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74.半魚人もやってきたよ
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津波によって町の半分が飲み込まれた。魔物がやってきて人を襲いだした。
そして……魔物からわずかに遅れて押し寄せてきた海生マーマンが人々を襲い、バリボリと肉と骨を噛み砕いている。
まるで極上のワインでも飲み干しているかのように血を啜り、魚とよく似た顔を醜悪に歪めていた。
「ウマイ、ウマイゾ!」
「ごちそうだ! ゴチソウジャ!」
「血がニクニシミル……力がミチルゾオオオオオオオオオオオオオオオ!」
「やめろ! やめてくれ……ギャアアアアアアアアアッ!」
悲鳴を上げる陸生マーマンを食べている海生マーマンの姿は魔物そのものであり、祖を同じくする人種であるとは思えなかった。
もはや『海生マーマン』などと呼ぶのもおこがましい。血に酔い、殺戮を愉しむ彼らはただの半魚人の怪物でしかなかった。
「……酷いなあ。ご飯を食べた後で良かった」
せっかくのお祭り料理が不味くなるから……そんなことをいつものマイペースでつぶやきながら、ウータは顔をしかめた。
「この間、アイツらの仲間に襲われたんだけど……酷いよねえ。僕が住んでいた世界にもアレとよく似た奴がいてさ。そいつらは人間を食べたりはしなかったんだけど、女の人を襲って子供を産ませたりしてたよ」
「う、ウータさん……そんなことを言っている場合じゃないと思うんですけど……」
ステラがウータの上着を握りしめ、顔を青ざめさせる。
陸生マーマンは『魚っぽい人間』という姿なのに対して、海生マーマンは『人間っぽい魚』。
より魔物っぽい姿をしており、人を食べているともはや怪物としか思えなかった。
「そんな……どうして、海の連中が俺達を襲うんだよ!」
「私達、同じマーマン族でしょう!?」
人々から信じられないとばかりに悲鳴が上がる。
陸生マーマンにとって、海生マーマンは姿と住処が違うだけで同族のはずだった。
同じ神を崇めており、貿易などで交流もある。
それなのに……昨日まで隣人であった者達が捕食者となり、自分達を襲っている。
まさに悪夢のような光景だろう。
「ギシャシャシャシャ……」
「グヘヘヘ、エサだ。ゴチソウダ」
やがて半魚人が高台まで上ってくる。
櫓の周りに集まっていた人々に爛々と輝く目を向けてきて、襲いかかろうとしていた。
「逃げろ!」
「町の外に逃げるんだ!」
混乱した人々が町の外に逃げ出そうとする。
大勢の人々が押し合って揉みくちゃになりながら、町の外縁に向かって走っていく。
しかし……町の外に出ようとした人々が見えない壁に衝突する。
「で、出られない……!」
「何でよ! 出してよお!」
グラスが奉納した舞によって、フィッシュブルクの町の外縁部分にはドーム状の結界が生じていた。
侵入するものを拒まず、逃げるものだけを阻むという結界である。
これにより、町は逃走不可能な狩場となってしまったのだ。
「ゲハハハハハ! 逃げられねえよお!」
「さーて……どいつから喰ってやろうかなあ?」
半魚人が海から這い出してきて、舌なめずりをして、町の住民に近づいていく。
逃げようとする人々の中には、観光客や旅芸人など陸生マーマン以外の人種も混じっていたが……どちらもごちそうであるには違いない。
ペタペタと足音を鳴らして、醜悪な笑みで獲物に喰らいつこうとする。
「ニガサネエヨオ! 大人しくコロサレナ!」
「君がね」
そのまま逃げる住民に喰いつこうとする半魚人であったが……背後から何者かに肩を叩かれる
「ア……?」
振り返った半魚人の濁った眼に映ったのは、のんびりと緩んだ表情をした少年……ウータの顔である。
水の中にいる敵はどうにもならないが、陸に上がって来てくれたらまな板の上の魚と同じ。殺すも生かすも邪神の気まぐれ次第だった。
「祭りも楽しめない無粋な奴は塵になーれ」
「ギャ……」
途端、半魚人が塵となった。
先ほどまで狩る側、殺す側だったはずの半魚人であったが……コインが裏返るほど簡単に狩られる獲物となってしまったのである。
そして……魔物からわずかに遅れて押し寄せてきた海生マーマンが人々を襲い、バリボリと肉と骨を噛み砕いている。
まるで極上のワインでも飲み干しているかのように血を啜り、魚とよく似た顔を醜悪に歪めていた。
「ウマイ、ウマイゾ!」
「ごちそうだ! ゴチソウジャ!」
「血がニクニシミル……力がミチルゾオオオオオオオオオオオオオオオ!」
「やめろ! やめてくれ……ギャアアアアアアアアアッ!」
悲鳴を上げる陸生マーマンを食べている海生マーマンの姿は魔物そのものであり、祖を同じくする人種であるとは思えなかった。
もはや『海生マーマン』などと呼ぶのもおこがましい。血に酔い、殺戮を愉しむ彼らはただの半魚人の怪物でしかなかった。
「……酷いなあ。ご飯を食べた後で良かった」
せっかくのお祭り料理が不味くなるから……そんなことをいつものマイペースでつぶやきながら、ウータは顔をしかめた。
「この間、アイツらの仲間に襲われたんだけど……酷いよねえ。僕が住んでいた世界にもアレとよく似た奴がいてさ。そいつらは人間を食べたりはしなかったんだけど、女の人を襲って子供を産ませたりしてたよ」
「う、ウータさん……そんなことを言っている場合じゃないと思うんですけど……」
ステラがウータの上着を握りしめ、顔を青ざめさせる。
陸生マーマンは『魚っぽい人間』という姿なのに対して、海生マーマンは『人間っぽい魚』。
より魔物っぽい姿をしており、人を食べているともはや怪物としか思えなかった。
「そんな……どうして、海の連中が俺達を襲うんだよ!」
「私達、同じマーマン族でしょう!?」
人々から信じられないとばかりに悲鳴が上がる。
陸生マーマンにとって、海生マーマンは姿と住処が違うだけで同族のはずだった。
同じ神を崇めており、貿易などで交流もある。
それなのに……昨日まで隣人であった者達が捕食者となり、自分達を襲っている。
まさに悪夢のような光景だろう。
「ギシャシャシャシャ……」
「グヘヘヘ、エサだ。ゴチソウダ」
やがて半魚人が高台まで上ってくる。
櫓の周りに集まっていた人々に爛々と輝く目を向けてきて、襲いかかろうとしていた。
「逃げろ!」
「町の外に逃げるんだ!」
混乱した人々が町の外に逃げ出そうとする。
大勢の人々が押し合って揉みくちゃになりながら、町の外縁に向かって走っていく。
しかし……町の外に出ようとした人々が見えない壁に衝突する。
「で、出られない……!」
「何でよ! 出してよお!」
グラスが奉納した舞によって、フィッシュブルクの町の外縁部分にはドーム状の結界が生じていた。
侵入するものを拒まず、逃げるものだけを阻むという結界である。
これにより、町は逃走不可能な狩場となってしまったのだ。
「ゲハハハハハ! 逃げられねえよお!」
「さーて……どいつから喰ってやろうかなあ?」
半魚人が海から這い出してきて、舌なめずりをして、町の住民に近づいていく。
逃げようとする人々の中には、観光客や旅芸人など陸生マーマン以外の人種も混じっていたが……どちらもごちそうであるには違いない。
ペタペタと足音を鳴らして、醜悪な笑みで獲物に喰らいつこうとする。
「ニガサネエヨオ! 大人しくコロサレナ!」
「君がね」
そのまま逃げる住民に喰いつこうとする半魚人であったが……背後から何者かに肩を叩かれる
「ア……?」
振り返った半魚人の濁った眼に映ったのは、のんびりと緩んだ表情をした少年……ウータの顔である。
水の中にいる敵はどうにもならないが、陸に上がって来てくれたらまな板の上の魚と同じ。殺すも生かすも邪神の気まぐれ次第だった。
「祭りも楽しめない無粋な奴は塵になーれ」
「ギャ……」
途端、半魚人が塵となった。
先ほどまで狩る側、殺す側だったはずの半魚人であったが……コインが裏返るほど簡単に狩られる獲物となってしまったのである。
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