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96.ケンカをしているよ
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ウータとステラは町の大通りを歩いていく。
大通りにはいくつもの店が並んでいる。料理や食料品を売っている店があるが、これまで立ち寄ってきた町と比べると、圧倒的に金物を売っている店が多い。
武器屋や防具屋、工具や包丁・鍋といった調理道具を売っている店もある。
「あ、あの包丁。良いですね」
「買っていく、ステラ?」
「また後で大丈夫ですよ。調理道具、この機会に新調しても良いですね」
「うんうん。それにしても……当たり前だけど、ドワーフの人達がいっぱいいるねー」
当然である。
ドワーフの国というだけあって、町には小柄な人が多かった。
ドワーフ族は男も女も背丈が小さい。男性はずんぐりむっくりとした体型、女性は人間の子供のようなロリっぽい人が多かった。
「男の人は毛深いね。女の人は人間の子供みたいだよ」
「だ、男女で並んでいるとちょっと犯罪の臭いがしますね……ドワーフ族としては、別に不思議なことはないんですけど」
男女のドワーフが並んで歩いていると、ヒゲ面の男とロリ少女という構図になりがちである。
何も悪いことはしていないのだが……人間の目には酷く年の差があるように見えて、いけない関係のように見えてしまう。
「やいやい! そこのお前、勝負しやがれ!」
「望むところだ! 叩き潰してやるぞ!」
「ん……?」
大通りの一角で何やら騒ぎが生じている。
ウータとステラが何事かと視線を向けると……そこには二人のドワーフがいて、武器を構えて向かい合っていた。
「ケンカかな、こんな街中で?」
「ちょっと雰囲気が違う気もしますけど……どうして、誰も止めないんでしょう?」
二人のドワーフが武器を抜いているというのに、周囲の誰も止める様子はない。
それどころか……やいややいやと囃し立てている者がいて、どっちが勝利するのか賭けをしている者までいた。
「ねえねえ、あの人達は何をしているのかな?」
ウータが二人の争いを見ているドワーフの一人に訊ねた。
「ん? ああ、決闘だよ。闘技大会の予選の」
「予選?」
「この町で闘技大会が行われているのは知っているだろう? その予選として、ああして参加証を奪い合っているのさ」
ドワーフの説明によると……ミスリルバレーで開かれている闘技大会は誰でもエントリーすることができ、参加者には参加証が渡される。
そして……大会の本選が開かれるまでの期日に、その参加証を奪い合って戦うことが予選となるらしい。
「参加証を賭けて戦い、合計五つ集めると本選にエントリーできるんだ。つまり、最低でも四人を倒さなくちゃいけないわけだな」
「たまに、仲間内でエントリーして八百長試合をして、参加証だけ集めて本選に出る奴もいるけどな。大抵、一回戦で負けていくよ」
別のドワーフが横から補足をしてくれる。
どうやら、目の前で行われているのはタダのケンカではなく、闘技大会のルールに基づいた予選であるらしい。
「フーン、四人をやっつけただけで本選に出られるんだ。結構、簡単だね」
「ガハハハッ! ドワーフの男達は生まれながらの戦士だ、そう上手くもいかねえけどな!」
ウータの言葉にドワーフの男達が愉快そうに笑った。
「フンッ!」
「ぬおうっ!」
そんなことを話しているうちに、決闘が始まった。
戦っている二人のドワーフ。一方は大剣を手にしており、もう一方は戦斧を装備している。
二人が正面から力強く武器をかち合わせ、激しい戦いを繰り広げた。
「わっ」
「す、すごい迫力ですね……これがドワーフの戦士ですか」
ステラが息を呑む。
ドワーフは小柄であったが、その小さな体躯に筋肉が圧縮されているかのようにパワフルだった。
とにかく力強く、人間の戦士の戦い方よりもずっと迫力があった。
「炎斬!」
「オオッ!?」
最終的には戦斧を持っているドワーフが勝利した。
重厚で巨大な刃に炎を纏わせて、対戦相手の大剣ごと胴体を斬り裂いた。
「グハ……」
「ガハハハハハッ! 俺様の勝利だ!」
対戦相手から参加証を奪い取り、勝者が猛々しく笑った。
敗者は血を流して重傷だったが……すぐさま通行人が抱えてどこかに連れていく。
「闘技大会中はあちこちに医療所が設置されているからな。よほどのことがない限り、死人は出ないんだぜ」
「へえ……そうなんだ」
「さっきの戦いを見ても、まだ四人倒すのが簡単だっていうならエントリーするんだな! まあ、怪我をしないように気をつけな!」
通行人のドワーフがウータの背中をバンバンと叩いて、去っていった。
賭けをしていた通行人らが喜びの声、残念そうな声を上げている。
闘技大会シーズンにおいては、こういった決闘が町のあちこちで行われているのだろう。
「ウータさん、どうします? 本当に参加しますか?」
「うーん……どうしよっかなあ……」
ステラの問いにウータが悩む。
ドワーフの戦士は強い。パワフルでタフネスだ。
しかし……ウータであれば勝つのは難しくはない。
「でも、武器を使わなくちゃいけないのは面倒だよね。塵にしちゃえば簡単なのに」
何となくではあるが……こういった武器を使用する決闘で塵化をするのは野暮な気がする。
それは空気を読まないタイプのウータでもわかった。
「剣……槍……斧……どれもパッとしないなあ」
「私も魔法使いですし……困りましたね。どうしましょうか?」
ステラも首を傾げる。
闘技大会に優勝すれば女神アースに会うことができるが……いったい、どうするべきだろうか。
二人は顔を合わせてうんうんと唸って……こうして考えていても仕方がないと、観光に戻るのであった。
大通りにはいくつもの店が並んでいる。料理や食料品を売っている店があるが、これまで立ち寄ってきた町と比べると、圧倒的に金物を売っている店が多い。
武器屋や防具屋、工具や包丁・鍋といった調理道具を売っている店もある。
「あ、あの包丁。良いですね」
「買っていく、ステラ?」
「また後で大丈夫ですよ。調理道具、この機会に新調しても良いですね」
「うんうん。それにしても……当たり前だけど、ドワーフの人達がいっぱいいるねー」
当然である。
ドワーフの国というだけあって、町には小柄な人が多かった。
ドワーフ族は男も女も背丈が小さい。男性はずんぐりむっくりとした体型、女性は人間の子供のようなロリっぽい人が多かった。
「男の人は毛深いね。女の人は人間の子供みたいだよ」
「だ、男女で並んでいるとちょっと犯罪の臭いがしますね……ドワーフ族としては、別に不思議なことはないんですけど」
男女のドワーフが並んで歩いていると、ヒゲ面の男とロリ少女という構図になりがちである。
何も悪いことはしていないのだが……人間の目には酷く年の差があるように見えて、いけない関係のように見えてしまう。
「やいやい! そこのお前、勝負しやがれ!」
「望むところだ! 叩き潰してやるぞ!」
「ん……?」
大通りの一角で何やら騒ぎが生じている。
ウータとステラが何事かと視線を向けると……そこには二人のドワーフがいて、武器を構えて向かい合っていた。
「ケンカかな、こんな街中で?」
「ちょっと雰囲気が違う気もしますけど……どうして、誰も止めないんでしょう?」
二人のドワーフが武器を抜いているというのに、周囲の誰も止める様子はない。
それどころか……やいややいやと囃し立てている者がいて、どっちが勝利するのか賭けをしている者までいた。
「ねえねえ、あの人達は何をしているのかな?」
ウータが二人の争いを見ているドワーフの一人に訊ねた。
「ん? ああ、決闘だよ。闘技大会の予選の」
「予選?」
「この町で闘技大会が行われているのは知っているだろう? その予選として、ああして参加証を奪い合っているのさ」
ドワーフの説明によると……ミスリルバレーで開かれている闘技大会は誰でもエントリーすることができ、参加者には参加証が渡される。
そして……大会の本選が開かれるまでの期日に、その参加証を奪い合って戦うことが予選となるらしい。
「参加証を賭けて戦い、合計五つ集めると本選にエントリーできるんだ。つまり、最低でも四人を倒さなくちゃいけないわけだな」
「たまに、仲間内でエントリーして八百長試合をして、参加証だけ集めて本選に出る奴もいるけどな。大抵、一回戦で負けていくよ」
別のドワーフが横から補足をしてくれる。
どうやら、目の前で行われているのはタダのケンカではなく、闘技大会のルールに基づいた予選であるらしい。
「フーン、四人をやっつけただけで本選に出られるんだ。結構、簡単だね」
「ガハハハッ! ドワーフの男達は生まれながらの戦士だ、そう上手くもいかねえけどな!」
ウータの言葉にドワーフの男達が愉快そうに笑った。
「フンッ!」
「ぬおうっ!」
そんなことを話しているうちに、決闘が始まった。
戦っている二人のドワーフ。一方は大剣を手にしており、もう一方は戦斧を装備している。
二人が正面から力強く武器をかち合わせ、激しい戦いを繰り広げた。
「わっ」
「す、すごい迫力ですね……これがドワーフの戦士ですか」
ステラが息を呑む。
ドワーフは小柄であったが、その小さな体躯に筋肉が圧縮されているかのようにパワフルだった。
とにかく力強く、人間の戦士の戦い方よりもずっと迫力があった。
「炎斬!」
「オオッ!?」
最終的には戦斧を持っているドワーフが勝利した。
重厚で巨大な刃に炎を纏わせて、対戦相手の大剣ごと胴体を斬り裂いた。
「グハ……」
「ガハハハハハッ! 俺様の勝利だ!」
対戦相手から参加証を奪い取り、勝者が猛々しく笑った。
敗者は血を流して重傷だったが……すぐさま通行人が抱えてどこかに連れていく。
「闘技大会中はあちこちに医療所が設置されているからな。よほどのことがない限り、死人は出ないんだぜ」
「へえ……そうなんだ」
「さっきの戦いを見ても、まだ四人倒すのが簡単だっていうならエントリーするんだな! まあ、怪我をしないように気をつけな!」
通行人のドワーフがウータの背中をバンバンと叩いて、去っていった。
賭けをしていた通行人らが喜びの声、残念そうな声を上げている。
闘技大会シーズンにおいては、こういった決闘が町のあちこちで行われているのだろう。
「ウータさん、どうします? 本当に参加しますか?」
「うーん……どうしよっかなあ……」
ステラの問いにウータが悩む。
ドワーフの戦士は強い。パワフルでタフネスだ。
しかし……ウータであれば勝つのは難しくはない。
「でも、武器を使わなくちゃいけないのは面倒だよね。塵にしちゃえば簡単なのに」
何となくではあるが……こういった武器を使用する決闘で塵化をするのは野暮な気がする。
それは空気を読まないタイプのウータでもわかった。
「剣……槍……斧……どれもパッとしないなあ」
「私も魔法使いですし……困りましたね。どうしましょうか?」
ステラも首を傾げる。
闘技大会に優勝すれば女神アースに会うことができるが……いったい、どうするべきだろうか。
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