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88.ドワーフの国に行くよ
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「なんか、すごい良い夢を見た気がするね」
早朝。
テントの中で目を覚ましたウータは開口一番にそんなことを言った。
「おはようございます、急にどうしたんですか?」
後から目を覚ましたステラが寝ぼけまなこを擦りながら、首を傾げる。
「いや……内容は覚えていないんだけど、すごい夢を見ちゃった気がするんだよね。でっかいマシュマロがポヨポヨでさ。牛の乳しぼりをして、チューチューアイスをチュバチュバなんだよ」
「はい、全然何を言っているのかわかりませんね……まあ、幸せな夢を見たということは伝わってきました」
ステラは呆れながらも、テントから出た。
「今日も良い天気ですね……これなら、今日中にはミスリルバレーに到着するんじゃないですか?」
ウータとステラはドワーフの国を目指して旅をしていた。
フィッシュブルクの町を出て数日。もうじき、国境に到着するだろう。
「ドワーフは閉鎖的とは聞いていますが……それでも、グラス様の許可証があれば入国はできるはずです。あと少しですから、張り切っていきましょう」
「うん、そうだね」
ウータとステラは再び、街道を進んでいく。
天気は快晴だったが、やや風が強い。
北上してきたからか気温が下がっており、肌寒くなっていた。
「うー……寒くなってきたね。もう秋かな?」
「季節もそうですけど、ドワーフの国は寒冷地ですからね。たぶん、入国する頃には雪も降っていると思いますよ」
「雪かあ……僕は寒いのは好きじゃないんだよね。コタツとミカンが恋しいよ……」
「まあまあ、ミスリルバレーには温泉がありますからね。ドワーフ族は入浴とサウナで寒さをしのいでいるそうですよ」
「温泉かあ、それは楽しみだね」
温泉なんて、家族旅行で伊豆に行った時以来である。
寒いのは嫌だったが、一つ楽しみなことが増えた。
「うんうん、モチベーションが上がるね。ちょっとだけやる気が出てきたよ」
「それは何よりですね。それじゃあ、行きましょうか」
ウータとステラは街道を進んでいく。
途中で何度か休憩をとりながら、マイペースに北を目指す。
なだらかな丘陵を上っていき、頂上を越えたところでふと目に留まるものがあった。
「あれ? 何か騒いでるね」
「アレは……ワイバーンですよ! ウータさん!」
行商人らしき馬車が魔物に襲われていた。
両腕に翼を生やしたトカゲのような生き物……ワイバーンである。
五匹ほどのワイバーンが馬車を囲んで爪や牙で攻撃を仕掛けており、護衛らしき男女が応戦していた。
「どうしましょう、ウータさん?」
「うーん……助けた方がいいのかな?」
別に助ける必要はないが……進行方向上である。
わざわざ見捨てることもないだろう。
「ちょっと行ってこようかなー。ステラは待っててねー」
ウータはコンビニに出かけるような気楽さで言って、襲われている馬車にスタスタと歩いていく。
「おい、そこのお前! 危ないから逃げろ!」
馬車を守っていた護衛の一人が叫んでくる。
ウータは軽く手を挙げて、にこやかに微笑んだ。
「ちょっと助太刀するね。別に礼はいらないよー」
ウータは護衛の返事を待つことなく、手に入れたばかりの力を発動させた。
水の女神マリンを食べて手に入れた力……『神水』。
ウータの人差し指から高圧力の水鉄砲が射出され、空中に浮かんでいたワイバーンの一匹を貫いた。
「ギャウッ!?」
首を貫かれたワイバーンが墜落して、地面に衝突。やがて動かなくなった。
「ギャウギャウッ!」
「ギャアッ!」
仲間を殺されたワイバーンが怒りの声を上げて、ウータに襲いかかってくる。
「うんうん、元気が良いね。トカゲって食べられるのかな?」
マイペースに言いながら、ウータが再び水鉄砲を撃つ。
連続して放たれるレーザーのような水がワイバーンの身体を、翼を貫いて、次々と撃墜していった。
「ギャアッ!」
しかし、そんな水鉄砲をかいくぐって、一匹のワイバーンがウータのところにたどり着く。
長く鋭い牙で噛みついてくる。
「ああ、危ないなあ」
ウータが転移で逃れようとする。
しかし、それよりも先にウータの前に一つの影が割って入ってきた。
「ヤアアアアアアアアッ!」
飛び込んできたのは小柄な体躯の少女だった。
ウータよりも頭二つ分は背の低い少女が、身の丈を超える大きさの大剣を振るう。
「ギャッ……」
少女の剣によってワイバーンが真っ二つに両断され、血をまき散らして地面に倒れた。
「危なかったわ。あと少しで食べられてしまうところだったじゃない」
「えっと……君は誰かな?」
ウータがパチクリと瞬きをして、少女に訊ねる。
中学生……場合によっては小学生にも間違われそうな体格の少女は、大きな剣を肩に担いでにこやかに笑う。
「私の名前はエンジェ。ドワーフ族の剣士よ」
早朝。
テントの中で目を覚ましたウータは開口一番にそんなことを言った。
「おはようございます、急にどうしたんですか?」
後から目を覚ましたステラが寝ぼけまなこを擦りながら、首を傾げる。
「いや……内容は覚えていないんだけど、すごい夢を見ちゃった気がするんだよね。でっかいマシュマロがポヨポヨでさ。牛の乳しぼりをして、チューチューアイスをチュバチュバなんだよ」
「はい、全然何を言っているのかわかりませんね……まあ、幸せな夢を見たということは伝わってきました」
ステラは呆れながらも、テントから出た。
「今日も良い天気ですね……これなら、今日中にはミスリルバレーに到着するんじゃないですか?」
ウータとステラはドワーフの国を目指して旅をしていた。
フィッシュブルクの町を出て数日。もうじき、国境に到着するだろう。
「ドワーフは閉鎖的とは聞いていますが……それでも、グラス様の許可証があれば入国はできるはずです。あと少しですから、張り切っていきましょう」
「うん、そうだね」
ウータとステラは再び、街道を進んでいく。
天気は快晴だったが、やや風が強い。
北上してきたからか気温が下がっており、肌寒くなっていた。
「うー……寒くなってきたね。もう秋かな?」
「季節もそうですけど、ドワーフの国は寒冷地ですからね。たぶん、入国する頃には雪も降っていると思いますよ」
「雪かあ……僕は寒いのは好きじゃないんだよね。コタツとミカンが恋しいよ……」
「まあまあ、ミスリルバレーには温泉がありますからね。ドワーフ族は入浴とサウナで寒さをしのいでいるそうですよ」
「温泉かあ、それは楽しみだね」
温泉なんて、家族旅行で伊豆に行った時以来である。
寒いのは嫌だったが、一つ楽しみなことが増えた。
「うんうん、モチベーションが上がるね。ちょっとだけやる気が出てきたよ」
「それは何よりですね。それじゃあ、行きましょうか」
ウータとステラは街道を進んでいく。
途中で何度か休憩をとりながら、マイペースに北を目指す。
なだらかな丘陵を上っていき、頂上を越えたところでふと目に留まるものがあった。
「あれ? 何か騒いでるね」
「アレは……ワイバーンですよ! ウータさん!」
行商人らしき馬車が魔物に襲われていた。
両腕に翼を生やしたトカゲのような生き物……ワイバーンである。
五匹ほどのワイバーンが馬車を囲んで爪や牙で攻撃を仕掛けており、護衛らしき男女が応戦していた。
「どうしましょう、ウータさん?」
「うーん……助けた方がいいのかな?」
別に助ける必要はないが……進行方向上である。
わざわざ見捨てることもないだろう。
「ちょっと行ってこようかなー。ステラは待っててねー」
ウータはコンビニに出かけるような気楽さで言って、襲われている馬車にスタスタと歩いていく。
「おい、そこのお前! 危ないから逃げろ!」
馬車を守っていた護衛の一人が叫んでくる。
ウータは軽く手を挙げて、にこやかに微笑んだ。
「ちょっと助太刀するね。別に礼はいらないよー」
ウータは護衛の返事を待つことなく、手に入れたばかりの力を発動させた。
水の女神マリンを食べて手に入れた力……『神水』。
ウータの人差し指から高圧力の水鉄砲が射出され、空中に浮かんでいたワイバーンの一匹を貫いた。
「ギャウッ!?」
首を貫かれたワイバーンが墜落して、地面に衝突。やがて動かなくなった。
「ギャウギャウッ!」
「ギャアッ!」
仲間を殺されたワイバーンが怒りの声を上げて、ウータに襲いかかってくる。
「うんうん、元気が良いね。トカゲって食べられるのかな?」
マイペースに言いながら、ウータが再び水鉄砲を撃つ。
連続して放たれるレーザーのような水がワイバーンの身体を、翼を貫いて、次々と撃墜していった。
「ギャアッ!」
しかし、そんな水鉄砲をかいくぐって、一匹のワイバーンがウータのところにたどり着く。
長く鋭い牙で噛みついてくる。
「ああ、危ないなあ」
ウータが転移で逃れようとする。
しかし、それよりも先にウータの前に一つの影が割って入ってきた。
「ヤアアアアアアアアッ!」
飛び込んできたのは小柄な体躯の少女だった。
ウータよりも頭二つ分は背の低い少女が、身の丈を超える大きさの大剣を振るう。
「ギャッ……」
少女の剣によってワイバーンが真っ二つに両断され、血をまき散らして地面に倒れた。
「危なかったわ。あと少しで食べられてしまうところだったじゃない」
「えっと……君は誰かな?」
ウータがパチクリと瞬きをして、少女に訊ねる。
中学生……場合によっては小学生にも間違われそうな体格の少女は、大きな剣を肩に担いでにこやかに笑う。
「私の名前はエンジェ。ドワーフ族の剣士よ」
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