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92.夜食だけど……辛いっ!
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ウータとステラが部屋で寛いでいると、若い男性の店員がやってきて食事を載せたトレーを運んできた。
「こちらが夜食になります」
「わ、ありがとう!」
「ありがとうございます」
「それと……明日の朝食は七時から九時までになります。食堂までお越しいただくか、こちらの部屋に運ばせていただきますが、どちらがよろしいでしょう」
夜食の配膳を終えた店員が訊ねてくる。
ウータはステラの顔を見て、コクリと首を傾げた。
「うーん、部屋の方で良いかな?」
「はい、私も大丈夫です」
「それでは、部屋にお持ちいたします。どうぞごゆっくりお過ごしください」
若い店員が丁寧に頭を下げて、部屋の外に下がっていった。ウータとステラが顔を合わせてテーブルに座る。
夜食のメニューはハムとレタスの入ったサンドイッチ、豆のスープである。
「それじゃあ、まずはサンドイッチから…………辛いっ!」
「ウッ……た、確かにとても濃い味付けですね……」
運ばれてきた料理を口に入れると……それはとても辛い味付けだった。
サンドイッチはマスタードが効いており、スープはチゲ鍋に近いもの。香辛料がふんだんに使われていて、舌をチクチクと針で刺されるようだ。
ウータは慌ててコップの水を飲み干して、まるで足りないとばかりに水差しに直接口をつけてゴクゴクと喉を鳴らす。
「あうー……辛いよお。どうして、こんなに辛い味付けなのかなあ……」
「ドワーフの国は寒冷地ですからね……今日はたまたま暖かかったですけど、夏でも雪が降ることがあるそうですからね。辛い物には体を温める効果があると聞いたことがあります」
身体を温めるために、辛めの食べ物が好まれるということだろう。
温泉に入る文化があるのも寒い気候のためかもしれない。
「うー……辛い、辛いよお……」
「ウータさんは辛いのは苦手なんですか?」
「嫌い。カレーも甘口じゃないとやだ……」
「へえ……そうなんですか」
納得なような、意外なような話である。
ウータに好き嫌いがあるのは意外であったが、子供のような味覚なのは納得だった。
「少しくらいの辛味だったら平気だけど、これは無理だよ。食べられない」
「あー……じゃあ、今日は保存食を食べてください。これは私が食べておきますから」
「ステラは辛いの大丈夫なの?」
「はい、わりと好きですよ」
ステラはマスタードがツンと効いたサンドイッチを口に運ぶ。
最初の一口は驚かされたが、慣れると美味である。
「フーン、大人なんだね」
ウータは道具袋から取り出した保存食をモシャモシャと齧った。
塩味のついた干し肉は質素であったが、辛味のサンドイッチやスープよりはマシである。
俗説ではあるが……甘党はサディスト、辛党はマゾヒストであるという話がある。
人間の舌が感じることができる味は甘味、塩味、苦味、酸味、そして旨味の五つである。辛味というのは味ではなく、痛覚であるらしい。
辛い物が好きというのは、つまり『痛いのが好き』ということになる。
そのため、辛党がマゾヒストという理屈である。
「砂糖菓子もありますよ。食べますか?」
「わあ、食べる食べる。甘いの大好きー」
もちろん、これは俗説なのだが……ウータが甘党、ステラが辛党というのはある意味では似合いのような気がする。
「うーん……この国にいる間、ずっとこういうご飯が出てくるのかな?」
「えっと、全部が全部、辛い料理ではないと思いますよ? 普通の料理もあるかもしれません」
ステラが辛いスープを口に含み、「フウッ」と息を吐いて頬を染める。
「いざとなれば、私が食事を作りますよ。心配しないでください」
「うん……よろしくね」
二人は久しぶりの宿屋での食事を楽しんだ。
食事が終わったら、次はいよいよ待ちに待った温泉である。
「こちらが夜食になります」
「わ、ありがとう!」
「ありがとうございます」
「それと……明日の朝食は七時から九時までになります。食堂までお越しいただくか、こちらの部屋に運ばせていただきますが、どちらがよろしいでしょう」
夜食の配膳を終えた店員が訊ねてくる。
ウータはステラの顔を見て、コクリと首を傾げた。
「うーん、部屋の方で良いかな?」
「はい、私も大丈夫です」
「それでは、部屋にお持ちいたします。どうぞごゆっくりお過ごしください」
若い店員が丁寧に頭を下げて、部屋の外に下がっていった。ウータとステラが顔を合わせてテーブルに座る。
夜食のメニューはハムとレタスの入ったサンドイッチ、豆のスープである。
「それじゃあ、まずはサンドイッチから…………辛いっ!」
「ウッ……た、確かにとても濃い味付けですね……」
運ばれてきた料理を口に入れると……それはとても辛い味付けだった。
サンドイッチはマスタードが効いており、スープはチゲ鍋に近いもの。香辛料がふんだんに使われていて、舌をチクチクと針で刺されるようだ。
ウータは慌ててコップの水を飲み干して、まるで足りないとばかりに水差しに直接口をつけてゴクゴクと喉を鳴らす。
「あうー……辛いよお。どうして、こんなに辛い味付けなのかなあ……」
「ドワーフの国は寒冷地ですからね……今日はたまたま暖かかったですけど、夏でも雪が降ることがあるそうですからね。辛い物には体を温める効果があると聞いたことがあります」
身体を温めるために、辛めの食べ物が好まれるということだろう。
温泉に入る文化があるのも寒い気候のためかもしれない。
「うー……辛い、辛いよお……」
「ウータさんは辛いのは苦手なんですか?」
「嫌い。カレーも甘口じゃないとやだ……」
「へえ……そうなんですか」
納得なような、意外なような話である。
ウータに好き嫌いがあるのは意外であったが、子供のような味覚なのは納得だった。
「少しくらいの辛味だったら平気だけど、これは無理だよ。食べられない」
「あー……じゃあ、今日は保存食を食べてください。これは私が食べておきますから」
「ステラは辛いの大丈夫なの?」
「はい、わりと好きですよ」
ステラはマスタードがツンと効いたサンドイッチを口に運ぶ。
最初の一口は驚かされたが、慣れると美味である。
「フーン、大人なんだね」
ウータは道具袋から取り出した保存食をモシャモシャと齧った。
塩味のついた干し肉は質素であったが、辛味のサンドイッチやスープよりはマシである。
俗説ではあるが……甘党はサディスト、辛党はマゾヒストであるという話がある。
人間の舌が感じることができる味は甘味、塩味、苦味、酸味、そして旨味の五つである。辛味というのは味ではなく、痛覚であるらしい。
辛い物が好きというのは、つまり『痛いのが好き』ということになる。
そのため、辛党がマゾヒストという理屈である。
「砂糖菓子もありますよ。食べますか?」
「わあ、食べる食べる。甘いの大好きー」
もちろん、これは俗説なのだが……ウータが甘党、ステラが辛党というのはある意味では似合いのような気がする。
「うーん……この国にいる間、ずっとこういうご飯が出てくるのかな?」
「えっと、全部が全部、辛い料理ではないと思いますよ? 普通の料理もあるかもしれません」
ステラが辛いスープを口に含み、「フウッ」と息を吐いて頬を染める。
「いざとなれば、私が食事を作りますよ。心配しないでください」
「うん……よろしくね」
二人は久しぶりの宿屋での食事を楽しんだ。
食事が終わったら、次はいよいよ待ちに待った温泉である。
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