異世界召喚されて捨てられた僕が邪神であることを誰も知らない……たぶん。

レオナール D

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85.西宮和葉はパフパフする

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「フウ……疲れました……」

 戦いが終わって、王城では宴会が開かれた。
 生き残った仲間達と健闘を讃え合い、倒れた戦友の冥福を祈り、兵士達は涙を流しながら酒を呷った。
 宴もたけなわというところで宴席から抜け出した西宮和葉は、自室のベッドに横になって目を閉じる。
 今回の戦争において、和葉は聖女として後方での治療活動に従事している。
 敵とはまるで戦っていない。それでも、運び込まれてくる負傷者の治療を延々と続けるという作業は精神を削るものだった。

「ウータさん……今頃、何をしているでしょうか?」

 目を閉じて、瞼の裏に浮かんでくるのは愛しい男性の顔である。
 花散ウータ。彼の顔を思い浮かべただけで、戦場での疲労とストレスが吹き飛んでいく。

「ウータさん……今日も会いに行きますね……」

 ベッドに寝転がったまま腹部の前で両手を重ねる。

「フー…………」

 長く息を吐いて、精神を統一。
 自分の身体から魂が剥がれ落ち、空を飛んでいくイメージ。
 肉体というくびきから解き放たれた魂は猛スピードで飛んでいき、一瞬で数百キロという距離を越えていく。
『聖女』である和葉だけが使うことができる能力。
 自らの信仰対象との間にリンクを作ることができる力である。
 以前はスピリチュアル・ストーカーとしてウータの動向を観察することしかできなかったが、聖女として成長した今では生霊を飛ばすことすら出来るようになっていた。

(ウータさん、また旅に出たんですね。今度の目的地はドワーフの国ですか)

 ウータはフィッシュブルクにて水の女神マリンを倒して、ドワーフの国ミスリルバレーに向かっていた。
 今はキャンプをしているところであり、テントの中でスヤスヤと寝息を立てている。

『ム……』

 ウータの隣には一人の少女が丸くなって眠っていた。
 和葉の頭を一瞬だけ妬み嫉みの感情が横切るが……すぐに消える。

『別に構いませんとも。ウータさんみたいな美しく偉大な方の周りに信者が集まるのは当然のことですから……』

 和葉にとってウータは崇拝すべき相手であり、独占できるとは最初から思っていない。
 常にウータと行動を共にしているステラに思うところはあったが……巫女であり禰宜ねぎである自分は寛大でいなくては。

『ウータさん! こんばんは!』

「アレ……和葉?」

 和葉が声をかけると、ウータが応えてくれた。

「どうしたのかな? 超おっぱい見えてるけど?」

『いやんっ』

 魂だけで飛んできた和葉は一糸まとっていない全裸である。
 もちろん、形の良い乳房も丸出しだった。

『……ウータさん、女性の胸に興味を持つようになったんですね。前は全然、気にしていなかったのに』

「ん? まあ、そうだね。本当につい最近だけど、女の子のお胸って柔っこくて触り心地が良いなって気づいたんだ」

『そうですか……それでは、存分にどうぞ』

 和葉は羞恥に肌を桃色に染めながら、ウータの前に胸をさらす。

『私達のために頑張ってくれているご褒美です。どうぞご堪能ください』

「え、いいのかな?」

『もちろんです』

「それじゃあ、遠慮なく」

『んっ!』

 ウータの両手が和葉の胸に伸びる。
 恥ずかしさはあるものの、崇める神が求めているのだ。応じないわけにはいかなかった。

(本当はここで抱いてくださっても構いませんけど……ウータさんにはまだ早いですね)

 和葉が推察するに、ウータの性年齢はまだ小学校高学年ほどである。
 女性の胸などに興味を抱いていても、セックスなどまだ早い。

(時間はたっぷりとあります。少しずつ、私を女として意識していただかないと)

 和葉は頭の中でいかにしてウータと結ばれるか計画を立てる。
 ウータに女として意識させ、肉体関係を持ち。
 結納から結婚。子作り。育児。
 子供の反抗期に受験戦争。就職、結婚、孫の出産。
 ウータに胸を弄ばれながら、和葉はざっと還暦までの人生設計を構築した。

『子供は三人ずつですね。ステラさんがどこまでついてくるかはわかりませんが……サッカーチームが作れるくらいが理想です』

「何の話かな?」

『こっちの話です……絶対に逃がしませんからね』

 和葉は妖しく微笑みながら、清楚な顔立ちで舌なめずりをする。
 信仰する側が支配しているのか、それとも信仰される側が縛られているのか。
 和葉は自らの神であるウータへの狂信じみた愛をグツグツとたぎらせつつ、裸の胸にウータの頭を抱きしめるのであった。
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