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90.ドワーフの国に着いたよ
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「わあ、あちこちから煙が上がってるね」
進行方向上にある峡谷の都市……ミスリルバレーを目にして、ウータが瞳を輝かせた。
峡谷に築かれた巨大な都市には、谷の流れに沿っていくつもの建築物が立っている。建物の隙間からは白い煙が天に向かって上がっている。
「……懐かしいわね。ミスリルバレーよ」
峡谷の都市を見つめて、エンジェが目を細めた。
その瞳はどこか哀切が浮かんでおり、単純に懐かしんでいるというのとは異なるように見える。
「あの煙は鍛冶屋から出ている煙、そして……温泉の湯気よ」
「温泉!」
ウータが声を上げる。
瞳を見開いて、エンジェに詰め寄った。
「温泉! やっぱり、温泉があるんだね!」
「え、ええ……そうね。温泉はいっぱいあるわよ。それが目当てでくる旅行者もいるくらいだから」
エンジェがわずかにたじろぎながら、ウータの問いに答える。
「ミスリルバレーには町の名前の通り、ミスリルが採掘できる鉱山があるのよ。それでミスリルの加工のために鍛冶屋がいくつもあって、武器や防具もたくさん生産されているんだけど……興味なさそうね、貴方は」
「温泉っ! 温泉っ!」
ウータは鍛冶屋のことなど興味がないようである。
温泉のことしか頭になく、ウキウキとスキップまでしていた。
「こうなったウータさんは話を聞いてくれませんよ……行きましょうか、町の方へ」
ステラが苦笑しながら、エンジェを促した。
三人は高い城壁で囲まれたミスリルバレーの入口まで歩いていき、軽い審査を終えてから町の中に入った。
城門をくぐると、活気のある街並みが広がっていた。
大通りには多くの人達が行き来しており、カチンカチンと金槌で金属を叩くような音があちこちから聞こえてくる。
通りに並んだ店は武器屋と防具屋、それと金物屋が多い。行商人が絨毯の上に商品を広げていたりもした。
「へえ、面白い町だね。小さい人がいっぱいだよ」
そして、町の住民らしき人達はドワーフと呼ばれる者達である。
いずれも子供のような背丈であり、ずんぐりむっくりとした体型をしていた。
「あまり小さいとか言わないでもらいたいわね。私は気にしない方だけど、人によっては怒る人もいるから」
「あ、ごめんごめん」
エンジェの苦言にウータが謝罪をする。
「だけど……こうやって見ると、エンジェさんってあんまりドワーフっぽくないね。わりと痩せているし、顔も美人さんだし」
周囲にはドワーフの女性もいるのだが……わりと筋肉質なタイプが多く、女性ながらにガッチリとした体格をしていた。
隣のエンジェはどちらかというと細身であり、ドワーフというよりも人間の子供のように見えてしまう。
「私は一族の中でも痩せっぽっちな方だから。言っておくけど……年はもう二十歳を越えているからね?」
「あ、そうなんだ」
「……マーマンの人達もそうでしたけど、種族が違うと全然見た目の年齢がわかりませんね。何だか不思議な感じです」
ステラが溜息混じりに言うと、エンジェが「私も人間族の年齢はわからないわ」と肩をすくめる。
「ドワーフはまだマシな方よ。エルフなんて千歳くらいまで生きるくせに、外見はみんな十代二十代で変わらないからね」
「へえ、やっぱりエルフって長生きなんだね。やっぱり、ドワーフと仲が悪かったりするのかな?」
「それは人によると思うわよ。神官とか女神アースを深く信仰している人ほど、女神エアに生み出されたエルフを嫌っている傾向があるけど……そんなことよりも、今夜の宿屋を探しましょう。貴方達、お金は持っているの?」
エンジェが話題を切り替える。
「私が行きつけの宿屋だったら露天風呂もあるし、料理も美味しくてゆっくりとできると思うけど……わりと値段が張るわよ。手持ちに余裕はあるかしら?」
「大丈夫だよね、ステラ?」
「あ、はい。たぶん大丈夫です」
ステラが頷いた。
フィッシュバレーでの活躍により、ウータ達は謝礼としてグラスからそれなりの金額を受け取っていた。旅費は十分にある。
「それじゃあ、案内するわ。こっちに来なさい」
エンジェに先導されて、ウータとステラは大通りを歩いて宿屋まで連れていかれた。
進行方向上にある峡谷の都市……ミスリルバレーを目にして、ウータが瞳を輝かせた。
峡谷に築かれた巨大な都市には、谷の流れに沿っていくつもの建築物が立っている。建物の隙間からは白い煙が天に向かって上がっている。
「……懐かしいわね。ミスリルバレーよ」
峡谷の都市を見つめて、エンジェが目を細めた。
その瞳はどこか哀切が浮かんでおり、単純に懐かしんでいるというのとは異なるように見える。
「あの煙は鍛冶屋から出ている煙、そして……温泉の湯気よ」
「温泉!」
ウータが声を上げる。
瞳を見開いて、エンジェに詰め寄った。
「温泉! やっぱり、温泉があるんだね!」
「え、ええ……そうね。温泉はいっぱいあるわよ。それが目当てでくる旅行者もいるくらいだから」
エンジェがわずかにたじろぎながら、ウータの問いに答える。
「ミスリルバレーには町の名前の通り、ミスリルが採掘できる鉱山があるのよ。それでミスリルの加工のために鍛冶屋がいくつもあって、武器や防具もたくさん生産されているんだけど……興味なさそうね、貴方は」
「温泉っ! 温泉っ!」
ウータは鍛冶屋のことなど興味がないようである。
温泉のことしか頭になく、ウキウキとスキップまでしていた。
「こうなったウータさんは話を聞いてくれませんよ……行きましょうか、町の方へ」
ステラが苦笑しながら、エンジェを促した。
三人は高い城壁で囲まれたミスリルバレーの入口まで歩いていき、軽い審査を終えてから町の中に入った。
城門をくぐると、活気のある街並みが広がっていた。
大通りには多くの人達が行き来しており、カチンカチンと金槌で金属を叩くような音があちこちから聞こえてくる。
通りに並んだ店は武器屋と防具屋、それと金物屋が多い。行商人が絨毯の上に商品を広げていたりもした。
「へえ、面白い町だね。小さい人がいっぱいだよ」
そして、町の住民らしき人達はドワーフと呼ばれる者達である。
いずれも子供のような背丈であり、ずんぐりむっくりとした体型をしていた。
「あまり小さいとか言わないでもらいたいわね。私は気にしない方だけど、人によっては怒る人もいるから」
「あ、ごめんごめん」
エンジェの苦言にウータが謝罪をする。
「だけど……こうやって見ると、エンジェさんってあんまりドワーフっぽくないね。わりと痩せているし、顔も美人さんだし」
周囲にはドワーフの女性もいるのだが……わりと筋肉質なタイプが多く、女性ながらにガッチリとした体格をしていた。
隣のエンジェはどちらかというと細身であり、ドワーフというよりも人間の子供のように見えてしまう。
「私は一族の中でも痩せっぽっちな方だから。言っておくけど……年はもう二十歳を越えているからね?」
「あ、そうなんだ」
「……マーマンの人達もそうでしたけど、種族が違うと全然見た目の年齢がわかりませんね。何だか不思議な感じです」
ステラが溜息混じりに言うと、エンジェが「私も人間族の年齢はわからないわ」と肩をすくめる。
「ドワーフはまだマシな方よ。エルフなんて千歳くらいまで生きるくせに、外見はみんな十代二十代で変わらないからね」
「へえ、やっぱりエルフって長生きなんだね。やっぱり、ドワーフと仲が悪かったりするのかな?」
「それは人によると思うわよ。神官とか女神アースを深く信仰している人ほど、女神エアに生み出されたエルフを嫌っている傾向があるけど……そんなことよりも、今夜の宿屋を探しましょう。貴方達、お金は持っているの?」
エンジェが話題を切り替える。
「私が行きつけの宿屋だったら露天風呂もあるし、料理も美味しくてゆっくりとできると思うけど……わりと値段が張るわよ。手持ちに余裕はあるかしら?」
「大丈夫だよね、ステラ?」
「あ、はい。たぶん大丈夫です」
ステラが頷いた。
フィッシュバレーでの活躍により、ウータ達は謝礼としてグラスからそれなりの金額を受け取っていた。旅費は十分にある。
「それじゃあ、案内するわ。こっちに来なさい」
エンジェに先導されて、ウータとステラは大通りを歩いて宿屋まで連れていかれた。
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