異世界召喚されて捨てられた僕が邪神であることを誰も知らない……たぶん。

レオナール D

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99.カモのネギにはアレがあるよ

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「わあ、ステラ。僕達って大人気だね!」

「人気という雰囲気ではありませんけど……どうしましょうか?」

 闘技大会の受付前で、ウータとステラは複数の男性達から勝負を挑まれた。
 彼らは武器を手にしており、ウータ達の反応を待っている。

「ちなみに……正当な理由もなく勝負を断ったら、その時点で失格となりますから気をつけてくださーい」

 囲まれているウータ達に、受付嬢のドワーフが言ってくる。

「正当な理由って何?」

「決闘が終わった直後であれば、疲労や怪我の治療を理由に断ることができますね。後は壊れた武器の補強のため、深夜や早朝などの非常識な時間帯に決闘を挑まれた場合なども、断る理由になります……この状況であれば、断れる理由はないですね」

 つまり……ここで決闘を断ってしまえば、もはや闘技大会への参加を辞退したと同じとなってしまう。

「ここで『新人狩り』を乗り越えることも、闘技大会で恒例の通過儀礼なんですよね……頑張ってくださいませー」

 受付嬢がヒラヒラと手を振ってくる。
 エントリーしたばかりの参加者を狙い撃ちすることもまた、ルール上は問題ないようだ。
 ウータとステラは少なくとも、ここで一戦はしなくてはいけないのだ。

「えーと……僕、まだ武器を用意してないんだけどなあ……」

 ウータは荷物を探って、ナイフを取り出した。

「まあ、これで良いか。ちょっと戦ってみようかな。誰でも良いから、そっちで選んでもらえるかな?」

「へへ……チビで細いガキなんて良い獲物だぜ! どけよ、俺が先だ!」

「おい、俺の方が先についてたぞ!」

「ふざけんな! そのチビをやるのは俺だ! 俺はそいつが二人の女と宿屋に入るのを見てたんだ……モテる男許すまじ!」

 一人、モチベーションが違う男がいたのだが……「仕方がないなあ」とウータは適当な男を指差した。

「じゃあ、そっちのオジサンで良いよ。決闘しよっか」

「ヘヘッ……俺を選ぶとは良い度胸だ! 叩き潰してやるぜ!」

 ずんぐりむっくりとしたドワーフの男性が進み出てくる。
 浅黒い肌をした男は大きな金槌を背負っており、黒光りする重厚な金属のそれを見せつけてきた。

「さあ、叩き潰してやる……それじゃあ、さっそく試合開始だ!」

 ドワーフの男がいきなり襲いかかってくる。
 まだ身構えてもいないウータめがけて、金槌を振り下ろした。
 巨大な金槌がウータを脳天から潰そうとするが……その一撃が空を切り、地面にドシンと叩きつけられる。

「何っ!?」

「遅いよ」

 ウータが対戦相手の背後に転移する。
 そして、手にしていたナイフをクビに突き付けた。

「残像だよ。君のスピードでは僕を捉えられないみたいだね」

 嘘である。
 スピードで回り込んだわけではなく、魔法で転移をしたのだ。

「な、何だって……なんてスピードだ!」

「一瞬で背後に回り込むなんて……少しも見えなかったぞ!?」

「細い人間のガキに見えたが……まさか、かなり強い奴なのか!?」

「……いや、魔法でしょう」

 騒いでいるドワーフ達にステラが呆れた様子でつぶやいた。
 ドワーフは武器に魔法を付与するなどの技術は高いのだが、それ以外の魔法は不得手である。
 そのため、ウータが転移を使用したことがわかっていないようだった。

「これって僕の勝ちだよね? ほらほら、参加証をおくれよ」

「チッ……仕方がないな。勝負の結果は結果。負けは負けだ……持ってけ泥棒!」

 敗北した対戦相手が参加証を投げ渡してくる。
 これで自分の物と合わせて二枚目。本選出場まで残り三枚である。

「それじゃあ、このまま次のもゲットしたいんだけど……」

「「「「「…………」」」」」

 周りに集まっていた対戦希望者が視線を逸らして、そそくさと立ち去っていく。
 この場にいた者達はエントリーしたばかりの参加者を狙い撃ちする『新人狩り』。
 つまり、正道のやり方で本選に出場する自信がないから、邪道の道を選んだ連中である。
 強い相手と戦うつもりはない。ウータの強さを知った時点で、さっさと逃げだしてしまった。
 しかし……ウータが彼らの前に回り込む。

「残像だよ」

「うおっ!?」

「正当な理由がないと決闘を断れないんだよね? ここにいる全員に順番に戦いを挑むから、ちょっと相手していってよ」

「い、いや……お前は戦った直後だし、準備とかあるだろうし……」

「いらないよー。それじゃあ、始めよっか?」

「う……」

 ウータが逃げる参加者を捕まえて、次々と戦いを挑んでいった。
 エントリーから十数分。五枚の参加証を集めて、ウータは見事に本選出場を勝ち取ったのである。
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