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77.女神マリンが現れたよ
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全長五十メートルはあろう巨大な体躯。
黒い水を衣のようにまとっており、ウネウネとイソギンチャクの触手のように水が縦横無尽に這っている。
まるでRPGゲームのボスキャラのような姿だった。
「アレが女神マリンか……何というか、見た目は僕よりも邪神っぽいかな?」
女神マリンの姿はどこまでも禍々しい。
キツめではあったが美女の姿をしていた女神フレアとは姿かたちが大きく異なっている。
『どうして、我がケンゾクが大勢死んでいるのですか? ナゼ、いまだに町がホロビルことなく存在しているのですか?』
降臨した女神マリンが重低音を響かせる。
それは純粋な疑問の言葉。決して怒った声というわけではないものの、それでありながら人を芯から震えさせるような威圧感に満ちていた。
「め、メガミよ……」
「オオ、我らのかみよ……」
現れた女神マリンの周囲に無事だった半魚人が集まっていき、ゴチョゴチョと何事かを報告している。
『あのショウネンが、私の可愛いケンゾクをコロシタというのですか……!』
女神マリンがウータを睨みつけてくる。
背筋が凍えるような冷たい視線。常人であれば、その一瞥だけでショックのあまり心臓が停止してしまうだろう
『いったい、イカナル理由で我がケンゾクを殺めたのですか? 理由を述べなさい。ショウネンよ……!』
「女神マリン! 訊きたいことがあります!」
女神の問いに答えたのはウータではなく、瓦礫に埋もれた人々の救出をしていたグラスである。
「私達はずっとずっと、貴女を崇めて信仰しておりました! それなのに……どうして、このような仕打ちを受けなくてはいけないのですか!? 貴女にとって、私達はいったい何だったのですか!?」
『ナンデスカ、このムスメは……?』
女神マリンが怪訝そうな目をグラスに向ける。
グラスの身体が大きく震えるが……膝をつくことなく、その場で踏みとどまった。
巨大な神の威容を前にしながら、驚くような精神力である。
『ウットウシイ……エサにしかならぬ小魚が、偉大なる神であるこのワタシに言葉を投げかけるなど、なんとブレイな……!』
しかし、その勇敢さの報酬として与えられたのは女神からの侮蔑である。
女神マリンが軽蔑しきった目でグラスを見下ろし、唾を吐くように罵声を吐きつけた。
『海底にスムことのできないマーマンなど、プランクトンほどしか価値はありません。喰われるだけの小魚が自らのソンザイイギを語ろうなど、片腹痛い!』
「…………!」
『ワタシを崇めているというのであれば、オトナシク喰われて糧となりなさい! 小魚ふぜいにハンコウを許したオボエなどありません!』
いよいよ耐えられなくなり、グラスが膝をついた。
女神マリンの言葉で否が応でも理解させられてしまった。
この町に住んでいるマーマン達がただのエサでしかなく、半魚人に食べられるために生み出された存在なのだと。
増え、喰われ、糧となるためだけに生きてきた。
自らの存在意義を否定されて、グラスの心が崩れてしまう。
「そん、な……」
「嘘だ……女神様がそんなことを言うわけが……」
「おお、女神マリンよ……どうして、我らを見捨てたのか……」
絶望しているのはグラスだけではない。
女神マリンを信仰していた陸生マーマンが神から存在を否定され、そろって打ちひしがれている。
『ワカッタら、さっさと身を差し出してジガイなさい。それがアナタタチにできる唯一の……』
「えいっ」
『生まれたイミで……グギャエッ!?』
「話が長いよー」
ウータが投げつけた炎の塊が女神マリンの顔面に着弾。真っ赤な炎を撒き散らして爆発した。
「ウータさん……」
「いや、僕ってゲームでもこういう会話シーンとかスキップするタイプだし?」
やや離れた場所にいたステラが呆れた様子で肩を落とす。
ウータは言い訳のように言って、新しい炎弾を構えた。
「まあ、どうでも良い話はこれくらいにしてさ。さっさとやろうよ」
『キサ、マ……!』
「僕はもう、お腹ペコペコだからさ……早く、食べさせてよ」
『…………!』
無邪気な口調で放たれた言葉に、わずかに女神マリンがたじろいだ様子を見せる。
女神マリンも悟ったのだろう。ウータがただの人間ではないことを。
人ならざる超常の力を有した怪物であることを。
人の姿をした邪神と、黒き水を湛えた女神。
二柱の神の戦いの火蓋が切られようとしていた。
黒い水を衣のようにまとっており、ウネウネとイソギンチャクの触手のように水が縦横無尽に這っている。
まるでRPGゲームのボスキャラのような姿だった。
「アレが女神マリンか……何というか、見た目は僕よりも邪神っぽいかな?」
女神マリンの姿はどこまでも禍々しい。
キツめではあったが美女の姿をしていた女神フレアとは姿かたちが大きく異なっている。
『どうして、我がケンゾクが大勢死んでいるのですか? ナゼ、いまだに町がホロビルことなく存在しているのですか?』
降臨した女神マリンが重低音を響かせる。
それは純粋な疑問の言葉。決して怒った声というわけではないものの、それでありながら人を芯から震えさせるような威圧感に満ちていた。
「め、メガミよ……」
「オオ、我らのかみよ……」
現れた女神マリンの周囲に無事だった半魚人が集まっていき、ゴチョゴチョと何事かを報告している。
『あのショウネンが、私の可愛いケンゾクをコロシタというのですか……!』
女神マリンがウータを睨みつけてくる。
背筋が凍えるような冷たい視線。常人であれば、その一瞥だけでショックのあまり心臓が停止してしまうだろう
『いったい、イカナル理由で我がケンゾクを殺めたのですか? 理由を述べなさい。ショウネンよ……!』
「女神マリン! 訊きたいことがあります!」
女神の問いに答えたのはウータではなく、瓦礫に埋もれた人々の救出をしていたグラスである。
「私達はずっとずっと、貴女を崇めて信仰しておりました! それなのに……どうして、このような仕打ちを受けなくてはいけないのですか!? 貴女にとって、私達はいったい何だったのですか!?」
『ナンデスカ、このムスメは……?』
女神マリンが怪訝そうな目をグラスに向ける。
グラスの身体が大きく震えるが……膝をつくことなく、その場で踏みとどまった。
巨大な神の威容を前にしながら、驚くような精神力である。
『ウットウシイ……エサにしかならぬ小魚が、偉大なる神であるこのワタシに言葉を投げかけるなど、なんとブレイな……!』
しかし、その勇敢さの報酬として与えられたのは女神からの侮蔑である。
女神マリンが軽蔑しきった目でグラスを見下ろし、唾を吐くように罵声を吐きつけた。
『海底にスムことのできないマーマンなど、プランクトンほどしか価値はありません。喰われるだけの小魚が自らのソンザイイギを語ろうなど、片腹痛い!』
「…………!」
『ワタシを崇めているというのであれば、オトナシク喰われて糧となりなさい! 小魚ふぜいにハンコウを許したオボエなどありません!』
いよいよ耐えられなくなり、グラスが膝をついた。
女神マリンの言葉で否が応でも理解させられてしまった。
この町に住んでいるマーマン達がただのエサでしかなく、半魚人に食べられるために生み出された存在なのだと。
増え、喰われ、糧となるためだけに生きてきた。
自らの存在意義を否定されて、グラスの心が崩れてしまう。
「そん、な……」
「嘘だ……女神様がそんなことを言うわけが……」
「おお、女神マリンよ……どうして、我らを見捨てたのか……」
絶望しているのはグラスだけではない。
女神マリンを信仰していた陸生マーマンが神から存在を否定され、そろって打ちひしがれている。
『ワカッタら、さっさと身を差し出してジガイなさい。それがアナタタチにできる唯一の……』
「えいっ」
『生まれたイミで……グギャエッ!?』
「話が長いよー」
ウータが投げつけた炎の塊が女神マリンの顔面に着弾。真っ赤な炎を撒き散らして爆発した。
「ウータさん……」
「いや、僕ってゲームでもこういう会話シーンとかスキップするタイプだし?」
やや離れた場所にいたステラが呆れた様子で肩を落とす。
ウータは言い訳のように言って、新しい炎弾を構えた。
「まあ、どうでも良い話はこれくらいにしてさ。さっさとやろうよ」
『キサ、マ……!』
「僕はもう、お腹ペコペコだからさ……早く、食べさせてよ」
『…………!』
無邪気な口調で放たれた言葉に、わずかに女神マリンがたじろいだ様子を見せる。
女神マリンも悟ったのだろう。ウータがただの人間ではないことを。
人ならざる超常の力を有した怪物であることを。
人の姿をした邪神と、黒き水を湛えた女神。
二柱の神の戦いの火蓋が切られようとしていた。
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