ、そうなんだ…………あ」
ウータが試しに壁に触れて、塵化を発動させると……壁の一部が粉々になって塵になる。
塵にした部分は黒く何もない虚空が生じており、壁の向こうには何も無かった。
「どうかしたの?」
「あ、ううん。何でもないよー」
ウータがさっと壊した壁を背中に隠す。
よくわからないが、壁を壊してしまったことは秘密にすることにした。
もしかしたら、怒られてしまうかもしれないと思ったのだ。
「ウータさん……」
ステラにはバッチリと見られていたが……もちろん、彼女がばらすようなことはなかった。
「ダンジョンの奥に行くと、鉱石を採掘できるポイントがあるのよ。そのポイントにツルハシを振り下ろすと鉱石が出てくるわ。ミスリルが出るかどうかは運次第になるけれど……ポイントは一つではないから。いくつか当たれば、必要分は手に入れることができるはずよ」
エンジェはウータが壊した壁には気がつくことなく、ダンジョンを先に先に歩いていく。
ウータは「セーフ」とつぶやいてから、その後ろを追いかける。
「ダンジョンは奥に行けば行くほど、強い魔物が出てくるわ。くれぐれも気をつけて頂戴」
「うん、わかったよ……えいっ」
「ギイッ!」
石の隙間から大きな百足が飛び出てきたが、ウータが射出した水のレーザーによって撃ち抜かれる。
頭部を破壊された大百足が倒れて、ドロップアイテムを残して消滅する。
「すごいわね……貴方は凄腕の魔法使いなのね」
「たぶん、そうかな? 凄腕かどうかは知らないけどね」
「ウータさんはすごい人ですよ。ウータさんに比べると、私なんてまだまだです……」
言いながら、さらに現れた大百足に向かってステラが白い炎を放った。
魔法を無効化させる炎はダンジョンの魔物に対しては特攻。一撃で跡形もなく消し去る。
「……貴女も十分にすごいわよ。それにしても、ここで貴方達に会えたのは本当に幸運だったわ」
「ギャンッ!」
エンジェが溜息交じりに剣を振る。
岩の隙間に突き刺して……そこにいた魔物を串刺しにした。
「私は剣術にはそれなりに自信があるのだけど、魔法は不得意なのよ。ダンジョンはパーティーで潜り、お互いの弱点を補い合うのが基本なのだけど……それができる仲間もいなくってね。本当に助かるわ」
「喜んでもらえたのなら良かったよー」
「何か御礼を差し上げたいのだけど……何かあるかしら?」
「御礼? 別にいらないけど、強いて言うのなら……」
何だろうか。
ウータは考え込みながらエンジェの身体をじっと見て……。
「それじゃあ、おっぱ……」
「今度、町の案内をしてくれたら良いですよ!」
ウータが何かを言いかけるが、ステラがそれに声を被せる。
「私達、闘技大会が終わるまではこの町に滞在するんです! 町の歴史や伝承、女神アースのことを学べるような場所があれば、是非とも紹介してください!」
「それくらいで良いのなら……わかったわ」
エンジェが頷いた。
新しく現れた魔物を剣で一閃して、少女の外見には似合わない落ち着いた笑みを浮かべる。
「この町は私の生まれ故郷だから、案内だったらいくらでもできるわ。知る人ぞ知る隠しスポットを教えてあげるから、期待していて頂戴」
「それは良かったです……ねえ、ウータさん?」
「うん、良かったねー」
笑顔で訊ねるステラに、ウータもよくわからないままに笑顔を返しておくのであった。
当初の目的は物見遊山。たんに観光のつもりで訪れただけだったが、現在はエンジェの目的であるミスリル鉱石の採取が加わっている。
「ミスリルが欲しいって話だけどさ。だったら、その辺を掘ったら出てくるんじゃない?」
ダンジョンの通路を進みながら、ウータがふと訊ねる。
ここは坑道なのだ。周囲の壁を掘れば、鉱石が出てくるのではないか。
「無理よ。ダンジョンの壁や床は破壊できないから」
エンジェが首を振って答えた。
神の力によって作り出されたダンジョンは人間の力では破壊できないらしく、壁の中でキラキラと光っている石もただの飾り。取り外して持って帰ることはできないのだ。
「へえ、そうなんだ…………あ」
ウータが試しに壁に触れて、塵化を発動させると……壁の一部が粉々になって塵になる。
塵にした部分は黒く何もない虚空が生じており、壁の向こうには何も無かった。
「どうかしたの?」
「あ、ううん。何でもないよー」
ウータがさっと壊した壁を背中に隠す。
よくわからないが、壁を壊してしまったことは秘密にすることにした。
もしかしたら、怒られてしまうかもしれないと思ったのだ。
「ウータさん……」
ステラにはバッチリと見られていたが……もちろん、彼女がばらすようなことはなかった。
「ダンジョンの奥に行くと、鉱石を採掘できるポイントがあるのよ。そのポイントにツルハシを振り下ろすと鉱石が出てくるわ。ミスリルが出るかどうかは運次第になるけれど……ポイントは一つではないから。いくつか当たれば、必要分は手に入れることができるはずよ」
エンジェはウータが壊した壁には気がつくことなく、ダンジョンを先に先に歩いていく。
ウータは「セーフ」とつぶやいてから、その後ろを追いかける。
「ダンジョンは奥に行けば行くほど、強い魔物が出てくるわ。くれぐれも気をつけて頂戴」
「うん、わかったよ……えいっ」
「ギイッ!」
石の隙間から大きな百足が飛び出てきたが、ウータが射出した水のレーザーによって撃ち抜かれる。
頭部を破壊された大百足が倒れて、ドロップアイテムを残して消滅する。
「すごいわね……貴方は凄腕の魔法使いなのね」
「たぶん、そうかな? 凄腕かどうかは知らないけどね」
「ウータさんはすごい人ですよ。ウータさんに比べると、私なんてまだまだです……」
言いながら、さらに現れた大百足に向かってステラが白い炎を放った。
魔法を無効化させる炎はダンジョンの魔物に対しては特攻。一撃で跡形もなく消し去る。
「……貴女も十分にすごいわよ。それにしても、ここで貴方達に会えたのは本当に幸運だったわ」
「ギャンッ!」
エンジェが溜息交じりに剣を振る。
岩の隙間に突き刺して……そこにいた魔物を串刺しにした。
「私は剣術にはそれなりに自信があるのだけど、魔法は不得意なのよ。ダンジョンはパーティーで潜り、お互いの弱点を補い合うのが基本なのだけど……それができる仲間もいなくってね。本当に助かるわ」
「喜んでもらえたのなら良かったよー」
「何か御礼を差し上げたいのだけど……何かあるかしら?」
「御礼? 別にいらないけど、強いて言うのなら……」
何だろうか。
ウータは考え込みながらエンジェの身体をじっと見て……。
「それじゃあ、おっぱ……」
「今度、町の案内をしてくれたら良いですよ!」
ウータが何かを言いかけるが、ステラがそれに声を被せる。
「私達、闘技大会が終わるまではこの町に滞在するんです! 町の歴史や伝承、女神アースのことを学べるような場所があれば、是非とも紹介してください!」
「それくらいで良いのなら……わかったわ」
エンジェが頷いた。
新しく現れた魔物を剣で一閃して、少女の外見には似合わない落ち着いた笑みを浮かべる。
「この町は私の生まれ故郷だから、案内だったらいくらでもできるわ。知る人ぞ知る隠しスポットを教えてあげるから、期待していて頂戴」
「それは良かったです……ねえ、ウータさん?」
「うん、良かったねー」
笑顔で訊ねるステラに、ウータもよくわからないままに笑顔を返しておくのであった。
64
お気に入りに追加
1,485
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜
早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。
食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した!
しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……?
「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」
そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。
無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

Hしてレベルアップ ~可愛い女の子とHして強くなれるなんて、この世は最高じゃないか~
トモ治太郎
ファンタジー
孤児院で育った少年ユキャール、この孤児院では15歳になると1人立ちしなければいけない。
旅立ちの朝に初めて夢精したユキャール。それが原因なのか『異性性交』と言うスキルを得る。『相手に精子を与えることでより多くの経験値を得る。』女性経験のないユキャールはまだこのスキルのすごさを知らなかった。
この日の為に準備してきたユキャール。しかし旅立つ直前、一緒に育った少女スピカが一緒にいくと言い出す。本来ならおいしい場面だが、スピカは何も準備していないので俺の負担は最初から2倍増だ。
こんな感じで2人で旅立ち、共に戦い、時にはHして強くなっていくお話しです。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

転生受験生の教科書チート生活 ~その知識、学校で習いましたよ?~
hisa
ファンタジー
受験生の少年が、大学受験前にいきなり異世界に転生してしまった。
自称天使に与えられたチートは、社会に出たら役に立たないことで定評のある、学校の教科書。
戦争で下級貴族に成り上がった脳筋親父の英才教育をくぐり抜けて、少年は知識チートで生きていけるのか?
教科書の力で、目指せ異世界成り上がり!!
※なろうとカクヨムにそれぞれ別のスピンオフがあるのでそちらもよろしく!
※第5章に突入しました。
※小説家になろう96万PV突破!
※カクヨム68万PV突破!
※令和4年10月2日タイトルを『転生した受験生の異世界成り上がり 〜生まれは脳筋な下級貴族家ですが、教科書の知識だけで成り上がってやります〜』から変更しました
無名の三流テイマーは王都のはずれでのんびり暮らす~でも、国家の要職に就く弟子たちがなぜか頼ってきます~
鈴木竜一
ファンタジー
※本作の書籍化が決定いたしました!
詳細は近況ボードに載せていきます!
「もうおまえたちに教えることは何もない――いや、マジで!」
特にこれといった功績を挙げず、ダラダラと冒険者生活を続けてきた無名冒険者兼テイマーのバーツ。今日も危険とは無縁の安全な採集クエストをこなして飯代を稼げたことを喜ぶ彼の前に、自分を「師匠」と呼ぶ若い女性・ノエリ―が現れる。弟子をとった記憶のないバーツだったが、十年ほど前に当時惚れていた女性にいいところを見せようと、彼女が運営する施設の子どもたちにテイマーとしての心得を説いたことを思い出す。ノエリ―はその時にいた子どものひとりだったのだ。彼女曰く、師匠であるバーツの教えを守って修行を続けた結果、あの時の弟子たちはみんな国にとって欠かせない重要な役職に就いて繁栄に貢献しているという。すべては師匠であるバーツのおかげだと信じるノエリ―は、彼に王都へと移り住んでもらい、その教えを広めてほしいとお願いに来たのだ。
しかし、自身をただのしがない無名の三流冒険者だと思っているバーツは、そんな指導力はないと語る――が、そう思っているのは本人のみで、実はバーツはテイマーとしてだけでなく、【育成者】としてもとんでもない資質を持っていた。
バーツはノエリ―に押し切られる形で王都へと出向くことになるのだが、そこで立派に成長した弟子たちと再会。さらに、かつてテイムしていたが、諸事情で契約を解除した魔獣たちも、いつかバーツに再会することを夢見て自主的に鍛錬を続けており、気がつけばSランクを越える神獣へと進化していて――
こうして、無名のテイマー・バーツは慕ってくれる可愛い弟子や懐いている神獣たちとともにさまざまな国家絡みのトラブルを解決していき、気づけば国家の重要ポストの候補にまで名を連ねるが、当人は「勘弁してくれ」と困惑気味。そんなバーツは今日も王都のはずれにある運河のほとりに建てられた小屋を拠点に畑をしたり釣りをしたり、今日ものんびり暮らしつつ、弟子たちからの依頼をこなすのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。