異世界召喚されて捨てられた僕が邪神であることを誰も知らない……たぶん。

レオナール D

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102.ダンジョンを見つけたよ

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 ちょっとしたショーを楽しんだウータとステラであったが、次に向かったのは鉱山の方である。
 ミスリルバレーはドワーフの町であったが、ここにはミスリルを含めた鉱石や宝石の鉱脈が大量にあるとのこと。
 坑道の傍は観光地になっているとのことなので、行ってみることにしたのだ。

「わ、穴がいっぱいだね」

「すごいですね……アレが全部、坑道なんですか?」

 断崖絶壁の谷には無数の穴が口を開いており、そこには多くの人々が出入りしている。

「でも……鉱山にしては少し、変じゃないですか?」

 ステラが首を傾げた。
 坑道の中に入っていくのは冒険者のような格好をした人間やドワーフばかりである。
 あまり鉱山っぽくないというか、違和感がある光景だった。

「ああ、鉱山の中はダンジョンですからね。外の国の鉱山とは違いますよ」

 親切に説明してくれたのは、道で串焼きを売っていた売り子の女性である。

「あの鉱山はどれも土の女神であるアースが生み出した物なのです。山と谷の内側全部がダンジョンになっており、魔物がいるんです」

「魔物がいる鉱山なんて危なくないのかな?」

「危ないですよ。ですが……そんな危険を乗り越えて、財宝を得る。それがミスリルバレーの誇りですからね」

 つまり、魔物と戦ってダンジョンを攻略することで金属や宝石が得られるということだ。
 この鉱山で働いている人間は、労働者であると同時に戦士であり冒険者でもあるのだろう。

「そうなんだ。あ、串焼きくださいな」

「はいはーい。よろこんでー」

「まだ食べるんですね、ウータさん……」

 ウータが串焼きを購入して、モグモグと口に運んだ。
 ステラが財布から取り出した金を受け取って、売り子がにこやかに話を続ける。

「ちなみに……あそこにあるダンジョンは、探索税を払えば旅行者の方でも入ることができますよ。坑道の中には宝石がキラキラと輝く美しい光景もありますから、腕に自信があるのなら是非とも入っていってくださいねー」

「へえ、どうしよっか?」

「私は別にどちらでも……ウータさんが好きなようにされたら良いと思いますよ?」

 ステラは基本的にイエスマン。ウータがすることにノーとは言わない。
 ウータは少しだけ考えてから、串焼きを飲み込んだ。

「うん、それじゃあ行ってみよっか。せっかくだからね」

 別に金目当てというわけではない。
 金属や宝石が欲しくてダンジョンに潜ったりはしない。
 あくまでも目的は娯楽。観光である。
 せっかく、新しい町に来たのだから、色々な場所を周ってみようと思っただけのこと。
 ダンジョンが命がけの場所であるとか、そんなことはまるで考えてはいない。

「ウータさんがそれで良いのなら……そういえば、ダンジョンに入ったことはあるんですか?」

「えっと……ないかな、たぶん?」

 もしかしたら気づかずに入っている可能性はあるが……あまり意識したことはない。

「あ、探索でしたら、あちらに売っているテントや食料、水を買っていった方が……」

「よーし、それじゃあ出発―!」

 串焼き屋の売り子が何やらアドバイスをしてくるが……ウータは構うことなく、崖に開いた洞窟に向けてズンズンと進んでいく。

「あ、待ってください! すみません……それじゃあ失礼しますね!」

「あ……」

 売り子がウータとステラに手を伸ばすが……二人は小走りで駆けていってしまった。

「どうしましょう……行ってしまいました」

 洞窟内での探索は遭難の危険があるので、専用の装備がなければ危険なのだが。
 そのことを知らずに洞窟に入れば、アリの巣のように複雑な構造の洞窟から出てこられなくなってしまう。

「……ま、いっか」

 売り子はウータとステラのことは忘れることにして、肉を焼く作業に戻った。
 ウータとステラが命を落とすことになったとしても……それは本人の勝手。自己責任である。

「いらっしゃいませー。串焼き、串焼きはいかがですかー?」

 自分には関係ないと言い聞かせながら……売り子は客寄せに戻るのであった。
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