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105.モジャッターパオード再びだよ

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 大きなハリネズミのような魔物を倒して、ウータとステラはエンジェのところまで歩いていった。

「ドワーフのお姉さん。大丈夫かな?」

「エンジェさん、大丈夫ですか?」

「ああ……誰かと思ったら、貴方達だったのね」

 未知の攻撃に警戒していたエンジェであったが……姿を現したウータとステラを見て、構えていた大剣を下ろす。

「驚いたわ。さっきの魔法攻撃……おかげで助かったわ」

「邪魔にならなくて良かったよー……それよりも、この魔物ってば何だったのかな?」

 ウータが横に視線を向けると、先ほどまでエンジェが戦っていたワニ顔のハリネズミの魔物は完全にいなくなっており、ドロップアイテムの肉塊が転がっている。

「ああ……あの魔物はモジャッターパオードという魔物ね」

「え……モジャッターパオード?」

「それってもしかして……私達が食べた奴ですか!?」

 ウータとステラが顔を見合わせる。
 ここに来るまでの露店で、モジャッターパオードのバオバオプーという名前の謎の料理を食べていた。
 結局、モジャッターパオードというのが何だったのかは最後まで謎で終わったのだが……まさか、今の魔物がモジャッターパオードだというのだろうか?

「正確には、モジャッターパオード・キングね。本来のモジャッターパオードは大型犬ほどの大きさなのだが、キングは見ての通りサイズが跳ね上がっているのよ」

「そ、そうなんですか……」

「モジャッターパオードの肉はドロップアイテムとして売れるのよね。バオバオプーとかフヴェッタショートとかクニャクニャモチャーナにすると美味しいわよ」

「もう、謎の単語が出過ぎてわけがわかりませんけど……」

 結局、モジャッターパオードというのは何だったのだろう。
 動物ということで良かったのだろうか?

「いいえ、動物ではないわね。どちらかというと……鉱物ね」

「こ、鉱物?」

「ええ……モジャッターパオードは生き物の形をした鉱物。つまりは『石』よ。食用できるから本当に石と呼んで良いのかはわからないけれど」

 動物でなく、鳥でなく、魚でもない。野菜でもない。
 けれど、肉で食用として店でも売っている。
 モジャッターパオードの正体は食べることができる石だったようである。

「謎は解けましたけど……釈然としないですね」

 ステラが顔を引きつらせて、口元を手で押さえる。
 自分が食べた物が石だったことを知って、気持ち悪そうにしていた。

「よその国の人はよくそうするけれど……ダンジョンではたまにあるわよ。食べられる石が見つかることが」

「そ、そうなんですか……」

「モジャッターパオードも良いけれど、アルジャーナポテッフもおすすめよ。シャバストマゼーナヤとジャログベレストモガーナと一緒に鍋で煮込んで、アルアルタベケンターイとリアジュウバクナッツで味付けしてエベレバナスベチャローテスにすると絶品なんだから」

「はい! もう良いです、説明しなくても大丈夫です!」

 異文化理解とは難しいものである。
 ステラは声を上げて、ドワーフの食文化への理解を放棄した。

「どれも美味しそうだけど……それはともかくとして、エンジェのお姉さんは何をしているのかな? ちなみに……僕達は観光で来たんだよ」

「私か? 私はミスリルを探しにきたのよ」

「ミスリルって……あの石だよね?」

「そう、鉱石のミスリルよ。例の武術大会の本選出場が決まったのだけど、馴染みの武器屋がミスリルを切らしているらしくてね。仕方がないから、自分で採掘にきたのよ」

 エンジェが肩をすくめて、背中に背負った大剣の柄を撫でる。

「この武器もミスリル製ではあるけれど……やっぱり、大会に優勝するために万全にしておきたいから。打ち直して修繕してもらうために、繋ぎとなるミスリルが必要なのよ」

「ヘエ、よくわからないけど、大変そうだねえ」

 ウータも本選に出場するというのに、他人事な言い方である。

「この奥にミスリルを採掘できるポイントがあるのだけど……途中で予想外にモジャッターパオードと出くわしてしまい、参っていたのよ。助かったわ」

「お役に立てて何よりだよー。それよりも、奥に行くのなら僕達も手伝おっか?」

 ウータがそんなことを提案する。

「それは助かるけど……良いの? 貴方達にメリットはないでしょう?」

「別に良いよ。特にやりたいことがあるわけでもないからねー」

「私も構いません。元々、観光目的で入ってきたわけですから」

「そういうこと。別に減るわけでもないからね。良い宿屋を紹介してくれた御礼だよ」

「……そう、それじゃあ力を貸してもらおうかしら」

 エンジェが頷いた。
 ウータとステラはドワーフの女剣士であるエンジェを仲間に加えて、ダンジョンの奥にさらに進んでいったのである。
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