71 / 122
連載
104.ダンジョンでー、ドワーフのお姉さんとー、出会ったー
しおりを挟む
「そういえば……今さらの話ですけど、ウータさんは魔法は使わないんですか?」
ダンジョンを三十分ほど進んだところで、ステラがふと疑問を口にする。
「『神炎』と『神水』でしたっけ? その魔法を使ったら、塵にすることなく簡単に倒せるんじゃないですか?」
「あ、忘れてた」
ステラに指摘されると、ウータがパチクリと瞬きをする。
「そういえば、女神を食べた力があったよね……忘れてた。うっかりさんだったよ」
「いや……忘れないでくださいよ。わりと重要なことじゃないですか」
ステラが呆れた様子で肩を落とす。
女神を食べるだなんて、この世界の人間によっては天地がひっくり返るような出来事である。
そんな大罪を犯しておいて、あっさりと「忘れていた」で済ませられるのはウータだけである。
「まあ、塵にする方が簡単だからねえ。ついつい、そっちを使っちゃうんだよね。次に魔物が出たら魔法を使うよー」
などと言いながら歩いていくと、通路から広い空間に出た。
坑道の中に広がった広々とした部屋。体育館ほどの大きさがあり、壁も床も石だったが、天井からは尖った鍾乳石が垂れている。
「わっ……すごい……!」
「すごいですね……」
その空間に足を踏み入れるや、ウータとステラが感嘆の声を上げる。
それはあまりにも幻想的な光景だった。
壁に生えたコケの光を鍾乳石が反射して、キラキラと星屑のように輝いているのだ。
おまけに、壁や床のあちこちから宝石の原石が覗いており、色とりどりの輝きを返している。
もしも星空に閉じ込められたとしたら、きっと周囲にはこんな景色が広がっているだろう。
「そういえば……ダンジョンの中には綺麗な景色があるって言ってたよね。コレがそうなのかな?」
「きっとそうですね……本当に綺麗……」
二人はその空間の美しさを眺めて、しばし見蕩れて立ちつくしてしまう。
「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」
「ヤアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」
しかし、そんなロマンチックな時間に横やりが入れられた。
開けた空間の奥から、二つの絶叫が聞こえてきたのである。
「あれ? 何かな?」
「誰かが戦っているみたいですね……」
二人が奥に目をやると……そこには、アフリカ象ほどの大きさの魔物がいた。
ハリネズミのように鍾乳石の棘を背中からいくつも生やして、顔面はワニのように細長くて口が裂けている。
大きな口には鋭い牙が生えており、ガチガチと火花を散らして上下の牙が打ち鳴らされる。
「フッ! ハッ! ヤアッ!」
そんな魔物と戦っているのは一人の女性剣士だった。
一見すると子供のように見えなくもないが、ウータ達はそれが成人したドワーフの女性であることを知っている。
「アレって……」
「エンジェさんじゃないですか……!」
大きな魔物と戦っていたのは金髪ショートカットで褐色肌、大剣を振りかざした女性剣士……エンジェだった。
エンジェは怪物の噛みつき攻撃を回避しつつ、大剣を振るって背中にびっしりと生えた棘を斬り落としている。
「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」
「クッ……このっ……しぶといわねえ! いい加減に倒れなさいよ!」
どうやら、エンジェは苦戦を強いられているようである。
トゲトゲで大きな怪物を前にして、攻めあぐねているように見えた。
「ああ、ちょうど良かった。助けに入ろうかな」
「えっと……手助けしても良いのでしょうか?」
ウータは知らぬことだが……冒険者にとって他の冒険者の戦いに割って入るのはタブーである。
助太刀に入る場合には、相手の了承を取ってから戦いに加わるのが暗黙の了解となっていた。
「まあ、良いんじゃない?」
以前、ワイバーンと戦っていた際、エンジェが助けに入ってくれたことがあった。
ならば、同じようにウータが助けに入ったとしても問題はあるまい。
「大丈夫、大丈夫。ちょっとだけ。先っちょだけだから」
「何の先っちょですか……」
「何だろうね。クラスの男子が前に言ってたんだけど……まあ、どうでもいっか」
ウータはエンジェと戦っている魔物に指を向けて……魔法を発動させる。
「なんかすごいみずー」
まるで秘密道具を出すネコ型ロボットのように言い放つと、ウータの指先から強烈な水鉄砲が射出された。
音速を超えた速度で放たれた高水圧のレーザーが魔物の胴体に突き刺さる。
「ギャアッ!?」
「ムッ……!」
魔物が悲鳴を上げて、エンジェが飛びのいた。
ちょうど良い具合にエンジェが魔物から距離を取ったのを見て……ウータはさらに水の女神から奪った力を発動させる。
「なんかすごいみず、ぱーとつー」
「ギャウッ……」
射出された水が怪物の周りを取り囲み、水の牢獄の中に閉じこめる。
怪物はジタバタともがき苦しんでいたが……やがて、溺死してしまったのか動かなくなる。
「す、すごい力ですね……」
ウータの使った力を目にして、ステラが顔を引きつらせる。
「うんうん、僕も驚いているよ……火の魔法よりも威力は低めかもしれないけど、代わりに色々と出来そうだねー」
邪神として人間を超えた力を持っているウータであったが……他の神を取り込むことにより、さらに強くなっているようである。
絶命した魔物を水の牢獄から解放すると、ドロップアイテムらしき巨大な肉の塊を残して、ダンジョンの床に溶けて消えていった。
ダンジョンを三十分ほど進んだところで、ステラがふと疑問を口にする。
「『神炎』と『神水』でしたっけ? その魔法を使ったら、塵にすることなく簡単に倒せるんじゃないですか?」
「あ、忘れてた」
ステラに指摘されると、ウータがパチクリと瞬きをする。
「そういえば、女神を食べた力があったよね……忘れてた。うっかりさんだったよ」
「いや……忘れないでくださいよ。わりと重要なことじゃないですか」
ステラが呆れた様子で肩を落とす。
女神を食べるだなんて、この世界の人間によっては天地がひっくり返るような出来事である。
そんな大罪を犯しておいて、あっさりと「忘れていた」で済ませられるのはウータだけである。
「まあ、塵にする方が簡単だからねえ。ついつい、そっちを使っちゃうんだよね。次に魔物が出たら魔法を使うよー」
などと言いながら歩いていくと、通路から広い空間に出た。
坑道の中に広がった広々とした部屋。体育館ほどの大きさがあり、壁も床も石だったが、天井からは尖った鍾乳石が垂れている。
「わっ……すごい……!」
「すごいですね……」
その空間に足を踏み入れるや、ウータとステラが感嘆の声を上げる。
それはあまりにも幻想的な光景だった。
壁に生えたコケの光を鍾乳石が反射して、キラキラと星屑のように輝いているのだ。
おまけに、壁や床のあちこちから宝石の原石が覗いており、色とりどりの輝きを返している。
もしも星空に閉じ込められたとしたら、きっと周囲にはこんな景色が広がっているだろう。
「そういえば……ダンジョンの中には綺麗な景色があるって言ってたよね。コレがそうなのかな?」
「きっとそうですね……本当に綺麗……」
二人はその空間の美しさを眺めて、しばし見蕩れて立ちつくしてしまう。
「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」
「ヤアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」
しかし、そんなロマンチックな時間に横やりが入れられた。
開けた空間の奥から、二つの絶叫が聞こえてきたのである。
「あれ? 何かな?」
「誰かが戦っているみたいですね……」
二人が奥に目をやると……そこには、アフリカ象ほどの大きさの魔物がいた。
ハリネズミのように鍾乳石の棘を背中からいくつも生やして、顔面はワニのように細長くて口が裂けている。
大きな口には鋭い牙が生えており、ガチガチと火花を散らして上下の牙が打ち鳴らされる。
「フッ! ハッ! ヤアッ!」
そんな魔物と戦っているのは一人の女性剣士だった。
一見すると子供のように見えなくもないが、ウータ達はそれが成人したドワーフの女性であることを知っている。
「アレって……」
「エンジェさんじゃないですか……!」
大きな魔物と戦っていたのは金髪ショートカットで褐色肌、大剣を振りかざした女性剣士……エンジェだった。
エンジェは怪物の噛みつき攻撃を回避しつつ、大剣を振るって背中にびっしりと生えた棘を斬り落としている。
「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」
「クッ……このっ……しぶといわねえ! いい加減に倒れなさいよ!」
どうやら、エンジェは苦戦を強いられているようである。
トゲトゲで大きな怪物を前にして、攻めあぐねているように見えた。
「ああ、ちょうど良かった。助けに入ろうかな」
「えっと……手助けしても良いのでしょうか?」
ウータは知らぬことだが……冒険者にとって他の冒険者の戦いに割って入るのはタブーである。
助太刀に入る場合には、相手の了承を取ってから戦いに加わるのが暗黙の了解となっていた。
「まあ、良いんじゃない?」
以前、ワイバーンと戦っていた際、エンジェが助けに入ってくれたことがあった。
ならば、同じようにウータが助けに入ったとしても問題はあるまい。
「大丈夫、大丈夫。ちょっとだけ。先っちょだけだから」
「何の先っちょですか……」
「何だろうね。クラスの男子が前に言ってたんだけど……まあ、どうでもいっか」
ウータはエンジェと戦っている魔物に指を向けて……魔法を発動させる。
「なんかすごいみずー」
まるで秘密道具を出すネコ型ロボットのように言い放つと、ウータの指先から強烈な水鉄砲が射出された。
音速を超えた速度で放たれた高水圧のレーザーが魔物の胴体に突き刺さる。
「ギャアッ!?」
「ムッ……!」
魔物が悲鳴を上げて、エンジェが飛びのいた。
ちょうど良い具合にエンジェが魔物から距離を取ったのを見て……ウータはさらに水の女神から奪った力を発動させる。
「なんかすごいみず、ぱーとつー」
「ギャウッ……」
射出された水が怪物の周りを取り囲み、水の牢獄の中に閉じこめる。
怪物はジタバタともがき苦しんでいたが……やがて、溺死してしまったのか動かなくなる。
「す、すごい力ですね……」
ウータの使った力を目にして、ステラが顔を引きつらせる。
「うんうん、僕も驚いているよ……火の魔法よりも威力は低めかもしれないけど、代わりに色々と出来そうだねー」
邪神として人間を超えた力を持っているウータであったが……他の神を取り込むことにより、さらに強くなっているようである。
絶命した魔物を水の牢獄から解放すると、ドロップアイテムらしき巨大な肉の塊を残して、ダンジョンの床に溶けて消えていった。
77
お気に入りに追加
1,485
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

調子に乗りすぎて処刑されてしまった悪役貴族のやり直し自制生活 〜ただし自制できるとは言っていない〜
EAT
ファンタジー
「どうしてこうなった?」
優れた血統、高貴な家柄、天賦の才能────生まれときから勝ち組の人生により調子に乗りまくっていた侯爵家嫡男クレイム・ブラッドレイは殺された。
傍から見ればそれは当然の報いであり、殺されて当然な悪逆非道の限りを彼は尽くしてきた。しかし、彼はなぜ自分が殺されなければならないのか理解できなかった。そして、死ぬ間際にてその答えにたどり着く。簡単な話だ………信頼し、友と思っていた人間に騙されていたのである。
そうして誰もにも助けてもらえずに彼は一生を終えた。意識が薄れゆく最中でクレイムは思う。「願うことならば今度の人生は平穏に過ごしたい」と「決して調子に乗らず、謙虚に慎ましく穏やかな自制生活を送ろう」と。
次に目が覚めればまた新しい人生が始まると思っていたクレイムであったが、目覚めてみればそれは10年前の少年時代であった。
最初はどういうことか理解が追いつかなかったが、また同じ未来を繰り返すのかと絶望さえしたが、同時にそれはクレイムにとって悪い話ではなかった。「同じ轍は踏まない。今度は全てを投げ出して平穏なスローライフを送るんだ!」と目標を定め、もう一度人生をやり直すことを決意する。
しかし、運命がそれを許さない。
一度目の人生では考えられないほどの苦難と試練が真人間へと更生したクレイムに次々と降りかかる。果たしてクレイムは本当にのんびり平穏なスローライフを遅れるのだろうか?
※他サイトにも掲載中
俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜
早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。
食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した!
しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……?
「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」
そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。
無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

Hしてレベルアップ ~可愛い女の子とHして強くなれるなんて、この世は最高じゃないか~
トモ治太郎
ファンタジー
孤児院で育った少年ユキャール、この孤児院では15歳になると1人立ちしなければいけない。
旅立ちの朝に初めて夢精したユキャール。それが原因なのか『異性性交』と言うスキルを得る。『相手に精子を与えることでより多くの経験値を得る。』女性経験のないユキャールはまだこのスキルのすごさを知らなかった。
この日の為に準備してきたユキャール。しかし旅立つ直前、一緒に育った少女スピカが一緒にいくと言い出す。本来ならおいしい場面だが、スピカは何も準備していないので俺の負担は最初から2倍増だ。
こんな感じで2人で旅立ち、共に戦い、時にはHして強くなっていくお話しです。

転生受験生の教科書チート生活 ~その知識、学校で習いましたよ?~
hisa
ファンタジー
受験生の少年が、大学受験前にいきなり異世界に転生してしまった。
自称天使に与えられたチートは、社会に出たら役に立たないことで定評のある、学校の教科書。
戦争で下級貴族に成り上がった脳筋親父の英才教育をくぐり抜けて、少年は知識チートで生きていけるのか?
教科書の力で、目指せ異世界成り上がり!!
※なろうとカクヨムにそれぞれ別のスピンオフがあるのでそちらもよろしく!
※第5章に突入しました。
※小説家になろう96万PV突破!
※カクヨム68万PV突破!
※令和4年10月2日タイトルを『転生した受験生の異世界成り上がり 〜生まれは脳筋な下級貴族家ですが、教科書の知識だけで成り上がってやります〜』から変更しました
無名の三流テイマーは王都のはずれでのんびり暮らす~でも、国家の要職に就く弟子たちがなぜか頼ってきます~
鈴木竜一
ファンタジー
※本作の書籍化が決定いたしました!
詳細は近況ボードに載せていきます!
「もうおまえたちに教えることは何もない――いや、マジで!」
特にこれといった功績を挙げず、ダラダラと冒険者生活を続けてきた無名冒険者兼テイマーのバーツ。今日も危険とは無縁の安全な採集クエストをこなして飯代を稼げたことを喜ぶ彼の前に、自分を「師匠」と呼ぶ若い女性・ノエリ―が現れる。弟子をとった記憶のないバーツだったが、十年ほど前に当時惚れていた女性にいいところを見せようと、彼女が運営する施設の子どもたちにテイマーとしての心得を説いたことを思い出す。ノエリ―はその時にいた子どものひとりだったのだ。彼女曰く、師匠であるバーツの教えを守って修行を続けた結果、あの時の弟子たちはみんな国にとって欠かせない重要な役職に就いて繁栄に貢献しているという。すべては師匠であるバーツのおかげだと信じるノエリ―は、彼に王都へと移り住んでもらい、その教えを広めてほしいとお願いに来たのだ。
しかし、自身をただのしがない無名の三流冒険者だと思っているバーツは、そんな指導力はないと語る――が、そう思っているのは本人のみで、実はバーツはテイマーとしてだけでなく、【育成者】としてもとんでもない資質を持っていた。
バーツはノエリ―に押し切られる形で王都へと出向くことになるのだが、そこで立派に成長した弟子たちと再会。さらに、かつてテイムしていたが、諸事情で契約を解除した魔獣たちも、いつかバーツに再会することを夢見て自主的に鍛錬を続けており、気がつけばSランクを越える神獣へと進化していて――
こうして、無名のテイマー・バーツは慕ってくれる可愛い弟子や懐いている神獣たちとともにさまざまな国家絡みのトラブルを解決していき、気づけば国家の重要ポストの候補にまで名を連ねるが、当人は「勘弁してくれ」と困惑気味。そんなバーツは今日も王都のはずれにある運河のほとりに建てられた小屋を拠点に畑をしたり釣りをしたり、今日ものんびり暮らしつつ、弟子たちからの依頼をこなすのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。