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103.ダンジョンに入るよ
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ウータとステラは探索税を支払って、ミスリルバレーにあるダンジョンに入ることにした。
巨大な崖にはいくつもの坑道が口を開いており、ドワーフや人間の冒険者を飲み込んでいる。
「こんなにたくさんの冒険者が出入りして、宝石や鉱石が無くなっちゃわないのかな?」
「大丈夫ですよ。だって、ここはダンジョンですからね」
ウータの疑問にステラが答える。
「そもそも……ダンジョンというのは、女神が人々に試練を与えるために生み出した物なんですよ。だから、ダンジョンの内部では無限に魔物が生まれるし、無限に宝が手に入る。資源が枯渇することはあり得ないんです」
「フーン……ちなみに、僕は女神を二人ほど食べちゃってるけど、ダンジョンは無くならないのかな?」
「あー……どうでしょう。それはわかりませんけど……」
ステラが困った顔になる。
もしもウータのせいでダンジョンが無くなったのだとすれば、生活に困る人間もいることだろう。
「それじゃあ、内緒だね。黙ってればバレないバレない」
「だと良いんですけど……はい。それじゃあ、あそこから入りましょうか」
ウータとステラが坑道の一つに足を踏み入れる。
洞窟の内部はもちろん、外と比べると暗いのだが……壁が光っていて明かりには困らない。
「これってどうやって光ってるのかな?」
「女神の御力じゃないですか?」
「何でもそれで解決しちゃうのはどうかと思うけどね……」
ウータが壁に触れてみると、実際に発光しているのは壁ではなく、そこに群生しているコケであることがわかった。
「ああ、これが光っているのか。もしかして、ヒカリゴケっていうやつなのかな?」
違う。
ヒカリゴケというのは自力で光っているのではなく、レンズ状の細胞によって洞窟に入ってくるわずかな光を反射するコケをいう。
このダンジョンの壁に生えているのは間違いなく、何らかのファンタジーな力を持っている発光生物だった。
「ギギギ……」
「あ、何か出たよ」
ウータとステラが壁の光を頼りに行動を進んでいくと……奥から、小型の人型が現れる。
子供のような体格で二本足で歩いてくる生き物。猿によく似ているが、身体の表面を岩が覆っていた。
「魔物ですね……前に岩山で出てきたのと似てますけど、ちょっと違いますね」
「魔物だねえ。あの猿っぽいけど、ちょっと違うかな?」
「ギー!」
暢気に言葉を交わしている二人めがけて、岩の身体の人型が襲いかかってくる。
「えいっ」
ウータが岩人(仮)に触れて力を発動させる。
岩人が塵になって、消滅した。
「倒したよ」
「倒しましたね……ドロップアイテムはありませんけど」
「ドロップ……何かな、それは?」
「ダンジョンの魔物を倒すと、報酬としてアイテムやお金が出てくるんですよ。それが冒険者にとっての収入源になっているんですけど……」
「ああ……それらしきものはないね?」
ウータが塵になった岩人の残骸を探ってみるが、ドロップアイテムらしき物は見当たらない。
どうやら、ウータの力で塵にするとドロップアイテムは出てこないようである。
「アイテムも一緒に塵になっちゃうのかな?」
「そうかもしれませんね……少しだけ、もったいないですね」
ウータとステラは金には困っていないが、だからといって無限に旅の路銀があるわけではない。
無理をしてまで金稼ぎをするつもりはないが……ここで少しでも収入があれば、旅の足しになることだろう。
「それじゃあ、せっかくのお金を無駄にはできないね」
「はい。できるだけ塵にしないように倒しましょう。ただ……危なくなったら、いつでも使ってくれて大丈夫ですから」
「うん、そうするよー……あ、また来たね」
「ギー、ギー」
話をしていると、奥からまたしても岩人が現れた。おまけに、今度は二匹である。
ウータはアイテムボックスからナイフを取り出して構えた。
「僕は適当に戦うから、ステラも無理しないようにねー」
「はい、わかりました」
「それじゃあ……えいっ」
ウータが転移して、岩人の一匹の背後に回り込んだ。
後ろから首にナイフを突き刺した。
「ギッ……!?」
「はい、おしまい」
「純白なる浄化の火!」
「ギーッ!」
一方、ステラは残った岩人に向けて白い炎を放っている。
魔法を無効化する力がある浄化の炎を浴びせられると……岩人の身体がグズリと崩れて地面の上に溶ける。
「フウ……倒せました」
「わ……今、何をやったのかな?」
「浄化の火で魔法を解いたんです。女神の魔法を」
ダンジョンに現れる魔物は女神によって生み出された存在である。
言葉を変えるのであれば……女神の魔法といっても良い。
魔法で生み出された彼らは浄化の火によって消すことができるのだ。
「そんなこともできるんだね。ステラって結構、強くない?」
「ウータさんに言われると嫌味なんですけど……あ、今度はちゃんとドロップアイテムが出ましたね」
足元には二体の岩人が残したドロップアイテムが落ちていた。
片方は黒曜石のような鉱石、もう片方は銀貨一枚である。
倒された魔物の死骸はダンジョンに沈み込むようにして消えていた。
「フーン、これがダンジョンか。変なところだねえ」
「そうですね……本当にどうなっているんでしょう」
「まあ、これでご飯のお金が手に入るのなら何でも良いけどね」
二人は落ちているドロップアイテムを回収して、ダンジョンの奥に進んでいった。
余談であるが……岩人はロックゴブリンという名前の魔物であり、岩のように固い肌によって刃物も通さず、冒険者の間では「初心者殺し」の異名をとっている。
そんな魔物も二人にとっては何てことのない障害のようだ。
それから先も何度か遭遇したが、あっさりと倒して先に進んでいくのであった。
巨大な崖にはいくつもの坑道が口を開いており、ドワーフや人間の冒険者を飲み込んでいる。
「こんなにたくさんの冒険者が出入りして、宝石や鉱石が無くなっちゃわないのかな?」
「大丈夫ですよ。だって、ここはダンジョンですからね」
ウータの疑問にステラが答える。
「そもそも……ダンジョンというのは、女神が人々に試練を与えるために生み出した物なんですよ。だから、ダンジョンの内部では無限に魔物が生まれるし、無限に宝が手に入る。資源が枯渇することはあり得ないんです」
「フーン……ちなみに、僕は女神を二人ほど食べちゃってるけど、ダンジョンは無くならないのかな?」
「あー……どうでしょう。それはわかりませんけど……」
ステラが困った顔になる。
もしもウータのせいでダンジョンが無くなったのだとすれば、生活に困る人間もいることだろう。
「それじゃあ、内緒だね。黙ってればバレないバレない」
「だと良いんですけど……はい。それじゃあ、あそこから入りましょうか」
ウータとステラが坑道の一つに足を踏み入れる。
洞窟の内部はもちろん、外と比べると暗いのだが……壁が光っていて明かりには困らない。
「これってどうやって光ってるのかな?」
「女神の御力じゃないですか?」
「何でもそれで解決しちゃうのはどうかと思うけどね……」
ウータが壁に触れてみると、実際に発光しているのは壁ではなく、そこに群生しているコケであることがわかった。
「ああ、これが光っているのか。もしかして、ヒカリゴケっていうやつなのかな?」
違う。
ヒカリゴケというのは自力で光っているのではなく、レンズ状の細胞によって洞窟に入ってくるわずかな光を反射するコケをいう。
このダンジョンの壁に生えているのは間違いなく、何らかのファンタジーな力を持っている発光生物だった。
「ギギギ……」
「あ、何か出たよ」
ウータとステラが壁の光を頼りに行動を進んでいくと……奥から、小型の人型が現れる。
子供のような体格で二本足で歩いてくる生き物。猿によく似ているが、身体の表面を岩が覆っていた。
「魔物ですね……前に岩山で出てきたのと似てますけど、ちょっと違いますね」
「魔物だねえ。あの猿っぽいけど、ちょっと違うかな?」
「ギー!」
暢気に言葉を交わしている二人めがけて、岩の身体の人型が襲いかかってくる。
「えいっ」
ウータが岩人(仮)に触れて力を発動させる。
岩人が塵になって、消滅した。
「倒したよ」
「倒しましたね……ドロップアイテムはありませんけど」
「ドロップ……何かな、それは?」
「ダンジョンの魔物を倒すと、報酬としてアイテムやお金が出てくるんですよ。それが冒険者にとっての収入源になっているんですけど……」
「ああ……それらしきものはないね?」
ウータが塵になった岩人の残骸を探ってみるが、ドロップアイテムらしき物は見当たらない。
どうやら、ウータの力で塵にするとドロップアイテムは出てこないようである。
「アイテムも一緒に塵になっちゃうのかな?」
「そうかもしれませんね……少しだけ、もったいないですね」
ウータとステラは金には困っていないが、だからといって無限に旅の路銀があるわけではない。
無理をしてまで金稼ぎをするつもりはないが……ここで少しでも収入があれば、旅の足しになることだろう。
「それじゃあ、せっかくのお金を無駄にはできないね」
「はい。できるだけ塵にしないように倒しましょう。ただ……危なくなったら、いつでも使ってくれて大丈夫ですから」
「うん、そうするよー……あ、また来たね」
「ギー、ギー」
話をしていると、奥からまたしても岩人が現れた。おまけに、今度は二匹である。
ウータはアイテムボックスからナイフを取り出して構えた。
「僕は適当に戦うから、ステラも無理しないようにねー」
「はい、わかりました」
「それじゃあ……えいっ」
ウータが転移して、岩人の一匹の背後に回り込んだ。
後ろから首にナイフを突き刺した。
「ギッ……!?」
「はい、おしまい」
「純白なる浄化の火!」
「ギーッ!」
一方、ステラは残った岩人に向けて白い炎を放っている。
魔法を無効化する力がある浄化の炎を浴びせられると……岩人の身体がグズリと崩れて地面の上に溶ける。
「フウ……倒せました」
「わ……今、何をやったのかな?」
「浄化の火で魔法を解いたんです。女神の魔法を」
ダンジョンに現れる魔物は女神によって生み出された存在である。
言葉を変えるのであれば……女神の魔法といっても良い。
魔法で生み出された彼らは浄化の火によって消すことができるのだ。
「そんなこともできるんだね。ステラって結構、強くない?」
「ウータさんに言われると嫌味なんですけど……あ、今度はちゃんとドロップアイテムが出ましたね」
足元には二体の岩人が残したドロップアイテムが落ちていた。
片方は黒曜石のような鉱石、もう片方は銀貨一枚である。
倒された魔物の死骸はダンジョンに沈み込むようにして消えていた。
「フーン、これがダンジョンか。変なところだねえ」
「そうですね……本当にどうなっているんでしょう」
「まあ、これでご飯のお金が手に入るのなら何でも良いけどね」
二人は落ちているドロップアイテムを回収して、ダンジョンの奥に進んでいった。
余談であるが……岩人はロックゴブリンという名前の魔物であり、岩のように固い肌によって刃物も通さず、冒険者の間では「初心者殺し」の異名をとっている。
そんな魔物も二人にとっては何てことのない障害のようだ。
それから先も何度か遭遇したが、あっさりと倒して先に進んでいくのであった。
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