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98.闘技大会に参加するよ
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モジャッターパオードのバオバオプーを食べ歩きしながら、町の大通りを進んでいくウータとステラ。
こうして歩いていると、町のあちこちで決闘が行われているのがわかった。
いずれも闘技大会の予選である。お互いが持っている参加証を賭けて戦っているようだ。
「闘技大会に参加を希望される方はこちらにお願いしまーす! 本日で参加は締め切りですよー!」
コロシアムのような建物の前で、受付嬢らしきドワーフの女性が声を上げている。
どうやら、ここが闘技大会の受付のようだ。カウンターに受付嬢が立っており……それを遠巻きにして、複数の男性が距離を取って様子を窺っている。
受付嬢はともかくとして、周囲の男性は何をしているのか疑問だった。
「あ、そこに受付があるね」
「しかも、今日で参加が締め切りらしいですよ」
ウータとステラが顔を見合わせて、「うーん」と唸る。
土の女神アースと会うためには、闘技大会に出場して優勝するのが確実だ。
しかし、ウータもステラも剣術などの心得はない。武器を使用しての戦いでは勝ち抜けないだろう。
「そういえば……魔法を使用するとルール違反になるのでしょうか?」
「あ、そっか。それは確認していなかったね」
魔法を完全に使用してはいけないのか。
それとも、補助的にであれば使うことが許されているのか。
その差は大きい。いくら武術が不得意でも、魔法で補えば上位に入れる可能性があるからだ。
「ちょうど受付もそこにありますし……確認していきませんか?」
「うん、そうしよっか」
ステラの提案に頷いて、ウータが受付をしているドワーフのところに歩いていく。
「ねえねえ、受付のお姉さん」
「何でしょうか。人間族の方」
「その闘技大会って僕でも参加できるんだよね? やっぱり、魔法は使ったらダメなの?」
「ああ、ルールの確認ですね」
受付の女性がカウンターの下から文字が印刷された紙を取り出した。
「こちらに細かいルールが記載されていますが……まず、闘技大会では必ずミスリル製の武器を使わなくてはいけません」
「ミスリル?」
ウータが横のステラをチラ見する。
ステラはすぐに「霊銀鉱石から作られる金属ですよ」と補足した。
「そちらのお嬢さんの言う通りです。ミスリルは魔法を付与するのに適しており、高度なマジックアイテムの作成に使われる金属です。とても加工がしにくいため、ドワーフ族しか扱うことができないんですよ」
「そのミスリルを使った武器がないとダメなんだね」
「はい。それも装飾程度の使用ではいけません。武器の重さは十キロ以上、合金でも構いませんが五十パーセント以上はミスリルが含まれている必要があります」
「色々と厳しく決まっているんだね」
「はい。ただしどんな武器を使用するのかは自由です。それと……先ほどの質問への回答ですが、試合中は魔法を使用してはいけません。ただ、武器に付与された魔法を使うことは許されます」
ミスリルの武器はマジックアイテムとしての加工に適している。
本人が魔法を使うことはできないが……マジックアイテムの力を使うのは許されるとのこと。
(だったらさ、武器で戦っているフリをして魔法を使ったら良いんじゃないかな?)
(バレたら失格ですけど……まあ、試してみる価値はあるかもしれませんね)
ウータとステラはヒソヒソとそんな会話をする。
「それじゃあ、出るよ。エントリーさせてもらってもいいかな?」
「あ、私も出ます。エントリーします」
ウータに続いて、ステラも挙手をする。
「ステラ、良いの?」
「はい。一応は火の神殿で護身術を勉強していますから、少しは戦えると思いますよ?」
ステラは奴隷階級の出身であり、『白の火』という特殊な魔法を有していたため、特殊部隊である『フレアの御手』に成り上がった経歴を持っている。
叩き上げのため根性があり、それなりに修羅場はくぐっている。火の神殿で特殊な訓練も受けていた。
「それじゃあ、二人でよろしく。ミスリルの武器はすぐに用意しないといけないのかな?」
「いいえ。ミスリル製の武器は予選では必要ありません。そもそも、高価な品ですから手に入れるのも難しいですから」
受付嬢がウータの問いに答える。
「予選を勝ち抜いて本選の出場権を獲得すれば、武器屋や鍜治場をやっているドワーフが無償でミスリル製の武器を貸してくれますよ。店にとっても良い宣伝になりますからね」
受付嬢の話によると……闘技大会の本選で自分の武器を持った選手が勝ち上がることは、職人にとっても名誉なことであるらしい。
そのため、本選出場権を獲得した時点で、職人達が喜んで武器を提供してくれるとのことだった。
「そっか。了解了解」
「はい。それでは、こちらに名前を書いてください……ウータさんんとステラさん。こちらが参加証になりますね。自分の物と決闘で倒した相手の物……合わせて五枚を手に入れたら、また受付に来てください。本選への参加証と交換いたしますから」
書類に必要事項を記載すると、受付嬢が参加証をそれぞれ手渡してくる。
「本選エントリーの期限終了は三日後です。自分の参加証を奪われると失格になりますので、くれぐれも気をつけて……はい、それでは! こちらのお二人が参加されました!」
「わっ」
受付嬢が急に大きな声を出した。
何事かと驚くウータであったが……直後、受付から少し離れた場所にいた者達が二人の周りに集まってくる。
「よし、小僧! 俺と勝負だ!」
「ギャハハハッ! 人間族なんかに負けねえぞ!」
「こっちの女の子なんて吹けば倒れそうだな! 良い獲物だぜ!」
どうやら……ウータとステラは『カモ』とみなされたらしい。
大会の参加者らしき男達が一斉に勝負を挑んできたのである。
こうして歩いていると、町のあちこちで決闘が行われているのがわかった。
いずれも闘技大会の予選である。お互いが持っている参加証を賭けて戦っているようだ。
「闘技大会に参加を希望される方はこちらにお願いしまーす! 本日で参加は締め切りですよー!」
コロシアムのような建物の前で、受付嬢らしきドワーフの女性が声を上げている。
どうやら、ここが闘技大会の受付のようだ。カウンターに受付嬢が立っており……それを遠巻きにして、複数の男性が距離を取って様子を窺っている。
受付嬢はともかくとして、周囲の男性は何をしているのか疑問だった。
「あ、そこに受付があるね」
「しかも、今日で参加が締め切りらしいですよ」
ウータとステラが顔を見合わせて、「うーん」と唸る。
土の女神アースと会うためには、闘技大会に出場して優勝するのが確実だ。
しかし、ウータもステラも剣術などの心得はない。武器を使用しての戦いでは勝ち抜けないだろう。
「そういえば……魔法を使用するとルール違反になるのでしょうか?」
「あ、そっか。それは確認していなかったね」
魔法を完全に使用してはいけないのか。
それとも、補助的にであれば使うことが許されているのか。
その差は大きい。いくら武術が不得意でも、魔法で補えば上位に入れる可能性があるからだ。
「ちょうど受付もそこにありますし……確認していきませんか?」
「うん、そうしよっか」
ステラの提案に頷いて、ウータが受付をしているドワーフのところに歩いていく。
「ねえねえ、受付のお姉さん」
「何でしょうか。人間族の方」
「その闘技大会って僕でも参加できるんだよね? やっぱり、魔法は使ったらダメなの?」
「ああ、ルールの確認ですね」
受付の女性がカウンターの下から文字が印刷された紙を取り出した。
「こちらに細かいルールが記載されていますが……まず、闘技大会では必ずミスリル製の武器を使わなくてはいけません」
「ミスリル?」
ウータが横のステラをチラ見する。
ステラはすぐに「霊銀鉱石から作られる金属ですよ」と補足した。
「そちらのお嬢さんの言う通りです。ミスリルは魔法を付与するのに適しており、高度なマジックアイテムの作成に使われる金属です。とても加工がしにくいため、ドワーフ族しか扱うことができないんですよ」
「そのミスリルを使った武器がないとダメなんだね」
「はい。それも装飾程度の使用ではいけません。武器の重さは十キロ以上、合金でも構いませんが五十パーセント以上はミスリルが含まれている必要があります」
「色々と厳しく決まっているんだね」
「はい。ただしどんな武器を使用するのかは自由です。それと……先ほどの質問への回答ですが、試合中は魔法を使用してはいけません。ただ、武器に付与された魔法を使うことは許されます」
ミスリルの武器はマジックアイテムとしての加工に適している。
本人が魔法を使うことはできないが……マジックアイテムの力を使うのは許されるとのこと。
(だったらさ、武器で戦っているフリをして魔法を使ったら良いんじゃないかな?)
(バレたら失格ですけど……まあ、試してみる価値はあるかもしれませんね)
ウータとステラはヒソヒソとそんな会話をする。
「それじゃあ、出るよ。エントリーさせてもらってもいいかな?」
「あ、私も出ます。エントリーします」
ウータに続いて、ステラも挙手をする。
「ステラ、良いの?」
「はい。一応は火の神殿で護身術を勉強していますから、少しは戦えると思いますよ?」
ステラは奴隷階級の出身であり、『白の火』という特殊な魔法を有していたため、特殊部隊である『フレアの御手』に成り上がった経歴を持っている。
叩き上げのため根性があり、それなりに修羅場はくぐっている。火の神殿で特殊な訓練も受けていた。
「それじゃあ、二人でよろしく。ミスリルの武器はすぐに用意しないといけないのかな?」
「いいえ。ミスリル製の武器は予選では必要ありません。そもそも、高価な品ですから手に入れるのも難しいですから」
受付嬢がウータの問いに答える。
「予選を勝ち抜いて本選の出場権を獲得すれば、武器屋や鍜治場をやっているドワーフが無償でミスリル製の武器を貸してくれますよ。店にとっても良い宣伝になりますからね」
受付嬢の話によると……闘技大会の本選で自分の武器を持った選手が勝ち上がることは、職人にとっても名誉なことであるらしい。
そのため、本選出場権を獲得した時点で、職人達が喜んで武器を提供してくれるとのことだった。
「そっか。了解了解」
「はい。それでは、こちらに名前を書いてください……ウータさんんとステラさん。こちらが参加証になりますね。自分の物と決闘で倒した相手の物……合わせて五枚を手に入れたら、また受付に来てください。本選への参加証と交換いたしますから」
書類に必要事項を記載すると、受付嬢が参加証をそれぞれ手渡してくる。
「本選エントリーの期限終了は三日後です。自分の参加証を奪われると失格になりますので、くれぐれも気をつけて……はい、それでは! こちらのお二人が参加されました!」
「わっ」
受付嬢が急に大きな声を出した。
何事かと驚くウータであったが……直後、受付から少し離れた場所にいた者達が二人の周りに集まってくる。
「よし、小僧! 俺と勝負だ!」
「ギャハハハッ! 人間族なんかに負けねえぞ!」
「こっちの女の子なんて吹けば倒れそうだな! 良い獲物だぜ!」
どうやら……ウータとステラは『カモ』とみなされたらしい。
大会の参加者らしき男達が一斉に勝負を挑んできたのである。
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