異世界召喚されて捨てられた僕が邪神であることを誰も知らない……たぶん。

レオナール D

文字の大きさ
上 下
30 / 122
連載

63.焼肉を食べるよ

しおりを挟む

「ただいまー」

「あ、おかえりなさい。ウータさん」

 半魚人と見知らぬ少年をしばいてから、ウータは宿屋に戻ってきた。
 部屋の扉を開けると、ステラが朝と同じ格好で古文書を覗き込んでいる。

「まだ読んでたのかな? 不健康だなー」

「すみません。ようやくピークを過ぎたというか、色々と大事なことがわかってきたんです」

「へえ、よくわからないけどすごいね。そんなことより……コレ、食べるかな?」

「それは……どこかで買ってきたんですか?」

 ウータがアイテムボックス(?)から取り出したのはこんがりと焼けたステーキである。
 ステラは受け取って、「それじゃあ、いただきます」とすでにカットされているステーキを一つまみ、口に放り込む。

「あ、美味しい」

「そうでしょ? 火加減に気を遣ったんだよ」

「あ、ウータさんが作ったんですね。これも昨日みたいな魚介類ですか?」

 ステラが問うと、ウータが嬉しそうに「うん!」と頷いた。

「ほら、町に来た時に襲ってきたでっかい両生類みたいなのいたでしょ? アレをまた見つけたから、焼いてきたんだ」

「ええっ!? これってシーリザードのお肉なんですか!?」

 ステラが身体をのけぞらせて、嫌そうな表情になった。

「アレ? 嫌いだったのかな?」

「き、嫌いではないですけど……そうですか、シーリザードって意外と脂身があって美味しいんですね……」

 ステラは微妙な顔をしつつも、ウータがせっかく作ってくれた料理を残すわけにもいかずに口に運んだ。

「……美味しいです。何のお肉かは知りたくなかったですけど……」

「味と見た目は関係ないよ。いっぱい食べてねー」

「…………」

 ウータが追加で肉を取り出した。
 どっさりとテーブルに並んだ大量のシーリザードの肉を前にして、ステラが途方に暮れたような表情になった。
 ステラは作業を中断して、ウータと一緒にシーリザードの焼き肉を食べた。
 モグモグ、ムシャムシャと肉を咀嚼しつつ、ウータが今日の出来事について話し始める。

「……と、いうわけで、何か半魚人といっぱい会ったんだ。アレって何だったのかな?」

「えっと……それはたぶん、海生のマーマン族ですね」

「マーマン? でも、町に住んでいる人達と全然違ったよ?」

「この町に住んでいるのは陸生のマーマンで、肌の色や身体に鱗やエラが付いていること以外はほとんど人間と変わりません。ただ、海の中に住んでいるマーマンはずっと魚に近くて、容姿も……えっと、私達の感性からすると醜く見えるんです」

「ああ、なるほどねー。てっきりダゴンの手下とかが攻めてきたのかと思ったよ」

「だごん?」

「ううん、何でもない。それじゃあ、どうして海のマーマンが僕を殺そうとしたのかな?」

 半魚人は明らかにウータのことを狙っており、わざわざ町の子供まで使って罠に嵌めてきた。
 いったい、何が彼らにそこまでさせたのだろうか?

「うーん……それはわかりませんけど、もしかすると、町に来てからシーリザードを倒したことが関係あるのかもしれませんね。海生のマーマンがアレをけしかけたとすると、何か計画があって、邪魔者扱いされたのかもしれません」

「へえ、塵にする前にちゃんと話を聞いた方が良かったかな?」

「それが良かったと思いますけど……ウータさんにそういうのを期待するのはやめたので大丈夫です。おそらく、古文書を解読すれば、その辺りも明らかになるはずです」

「そっかそっか……アレ? もしかして、僕ってディスられた?」

「気のせいですよ。さあ、食べましょう」

「あ、うん。そうだね。たくさんあるから食べないとね」

 首を傾げるウータであったが、ステラが気のせいだというのならそうなのだろう。
 ウータは納得して、シーリザードの肉をモシャモシャと食べたのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

無能スキルと言われ追放されたが実は防御無視の最強スキルだった

さくらはい
ファンタジー
 主人公の不動颯太は勇者としてクラスメイト達と共に異世界に召喚された。だが、【アスポート】という使えないスキルを獲得してしまったばかりに、一人だけ城を追放されてしまった。この【アスポート】は対象物を1mだけ瞬間移動させるという単純な効果を持つが、実はどんな物質でも一撃で破壊できる攻撃特化超火力スキルだったのだ―― 【不定期更新】 1話あたり2000~3000文字くらいで短めです。 性的な表現はありませんが、ややグロテスクな表現や過激な思想が含まれます。 良ければ感想ください。誤字脱字誤用報告も歓迎です。

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

Hしてレベルアップ ~可愛い女の子とHして強くなれるなんて、この世は最高じゃないか~

トモ治太郎
ファンタジー
孤児院で育った少年ユキャール、この孤児院では15歳になると1人立ちしなければいけない。 旅立ちの朝に初めて夢精したユキャール。それが原因なのか『異性性交』と言うスキルを得る。『相手に精子を与えることでより多くの経験値を得る。』女性経験のないユキャールはまだこのスキルのすごさを知らなかった。 この日の為に準備してきたユキャール。しかし旅立つ直前、一緒に育った少女スピカが一緒にいくと言い出す。本来ならおいしい場面だが、スピカは何も準備していないので俺の負担は最初から2倍増だ。 こんな感じで2人で旅立ち、共に戦い、時にはHして強くなっていくお話しです。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。