異世界召喚されて捨てられた僕が邪神であることを誰も知らない……たぶん。

レオナール D

文字の大きさ
上 下
34 / 122
連載

67.歯磨きせずに眠ったら悪戯されたよ

しおりを挟む

「あー、美味しかった! 最高の晩御飯だったね!」

「はい。とても美味しかったです」

 レストランで食事を終えたウータとステラは宿屋に戻った。
 食事を終えてレストランを出たときにはすでに夜になっていた。
 部屋に戻るや、ウータが「ふえー」とベッドに飛び込んだ。

「あー、お腹いっぱい……今日はこのまま寝ちゃおっかなー」

「ウータさん。お風呂に入ってくださいよ。それに歯も磨かないと」

「明日の朝、シャワー浴びるからいいよー。それから僕は虫歯にならないから大丈夫。このまま寝ちゃうー」

「まったく……しょうがないですねえ……」

 ステラが溜息を吐きつつ、寝転がるウータから上着を脱がす。

「せめて服だけは脱いでください。シワになりますからね」

「むあー」

「むあーじゃないですよ」

「にゅがー」

「にゅがーでもないです」

「…………」

 ウータはそのまま気を失うようにして眠ってしまい、ステラがゆすっても叩いても目を覚まさなくなってしまった。

「まったく……仕方がないですねえ」

 ステラは肩をすくめて、ウータの下半身にまたがった。
 上着のボタンをプチプチと外して、代わりに服を脱がしてあげる。

「……いつもながら、この身体のどこにあんなすごい力が宿っているのでしょう」

 上半身裸のウータを見下ろして、ステラが納得しかねるとばかりに眉をひそめた。
 ウータの身体つきは中肉中背。決して筋肉質というわけでもなく、どちらかというと細身である。
 巨大な怪物を一瞬で塵にしたり、燃やし尽くしたりするような強力な力がこの身体に宿っているとはとても思えなかった。

「私も異能持ちですけど、ウータさんにはとても敵いませんね……」

 ステラの身体にもまた、あらゆる魔法を無効化する炎が宿っている。
 この世界の魔法技術では説明がつかない、生まれながらにして持っている異才の力だったが、そんな力もウータにはまるで通用しなかった。

「おまけに、女神フレアを殺したとか女神マリンを食べるとか言ってますし……本当に底知れない人です」

「んむっ」

 ステラはふとした悪戯心から、ウータの身体に指を滑らせてみる。
 腹筋を撫でてみたり、肋骨の隙間に指を滑らせてみたり……こうして触れて見ると普通の人間と変わらない肉体だ。
 どうして凄まじい力を持っているのか、ますます不思議である。

「ほあっ」

 乳首をチョチョイと突いてみると、ウータの身体がわずかに跳ねておかしな声が出た。
 どうやら、乳首が弱点だったようである。ステラは苦笑しつつ、その辺りを重点的に責めて見た。

「ほわっ、ふぬっ、にょも、ほぼぼぼぼ……」

 指で触れるたびにウータがおかしな声を出す。
 眠っているとは思えないほど多彩な喘ぎ声を聞いて、ステラは疑わしそうに眉を寄せる。

「あの……本当は起きてませんか?」

「ムニャムニャ、スピー……もう食べられないよ……」

「その寝言は逆に怪しいんですけど……まあ、いいです。眠っていると言うことにしておいてあげます」

 ステラはウータのズボンを脱がして下着姿にして、脱がした服を部屋の洋服タンスにあるハンガーにかける。
 そして、自分はしっかりとシャワーを浴びて歯を磨いて……下着姿のまま、ちゃっかりとウータの隣に横になった。

「ムニャムニャ……」

「おやすみなさい。ウータさん」

「にゃーん」

「にゃーんじゃないですよ……フフッ」

 最初は圧倒的な力を持った存在への畏怖からウータに付き従い、給仕の真似事をしてきた。
 しかし……こうやって一緒に旅をしているうちにどんどん新しい面が見えてきて、他の感情がどんどん芽生えてくる。
 奴隷の子として生まれて、『火の神殿』にこき使われて……同年代の男性と接した経験はあまりにも少なかったが、こんな感情を誰かに抱くのは初めてである。

「すぴー……」

「ん……」

 ステラは甘えるようにウータに抱き着いて、スヤスヤと眠りにつくのであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

調子に乗りすぎて処刑されてしまった悪役貴族のやり直し自制生活 〜ただし自制できるとは言っていない〜

EAT
ファンタジー
「どうしてこうなった?」 優れた血統、高貴な家柄、天賦の才能────生まれときから勝ち組の人生により調子に乗りまくっていた侯爵家嫡男クレイム・ブラッドレイは殺された。 傍から見ればそれは当然の報いであり、殺されて当然な悪逆非道の限りを彼は尽くしてきた。しかし、彼はなぜ自分が殺されなければならないのか理解できなかった。そして、死ぬ間際にてその答えにたどり着く。簡単な話だ………信頼し、友と思っていた人間に騙されていたのである。 そうして誰もにも助けてもらえずに彼は一生を終えた。意識が薄れゆく最中でクレイムは思う。「願うことならば今度の人生は平穏に過ごしたい」と「決して調子に乗らず、謙虚に慎ましく穏やかな自制生活を送ろう」と。 次に目が覚めればまた新しい人生が始まると思っていたクレイムであったが、目覚めてみればそれは10年前の少年時代であった。 最初はどういうことか理解が追いつかなかったが、また同じ未来を繰り返すのかと絶望さえしたが、同時にそれはクレイムにとって悪い話ではなかった。「同じ轍は踏まない。今度は全てを投げ出して平穏なスローライフを送るんだ!」と目標を定め、もう一度人生をやり直すことを決意する。 しかし、運命がそれを許さない。 一度目の人生では考えられないほどの苦難と試練が真人間へと更生したクレイムに次々と降りかかる。果たしてクレイムは本当にのんびり平穏なスローライフを遅れるのだろうか? ※他サイトにも掲載中

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

転生受験生の教科書チート生活 ~その知識、学校で習いましたよ?~

hisa
ファンタジー
 受験生の少年が、大学受験前にいきなり異世界に転生してしまった。  自称天使に与えられたチートは、社会に出たら役に立たないことで定評のある、学校の教科書。  戦争で下級貴族に成り上がった脳筋親父の英才教育をくぐり抜けて、少年は知識チートで生きていけるのか?  教科書の力で、目指せ異世界成り上がり!! ※なろうとカクヨムにそれぞれ別のスピンオフがあるのでそちらもよろしく! ※第5章に突入しました。 ※小説家になろう96万PV突破! ※カクヨム68万PV突破! ※令和4年10月2日タイトルを『転生した受験生の異世界成り上がり 〜生まれは脳筋な下級貴族家ですが、教科書の知識だけで成り上がってやります〜』から変更しました

異世界召喚されたら無能と言われ追い出されました。~この世界は俺にとってイージーモードでした~

WING/空埼 裕@書籍発売中
ファンタジー
 1~8巻好評発売中です!  ※2022年7月12日に本編は完結しました。  ◇ ◇ ◇  ある日突然、クラスまるごと異世界に勇者召喚された高校生、結城晴人。  ステータスを確認したところ、勇者に与えられる特典のギフトどころか、勇者の称号すらも無いことが判明する。  晴人たちを召喚した王女は「無能がいては足手纏いになる」と、彼のことを追い出してしまった。  しかも街を出て早々、王女が差し向けた騎士によって、晴人は殺されかける。  胸を刺され意識を失った彼は、気がつくと神様の前にいた。  そしてギフトを与え忘れたお詫びとして、望むスキルを作れるスキルをはじめとしたチート能力を手に入れるのであった──  ハードモードな異世界生活も、やりすぎなくらいスキルを作って一発逆転イージーモード!?  前代未聞の難易度激甘ファンタジー、開幕!

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。